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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2006年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2006年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 行基本変形と列空間

行基本変形だけの場合

行基本変形は左から正則行列を掛ける操作であり、各列ベクトルを同じ線形同型で移すだけである。そのため、特定の列だけを取り出したときの一次関係は保存される。

列基本変形も許す場合

列基本変形は列同士を混ぜる操作なので、「CC の最初の 33 列を見ればよい」とはならない。保存されるのは全体の階数である。最後の 22 列だけでは高々 22 次元しか補えないため、最初の 33 列の空間は少なくとも 22 次元必要、という見積もりが本問の要点である。

2006年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

AA の第 jj 列を aja_j と書く。

(1) 行基本変形だけで AA から BB が得られるということは、ある正則な 44 次行列 PP が存在して B=PA B=PA となることを意味する。したがって BB の第 jj 列を bjb_j とすれば bj=Pajb_j=Pa_j であり、PP は同型だから dimspan(a1,a2,a3)=dimspan(b1,b2,b3) \dim \operatorname{span}(a_1,a_2,a_3) = \dim \operatorname{span}(b_1,b_2,b_3) である。

与えられた BB の最初の 33 列は b1=(1000),b2=(3000)=3b1,b3=(0100). b_1= \begin{pmatrix}1\\0\\0\\0\end{pmatrix},\quad b_2= \begin{pmatrix}3\\0\\0\\0\end{pmatrix}=3b_1,\quad b_3= \begin{pmatrix}0\\1\\0\\0\end{pmatrix}. よって b1,b3b_1,b_3 は一次独立で、b2b_2b1b_1 の定数倍である。したがって可能な次元は 22 のみである。

(2) 行基本変形と列基本変形で AACC にできることは、AACC の階数が等しいことと同値である。ここで rankC=4 \operatorname{rank} C=4 だから、AA は階数 444×54\times 5 行列である。

W=span(a1,a2,a3)W=\operatorname{span}(a_1,a_2,a_3)U=span(a4,a5)U=\operatorname{span}(a_4,a_5) とおくと、全列の生成する空間は R4\mathbb{R}^{4} であるから dim(W+U)=4. \dim(W+U)=4. 一方 dimU2\dim U\le 2 なので 4=dim(W+U)dimW+dimUdimW+2. 4=\dim(W+U)\le \dim W+\dim U\le \dim W+2. したがって dimW2\dim W\ge 2 である。また WW33 本のベクトルで生成されるので dimW3\dim W\le 3 である。

実際にどちらも起こる。例えば (a1,a2,a3,a4,a5)=(e1,e2,e1,e3,e4) (a_1,a_2,a_3,a_4,a_5)=(e_1,e_2,e_1,e_3,e_4) とすれば dimW=2\dim W=2 かつ rankA=4\operatorname{rank}A=4 である。また (a1,a2,a3,a4,a5)=(e1,e2,e3,e4,0) (a_1,a_2,a_3,a_4,a_5)=(e_1,e_2,e_3,e_4,0) とすれば dimW=3\dim W=3 かつ rankA=4\operatorname{rank}A=4 である。

最終答

(1)2 のみ \text{(1)}\quad \boxed{2\text{ のみ}} (2)2 または 3 \text{(2)}\quad \boxed{2\text{ または }3}

2 — 余弦積分と一様収束

次数の数え方

cos(xcosθ)\cos(x\cos\theta) の展開には偶数次の項しか現れない。したがって nn 次まで残すときは、2kn2k\le n、すなわち kn/2k\le\lfloor n/2\rfloor の項だけを取る。

一様収束の見せ方

有界集合上では x|x| を一つの定数 MM で押さえられる。積分の中身を直接評価して指数級数の尾部に帰着すれば、点ごとの議論ではなく一様評価になる。ここで cos2kθ1\cos^{2k}\theta\le 1 を使うため、積分区間の端点で特別な処理は不要である。

