東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2015年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・重積分と極座標)。2014年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。
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- 解説7問・解答7問・最終答7問(全7問)
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東大 専門科目A 2015年度 院試 過去問の出題内容(全7問)
この7問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 剰余で定まる線形写像 | 対角化の注意 | あり |
| 第2問 | — | 円板上の平均値 | 採点上の注意 | あり |
| 第3問 | — | 同相写像の軌道空間 | 開写像の証明 / ハウスドルフ性の見方 | あり |
| 第4問 | 線形代数 | テンソル表示と行列積 | 積の順序 | あり |
| 第5問 | 微分積分・解析 | 漸化式の収束 | — | あり |
| 第6問 | — | ベクトル場の流れと線積分 | 線積分の計算 | あり |
| 第7問 | 微分積分・解析 | 対数積分と留数 | 分枝の選び方 | あり |
この年度の解説には検算2件・採点上の注意1件・典型ミス1件が付いています。
2015年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第4問 | 21大学・152問 | |
| 重積分と極座標 | 第6問 | 23大学・142問 | |
| 留数定理 | 第7問 | 18大学・126問 | |
| テイラー展開 | 第2問 | 18大学・45問 |
前年度(2014年度)との違い
- 大問数
- 2014年度 7問 → 2015年度 7問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル
第1問 — 剰余で定まる線形写像
方針
で割った余りを取るので,計算は4次元空間 内で完結する。 特に のべきは, 以上を消してから係数を読むとよい。
対角化の注意
行列全体を無理に標準形へ持ち込む必要はない。 像が に入ることから,非零固有値はこの2次元部分で読める。 ただし では零固有値の重複度が増え, では固有値1が重なる。 重なった固有値では固有空間の次元を必ず確認する。
解答
(1) 基底を とする。 は 以上の項を捨てる写像なので, である。また代入 も剰余を取る写像 も線形である。 したがって は の線形変換である。
(2) 各基底ベクトルの像は したがって に関する表現行列は
(3) 像は常に に含まれ,最初の2列 が独立であるから, [数式] よって [数式] である。一般の に対して とおくと, とすれば したがって核の一組の基底として を取れる。
(4) 対角化可能性を調べる。 であり, 上の行列は基底 に関して である。したがって固有多項式は である。
零固有値の固有空間は [数式] で,次元は2である。よって問題になるのは または の場合だけである。
では零固有値の代数的重複度が3であるのに,零固有空間の次元は2である。 したがって対角化できない。
では固有値1の代数的重複度が2になる。このとき 上の行列は であり, なので,固有値1の固有空間は1次元である。 したがってこの場合も対角化できない。
以上より,対角化可能であるための必要十分条件は である。
最終答
[数式] [数式]
第2問 — 円板上の平均値
方針
円板平均では,奇関数の寄与が消える。 したがって二次テイラー項のうち残るのは と の平均だけである。
採点上の注意
は原点での条件であり,近傍全体で調和関数であるとは限らない。 平均値性質をそのまま使うより,テイラー展開で局所的に処理するのが確実である。
解答
(1) 円板は原点に関して対称であるから [数式] また極座標 を用いると [数式] 同様に [数式]
(2) 次に を原点の近くでテイラー展開する。 は 級なので, 円板上で平均を取ると一次の項と の項は消える。したがって [数式] 仮定より中括弧内は0であるから, [数式] よって求める極限は である。
最終答
[数式]
第3問 — 同相写像の軌道空間
開写像の証明
商写像そのものが常に開写像とは限らない。 ここでは同値類が同相写像の反復で作られているため, 飽和集合 が開集合の和になる。この一点が本問の核である。
ハウスドルフ性の見方
では固定点に他の軌道が片側の反復で近づく。 つまり商空間では,固定点の同値類と別の同値類が分離できない。 「固定点の存在」だけではなく,「他の軌道がそこに集積する」ことを書くと答案が明確になる。
解答
(1) 自然な射影を とする。 開集合 に対して である。各 は同相写像なので は開集合であり, 右辺は開集合である。商位相の定義から,これは が で開であることを意味する。したがって は開写像である。
(2) 次に , とする。
のときは整数平行移動による商であり, である。したがってハウスドルフ空間である。
とする。このとき は固定点である。 に対して が成り立つ。 なら で , なら で である。
したがって同値関係 は閉集合ではない。実際, を固定すると, の列が に収束するが, と は同じ軌道に属さない。 ハウスドルフな商空間では同値関係のグラフは閉でなければならないので, では商空間はハウスドルフではない。
最終答
第4問 — テンソル表示と行列積
方針
と [数式] の対応は で覚えるとよい。この対応では,行列単位 は に対応する。
積の順序
双対写像が として入るため, 右側に ,左側に が現れる。ここで と逆にしてしまう誤りが多い。 階数1作用素で一度確認すると,順序を安全に決められる。
解答
