東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2019年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2019年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 関数の極限と展開
方針
を先に展開し,最後に平方根の展開を使う。平方根の外側だけを ロピタル型で処理すると,二次係数の計算で手間が増える。
検算
だから,平方根を取った一次係数はその半分の になる。符号が正になる解答は, の一次補正を取り違えている。
第2問 — 直交行列と上三角分解
方針
これは 分解で の対角成分を正の対角行列 に分けるだけである。 と分解すれば, の対角成分は自動的にすべて になる。
検算
の対角成分は 最後の直交成分の長さであり,いずれも正である。
第3問 — 冪零行列の可換行列
方針
冪零指数がちょうど であることから, は一つの巡回ベクトルを持つ。 その基底で見れば, と可換な行列は の像だけで決まり,結局 の多項式になる。
採点上の注意
(2) では が と可換であることを先に示すのが重要である。 からただちに多項式表示を仮定すると,論理が一段抜ける。
第4問 — 商空間と点列
方針
閉包と点列閉包がずれる例である。右端の同一視点 は の閉包に入り, それらが に近づく。しかし,各高さで右端にどれだけ近づく必要があるかを 近傍ごとに細かく変えられるため,単一の点列では追いつけない。
第5問 — 第一象限の零点数
方針
第一象限の個数なので,四分円の偏角原理を使う。虚軸上の像 が上半平面を単調に横切ることを見れば,境界の寄与がすぐ決まる。
典型ミス
大円弧の寄与を としてしまうと,六次の効果を落としている。 主項 により偏角は六倍される。
第6問 — 平均型積分方程式
方針
(1) は平均値と元の関数が一致する方程式であり, を微分すると定数解に落ちる。 (2) は初期値が明示されていないが, の極限を取ると初期値も方程式から一意に決まる。
一意性の要点
非負条件により をリプシッツ定数 で評価できる。 平均を取る形の積分方程式なので,区間 上の最大値 に対して が出る。ここまで書けば,存在を仮定した一意性の証明として十分である。
第7問 — 畳み込みの導関数と一様可積分性
方針
畳み込みを区間積分として書き直し,端点微分で を出す。 条件は二種類の発散の競合で決まる。無限遠では なので , 近傍では なので が必要である。
典型ミス
二つの項を別々に全実数で評価すると,無限遠での打ち消しを失う。 遠方では必ず としてまとめてから評価する。