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(1) In=0π/2cosnθdθ I_n=\int_{0}^{\pi/2}\cos^n\theta\,d\theta とおく。部分積分により、n2n\ge 2 について In=0π/2cosn1θd(sinθ)=(n1)0π/2sin2θcosn2θdθ I_n = \int_{0}^{\pi/2}\cos^{n-1}\theta\,d(\sin\theta) = (n-1)\int_{0}^{\pi/2}\sin^2\theta\cos^{n-2}\theta\,d\theta である。sin2θ=1cos2θ\sin^2\theta=1-\cos^2\theta を用いると In=(n1)(In2In), I_n=(n-1)(I_{n-2}-I_n), すなわち In=n1nIn2 I_n=\frac{n-1}{n}I_{n-2} を得る。初期値は I0=π/2I_0=\pi/2I1=1I_1=1 であるから I2m=(2m1)!!(2m)!!π2=π2(2m)!22m(m!)2, I_{2m} = \frac{(2m-1)!!}{(2m)!!}\frac{\pi}{2} = \frac{\pi}{2}\frac{(2m)!}{2^{2m}(m!)^2}, I2m+1=(2m)!!(2m+1)!!=22m(m!)2(2m+1)! I_{2m+1} = \frac{(2m)!!}{(2m+1)!!} = \frac{2^{2m}(m!)^2}{(2m+1)!} である。

(2) 余弦のテイラー展開から cos(xcosθ)=k=0(1)kx2kcos2kθ(2k)!. \cos(x\cos\theta) = \sum_{k=0}^{\infty} \frac{(-1)^k x^{2k}\cos^{2k}\theta}{(2k)!}. m=n/2m=\lfloor n/2\rfloor とおくと、次数 nn 以下の項だけを残すので pn(x)=k=0m(1)kx2k(2k)!I2k. p_n(x) = \sum_{k=0}^{m} \frac{(-1)^k x^{2k}}{(2k)!}I_{2k}. (1) の偶数の場合の公式を代入して pn(x)=π2k=0n/2(1)k(k!)2(x2)2k p_n(x) = \frac{\pi}{2} \sum_{k=0}^{\lfloor n/2\rfloor} \frac{(-1)^k}{(k!)^2} \left(\frac{x}{2}\right)^{2k} である。

(3) KK は有界だから、ある M>0M>0 が存在して xM|x|\le M がすべての xKx\in K について成り立つ。m=n/2m=\lfloor n/2\rfloor とすれば、xKx\in K に対して f(x)pn(x)0π/2k=m+1x2kcosθ2k(2k)!dθπ2k=m+1M2k(2k)!. \begin{aligned} |f(x)-p_n(x)| &\le \int_{0}^{\pi/2} \sum_{k=m+1}^{\infty} \frac{|x|^{2k}|\cos\theta|^{2k}}{(2k)!}\,d\theta \\ &\le \frac{\pi}{2} \sum_{k=m+1}^{\infty} \frac{M^{2k}}{(2k)!}. \end{aligned} 右辺は nn\to\infty、すなわち mm\to\infty00 に収束する。よって pnp_nKKff に一様収束する。

最終答

(1)I2m=π2(2m)!22m(m!)2,I2m+1=22m(m!)2(2m+1)!, \text{(1)}\quad I_{2m}=\frac{\pi}{2}\frac{(2m)!}{2^{2m}(m!)^2},\qquad I_{2m+1}=\frac{2^{2m}(m!)^2}{(2m+1)!}, (2)pn(x)=π2k=0n/2(1)k(k!)2(x2)2k. \text{(2)}\quad p_n(x)=\frac{\pi}{2} \sum_{k=0}^{\lfloor n/2\rfloor} \frac{(-1)^k}{(k!)^2} \left(\frac{x}{2}\right)^{2k}. (3)pnf は任意の有界集合上で一様収束する。 \text{(3)}\quad p_n\to f\text{ は任意の有界集合上で一様収束する。}

