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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2005年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2005年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

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1 — 実対称行列の固有条件

対称行列全体に作用する線形写像として見る

BB の成分を直接置くと、未知数は x,y,zx,y,z33 個で済む。条件 ABAT=αBABA^{\mathsf T}=\alpha B は、対称行列全体の 33 次元空間上の固有値問題になっている。この見方をすると、α\alpha を最初から仮定せずに決められる。

零行列を除く条件

固有値方程式だけを見ると x=0x=0 も連立方程式を満たすように見えるが、このとき y=z=0y=z=0 となり B=0B=0 である。最後に c0c\ne0 を明記するのが採点上の注意点である。

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BBB=(xyyz)(x,y,zR) B= \begin{pmatrix} x & y\\ y & z \end{pmatrix} \qquad (x,y,z\in\mathbb{R}) とおく。BB は零でないので (x,y,z)(0,0,0)(x,y,z)\ne(0,0,0) である。与えられた行列を A=(4140) A= \begin{pmatrix} 4 & 1\\ -4 & 0 \end{pmatrix} とすると、直接計算により ABAT=(16x+8y+z16x4y16x4y16x). ABA^{\mathsf T} = \begin{pmatrix} 16x+8y+z & -16x-4y\\ -16x-4y & 16x \end{pmatrix}. したがって ABAT=αBABA^{\mathsf T}=\alpha B{16x+8y+z=αx,16x4y=αy,16x=αz \begin{cases} 16x+8y+z=\alpha x,\\ -16x-4y=\alpha y,\\ 16x=\alpha z \end{cases} と同値である。これは (x,y,z)(x,y,z) が線形写像 (x,y,z)(16x+8y+z,16x4y,16x) (x,y,z)\longmapsto (16x+8y+z,\,-16x-4y,\,16x) の固有ベクトルであることを意味する。

この線形写像の行列を MM と書くと M=(168116401600) M= \begin{pmatrix} 16&8&1\\ -16&-4&0\\ 16&0&0 \end{pmatrix} であり、 det(MαI)=(α4)3 \det(M-\alpha I) =-(\alpha-4)^3 である。よって可能な α\alphaα=4\alpha=4 のみである。

α=4\alpha=4 として連立方程式を解くと 16x8y=0,16x4z=0 -16x-8y=0,\qquad 16x-4z=0 から y=2x,z=4x y=-2x,\qquad z=4x を得る。x=0x=0 なら B=0B=0 となるため、x0x\ne0 でなければならない。ゆえに B=c(1224)(cR{0}) B= c \begin{pmatrix} 1&-2\\ -2&4 \end{pmatrix} \qquad (c\in\mathbb{R}\setminus\{0\}) がすべてである。

最終答

α=4\alpha=4、かつ B=c(1224)B=c\begin{pmatrix}1&-2\\-2&4\end{pmatrix}c0c\ne0)。

2 — 平坦関数と積分剰余

平坦性の使い方

e1/xe^{-1/x}x+0x\to+0 で任意の xNx^N より速く 00 に近づく。このため、何回微分して x1x^{-1} の多項式が前に出ても、00 での極限は 00 のままである。ここが CC^\infty 級性の本質である。

積分剰余の形

本問の積分式は Taylor 公式の剰余そのものである。00 で低階導関数がすべて消えるため、多項式部分が消えて積分剰余だけが残る。

一意性

候補の差は f(n)f^{(n)} との Volterra 型畳み込みで常に 00 になる。畳み込みは Laplace 変換で積に変わるので、差の多項式が消えることが分かる。答案では、f(n)f^{(n)} が恒等的に 00 でない点を明記しておくとよい。

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(1) x>0x>0 では f(x)=e1/xf(x)=e^{-1/x} は通常の合成関数として CC^\infty 級であり、x<0x<0 では恒等的に 00 である。問題は x=0x=0 だけである。

x>0x>0 において、任意の m0m\ge0 に対し f(m)(x)=Pm(1/x)e1/x f^{(m)}(x)=P_m(1/x)e^{-1/x} となる多項式 PmP_m が存在することを示す。m=0m=0P0=1P_0=1 でよい。もし成り立つなら ddx{Pm(1/x)e1/x}={x2Pm(1/x)+x2Pm(1/x)}e1/x \frac{d}{dx}\{P_m(1/x)e^{-1/x}\} = \left\{-x^{-2}P_m'(1/x)+x^{-2}P_m(1/x)\right\}e^{-1/x} であり、右辺は再び 1/x1/x の多項式に e1/xe^{-1/x} を掛けた形である。したがって帰納法で従う。

