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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2012年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析3問・線形代数1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2011年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理。

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収録20年度分の解答PDF:東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A(¥3,200・紙面見本あり)

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解説7問・解答7問・最終答7問(全7問)
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東大 専門科目A 2012年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析3問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—交換子と対角化可能性階数条件は行ベクトルで見る / 対角化では重複固有値だけを見るあり
第2問微分積分・解析二変数関数の最大値境界確認を省かない / 平面全体では無限遠を見るあり
第3問微分積分・解析フーリエ積分分母を二つの標準形に分ける / 収束の見方あり
第4問線形代数行列の生成する部分空間生成空間の次元は最小多項式の次数 / 固有ベクトルは射影子に近い形で出るあり
第5問—連結閉集合の減少列反例は「つなぎ目を無限遠へ逃がす」 / コンパクト性の使い所あり
第6問—四つの二次元部分空間まず二つの補空間で形を決めるあり
第7問微分積分・解析ガウス積分を含む関数微分すると既知のガウス積分が出る / 平方根オーダーのずれを読むあり

2012年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に4テーマが出ています。

前年度(2011年度)との違い

大問数
2011年度 7問 → 2012年度 7問
2012年度で新しく出たテーマ
テイラー展開
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第1問 — 交換子と対角化可能性

階数条件は行ベクトルで見る

この問題では交換子を出した後,すぐに行列式を何個も計算するより,非零になりうる 行が二つしかないことを見るのが速い。第一成分から b=0b=0 が強制され,残りは (2−a)c=0(2-a)c=0 だけになる。

対角化では重複固有値だけを見る

三つの固有値が相異なる場合は自動的に対角化可能である。したがって調べるべき ところは固有値が重なる場合だけである。特に a=2a=2 では ジョルダンブロックが現れるので,階数条件を満たしていても対角化可能にはならない。

解答

(1) 与えられた二つの行列について直接計算すると AB−BA=(b2−ac0−b−c000) AB-BA= \begin{pmatrix} b&2-a&c\\ 0&-b&-c\\ 0&0&0 \end{pmatrix} である。この行列の階数が 11 以下であるためには,上の二つの行ベクトルが 一次従属であればよい。

第1成分を見ると,第二行の第1成分は常に 00 なので,一次従属のためには まず b=0b=0 が必要である。b=0b=0 とすると AB−BA=(02−ac00−c000) AB-BA= \begin{pmatrix} 0&2-a&c\\ 0&0&-c\\ 0&0&0 \end{pmatrix} となる。したがって階数が 11 以下である条件は (2−a)c=0 (2-a)c=0 である。よって b=0,c=0 または a=2 b=0,\qquad c=0\ \text{または}\ a=2 が第1小問の答である。

(2) 次にこの条件のもとで BB の対角化可能性を調べる。

 b=0, c=0 \,b=0,\ c=0\, の場合, B=(a1002000a+1) B= \begin{pmatrix} a&1&0\\ 0&2&0\\ 0&0&a+1 \end{pmatrix} であり,固有値は a,2,a+1a,2,a+1 である。a≠2a\neq2 なら,22 と重なる可能性が あるのは a+1=2a+1=2,すなわち a=1a=1 の場合だけである。このときも B−2I=(−110000000) B-2I= \begin{pmatrix} -1&1&0\\ 0&0&0\\ 0&0&0 \end{pmatrix} なので,固有値 22 の固有空間は2次元であり,対角化可能である。 一方 a=2a=2 のときは,左上の 2×22\times2 ブロックが (2102) \begin{pmatrix}2&1\\0&2\end{pmatrix} となるため対角化できない。

a=2, b=0a=2,\ b=0 の場合は cc によらず B−2I=(01000c001) B-2I= \begin{pmatrix} 0&1&0\\ 0&0&c\\ 0&0&1 \end{pmatrix} であり,固有値 22 に対する固有空間は1次元である。代数的重複度は2だから, この場合も対角化できない。

最終答

(1)rank⁡(AB−BA)≤1⟺b=0,  c=0 または a=2 \text{(1)}\quad \boxed{ \operatorname{rank}(AB-BA)\le1 \quad\Longleftrightarrow\quad b=0,\ \ c=0\ \text{または}\ a=2 } (2)b=0,c=0,a≠2 \text{(2)}\quad \boxed{ b=0,\qquad c=0,\qquad a\neq2 }

