東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2016年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2016年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 核空間と直和分解
方針
直和条件は,まず次元で候補を落とすのが最短である。 [数式],[数式] と を先に出すと, は次元和だけで不可能になる。
典型ミス
はどちらも次元和が5になるため,次元だけでは決まらない。 最後に交わりを確認しないと, を誤って含めてしまう。 直和分解の問題では「次元和が全体次元」と「交わりが0」の両方を書くことが重要である。
2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
(1) 行列 の行ベクトルを調べる。第1行は ,第2行は ,第3行は ,第4行は である。したがって [数式]
(2) 次に についても同様に見ると, [数式] また なので, の一次独立性は で決まる。よって
なら であり,直和で [数式] にはなれない。したがって候補は に限られる。
のとき, [数式] [数式] ここで が任意の について成り立つので, である。 したがって直和にはならない。
のときは [数式] [数式] まず である。実際, とおくと, が従う。
さらに とする。すなわち と書けたとする。第3成分から ,第4成分から , 第1成分から である。よって このとき なので, [数式] である。
最終答
[数式] [数式]
第2問 — 奇数冪積分と一様収束
一様収束の使い所
この問題では, の Taylor 展開をそのまま積分に入れるには, 区間全体で項別積分が正当化されることを書く必要がある。 なので階乗で押さえられ,Weierstrass 判定が最も簡潔である。
数値評価の確認
第3項までの和は であり,次項の絶対値は 未満である。したがって切り捨て後の 小数第2位は安定して と判断できる。
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(1) とし [数式] とおく。部分積分,または標準的な漸化式 [数式] を用いると, したがって
(2) 次に が で成り立つ。右辺の級数は収束するので,Weierstrass の 判定法より は 上で一様収束する。
(3) 一様収束により項別積分でき, [数式] 上で求めた を代入して [数式] 最初の数項は である。したがって小数第3位以下を切り捨てると となる。
最終答
[数式] [数式]
第3問 — 二乗根をもつ実行列
核となる見方
は, が射影行列であることを意味する。 つまり は「ある部分空間では ,補空間では 」として働く。 問題は, が実行列の二乗として表せる次元が偶数に限られる点で決まる。
答案上の注意
が対角化可能であることは,最小多項式が を割り,この多項式が 重根をもたないことから出す。ここを飛ばすと,固有空間の次元と rank を同一視する 理由が不足する。
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(1) 仮定 は を意味する。多項式 は重根をもたないので, は実数体上で 対角化可能であり,固有値は と だけである。
だから は少なくとも1回現れる。さらに [数式] なら, 固有値 の重複度は2,固有値 の重複度は1である。したがって である。
(2) [数式] のとき,ある可逆行列 により と書ける。ここで であるから とおくと である。よって と定めれば となる。
(3) 逆に となる実行列 が存在するとする。このとき なので, は と可換である。したがって は の 固有空間を保つ。その固有空間を とすると, である。つまり 上で が成り立つ。
実ベクトル空間上で二乗が になる線形写像が存在するには,空間の次元は 偶数でなければならない。実際,そのような線形写像の固有値は複素化すると であり,実係数の特性多項式では共役な根が同じ個数だけ現れる。 したがって は偶数である。 であり,行列サイズは3なので のうち偶数であり得るのは2だけである。よって [数式]
最終答
[数式] [数式] [数式]
第4問 — 固有写像と距離関数の最小化
方針
この問題は「閉かつ有界ならコンパクト」という の性質へ帰着する。 仮定 は, が無限遠へ逃げると も から離れることを保証している。 そのため という条件だけで の有界性が得られる。
典型ミス
閉性だけではコンパクト性は出ない。特に一般の距離空間では閉有界でもコンパクトとは 限らない。この問題では と明記されているため,最後に Heine--Borel を 使うところまで書く必要がある。
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とおく。 は連続で,距離関数も連続であるから, は連続である。
(1) まず任意の実数 について がコンパクトであることを示す。 なら であり, これはコンパクトである。以下 とする。
は連続関数 の閉区間 の逆像なので閉集合である。 次に有界性を示す。仮定より であり,三角不等式から したがって なら よって は を中心とする有界閉球に含まれる。 なので,Heine--Borel の定理により はコンパクトである。
(2) 次に が最小値をもつことを示す。 とおくと, なので は空でないコンパクト集合である。連続関数 は コンパクト集合 上で最小値をとるから,ある が存在して となる。一方 なら であり, である。したがって は 全体での最小点である。
最終答
第5問 — 根の評価と留数定理
根の評価
方程式を と見て,左辺を下から評価する。 で と が完全に打ち消し合う可能性を考慮するため, 単なる三角不等式ではなく逆三角不等式を使うのが要点である。
留数計算の短縮
5個の根を明示する必要はない。すべての有限極が積分路の内側にあるので, 有限極の留数総和を無限遠の展開から読むのが最短である。
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(1) とおく。もし かつ なら である。一方, とすると逆三角不等式より では であり,これは に反する。よってすべての複素根は を満たす。
(2) 次に [数式] を求める。上で示したように,分母の零点はすべて にある。 したがって積分路はすべての有限極を囲む。
有理関数 の無限遠での展開を調べると, したがって有限極における留数の総和は, の係数である に等しい。 よって留数定理から,反時計回りの積分について
最終答
[数式]
第6問 — 連立線形微分方程式
方針
2変数の線形系を行列指数で解いてもよいが,第2式から と置いて の2階方程式に落とすと計算が短い。右辺 が特性根と重なるため, 特殊解に が出る点を落とさない。
検算
であり, また であるから,方程式と初期条件を満たす。
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与えられた方程式は [数式] である。第2式から である。これを第1式へ代入すると すなわち を得る。
左辺は であるから,斉次解は である。右辺が に比例し,特性根 が重根なので, 特殊解を と取れる。したがって 初期条件 から である。 また と より なので だから である。よって さらに である。
最終答
第7問 — 高階熱方程式型の級数解
方針
指数因子 は, で高周波成分を非常に強く減衰させる。 そのため では任意階微分が一様収束で正当化される。 一方 では特異性が出るため,和を積分で評価して のスケールを取り出す。
指数の意味
の主要な寄与は ,すなわち の範囲から来る。そこに の重みがあるので, 大きさはおおよそ [数式] となる。厳密な証明では,この直観を変数変換 で書き直す。
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とおく。
(1) 任意の に対し, では であり,右辺の級数 は任意の について収束する。したがって 上で に関する任意階微分,および に関する微分を 項別に行える。
各項について であり,一方 よって が成り立つ。
(2) 次に を固定する。項別微分により 右辺を評価する。 では であるから を用いて [数式] では,ある定数 により とできるので [数式] 変数変換 により [数式] [数式] である。最後の不等式は と から従う。 したがって,適当な定数 が存在して がすべての , で成り立つ。
最終答