さらに任意の整数 N0N\ge0 に対し limx+0xNe1/x=0 \lim_{x\to+0} x^{-N}e^{-1/x}=0 である。よって各 mm について limx+0f(m)(x)=0 \lim_{x\to+0} f^{(m)}(x)=0 となる。x<0x<0 側ではすべての導関数が 00 であるから、00 での右極限と左極限が一致し、すべての階数で f(m)(0)=0f^{(m)}(0)=0 と定められる。したがって ffR\mathbb{R}CC^\infty 級である。

(2) f(0)=f(0)==f(n1)(0)=0f(0)=f'(0)=\cdots=f^{(n-1)}(0)=0 なので、積分剰余形の Taylor 公式から f(x)=0x(xt)n1(n1)!f(n)(t)dt f(x)= \int_0^x \frac{(x-t)^{n-1}}{(n-1)!}\,f^{(n)}(t)\,dt が成り立つ。x<0x<0 のときは積分区間上で f(n)(t)=0f^{(n)}(t)=0 であり、両辺とも 00 である。したがって pn(X)=Xn1(n1)! p_n(X)=\frac{X^{n-1}}{(n-1)!} が求める多項式である。

(3) 一意であることを示す。q(X)q(X) も同じ条件を満たすとし、 r(X)=q(X)Xn1(n1)! r(X)=q(X)-\frac{X^{n-1}}{(n-1)!} とおく。このとき x>0x>00xr(xt)f(n)(t)dt=0 \int_0^x r(x-t)f^{(n)}(t)\,dt=0 である。

g(t)=f(n)(t)g(t)=f^{(n)}(t)t>0t>0 上の関数とみる。gg は恒等的に 00 ではなく、指数減衰を含むため Laplace 変換 G(s)=0estg(t)dt(s>0) G(s)=\int_0^\infty e^{-st}g(t)\,dt \qquad (s>0) が存在し、恒等的には 00 でない。上の畳み込み恒等式を Laplace 変換すると R(s)G(s)=0 R(s)G(s)=0 を得る。ただし R(s)=0esur(u)du R(s)=\int_0^\infty e^{-su}r(u)\,du s>0s>0 上で定義される有理関数である。GG は恒等的に 00 でないので、R(s)R(s) は区間上で恒等的に 00 である。多項式 rr の Laplace 変換が恒等的に 00 になるのは r=0r=0 のときだけだから、q=pnq=p_n である。

最終答

(1)fC(R) \text{(1)}\quad \boxed{f\in C^\infty(\mathbb{R})} (2)pn(X)=Xn1(n1)! \text{(2)}\quad \boxed{ p_n(X)=\frac{X^{n-1}}{(n-1)!} } (3)この多項式は一意である。 \text{(3)}\quad \boxed{\text{この多項式は一意である。}}

3 — 単調関数が誘導する距離

引き戻し距離

dfd_f は、ff によって実数直線の通常の距離を引き戻したものである。したがって距離空間としての性質は、像 f(R+)f(\mathbb{R}_+) の性質に置き換えると見通しがよい。

完備性が連続性を強制する理由

単調関数の不連続は跳びである。跳びの直前または直後へ近づく列は、ff の値としては Cauchy になるが、その極限値は像に含まれない。これが完備性と矛盾する。

端点条件

連続な狭義単調関数の像は開区間である。開区間が通常距離で完備になるのは、それが実数直線全体になる場合だけである。したがって両端の極限がそれぞれ -\infty++\infty であることが必要十分となる。

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(1) df(x,y)=f(x)f(y)d_f(x,y)=|f(x)-f(y)| は非負で対称であり、三角不等式は実数の絶対値の三角不等式から従う。また、df(x,y)=0d_f(x,y)=0 なら f(x)=f(y)f(x)=f(y) である。ff は狭義単調増加だから単射であり、したがって x=yx=y である。よって dfd_f は距離である。

(2) ff がある点 cR+c\in\mathbb{R}_+ で連続でないと仮定する。単調関数なので左極限 L=limxc0f(x) L_-=\lim_{x\to c-0} f(x) と右極限 L+=limxc+0f(x) L_+=\lim_{x\to c+0} f(x) は存在する。連続でなければ、少なくとも片側で f(c)f(c) との間に隙間がある。