第2問 — 二変数関数の最大値

境界確認を省かない

コンパクト領域上の最大値問題では,内部臨界点だけでは答案として不足する。 この問題では境界の最大値が 33/83\sqrt3/8 より小さいことを短く示せば十分である。

平面全体では無限遠を見る

∥(x,y)∥→∞\|(x,y)\|\to\infty で f(x,y)→0f(x,y)\to0 であることを先に書くと,平面全体でも 臨界点の比較に帰着できる。負の臨界点は最小側なので,最大値には影響しない。

解答

関数を f(x,y)=x+y(x2+1)(y2+1) f(x,y)=\frac{x+y}{(x^2+1)(y^2+1)} とおく。偏微分すると ∂f∂x=1−x2−2xy(x2+1)2(y2+1),∂f∂y=1−y2−2xy(x2+1)(y2+1)2. \frac{\partial f}{\partial x} = \frac{1-x^2-2xy}{(x^2+1)^2(y^2+1)},\qquad \frac{\partial f}{\partial y} = \frac{1-y^2-2xy}{(x^2+1)(y^2+1)^2}.

(1) まず正方形 0≤x≤1, 0≤y≤10\le x\le1,\ 0\le y\le1 で考える。内部の臨界点では 1−x2−2xy=0,1−y2−2xy=0 1-x^2-2xy=0,\qquad 1-y^2-2xy=0 である。差を取ると x2=y2x^2=y^2 であり,正方形内部では x=yx=y となる。 したがって 1−3x2=0,x=y=13 1-3x^2=0,\qquad x=y=\frac1{\sqrt3} である。この点で f ⁣(13,13)=2/3(4/3)2=338. f\!\left(\frac1{\sqrt3},\frac1{\sqrt3}\right) = \frac{2/\sqrt3}{(4/3)^2} = \frac{3\sqrt3}{8}.

境界も確認する。例えば y=0y=0 では x/(x2+1)≤1/2x/(x^2+1)\le1/2 である。 x=0x=0 も同様である。x=1x=1 では f(1,y)=1+y2(1+y2) f(1,y)=\frac{1+y}{2(1+y^2)} であり,導関数の符号から最大点は y=2−1y=\sqrt2-1 である。この値は 1+2−12{1+(2−1)2}=1+24<338 \frac{1+\sqrt2-1}{2\{1+(\sqrt2-1)^2\}} = \frac{1+\sqrt2}{4} < \frac{3\sqrt3}{8} である。y=1y=1 も対称性により同じである。よって正方形上の最大値は 338 \frac{3\sqrt3}{8} である。

(2) 次に平面全体で考える。関数は ∥(x,y)∥→∞\|(x,y)\|\to\infty で 00 に近づくので, 正の値を取る点を含む十分大きな閉円板上で最大値を持つ。したがって内部臨界点を 調べればよい。上と同じ連立方程式から (y−x)(x+y)=0 (y-x)(x+y)=0 を得る。y=−xy=-x の場合は 1+x2=01+x^2=0 となり実解を持たない。したがって x=y=±13 x=y=\pm\frac1{\sqrt3} である。正の点では値が 33/83\sqrt3/8,負の点ではその反数であるから, 平面全体での最大値も 338 \frac{3\sqrt3}{8} である。

最終答

(1)0≤x,y≤1 上の最大値は 338 \text{(1)}\quad \boxed{ 0\le x,y\le1\text{ 上の最大値は }\frac{3\sqrt3}{8} } (2)R2 全体での最大値も 338 \text{(2)}\quad \boxed{ \mathbb R^2\text{ 全体での最大値も }\frac{3\sqrt3}{8} } いずれも (x,y)=(13,13) (x,y)=\left(\frac1{\sqrt3},\frac1{\sqrt3}\right) で達成される。

第3問 — フーリエ積分

分母を二つの標準形に分ける

この積分は留数計算でも処理できるが, 1x(x2+a2)=1a2(1x−xx2+a2) \frac1{x(x^2+a^2)} = \frac1{a^2}\left(\frac1x-\frac{x}{x^2+a^2}\right) と分けると,ディリクレ積分と指数減衰付きフーリエ積分だけで済む。

収束の見方

原点付近では sin⁡xcos⁡x∼x\sin x\cos x\sim x なので特異性は消える。無限遠では 分母が x3x^3 程度であり,積分は十分よく収束する。答案では,公式を使う前に この程度の収束確認を書いておくと減点されにくい。

