東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2017年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2017年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 多項式空間の線形変換
方針
は微分作用素に,定数項を取り出して を掛けるランク1作用素を 足したものである。標準基底で行列を書いてもよいが,固有方程式を係数の漸化式として 扱う方が計算の見通しがよい。
対角化判定の注意
重根があることだけでなく,その固有空間の次元を確認する必要がある。 ここでは で固有値 が重複するが,核は1次元にしかならない。 したがって固有ベクトルが不足する。 は固有値が5個相異なるため, 複素ベクトル空間上で自動的に対角化可能である。
第2問 — 反復正弦と級数
方針
反復正弦は非常にゆっくり0へ近づく。重要なのは で,減少量が 程度しかないことである。 問題で求められている下界は 型なので,正項級数は発散する。
交代級数
正項の和は発散しても,項そのものは単調に0へ下がる。したがって交代符号をつけると Leibnizの判定法が使える。ここで「絶対収束しない」ことまで書くと, 第3問と第4問の違いが明確になる。
第3問 — 原点での連続性と全微分可能性
方針
分母は で,分子の支配項は である。したがって 連続性では が境界になる。全微分可能性ではさらに 距離 で割るため,条件が一段厳しくなる。
典型ミス
-軸だけを見ると が出るため条件を甘く見積もりやすい。 この問題では -軸方向の が最悪方向であり,そこを確認しないと 必要条件を取り逃がす。
第4問 — 平面力学系の極限
方針
実部と虚部をまとめて複素数で見ると,一気に回転と半径の方程式に分かれる。 半径はロジスティック方程式で1へ収束し,角度は半径の対数変化と同じだけ進む。
検算
のときは右辺が になる。実際,初期値が単位円上なら なので解は最初から動かない。この特殊場合で式の符号を検算できる。
第5問 — 二形式の分解可能性
方針
2形式が1形式2つの外積で書けることを「分解可能」という。3次元では交代行列が 必ず核を持つため,核方向を基底の1つにすれば残り2方向だけの2形式になる。 4次元以上では標準例 が分解不可能性を示す。
採点上の注意
の反例では, を明示するのが最短で確実である。 分解可能な2形式なら同じ1形式が2回現れるため外積の二乗は必ず0になる。
第6問 — 行列の核で割った商空間
方針
商で潰している情報は「核」だけである。可逆行列は全て1点に潰れ,零行列も1点に 潰れ,階数1行列だけが核直線を覚えている。この核直線の空間が である。
開集合の直感
零行列の近くには,可逆行列も,任意の核直線を持つ小さい階数1行列も存在する。 そのため零行列の同値類を含む開集合は,商空間上では全ての点を含まざるを得ない。 この点が通常の多様体的な商空間と大きく違うところである。
第7問 — 対数を含む広義積分
方針
は区間 で負なので, と見て幾何級数に展開する。 すると奇数番目の平方逆数和が現れる。
符号の検算
では , なので integrand は正である。 答え は符号と一致する。途中で としてしまうと符号が逆になる。