3 — 双対空間と直和分解

座標化して見る

f1,f2,f3f_1,f_2,f_3 が双対空間の基底であるとき、vv(f1(v),f2(v),f3(v))(f_1(v),f_2(v),f_3(v)) という座標で表せる。すると V1,V2,V3V_1,V_2,V_3 はそれぞれ「2つの座標が 00 である部分空間」、つまり座標軸そのものになる。

逆向きの落とし穴

一次従属であることから、ただちに ViV_i の次元を個別に数えようとすると場合分けが増える。写像 FF の核を見ると、すべての fif_i を同時に消す非零ベクトルが存在するため、直和性が壊れることが一行で分かる。

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線形写像 F:VC3,F(v)=(f1(v),f2(v),f3(v)) F:V\longrightarrow \mathbb{C}^3,\qquad F(v)=(f_1(v),f_2(v),f_3(v)) を考える。

まず f1,f2,f3f_1,f_2,f_3 が一次独立であるとする。dimV=3\dim V^*=3 だから、f1,f2,f3f_1,f_2,f_3VV^* の基底である。したがって FF は同型である。

C3\mathbb{C}^3 の座標を (z1,z2,z3)(z_1,z_2,z_3) と書くと F(V1)={(0,0,z3):z3C}, F(V_1)=\{(0,0,z_3):z_3\in\mathbb{C}\}, F(V2)={(z1,0,0):z1C}, F(V_2)=\{(z_1,0,0):z_1\in\mathbb{C}\}, F(V3)={(0,z2,0):z2C}. F(V_3)=\{(0,z_2,0):z_2\in\mathbb{C}\}. これらは C3\mathbb{C}^333 つの座標軸であり、直和として C3\mathbb{C}^3 全体を与える。FF は同型なので、逆像を取れば V=V1V2V3 V=V_1\oplus V_2\oplus V_3 である。

逆に、V=V1V2V3V=V_1\oplus V_2\oplus V_3 と仮定する。もし f1,f2,f3f_1,f_2,f_3 が一次従属なら、FF の階数は 33 未満である。dimV=3\dim V=3 だから kerF\ker F00 でない。したがって、ある 0vV0\ne v\in V が存在して f1(v)=f2(v)=f3(v)=0 f_1(v)=f_2(v)=f_3(v)=0 となる。この vvV1,V2,V3V_1,V_2,V_3 のすべてに属する。特に V1(V2+V3)V_1\cap(V_2+V_3) に非零元があるため、和は直和にならない。これは仮定に反する。

よって f1,f2,f3f_1,f_2,f_3 は一次独立である。

最終答

V=V1V2V3V=V_1\oplus V_2\oplus V_3 であることと、f1,f2,f3f_1,f_2,f_3 が一次独立であることは同値である。

4 — 商集合上の距離関数

これは距離ではなく擬距離

対称性と三角不等式は保たれるが、異なる点の距離が 00 になり得る。原因は Q\mathbb{Q}R\mathbb{R} の中で稠密であることにある。yy 座標の差が有理数でなくても、有理数だけずらした代表元をいくらでも近づけられる。

代表元をそろえる工夫

三角不等式では、aabb に使った bb の代表元と、bbcc に使った bb の代表元が異なる可能性がある。Γ\Gamma の元を足し引きして同じ代表元にそろえる、という見方をすると通常の三角不等式に帰着できる。

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Γ=Z×QR2\Gamma=\mathbb{Z}\times\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}^2 とおく。同値関係は uvvuΓ u\sim v \quad\Longleftrightarrow\quad v-u\in\Gamma と書ける。

(1) a,b,cXa,b,c\in X を取り、代表元をそれぞれ u,v,wR2u,v,w\in\mathbb{R}^2 とする。固定した代表元を使うと d(a,b)=infγΓuv+γ, d(a,b)=\inf_{\gamma\in\Gamma}\|u-v+\gamma\|, d(b,c)=infηΓvw+η d(b,c)=\inf_{\eta\in\Gamma}\|v-w+\eta\| である。

