東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2006年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2006年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 行基本変形と列空間
行基本変形だけの場合
行基本変形は左から正則行列を掛ける操作であり、各列ベクトルを同じ線形同型で移すだけである。そのため、特定の列だけを取り出したときの一次関係は保存される。
列基本変形も許す場合
列基本変形は列同士を混ぜる操作なので、「 の最初の 列を見ればよい」とはならない。保存されるのは全体の階数である。最後の 列だけでは高々 次元しか補えないため、最初の 列の空間は少なくとも 次元必要、という見積もりが本問の要点である。
2006年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
の第 列を と書く。
(1) 行基本変形だけで から が得られるということは、ある正則な 次行列 が存在して となることを意味する。したがって の第 列を とすれば であり、 は同型だから である。
与えられた の最初の 列は よって は一次独立で、 は の定数倍である。したがって可能な次元は のみである。
(2) 行基本変形と列基本変形で が にできることは、 と の階数が等しいことと同値である。ここで だから、 は階数 の 行列である。
、 とおくと、全列の生成する空間は であるから 一方 なので したがって である。また は 本のベクトルで生成されるので である。
実際にどちらも起こる。例えば とすれば かつ である。また とすれば かつ である。
最終答
第2問 — 余弦積分と一様収束
次数の数え方
の展開には偶数次の項しか現れない。したがって 次まで残すときは、、すなわち の項だけを取る。
一様収束の見せ方
有界集合上では を一つの定数 で押さえられる。積分の中身を直接評価して指数級数の尾部に帰着すれば、点ごとの議論ではなく一様評価になる。ここで を使うため、積分区間の端点で特別な処理は不要である。
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(1) とおく。部分積分により、 について である。 を用いると すなわち を得る。初期値は 、 であるから である。
(2) 余弦のテイラー展開から とおくと、次数 以下の項だけを残すので (1) の偶数の場合の公式を代入して である。
(3) は有界だから、ある が存在して がすべての について成り立つ。 とすれば、 に対して 右辺は 、すなわち で に収束する。よって は 上 に一様収束する。
最終答
第3問 — 双対空間と直和分解
座標化して見る
が双対空間の基底であるとき、 を という座標で表せる。すると はそれぞれ「2つの座標が である部分空間」、つまり座標軸そのものになる。
逆向きの落とし穴
一次従属であることから、ただちに の次元を個別に数えようとすると場合分けが増える。写像 の核を見ると、すべての を同時に消す非零ベクトルが存在するため、直和性が壊れることが一行で分かる。
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線形写像 を考える。
まず が一次独立であるとする。 だから、 は の基底である。したがって は同型である。
の座標を と書くと これらは の つの座標軸であり、直和として 全体を与える。 は同型なので、逆像を取れば である。
逆に、 と仮定する。もし が一次従属なら、 の階数は 未満である。 だから は でない。したがって、ある が存在して となる。この は のすべてに属する。特に に非零元があるため、和は直和にならない。これは仮定に反する。
よって は一次独立である。
最終答
であることと、 が一次独立であることは同値である。
第4問 — 商集合上の距離関数
これは距離ではなく擬距離
対称性と三角不等式は保たれるが、異なる点の距離が になり得る。原因は が の中で稠密であることにある。 座標の差が有理数でなくても、有理数だけずらした代表元をいくらでも近づけられる。
代表元をそろえる工夫
三角不等式では、 と に使った の代表元と、 と に使った の代表元が異なる可能性がある。 の元を足し引きして同じ代表元にそろえる、という見方をすると通常の三角不等式に帰着できる。
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とおく。同値関係は と書ける。
(1) を取り、代表元をそれぞれ とする。固定した代表元を使うと である。
任意の に対して、 を となるように取る。このとき であり、 は任意なので が従う。
(2) 一般には成立しない。例えば とする。 は有理数ではないので である。
一方、有理数列 を となるように取れば、 であり、 したがって である。よって から は従わない。
最終答
例として 、 がある。
第5問 — 対数積分の評価
正の場合
とおくと、 への依存は の項だけに集まる。 の積分が になることを忘れなければ、計算は短い。
負の場合
分母が になるので主値を使う。 の係数になる主値積分は で、値は普遍定数 に帰着する。この積分は特異点をはさんで発散が打ち消し合うため、先に と を組み合わせてから級数展開するのが安全である。
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場合1: とおく。 と変数変換すると 後者の積分は により符号が反転するので である。また だから
場合2: とおく。主値の意味で と変数変換すると ここで である。したがって の項は消える。
残る積分を とおく。 の部分で と変数変換すると さらに で を用いると よって である。
最終答
第6問 — 微分不等式と上界
積分因子
は、等式 なら が定数になる、という形から積分因子を探す。今回は不等式なので、同じ積分因子を掛けた量が単調非増加になる。
符号に注意
が負の場合、 は より小さくなる。そのため上界としては と書くのが符号に依存しない安全な表現である。
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とおく。仮定より なので は単調増加であり、さらに である。
関数 を考えると、 は 、 は であり、 である。したがって は単調非増加で、 がすべての で成り立つ。
よって である。 だから、例えば とおけば、すべての について となる。したがって は上に有界である。
最終答
とおけば、 が の上界になる。
第7問 — 非定常位相の部分積分
非定常位相
位相 の導関数は である。台が の中にコンパクトに入っているので、台の上ではこの導関数が にならない。これが何度も部分積分できる理由である。
境界項の扱い
コンパクトな台をもつという条件により、台を含む閉区間 を少し大きく取れば、両端の近くで は恒等的に である。したがって各回の部分積分で境界項は出ない。ここを書かないと、形式的な部分積分に見えて減点されやすい。
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は 上でコンパクトな台をもつので、ある が存在して となる。特に台の上で は から離れている。
とおくと である。したがって であり、部分積分により 境界項は、 を台の外側に取っているため がその近くで となり消える。
線形作用素 を導入すると、上の式は である。同じ操作を 回繰り返すと は 級で、 は 上で から離れているため、 は連続で可積分である。よって 右辺の積分は に依存しない定数である。したがって が示された。
最終答
と取り、 とおけば、 である。したがって 。