東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2016年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問。微分積分・解析3問・線形代数1問・微分方程式1問。テーマタグは4件(一様収束・固有値・固有ベクトル・留数定理)。2015年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・留数定理。
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東大 専門科目A 2016年度 院試 過去問の出題内容(全7問)
この7問の分野は微分積分・解析3問・線形代数1問・微分方程式1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 核空間と直和分解 | — | あり |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 奇数冪積分と一様収束 | 一様収束の使い所 / 数値評価の確認 | あり |
| 第3問 | 線形代数 | 二乗根をもつ実行列 | 核となる見方 / 答案上の注意 | あり |
| 第4問 | 微分積分・解析 | 固有写像と距離関数の最小化 | — | あり |
| 第5問 | — | 根の評価と留数定理 | 根の評価 / 留数計算の短縮 | あり |
| 第6問 | 微分方程式 | 連立線形微分方程式 | — | あり |
| 第7問 | 微分積分・解析 | 高階熱方程式型の級数解 | 指数の意味 | あり |
この年度の解説には典型ミス2件・検算1件が付いています。
2016年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に4テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 一様収束 | 第2・7問 | 14大学・63問 | |
| 固有値・固有ベクトル | 第3問 | 25大学・544問 | |
| 留数定理 | 第5問 | 18大学・126問 | |
| 微分方程式の級数解法 | 第7問 | 3大学・7問 |
前年度(2015年度)との違い
- 大問数
- 2015年度 7問 → 2016年度 7問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・留数定理
- 2016年度で新しく出たテーマ
- 一様収束・微分方程式の級数解法
第1問 — 核空間と直和分解
方針
直和条件は,まず次元で候補を落とすのが最短である。 [数式],[数式] と を先に出すと, は次元和だけで不可能になる。
典型ミス
はどちらも次元和が5になるため,次元だけでは決まらない。 最後に交わりを確認しないと, を誤って含めてしまう。 直和分解の問題では「次元和が全体次元」と「交わりが0」の両方を書くことが重要である。
解答
(1) 行列 の行ベクトルを調べる。第1行は ,第2行は ,第3行は ,第4行は である。したがって [数式]
(2) 次に についても同様に見ると, [数式] また なので, の一次独立性は で決まる。よって
なら であり,直和で [数式] にはなれない。したがって候補は に限られる。
のとき, [数式] [数式] ここで が任意の について成り立つので, である。 したがって直和にはならない。
のときは [数式] [数式] まず である。実際, とおくと, が従う。
さらに とする。すなわち と書けたとする。第3成分から ,第4成分から , 第1成分から である。よって このとき なので, [数式] である。
最終答
[数式] [数式]
第2問 — 奇数冪積分と一様収束
一様収束の使い所
この問題では, の Taylor 展開をそのまま積分に入れるには, 区間全体で項別積分が正当化されることを書く必要がある。 なので階乗で押さえられ,Weierstrass 判定が最も簡潔である。
数値評価の確認
第3項までの和は であり,次項の絶対値は 未満である。したがって切り捨て後の 小数第2位は安定して と判断できる。
解答
(1) とし [数式] とおく。部分積分,または標準的な漸化式 [数式] を用いると, したがって
(2) 次に が で成り立つ。右辺の級数は収束するので,Weierstrass の 判定法より は 上で一様収束する。
(3) 一様収束により項別積分でき, [数式] 上で求めた を代入して [数式] 最初の数項は である。したがって小数第3位以下を切り捨てると となる。
最終答
[数式] [数式]
第3問 — 二乗根をもつ実行列
核となる見方
は, が射影行列であることを意味する。 つまり は「ある部分空間では ,補空間では 」として働く。 問題は, が実行列の二乗として表せる次元が偶数に限られる点で決まる。
答案上の注意
が対角化可能であることは,最小多項式が を割り,この多項式が 重根をもたないことから出す。ここを飛ばすと,固有空間の次元と rank を同一視する 理由が不足する。
解答
(1) 仮定 は を意味する。多項式 は重根をもたないので, は実数体上で 対角化可能であり,固有値は と だけである。
だから は少なくとも1回現れる。さらに [数式] なら, 固有値 の重複度は2,固有値 の重複度は1である。したがって である。
(2) [数式] のとき,ある可逆行列 により と書ける。ここで であるから とおくと である。よって と定めれば となる。
(3) 逆に となる実行列 が存在するとする。このとき なので, は と可換である。したがって は の 固有空間を保つ。その固有空間を とすると, である。つまり 上で が成り立つ。
実ベクトル空間上で二乗が になる線形写像が存在するには,空間の次元は 偶数でなければならない。実際,そのような線形写像の固有値は複素化すると であり,実係数の特性多項式では共役な根が同じ個数だけ現れる。 したがって は偶数である。 であり,行列サイズは3なので のうち偶数であり得るのは2だけである。よって [数式]
最終答
[数式] [数式] [数式]
第4問 — 固有写像と距離関数の最小化
方針
この問題は「閉かつ有界ならコンパクト」という の性質へ帰着する。 仮定 は, が無限遠へ逃げると も から離れることを保証している。 そのため という条件だけで の有界性が得られる。