例えば L<f(c)L_-<f(c) の場合を考える。xm<cx_m<cxmcx_m\to c となる列を取ると f(xm)L f(x_m)\to L_- であるから、(xm)(x_m) は距離 dfd_f に関して Cauchy 列である。完備性より、ある xR+x\in\mathbb{R}_+dfd_f 収束する。これは f(xm)f(x) f(x_m)\to f(x) を意味するので f(x)=Lf(x)=L_- である。

しかし x<cx<c なら狭義単調性により f(x)<Lf(x)<L_-xcx\ge c なら f(x)f(c)>Lf(x)\ge f(c)>L_- であり、どちらも矛盾する。右側に隙間がある場合も、xm>cx_m>cxmcx_m\to c として同様に矛盾する。したがって ff は連続である。

(3) ff が連続かつ狭義単調増加であるとき、ffR+\mathbb{R}_+ を区間 I=(limx+0f(x),limx+f(x)) I= \left( \lim_{x\to+0}f(x),\, \lim_{x\to+\infty}f(x) \right) へ等長に写す。ただし端点が無限大の場合は拡張実数の意味で読む。すなわち df(x,y)=f(x)f(y) d_f(x,y)=|f(x)-f(y)| であるから、(R+,df)(\mathbb{R}_+,d_f) の完備性は、通常の距離をもつ II の完備性と同値である。

実数直線の部分集合としての開区間 II が完備であるためには、有限の端点を持ってはならない。左端が有限なら、その左端に近づく II 内の列は Cauchy だが II 内で収束しない。右端が有限の場合も同じである。逆に I=R I=\mathbb{R} なら完備である。

したがって必要十分条件は limx+0f(x)=,limx+f(x)=+ \lim_{x\to+0}f(x)=-\infty, \qquad \lim_{x\to+\infty}f(x)=+\infty である。

最終答

(1)df は R+ の距離である。 \text{(1)}\quad d_f\text{ は }\mathbb{R}_+\text{ の距離である。} (2)(R+,df) が完備なら f は通常の意味で連続である。 \text{(2)}\quad (\mathbb{R}_+,d_f)\text{ が完備なら }f\text{ は通常の意味で連続である。} (3)limx+0f(x)=,limx+f(x)=+ \text{(3)}\quad \begin{gathered} \lim_{x\to+0}f(x)=-\infty,\qquad \lim_{x\to+\infty}f(x)=+\infty \end{gathered}

4 — 行列空間の二次外積上の形式

外積に降りる条件

aba\wedge b によって定まる写像を作るには、a,ba,b を入れ替えると符号が反転することが必要である。同じことが x,yx,y 側にも必要であり、そこでは跡の巡回性が効く。

非退化性の確認

抽象的に議論するより、行列単位で係数を直接取り出すのが確実である。eijekle_{ij}\wedge e_{kl} の係数は、対応する「反対向き」の eliejke_{li}\wedge e_{jk} と pairing することで取り出せる。したがって、すべての pairing が 00 なら元そのものが 00 でなければならない。

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(1) まず F(a,b,x,y)=tr(xaybxbya) F(a,b,x,y)=\operatorname{tr}(xayb-xbya) とおく。これは a,b,x,ya,b,x,y のそれぞれについて線形である。また F(b,a,x,y)=F(a,b,x,y) F(b,a,x,y)=-F(a,b,x,y) であり、さらに跡の巡回性を用いると F(a,b,y,x)=tr(yaxbybxa)=tr(xbyaxayb)=F(a,b,x,y). \begin{aligned} F(a,b,y,x) &=\operatorname{tr}(yaxb-ybxa)\\ &=\operatorname{tr}(xbya-xayb)\\ &=-F(a,b,x,y). \end{aligned} したがって FF(a,b)(a,b) について交代的、かつ (x,y)(x,y) について交代的である。外積の普遍性により、ただ一つの双線形形式 ϕ:2V×2VR \phi:\wedge^2 V\times \wedge^2 V\to\mathbb{R} が存在し、 ϕ(ab,xy)=F(a,b,x,y) \phi(a\wedge b,x\wedge y)=F(a,b,x,y) を満たす。

(2) 行列単位の積は eijekl=δjkeil e_{ij}e_{kl}=\delta_{jk}e_{il} である。したがって eijeklepq=δjkδlpeiq e_{ij}e_{kl}e_{pq} = \delta_{jk}\delta_{lp}e_{iq} であり、 tr(eijeklepq)=δjkδlpδiq \operatorname{tr}(e_{ij}e_{kl}e_{pq}) = \delta_{jk}\delta_{lp}\delta_{iq} となる。