解答

sin⁡xcos⁡x=12sin⁡2x \sin x\cos x=\frac12\sin 2x を使うと,求める積分は I=12∫0∞sin⁡2xx(x2+a2) dx I=\frac12\int_0^\infty \frac{\sin 2x}{x(x^2+a^2)}\,dx である。また 1x(x2+a2)=1a2(1x−xx2+a2) \frac1{x(x^2+a^2)} = \frac1{a^2}\left(\frac1x-\frac{x}{x^2+a^2}\right) だから I=12a2{∫0∞sin⁡2xx dx−∫0∞xsin⁡2xx2+a2 dx}. I= \frac1{2a^2} \left\{ \int_0^\infty\frac{\sin 2x}{x}\,dx - \int_0^\infty\frac{x\sin 2x}{x^2+a^2}\,dx \right\}.

よく知られたディリクレ積分より ∫0∞sin⁡2xx dx=π2. \int_0^\infty\frac{\sin 2x}{x}\,dx=\frac\pi2. また ∫0∞cos⁡bxx2+a2 dx=π2ae−ab(a>0, b>0) \int_0^\infty\frac{\cos bx}{x^2+a^2}\,dx = \frac{\pi}{2a}e^{-ab}\qquad (a>0,\ b>0) を bb で微分すると ∫0∞xsin⁡bxx2+a2 dx=π2e−ab. \int_0^\infty\frac{x\sin bx}{x^2+a^2}\,dx = \frac\pi2 e^{-ab}. ここで b=2b=2 として ∫0∞xsin⁡2xx2+a2 dx=π2e−2a. \int_0^\infty\frac{x\sin 2x}{x^2+a^2}\,dx = \frac\pi2 e^{-2a}. したがって I=12a2(π2−π2e−2a)=π4a2(1−e−2a). I= \frac1{2a^2} \left(\frac\pi2-\frac\pi2e^{-2a}\right) = \frac{\pi}{4a^2}\left(1-e^{-2a}\right).

最終答

∫0∞sin⁡xcos⁡xx(x2+a2) dx=π4a2(1−e−2a)(a>0). \int_0^\infty \frac{\sin x\cos x}{x(x^2+a^2)}\,dx = \frac{\pi}{4a^2}\left(1-e^{-2a}\right) \qquad (a>0).

第4問 — 行列の生成する部分空間

生成空間の次元は最小多項式の次数

⟨I,A,A2,…⟩\langle I,A,A^2,\ldots\rangle の次元を直接行列の列として調べるより, 最小多項式を見る方が構造がはっきりする。今回は固有値 11 側の ジョルダンの長さが a,ba,b の消え方で変わる。

固有ベクトルは射影子に近い形で出る

(A−3I)(A−I)2(A-3I)(A-I)^2 は固有値 11 側だけを残し, (A−I)3(A-I)^3 は固有値 33 側だけを残す。多項式の割り切り条件で書くと, 「すべての固有ベクトル」を漏れなく記述できる。

解答

(1) 基底のうち e1,e2,e4e_1,e_2,e_4 で張られる部分空間を HH とおく。 HH は AA で不変であり,基底 (e1,e2,e4)(e_1,e_2,e_4) に関する A∣HA|_H は A∣H=I+N,N=(0bba00−a00) A|_H=I+N,\qquad N= \begin{pmatrix} 0&b&b\\ a&0&0\\ -a&0&0 \end{pmatrix} である。ここで N2=(0000abab0−ab−ab),N3=0. N^2= \begin{pmatrix} 0&0&0\\ 0&ab&ab\\ 0&-ab&-ab \end{pmatrix}, \qquad N^3=0. したがって HH 上での最小多項式は {t−1,a=b=0,(t−1)2,ab=0, (a,b)≠(0,0),(t−1)3,ab≠0 \begin{cases} t-1,& a=b=0,\\ (t-1)^2,& ab=0,\ (a,b)\neq(0,0),\\ (t-1)^3,& ab\neq0 \end{cases} である。

一方,商空間 C4/H\mathbb C^4/H では AA は 33 倍写像として働く。従って 全体の最小多項式は,この t−3t-3 と上の多項式の最小公倍である。 V=⟨I,A,A2,…⟩V=\langle I,A,A^2,\ldots\rangle の次元は最小多項式の次数に等しいので, dim⁡V={2,a=b=0,3,ab=0, (a,b)≠(0,0),4,ab≠0. \dim V= \begin{cases} 2,& a=b=0,\\ 3,& ab=0,\ (a,b)\neq(0,0),\\ 4,& ab\neq0. \end{cases}

