東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2017年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問。微分積分・解析3問・線形代数1問・力学1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・一様収束)。2016年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・一様収束。
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収録20年度分の解答PDF:東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A(¥3,200・紙面見本あり)
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- 解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき7問)
- 問題本文
- 非収録
東大 専門科目A 2017年度 院試 過去問の出題内容(全7問)
この7問の分野は微分積分・解析3問・線形代数1問・力学1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 多項式空間の線形変換 | 対角化判定の注意 | あり |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 反復正弦と級数 | 交代級数 | あり |
| 第3問 | 微分積分・解析 | 原点での連続性と全微分可能性 | — | あり |
| 第4問 | 力学 | 平面力学系の極限 | — | あり |
| 第5問 | — | 二形式の分解可能性 | 採点上の注意 | あり |
| 第6問 | 線形代数 | 行列の核で割った商空間 | 開集合の直感 | あり |
| 第7問 | 微分積分・解析 | 対数を含む広義積分 | 符号の検算 | あり |
この年度の解説には検算1件・採点上の注意1件・典型ミス1件が付いています。
2017年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に4テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第6問 | 21大学・152問 | |
| 一様収束 | 第7問 | 14大学・63問 | |
| 偏微分可能性と連続性 | 第3問 | 9大学・12問 |
前年度(2016年度)との違い
- 大問数
- 2016年度 7問 → 2017年度 7問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・一様収束
- 2017年度で新しく出たテーマ
- 線形空間・基底・偏微分可能性と連続性
第1問 — 多項式空間の線形変換
方針
は微分作用素に,定数項を取り出して を掛けるランク1作用素を 足したものである。標準基底で行列を書いてもよいが,固有方程式を係数の漸化式として 扱う方が計算の見通しがよい。
対角化判定の注意
重根があることだけでなく,その固有空間の次元を確認する必要がある。 ここでは で固有値 が重複するが,核は1次元にしかならない。 したがって固有ベクトルが不足する。 は固有値が5個相異なるため, 複素ベクトル空間上で自動的に対角化可能である。
解答
の標準基底を とする。 と書くと である。
(1) まず核を求める。 ならば である。 のときは となり, は任意に選べる。したがって である。 のときは,左辺 の次数が高々3であるため と一致するには が必要である。すると かつ なので であり, である。
(2) 次に固有値を調べる。 とし,非零固有ベクトル を取る。 もし ならば,係数比較により となるため, 非零固有ベクトルではない。よって であり, と正規化できる。 係数比較から かつ最後に が必要である。この漸化式を順に解くと,特性多項式は となる。
したがって では固有値 の代数的重複度がそれぞれ 4,3,2である。一方で,すでに求めたように は1次元で あるから,これらの場合は対角化できない。
のときは であり,固有値は の5つで,全て相異なる。よって対角化可能である。
のときは であり,固有値は で,全て相異なる。したがって対角化可能である。
最終答
第2問 — 反復正弦と級数
方針
反復正弦は非常にゆっくり0へ近づく。重要なのは で,減少量が 程度しかないことである。 問題で求められている下界は 型なので,正項級数は発散する。
交代級数
正項の和は発散しても,項そのものは単調に0へ下がる。したがって交代符号をつけると Leibnizの判定法が使える。ここで「絶対収束しない」ことまで書くと, 第3問と第4問の違いが明確になる。
第3問 — 原点での連続性と全微分可能性
方針
分母は で,分子の支配項は である。したがって 連続性では が境界になる。全微分可能性ではさらに 距離 で割るため,条件が一段厳しくなる。
典型ミス
-軸だけを見ると が出るため条件を甘く見積もりやすい。 この問題では -軸方向の が最悪方向であり,そこを確認しないと 必要条件を取り逃がす。
第4問 — 平面力学系の極限
方針
実部と虚部をまとめて複素数で見ると,一気に回転と半径の方程式に分かれる。 半径はロジスティック方程式で1へ収束し,角度は半径の対数変化と同じだけ進む。
検算
のときは右辺が になる。実際,初期値が単位円上なら なので解は最初から動かない。この特殊場合で式の符号を検算できる。
第5問 — 二形式の分解可能性
方針
2形式が1形式2つの外積で書けることを「分解可能」という。3次元では交代行列が 必ず核を持つため,核方向を基底の1つにすれば残り2方向だけの2形式になる。 4次元以上では標準例 が分解不可能性を示す。
採点上の注意
の反例では, を明示するのが最短で確実である。 分解可能な2形式なら同じ1形式が2回現れるため外積の二乗は必ず0になる。
第6問 — 行列の核で割った商空間
方針
商で潰している情報は「核」だけである。可逆行列は全て1点に潰れ,零行列も1点に 潰れ,階数1行列だけが核直線を覚えている。この核直線の空間が である。
開集合の直感
零行列の近くには,可逆行列も,任意の核直線を持つ小さい階数1行列も存在する。 そのため零行列の同値類を含む開集合は,商空間上では全ての点を含まざるを得ない。 この点が通常の多様体的な商空間と大きく違うところである。
第7問 — 対数を含む広義積分
方針
は区間 で負なので, と見て幾何級数に展開する。 すると奇数番目の平方逆数和が現れる。
符号の検算
では , なので integrand は正である。 答え は符号と一致する。途中で としてしまうと符号が逆になる。
東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度
円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理
広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp
巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族
交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化
線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分
上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近
関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列
平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分
2017年度(このページ・全7問)
多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性
2016年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列
2015年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間
2014年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分
2013年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換
2012年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分
2011年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性
2010年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性
2007年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍
2006年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解
2005年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離
2004年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性