(3) u2Vu\in\wedge^2Vu=12i,j,k,lcij,kleijekl u=\frac12 \sum_{i,j,k,l} c_{ij,kl}\,e_{ij}\wedge e_{kl} と書く。ただし ckl,ij=cij,kl c_{kl,ij}=-c_{ij,kl} とする。この表示で、すべての係数 cij,klc_{ij,kl}00 であることと u=0u=0 であることは同値である。

任意の添字 (i,j,k,l)(i,j,k,l) に対し、x=elix=e_{li}y=ejky=e_{jk} とおく。上の積公式を 44 個の行列の積に用いると ϕ(eabecd,eliejk)=δiaδbjδkcδdlδicδdjδkaδbl. \begin{aligned} &\phi(e_{ab}\wedge e_{cd},\,e_{li}\wedge e_{jk})\\ &\quad = \delta_{ia}\delta_{bj}\delta_{kc}\delta_{dl} - \delta_{ic}\delta_{dj}\delta_{ka}\delta_{bl}. \end{aligned} したがって、反対称条件 ckl,ij=cij,klc_{kl,ij}=-c_{ij,kl} と係数 12\frac12 に注意すると、uu との pairing は ϕ(u,eliejk)=12{cij,klckl,ij}=cij,kl \phi(u,e_{li}\wedge e_{jk}) = \frac12\{c_{ij,kl}-c_{kl,ij}\} = c_{ij,kl} である。もしすべての w2Vw\in\wedge^2V に対して ϕ(u,w)=0\phi(u,w)=0 なら、特に w=eliejkw=e_{li}\wedge e_{jk} と取って cij,kl=0 c_{ij,kl}=0 がすべての添字について成り立つ。ゆえに u=0u=0 である。すなわち ϕ\phi は非退化である。

最終答

(1)ϕ(ab,xy)=tr(xaybxbya) で定まる。 \text{(1)}\quad \phi(a\wedge b,x\wedge y)=\operatorname{tr}(xayb-xbya)\text{ で定まる。} (2)tr(eijeklepq)=δjkδlpδiq \text{(2)}\quad \operatorname{tr}(e_{ij}e_{kl}e_{pq}) = \delta_{jk}\delta_{lp}\delta_{iq} (3)行列単位の外積係数を pairing で回収できるため、ϕ は非退化である。 \text{(3)}\quad \text{行列単位の外積係数を pairing で回収できるため、}\phi\text{ は非退化である。}

5 — 円周上の射影力学系

円周上の固定点と固有値

正規化しているため、固有値の絶対値ではなく符号が重要である。正の固有値の方向は固定され、負の固有値の方向は反対側へ移る。ここを取り違えると (a) の判定を誤りやすい。

(a) が開になる理由

22 次元で行列式が負なら、固有値は必ず実数で異符号である。この条件は detL<0\det L<0 という開条件で表せる。

(b) の落とし穴

すべての反復で固定点を持つという条件は強そうに見えるが、重固有値をもつ Jordan 型の行列を含んでしまう。その近くには複素固有値をもつ行列があり、固定点数が突然 00 になる。これが開でない理由である。

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固定点の基本観察 vS1v\in S^1fLf_L の固定点であることは LvLv=v \frac{Lv}{|Lv|}=v と同値である。したがって、ある正の実数 λ>0\lambda>0 が存在して Lv=λv Lv=\lambda v となることと同値である。つまり、固定点は LL の正の実固有値に対応する固有方向から生じる。ひとつの固有直線は円周上の 22 点を与える。

また合成については、方向だけを見る写像なので fLm=fLm f_L^m=f_{L^m} である。

(a) detL<0\det L<0 なら、LL は互いに異符号の実固有値をもつ。正の固有値に対応する固有直線だけが fLf_L の固定点を与えるので #Fix(fL)=2. \#\operatorname{Fix}(f_L)=2. 一方 L2L^2 の固有値は正であり、通常は二つの固有直線が固定点を与える。もし固有値が λ\lambdaλ-\lambda の形であれば L2=λ2IL^2=\lambda^2 I となり、fL2f_L^2 は恒等写像になる。この場合も固定点は無限個であり、やはり 22 より多い。したがって detL<0\det L<0 なら (a) の条件を満たす。

逆に detL>0\det L>0 のとき、実固有値があれば二つとも同符号である。二つとも正なら fLf_LfL2f_L^2 の固定方向は同じであり、二つとも負なら fLf_L は固定点を持たない。複素固有値の場合も固定点はない。よって (a) は成り立たない。