任意の ε>0\varepsilon>0 に対して、γ,ηΓ\gamma,\eta\in\Gammauv+γd(a,b)+ε2,vw+ηd(b,c)+ε2 \|u-v+\gamma\|\le d(a,b)+\frac{\varepsilon}{2}, \qquad \|v-w+\eta\|\le d(b,c)+\frac{\varepsilon}{2} となるように取る。このとき γ+ηΓ\gamma+\eta\in\Gamma であり、 d(a,c)uw+γ+ηuv+γ+vw+ηd(a,b)+d(b,c)+ε. \begin{aligned} d(a,c) &\le \|u-w+\gamma+\eta\| \\ &\le \|u-v+\gamma\|+\|v-w+\eta\| \\ &\le d(a,b)+d(b,c)+\varepsilon. \end{aligned} ε>0\varepsilon>0 は任意なので d(a,c)d(a,b)+d(b,c) d(a,c)\le d(a,b)+d(b,c) が従う。

(2) 一般には成立しない。例えば a=π(0,0),b=π(0,2) a=\pi(0,0),\qquad b=\pi(0,\sqrt{2}) とする。020-\sqrt{2} は有理数ではないので aba\ne b である。

一方、有理数列 (qm)(q_m)qm2q_m\to\sqrt{2} となるように取れば、 (0,qm)(0,0) (0,q_m)\sim (0,0) であり、 (0,qm)(0,2)=qm20. \|(0,q_m)-(0,\sqrt{2})\|=|q_m-\sqrt{2}|\to 0. したがって d(a,b)=0d(a,b)=0 である。よって d(a,b)=0d(a,b)=0 から a=ba=b は従わない。

最終答

(1)d(a,c)d(a,b)+d(b,c) \text{(1)}\quad \boxed{d(a,c)\le d(a,b)+d(b,c)} (2)d(a,b)=0 でも a=b とは限らない。 \text{(2)}\quad \boxed{d(a,b)=0\text{ でも }a=b\text{ とは限らない。}} 例として a=π(0,0)a=\pi(0,0)b=π(0,2)b=\pi(0,\sqrt2) がある。

5 — 対数積分の評価

正の場合

x=λtx=\sqrt{\lambda}\,t とおくと、λ\lambda への依存は logλ\log\sqrt{\lambda} の項だけに集まる。logt/(1+t2)\log t/(1+t^2) の積分が 00 になることを忘れなければ、計算は短い。

負の場合

分母が 00 になるので主値を使う。loga\log a の係数になる主値積分は 00 で、値は普遍定数 p.v.0logtt21dt \operatorname{p.v.}\int_{0}^{\infty}\frac{\log t}{t^2-1}\,dt に帰着する。この積分は特異点をはさんで発散が打ち消し合うため、先に 0<t<10<t<1t>1t>1 を組み合わせてから級数展開するのが安全である。

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場合1: λ>0\lambda>0 a=λa=\sqrt{\lambda} とおく。x=atx=at と変数変換すると 0logxx2+λdx=1a0loga+logt1+t2dt=logaa0dt1+t2+1a0logt1+t2dt. \begin{aligned} \int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2+\lambda}\,dx &= \frac{1}{a}\int_{0}^{\infty} \frac{\log a+\log t}{1+t^2}\,dt \\ &= \frac{\log a}{a}\int_{0}^{\infty}\frac{dt}{1+t^2} + \frac{1}{a}\int_{0}^{\infty}\frac{\log t}{1+t^2}\,dt. \end{aligned} 後者の積分は t=1/ut=1/u により符号が反転するので 00 である。また 0dt1+t2=π2 \int_{0}^{\infty}\frac{dt}{1+t^2}=\frac{\pi}{2} だから 0logxx2+λdx=π2aloga=π4λlogλ. \int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2+\lambda}\,dx = \frac{\pi}{2a}\log a = \frac{\pi}{4\sqrt{\lambda}}\log\lambda.