(2) 次に dim⁡V=4\dim V=4 の場合を考える。このとき ab≠0ab\neq0 であり,最小多項式は m(t)=(t−3)(t−1)3 m(t)=(t-3)(t-1)^3 である。V=C[A]V=\mathbb C[A] は C[t]/(m(t)) \mathbb C[t]/(m(t)) と同一視でき,線形写像 φ(X)=AX\varphi(X)=AX は tt を掛ける写像に対応する。

固有値 λ\lambda の固有ベクトルを q(A)q(A) と書くと, (A−λI)q(A)=0 (A-\lambda I)q(A)=0 である。これは多項式で言えば m(t)∣(t−λ)q(t) m(t)\mid (t-\lambda)q(t) という条件である。

λ=1\lambda=1 では q(t) は (t−3)(t−1)2 の定数倍 q(t)\ \text{は}\ (t-3)(t-1)^2\ \text{の定数倍} でなければならない。従って固有空間は C (A−3I)(A−I)2 \mathbb C\,(A-3I)(A-I)^2 である。

λ=3\lambda=3 では q(t) は (t−1)3 の定数倍 q(t)\ \text{は}\ (t-1)^3\ \text{の定数倍} でなければならない。従って固有空間は C (A−I)3 \mathbb C\,(A-I)^3 である。

最終答

(1)dim⁡V={2,a=b=0,3,ab=0, (a,b)≠(0,0),4,ab≠0. \text{(1)}\quad \boxed{ \dim V= \begin{cases} 2,& a=b=0,\\ 3,& ab=0,\ (a,b)\neq(0,0),\\ 4,& ab\neq0. \end{cases} } (2)dim⁡V=4 のとき,φ の固有値は 1,3 \text{(2)}\quad \boxed{\dim V=4\text{ のとき,}\varphi\text{ の固有値は }1,3} 固有ベクトルはそれぞれ λ=1: c(A−3I)(A−I)2,λ=3: c(A−I)3 \boxed{ \lambda=1:\ c(A-3I)(A-I)^2,\qquad \lambda=3:\ c(A-I)^3 } である。ただし c∈C×c\in\mathbb C^\times とする。

第5問 — 連結閉集合の減少列

反例は「つなぎ目を無限遠へ逃がす」

各段階ではつながっているが,共通部分を取ると橋の部分だけが消える,という構成が 典型である。コンパクト性がないと,このように連結性を保っていた部分を無限遠へ 逃がせる。

コンパクト性の使い所

証明の中心は,TT を含む開集合 UU に対して,十分大きい NN で FN⊂UF_N\subset U となる点である。これは閉集合の減少列と有限交叉性から出る。 この一手があるため,最後に FNF_N の連結性へ帰着できる。

解答

(1) まず反例を与える。X=R2X=\mathbb R^2 とし, Fn={−1}×[0,∞) ∪ {1}×[0,∞) ∪ [−1,1]×[n,∞) F_n= \{-1\}\times[0,\infty) \ \cup\ \{1\}\times[0,\infty) \ \cup\ [-1,1]\times[n,\infty) とおく。各 FnF_n は閉集合であり,二本の縦の半直線が上方の帯 [−1,1]×[n,∞)[-1,1]\times[n,\infty) によってつながれているので連結である。また Fn⊃Fn+1 F_n\supset F_{n+1} である。しかし共通部分は ⋂n=1∞Fn={−1}×[0,∞) ∪ {1}×[0,∞) \bigcap_{n=1}^\infty F_n = \{-1\}\times[0,\infty) \ \cup\ \{1\}\times[0,\infty) であり,これは二つの互いに離れた閉集合の和なので連結ではない。

(2) 次に XX がコンパクトなハウスドルフ空間である場合を示す。 共通部分を T=⋂n=1∞Fn T=\bigcap_{n=1}^\infty F_n とする。背理法で,TT が連結でないと仮定する。すると TT の空でない 互いに交わらない閉集合 T1,T2T_1,T_2 が存在し, T=T1∪T2 T=T_1\cup T_2 と書ける。

コンパクトハウスドルフ空間は正規空間であるから,互いに交わらない開集合 U1,U2U_1,U_2 を T1⊂U1,T2⊂U2,U1∩U2=∅ T_1\subset U_1,\qquad T_2\subset U_2,\qquad U_1\cap U_2=\varnothing となるように取れる。U=U1∪U2U=U_1\cup U_2 とおく。