したがって (a) の集合は {LGL(2,R)detL<0} \{L\in GL(2,\mathbb{R})\mid \det L<0\} であり、これは開集合である。

(b) (b) の集合は開ではない。反例として L0=(1101) L_0= \begin{pmatrix} 1&1\\ 0&1 \end{pmatrix} を取る。このとき L0m=(1m01) L_0^m= \begin{pmatrix} 1&m\\ 0&1 \end{pmatrix} であり、各 m1m\ge1 について正の固有値 11 をもち、固有直線は一つである。したがって #Fix(fL0m)=2 \#\operatorname{Fix}(f_{L_0}^m)=2 であり、L0L_0 は (b) の集合に属する。

しかし任意に小さい ε>0\varepsilon>0 に対し Lε=(11ε1) L_\varepsilon= \begin{pmatrix} 1&1\\ -\varepsilon&1 \end{pmatrix} L0L_0 に近いが、固有値は 1±iε 1\pm i\sqrt{\varepsilon} であり実固有方向を持たない。したがって fLεf_{L_\varepsilon} は固定点を持たず、(b) の集合に属さない。よって (b) は開集合ではない。

最終答

条件(a)開集合である。実際、条件は detL<0 と同値である。 \text{条件(a)}\quad \text{開集合である。実際、条件は }\det L<0\text{ と同値である。} 条件(b)開集合ではない。 \text{条件(b)}\quad \text{開集合ではない。} 例えば (1101)\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix} は条件(b)を満たすが、任意に近くに固定点を持たない行列がある。

6 — 切断をもつ対数と周回積分

枝が存在する理由

(za)/(zb)(z-a)/(z-b) は、線分 [a,b][a,b] をちょうど負の実軸へ送る。したがってその線分を除けば、主値対数の切断に触れず、一価正則な対数を取れる。

符号の確認

上側と下側の対数の差は 2πi-2\pi i である。境界の向きにより外側の円周積分にはさらに負号が付くため、最終的な符号は +2πi(ebea)+2\pi i(e^b-e^a) になる。

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(1) w(z)=zazb w(z)=\frac{z-a}{z-b} とおく。zC[a,b]z\in\mathbb{C}\setminus[a,b] に対し、w(z)w(z)00 にならず、また負の実軸上の値を取らない。実際、w(z)w(z) が負の実数なら、zaz-azbz-b は反対向きの実数倍であり、zz は実軸上で aabb の間にあることになる。

したがって主値対数を用いて Logw(z) \operatorname{Log} w(z) を定義すれば、これは C[a,b]\mathbb{C}\setminus[a,b] 上の一価正則関数である。x>bx>b では (xa)/(xb)>0(x-a)/(x-b)>0 なので、この正則関数は通常の実対数 logxaxb \log\frac{x-a}{x-b} と一致する。

(2) 上で定めた枝を L(z)=Logzazb L(z)=\operatorname{Log}\frac{z-a}{z-b} と書く。円周の内側から線分 [a,b][a,b] を除いた領域で ezL(z)e^zL(z) は正則である。線分の上側と下側での境界値を比べる。

x(a,b)x\in(a,b) とすると、(xa)/(xb)(x-a)/(x-b) は負の実数である。上側から近づくと偏角は π-\pi、下側から近づくと偏角は +π+\pi になるので L+(x)L(x)=2πi L_+(x)-L_-(x)=-2\pi i である。

切断の上下を含む境界積分を考えると、外側の円周積分はこの jump の寄与で決まる。向きに注意すると CezL(z)dz=abex{L+(x)L(x)}dx=2πiabexdx=2πi(ebea). \begin{aligned} \int_C e^zL(z)\,dz &= -\int_a^b e^x\{L_+(x)-L_-(x)\}\,dx\\ &= 2\pi i\int_a^b e^x\,dx\\ &= 2\pi i(e^b-e^a). \end{aligned}

最終答

(1)Logzazb \text{(1)}\quad \boxed{ \operatorname{Log}\frac{z-a}{z-b} } が求める一価正則な枝を与える。 (2)Cezlogzazbdz=2πi(ebea) \text{(2)}\quad \boxed{ \int_C e^z\log\frac{z-a}{z-b}\,dz = 2\pi i(e^b-e^a) }

7 — 畳み込み平均と無限遠極限

(a) から (b) の核

畳み込みは、無限遠での ff の値を φ\varphi で重み付け平均したものである。可積分核の遠い尾部は小さく、残りの有限範囲では tst-s\to\infty が一様に成り立つ。