場合2: λ<0\lambda<0 a=λa=\sqrt{-\lambda} とおく。主値の意味で 0logxx2+λdx=p.v.0logxx2a2dx. \int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2+\lambda}\,dx = \operatorname{p.v.}\int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2-a^2}\,dx. x=atx=at と変数変換すると p.v.0logxx2a2dx=1ap.v.0loga+logtt21dt. \operatorname{p.v.}\int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2-a^2}\,dx = \frac{1}{a}\operatorname{p.v.}\int_{0}^{\infty} \frac{\log a+\log t}{t^2-1}\,dt. ここで p.v.0dtt21=0 \operatorname{p.v.}\int_{0}^{\infty}\frac{dt}{t^2-1}=0 である。したがって loga\log a の項は消える。

残る積分を J=p.v.0logtt21dt J=\operatorname{p.v.}\int_{0}^{\infty}\frac{\log t}{t^2-1}\,dt とおく。[1,)[1,\infty) の部分で t=1/ut=1/u と変数変換すると J=201logt1t2dt. J = -2\int_{0}^{1}\frac{\log t}{1-t^2}\,dt. さらに 0<t<10<t<111t2=k=0t2k \frac{1}{1-t^2}=\sum_{k=0}^{\infty}t^{2k} を用いると J=2k=001t2klogtdt=2k=01(2k+1)2=2π28=π24. \begin{aligned} J &= -2\sum_{k=0}^{\infty}\int_{0}^{1}t^{2k}\log t\,dt \\ &= 2\sum_{k=0}^{\infty}\frac{1}{(2k+1)^2} = 2\cdot \frac{\pi^2}{8} = \frac{\pi^2}{4}. \end{aligned} よって 0logxx2+λdx=π24λ \int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2+\lambda}\,dx = \frac{\pi^2}{4\sqrt{-\lambda}} である。

最終答

0logxx2+λdx={π4λlogλ,λ>0,π24λ,λ<0. \int_{0}^{\infty}\frac{\log x}{x^2+\lambda}\,dx = \begin{cases} \displaystyle \frac{\pi}{4\sqrt{\lambda}}\log\lambda, & \lambda>0,\\[2mm] \displaystyle \frac{\pi^2}{4\sqrt{-\lambda}}, & \lambda<0. \end{cases}

6 — 微分不等式と上界

積分因子

fϕff'\le \phi f は、等式 f=ϕff'=\phi f なら feϕf e^{-\int\phi} が定数になる、という形から積分因子を探す。今回は不等式なので、同じ積分因子を掛けた量が単調非増加になる。

符号に注意

f(1)f(1) が負の場合、f(1)eMf(1)e^Mf(1)f(1) より小さくなる。そのため上界としては max{f(1),f(1)eM}\max\{f(1),f(1)e^M\} と書くのが符号に依存しない安全な表現である。

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Φ(x)=1xϕ(t)dt \Phi(x)=\int_{1}^{x}\phi(t)\,dt とおく。仮定より ϕ0\phi\ge 0 なので Φ\Phi は単調増加であり、さらに 0Φ(x)M:=1ϕ(t)dt< 0\le \Phi(x)\le M:=\int_{1}^{\infty}\phi(t)\,dt<\infty である。

関数 g(x)=f(x)eΦ(x) g(x)=f(x)e^{-\Phi(x)} を考えると、ffC1C^1Φ\PhiC1C^1 であり、 g(x)=eΦ(x){f(x)ϕ(x)f(x)}0 \begin{aligned} g'(x) &= e^{-\Phi(x)}\{f'(x)-\phi(x)f(x)\}\\ &\le 0 \end{aligned} である。したがって gg は単調非増加で、 f(x)eΦ(x)=g(x)g(1)=f(1) f(x)e^{-\Phi(x)}=g(x)\le g(1)=f(1) がすべての x1x\ge 1 で成り立つ。

よって f(x)f(1)eΦ(x) f(x)\le f(1)e^{\Phi(x)} である。0Φ(x)M0\le\Phi(x)\le M だから、例えば C=max{f(1),f(1)eM} C=\max\{f(1),\,f(1)e^M\} とおけば、すべての x1x\ge 1 について f(x)C f(x)\le C となる。したがって ff は上に有界である。