(1) 標準基底を ,双対基底を とする。 行列単位 は と書けるので, したがって つまりこの合成写像は通常のトレースである。
(2) 次に とする。 [数式] を という階数1型で書くと, これは である。 は双対空間上で として作用するので, 行列で表せば,これは である。最後に で へ戻しても,同じ行列積として を得る。
最終答
第5問 — 漸化式の収束
方針
漸化式を固定点反復 と見る。 初期値がどの実数でも,1回反復すると となるため, 以後は での縮小性を使える。
典型ミス
は単調減少なので,単調有界列として直接処理しようとすると偶奇で場合分けが必要になる。 微分による縮小評価を使えば,収束と極限の一意性を同時に示せる。
解答
写像 を考える。分母は なので, はすべての実数で定義される。また であるから, 以降は を満たす。
では であり, が成り立つ。したがって について となる固定点 が存在すれば,列はその値に収束する。
固定点方程式は である。これを整理すると すなわち である。よって 実際, なので上の縮小評価の範囲に入っている。 したがって任意の実初期値から定まる列は へ収束する。
最終答
第6問 — ベクトル場の流れと線積分
方針
最初に を見ると,非線形連立方程式がほぼ一次元化する。 分母 は流れのヤコビアンにも現れるので, 線積分の変換でも同じ量が出てくる。
線積分の計算
にすると,与えられた放物線が になる。 また [数式] となるため, 曲線部分と3本の線分を機械的に積分できる。
検算
[数式] は符号付き面積の2倍である。 本問の向きでは正の値になるので, の符号は自然である。
解答
(1) 積分曲線を とする。 の範囲で [数式] したがって これを に代入すると とおけば なので よって 仮定 により分母は実零点を持たない。
(2) 次に とおくと かつ [数式] 曲線部分は で表される。したがってその寄与は [数式] 残る3本の線分のうち, と の部分の寄与は0である。 の部分は [数式] よって [数式]
(3) 最後に の流れ を用いる。直接計算すると [数式] したがって [数式] では である。曲線部分の寄与は [数式] 線分 と の寄与は再び0であり,線分 の寄与は [数式] よって
最終答
[数式] [数式]
第7問 — 対数積分と留数
方針
を使うと,切り口の上下で と の差が出る。 その差の三乗展開に の項が現れるため,目的の積分を取り出せる。
分枝の選び方
正の実軸を切り口にし,偏角を と取ると, 上側と下側の値の差が になる。 原点を内部に含めないように曲線を取るのは, の分枝点を避けるためである。
検算
別解として [数式] を2回微分して を代入しても が得られる。
解答
(1) まず とおくと [数式] よってこの積分は0である。
(2) 次に の分枝で を考える。正の実軸を切り口にしたキー ホール型の閉曲線をとり, 極 を内部に含め,原点は含めないようにする。
(3) 上側の正の実軸では ,下側では である。大円と小円の寄与を極限で消すと, 周回積分は [数式] に収束する。展開して,先に示した一次対数の積分が0であることを使うと [数式]
一方,留数は [数式] したがって [数式] 両者を比較して よって
最終答
[数式] [数式]
東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度
円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理
広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp
巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族
交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化
線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分
上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近
関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列
平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分
多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性
2016年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列
2015年度(このページ・全7問)解答・最終答まで全文公開
剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間
2014年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分
2013年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換
2012年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分
2011年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性
2010年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性
2007年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍
2006年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解
2005年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離
2004年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性