一様連続性が必要な場所

(b) から (a) では、短い区間平均の極限から点値の極限を取り出す。一様連続性があるから、f(t)f(t) と近くの値 f(ts)f(t-s) が一様に近い。単なる連続性だけでは、この比較を tt に依存せず行うことができない。

核の選び方

任意の φS\varphi\in S について成り立つという仮定を、特に短い区間の指示関数に適用する。これにより、点値 f(t)f(t) に近い局所平均を直接扱える。

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条件 (a) から条件 (b) 変数変換 s=trs=t-r により (φf)(t)=φ(s)f(ts)ds (\varphi*f)(t) = \int_{-\infty}^{\infty}\varphi(s)f(t-s)\,ds と書ける。ff は有界なので、ある M>0M>0 に対し f(t)M|f(t)|\le M が成り立つ。

ε>0\varepsilon>0 を任意に取る。φ\varphi は非負で可積分なので、十分大きい R>0R>0 を取れば s>Rφ(s)ds<εM+A+1 \int_{|s|>R}\varphi(s)\,ds < \frac{\varepsilon}{M+|A|+1} とできる。一方、仮定 (a) より、tt\to\infty のとき f(ts)Af(t-s)\to AsR|s|\le R 上で一様に成り立つ。したがって十分大きい tt について f(ts)A<ε(sR) |f(t-s)-A|<\varepsilon \qquad (|s|\le R) である。

よって (φf)(t)Aφ(s)dssRφ(s)f(ts)Ads+s>Rφ(s)f(ts)Adsεφ(s)ds+(M+A)s>Rφ(s)ds. \begin{aligned} &\left| (\varphi*f)(t) - A\int_{-\infty}^{\infty}\varphi(s)\,ds \right|\\ &\quad\le \int_{|s|\le R}\varphi(s)|f(t-s)-A|\,ds +\int_{|s|>R}\varphi(s)|f(t-s)-A|\,ds\\ &\quad\le \varepsilon\int_{-\infty}^{\infty}\varphi(s)\,ds +(M+|A|)\int_{|s|>R}\varphi(s)\,ds. \end{aligned} 右辺は任意に小さくできるので (b) が従う。

条件 (b) から条件 (a) ff は一様連続である。ε>0\varepsilon>0 に対し、ある δ>0\delta>0 が存在して uvδf(u)f(v)<ε |u-v|\le\delta \quad\Longrightarrow\quad |f(u)-f(v)|<\varepsilon となる。

ここで φδ(s)={1,0sδ,0,otherwise \varphi_\delta(s)= \begin{cases} 1,&0\le s\le\delta,\\ 0,&\text{otherwise} \end{cases} を取ると、φδS\varphi_\delta\in S である。仮定 (b) より 0δf(ts)dsAδ(t) \int_0^\delta f(t-s)\,ds \longrightarrow A\delta \qquad (t\to\infty) である。

一方、0sδ0\le s\le\delta では t(ts)δ|t-(t-s)|\le\delta だから f(t)f(ts)<ε |f(t)-f(t-s)|<\varepsilon である。したがって f(t)Af(t)1δ0δf(ts)ds+1δ0δf(ts)dsAε+1δ0δf(ts)dsA. \begin{aligned} |f(t)-A| &\le \left| f(t)-\frac1\delta\int_0^\delta f(t-s)\,ds \right| + \left| \frac1\delta\int_0^\delta f(t-s)\,ds-A \right|\\ &\le \varepsilon + \left| \frac1\delta\int_0^\delta f(t-s)\,ds-A \right|. \end{aligned} tt\to\infty とすると右辺の第二項は 00 へ収束する。ε>0\varepsilon>0 は任意であるから f(t)A f(t)\to A が従う。よって (a) と (b) は同値である。

最終答

(a)(b)可積分核の尾部を有界性で抑え、有限区間では f(ts)A を一様に使う。 \text{(a)}\Rightarrow\text{(b)}\quad \text{可積分核の尾部を有界性で抑え、有限区間では }f(t-s)\to A\text{ を一様に使う。} (b)(a)短い区間の指示関数を核に取り、一様連続性で区間平均と点値を比較する。 \text{(b)}\Rightarrow\text{(a)}\quad \text{短い区間の指示関数を核に取り、一様連続性で区間平均と点値を比較する。} 以上により条件 (a) と条件 (b) は同値である。

東京大学 専門科目A — 他の年度