ここで,ある NN が存在して FN⊂U F_N\subset U となることを示す。もしそうでなければ,すべての nn で Fn∖U≠∅ F_n\setminus U\neq\varnothing である。F1∖UF_1\setminus U はコンパクトであり, {Fn∖U}\{F_n\setminus U\} は空でない閉集合の減少列なので,有限交叉性から ⋂n=1∞(Fn∖U)≠∅ \bigcap_{n=1}^\infty(F_n\setminus U)\neq\varnothing となる。しかし左辺は T∖UT\setminus U であり,T⊂UT\subset U に反する。

従って FN⊂U1∪U2F_N\subset U_1\cup U_2 である。しかも T1,T2⊂FNT_1,T_2\subset F_N なので, FNF_N は U1U_1 と U2U_2 の両方に交わる。これは FNF_N の連結性に反する。 よって TT は連結である。

最終答

(1)一般の位相空間では反例がある \text{(1)}\quad \boxed{\text{一般の位相空間では反例がある}} 一般の位相空間では反例がある。例えば Fn={−1}×[0,∞)∪{1}×[0,∞)∪[−1,1]×[n,∞)⊂R2 F_n= \{-1\}\times[0,\infty) \cup \{1\}\times[0,\infty) \cup [-1,1]\times[n,\infty) \subset\mathbb R^2 とすれば,各 FnF_n は閉かつ連結だが,共通部分は二本の半直線の和で連結でない。 (2)X がコンパクトハウスドルフなら主張は正しい \text{(2)}\quad \boxed{X\text{ がコンパクトハウスドルフなら主張は正しい}} 一方,XX がコンパクトハウスドルフなら,閉集合の減少列の有限交叉性と 正規性により,共通部分は連結である。

第6問 — 四つの二次元部分空間

まず二つの補空間で形を決める

V1V_1 と V2V_2 が直和分解を与えているため,WW はそれぞれから1本ずつ 直線を取ったものに限られる。この段階で自由度は射影直線ひとつ分まで落ちる。

V3V_3 は傾きをそろえる条件

V3V_3 は V1V_1 と V2V_2 を同じ係数で結ぶグラフである。したがって W∩V3≠0W\cap V_3\neq0 となるには,V1V_1 側の直線と V2V_2 側の直線が同じ 傾きを持つ必要がある。最後に V4V_4 が二次方程式 t2+t−1=0t^2+t-1=0 を与える。

解答

まず V1V_1 と V2V_2 は互いに補空間になっている。したがって dim⁡(W∩V1)=dim⁡(W∩V2)=1 \dim(W\cap V_1)=\dim(W\cap V_2)=1 であるような2次元部分空間 WW は, W=L1⊕L2 W=L_1\oplus L_2 と書ける。ただし L1L_1 は V1V_1 内の1次元部分空間,L2L_2 は V2V_2 内の 1次元部分空間である。

そこで一般に L1=C(pe1+qe2),L2=C(re3+se4) L_1=\mathbb C(p e_1+q e_2),\qquad L_2=\mathbb C(r e_3+s e_4) と書く。V3V_3 は e1+e3,e2+e4 e_1+e_3,\qquad e_2+e_4 で張られるので,WW が V3V_3 と1次元で交わるためには,V1V_1 側と V2V_2 側の比が同じでなければならない。従って (r,s) は (p,q) に比例する. (r,s)\ \text{は}\ (p,q)\ \text{に比例する}. もし p=0p=0 なら,この条件から W=Ce2⊕Ce4W=\mathbb C e_2\oplus\mathbb C e_4 となるが, これは V4V_4 と交わらない。よって p≠0p\neq0 としてよく,t=q/pt=q/p とおけば 候補は Wt=C(e1+te2)⊕C(e3+te4) W_t=\mathbb C(e_1+t e_2)\oplus\mathbb C(e_3+t e_4) に限られる。

次に V4V_4 との交わりを調べる。WtW_t の元は α(e1+te2)+β(e3+te4) \alpha(e_1+t e_2)+\beta(e_3+t e_4) と書ける。一方,V4V_4 の元はある p,q∈Cp,q\in\mathbb C により p(e1+e2+e3)+q(e2+e3−e4) p(e_1+e_2+e_3)+q(e_2+e_3-e_4) と書ける。成分を比較すると,非自明解が存在するための条件は t2+t−1=0 t^2+t-1=0 である。したがって t=−1+52,t=−1−52 t=\frac{-1+\sqrt5}{2},\qquad t=\frac{-1-\sqrt5}{2} の二つを得る。

この二つの tt に対し,WtW_t は V1,V2,V3,V4V_1,V_2,V_3,V_4 のいずれとも 少なくとも1次元で交わる。また WtW_t がこれらのどれかと一致することはないので, 交わりの次元はちょうど1である。

最終答

求める WW は次の二つである。 W=C(e1+te2)⊕C(e3+te4),t=−1+52 または −1−52. W= \mathbb C(e_1+t e_2)\oplus\mathbb C(e_3+t e_4), \qquad t=\frac{-1+\sqrt5}{2}\ \text{または}\ \frac{-1-\sqrt5}{2}.