最終答

M=1ϕ(t)dtM=\int_1^\infty\phi(t)\,dt とおけば、C=max{f(1),f(1)eM}C=\max\{f(1),f(1)e^M\}ff の上界になる。

7 — 非定常位相の部分積分

非定常位相

位相 x22\frac{x^2}{2} の導関数は xx である。台が (0,)(0,\infty) の中にコンパクトに入っているので、台の上ではこの導関数が 00 にならない。これが何度も部分積分できる理由である。

境界項の扱い

コンパクトな台をもつという条件により、台を含む閉区間 [α,β][\alpha,\beta] を少し大きく取れば、両端の近くで aa は恒等的に 00 である。したがって各回の部分積分で境界項は出ない。ここを書かないと、形式的な部分積分に見えて減点されやすい。

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aa(0,)(0,\infty) 上でコンパクトな台をもつので、ある 0<α<β<0<\alpha<\beta<\infty が存在して suppa[α,β] \operatorname{supp}a\subset[\alpha,\beta] となる。特に台の上で xx00 から離れている。

Eμ(x)=eiμx2/2 E_\mu(x)=e^{i\mu x^2/2} とおくと Eμ(x)=iμxEμ(x) E_\mu'(x)=i\mu x E_\mu(x) である。したがって Eμ(x)=1iμxEμ(x) E_\mu(x)=\frac{1}{i\mu x}E_\mu'(x) であり、部分積分により I(μ)=αβEμ(x)a(x)dx=1iμαβEμ(x)a(x)xdx=1iμαβEμ(x)ddx(a(x)x)dx. \begin{aligned} I(\mu) &= \int_{\alpha}^{\beta}E_\mu(x)a(x)\,dx\\ &= \frac{1}{i\mu} \int_{\alpha}^{\beta}E_\mu'(x)\frac{a(x)}{x}\,dx\\ &= -\frac{1}{i\mu} \int_{\alpha}^{\beta}E_\mu(x)\frac{d}{dx}\left(\frac{a(x)}{x}\right)\,dx. \end{aligned} 境界項は、α,β\alpha,\beta を台の外側に取っているため aa がその近くで 00 となり消える。

線形作用素 Tb=ddx(bx) Tb=-\frac{d}{dx}\left(\frac{b}{x}\right) を導入すると、上の式は I(μ)=1iμαβEμ(x)(Ta)(x)dx I(\mu)=\frac{1}{i\mu}\int_{\alpha}^{\beta}E_\mu(x)(Ta)(x)\,dx である。同じ操作を NN 回繰り返すと I(μ)=1(iμ)NαβEμ(x)(TNa)(x)dx. I(\mu) = \frac{1}{(i\mu)^N} \int_{\alpha}^{\beta}E_\mu(x)(T^Na)(x)\,dx. aaCNC^N 級で、xx[α,β][\alpha,\beta] 上で 00 から離れているため、TNaT^Na は連続で可積分である。よって I(μ)μNαβ(TNa)(x)dx. |I(\mu)| \le \mu^{-N}\int_{\alpha}^{\beta}|(T^Na)(x)|\,dx. 右辺の積分は μ\mu に依存しない定数である。したがって I(μ)=O(μN)(μ+) I(\mu)=O(\mu^{-N}) \qquad(\mu\to+\infty) が示された。

最終答

suppa[α,β](0,)\operatorname{supp}a\subset[\alpha,\beta]\subset(0,\infty) と取り、Tb=ddx(b/x)Tb=-\frac{d}{dx}(b/x) とおけば、I(μ)=(iμ)Neiμx2/2TNa(x)dxI(\mu)=(i\mu)^{-N}\int e^{i\mu x^2/2}T^Na(x)\,dx である。したがって I(μ)=O(μN)I(\mu)=O(\mu^{-N})

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