典型ミス
閉性だけではコンパクト性は出ない。特に一般の距離空間では閉有界でもコンパクトとは 限らない。この問題では と明記されているため,最後に Heine--Borel を 使うところまで書く必要がある。
解答
とおく。 は連続で,距離関数も連続であるから, は連続である。
(1) まず任意の実数 について がコンパクトであることを示す。 なら であり, これはコンパクトである。以下 とする。
は連続関数 の閉区間 の逆像なので閉集合である。 次に有界性を示す。仮定より であり,三角不等式から したがって なら よって は を中心とする有界閉球に含まれる。 なので,Heine--Borel の定理により はコンパクトである。
(2) 次に が最小値をもつことを示す。 とおくと, なので は空でないコンパクト集合である。連続関数 は コンパクト集合 上で最小値をとるから,ある が存在して となる。一方 なら であり, である。したがって は 全体での最小点である。
最終答
第5問 — 根の評価と留数定理
根の評価
方程式を と見て,左辺を下から評価する。 で と が完全に打ち消し合う可能性を考慮するため, 単なる三角不等式ではなく逆三角不等式を使うのが要点である。
留数計算の短縮
5個の根を明示する必要はない。すべての有限極が積分路の内側にあるので, 有限極の留数総和を無限遠の展開から読むのが最短である。
解答
(1) とおく。もし かつ なら である。一方, とすると逆三角不等式より では であり,これは に反する。よってすべての複素根は を満たす。
(2) 次に [数式] を求める。上で示したように,分母の零点はすべて にある。 したがって積分路はすべての有限極を囲む。
有理関数 の無限遠での展開を調べると, したがって有限極における留数の総和は, の係数である に等しい。 よって留数定理から,反時計回りの積分について
最終答
[数式]
第6問 — 連立線形微分方程式
方針
2変数の線形系を行列指数で解いてもよいが,第2式から と置いて の2階方程式に落とすと計算が短い。右辺 が特性根と重なるため, 特殊解に が出る点を落とさない。
検算
であり, また であるから,方程式と初期条件を満たす。
解答
与えられた方程式は [数式] である。第2式から である。これを第1式へ代入すると すなわち を得る。
左辺は であるから,斉次解は である。右辺が に比例し,特性根 が重根なので, 特殊解を と取れる。したがって 初期条件 から である。 また と より なので だから である。よって さらに である。
最終答
第7問 — 高階熱方程式型の級数解
方針
指数因子 は, で高周波成分を非常に強く減衰させる。 そのため では任意階微分が一様収束で正当化される。 一方 では特異性が出るため,和を積分で評価して のスケールを取り出す。
指数の意味
の主要な寄与は ,すなわち の範囲から来る。そこに の重みがあるので, 大きさはおおよそ [数式] となる。厳密な証明では,この直観を変数変換 で書き直す。
解答
とおく。
(1) 任意の に対し, では であり,右辺の級数 は任意の について収束する。したがって 上で に関する任意階微分,および に関する微分を 項別に行える。
各項について であり,一方 よって が成り立つ。
(2) 次に を固定する。項別微分により 右辺を評価する。 では であるから を用いて [数式] では,ある定数 により とできるので [数式] 変数変換 により [数式] [数式] である。最後の不等式は と から従う。 したがって,適当な定数 が存在して がすべての , で成り立つ。
最終答
東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度
円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理
広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp
巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族
交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化
線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分
上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近
関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列
平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分
多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性
2016年度(このページ・全7問)解答・最終答まで全文公開
核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列
2015年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間
2014年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分
2013年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換
2012年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分
2011年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性
2010年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性
2007年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍
2006年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解
2005年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離
2004年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性