第7問 — ガウス積分を含む関数

微分すると既知のガウス積分が出る

分母の 1+z21+z^2 は,微分後に z21+z2=1−11+z2 \frac{z^2}{1+z^2}=1-\frac1{1+z^2} と分解できる。このため f(x)f(x) 自身とガウス積分 ∫e−xz2 dz=π/x\int e^{-xz^2}\,dz=\sqrt{\pi/x} が現れ,すぐに一階線形微分方程式になる。

平方根オーダーのずれを読む

x=0x=0 近くで通常のテイラー展開にならない原因は,右辺の x−1/2x^{-1/2} の特異性である。積分因子で解いた後, ∫0xt−1/2 dt=2x\int_0^x t^{-1/2}\,dt=2\sqrt{x} の主項を読むと,極限値が −2π-2\sqrt{\pi} と決まる。

解答

(1) x=0x=0 では f(0)=∫−∞∞11+z2 dz=π f(0)=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{1+z^2}\,dz=\pi である。

(2) 次に x>0x>0 とする。xx を正の一点の近くに固定すれば,微分後の被積分関数は 可積分なガウス型関数で支配できる。したがって積分記号下で微分でき, f′(x)=−∫−∞∞z21+z2e−xz2 dz=−∫−∞∞e−xz2 dz+∫−∞∞11+z2e−xz2 dz=−πx+f(x). \begin{aligned} f'(x) &= -\int_{-\infty}^{\infty} \frac{z^2}{1+z^2}e^{-xz^2}\,dz\\ &= -\int_{-\infty}^{\infty}e^{-xz^2}\,dz + \int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{1+z^2}e^{-xz^2}\,dz\\ &= -\sqrt{\frac{\pi}{x}}+f(x). \end{aligned} よって ff は (0,∞)(0,\infty) で微分可能である。

(3) 上の計算から,満たす微分方程式は f′(x)=f(x)−πx f'(x)=f(x)-\sqrt{\frac{\pi}{x}} である。

(4) この微分方程式を初期値 f(0)=πf(0)=\pi と合わせて用いる。両辺に e−xe^{-x} を 掛けると {e−xf(x)}′=−π e−xx−1/2. \{e^{-x}f(x)\}' = -\sqrt{\pi}\,e^{-x}x^{-1/2}. 従って e−xf(x)−π=−π∫0xe−tt−1/2 dt. e^{-x}f(x)-\pi = -\sqrt{\pi}\int_0^x e^{-t}t^{-1/2}\,dt. ここで x↓0x\downarrow0 とすると ∫0xe−tt−1/2 dt=2x+O(x3/2) \int_0^x e^{-t}t^{-1/2}\,dt = 2\sqrt{x}+O(x^{3/2}) であるから f(x)=ex{π−2πx+O(x3/2)}. f(x) = e^x\{\pi-2\sqrt{\pi}\sqrt{x}+O(x^{3/2})\}. よって f(x)−f(0)=−2πx+O(x) f(x)-f(0) = -2\sqrt{\pi}\sqrt{x}+O(x) であり, lim⁡x↓0x−1/2{f(x)−f(0)}=−2π. \lim_{x\downarrow0}x^{-1/2}\{f(x)-f(0)\} = -2\sqrt{\pi}.

最終答

(1)f(0)=π \text{(1)}\quad \boxed{f(0)=\pi} (2)f は (0,∞) で微分可能 \text{(2)}\quad \boxed{f\text{ は }(0,\infty)\text{ で微分可能}} (3)f′(x)=f(x)−πx(x>0) \text{(3)}\quad \boxed{f'(x)=f(x)-\sqrt{\frac{\pi}{x}}\quad(x>0)} (4)lim⁡x↓0x−1/2{f(x)−f(0)}=−2π \text{(4)}\quad \boxed{ \lim_{x\downarrow0}x^{-1/2}\{f(x)-f(0)\} = -2\sqrt{\pi} }

東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度

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