東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2005年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2005年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 実対称行列の固有条件
対称行列全体に作用する線形写像として見る
の成分を直接置くと、未知数は の 個で済む。条件 は、対称行列全体の 次元空間上の固有値問題になっている。この見方をすると、 を最初から仮定せずに決められる。
零行列を除く条件
固有値方程式だけを見ると も連立方程式を満たすように見えるが、このとき となり である。最後に を明記するのが採点上の注意点である。
2005年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
を とおく。 は零でないので である。与えられた行列を とすると、直接計算により したがって は と同値である。これは が線形写像 の固有ベクトルであることを意味する。
この線形写像の行列を と書くと であり、 である。よって可能な は のみである。
として連立方程式を解くと から を得る。 なら となるため、 でなければならない。ゆえに がすべてである。
最終答
、かつ ()。
第2問 — 平坦関数と積分剰余
平坦性の使い方
は で任意の より速く に近づく。このため、何回微分して の多項式が前に出ても、 での極限は のままである。ここが 級性の本質である。
積分剰余の形
本問の積分式は Taylor 公式の剰余そのものである。 で低階導関数がすべて消えるため、多項式部分が消えて積分剰余だけが残る。
一意性
候補の差は との Volterra 型畳み込みで常に になる。畳み込みは Laplace 変換で積に変わるので、差の多項式が消えることが分かる。答案では、 が恒等的に でない点を明記しておくとよい。
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(1) では は通常の合成関数として 級であり、 では恒等的に である。問題は だけである。
において、任意の に対し となる多項式 が存在することを示す。 は でよい。もし成り立つなら であり、右辺は再び の多項式に を掛けた形である。したがって帰納法で従う。
さらに任意の整数 に対し である。よって各 について となる。 側ではすべての導関数が であるから、 での右極限と左極限が一致し、すべての階数で と定められる。したがって は 上 級である。
(2) なので、積分剰余形の Taylor 公式から が成り立つ。 のときは積分区間上で であり、両辺とも である。したがって が求める多項式である。
(3) 一意であることを示す。 も同じ条件を満たすとし、 とおく。このとき で である。
を 上の関数とみる。 は恒等的に ではなく、指数減衰を含むため Laplace 変換 が存在し、恒等的には でない。上の畳み込み恒等式を Laplace 変換すると を得る。ただし は 上で定義される有理関数である。 は恒等的に でないので、 は区間上で恒等的に である。多項式 の Laplace 変換が恒等的に になるのは のときだけだから、 である。
最終答
第3問 — 単調関数が誘導する距離
引き戻し距離
は、 によって実数直線の通常の距離を引き戻したものである。したがって距離空間としての性質は、像 の性質に置き換えると見通しがよい。
完備性が連続性を強制する理由
単調関数の不連続は跳びである。跳びの直前または直後へ近づく列は、 の値としては Cauchy になるが、その極限値は像に含まれない。これが完備性と矛盾する。
端点条件
連続な狭義単調関数の像は開区間である。開区間が通常距離で完備になるのは、それが実数直線全体になる場合だけである。したがって両端の極限がそれぞれ 、 であることが必要十分となる。
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(1) は非負で対称であり、三角不等式は実数の絶対値の三角不等式から従う。また、 なら である。 は狭義単調増加だから単射であり、したがって である。よって は距離である。
(2) がある点 で連続でないと仮定する。単調関数なので左極限 と右極限 は存在する。連続でなければ、少なくとも片側で との間に隙間がある。
例えば の場合を考える。、 となる列を取ると であるから、 は距離 に関して Cauchy 列である。完備性より、ある に 収束する。これは を意味するので である。
しかし なら狭義単調性により 、 なら であり、どちらも矛盾する。右側に隙間がある場合も、、 として同様に矛盾する。したがって は連続である。
(3) が連続かつ狭義単調増加であるとき、 は を区間 へ等長に写す。ただし端点が無限大の場合は拡張実数の意味で読む。すなわち であるから、 の完備性は、通常の距離をもつ の完備性と同値である。
実数直線の部分集合としての開区間 が完備であるためには、有限の端点を持ってはならない。左端が有限なら、その左端に近づく 内の列は Cauchy だが 内で収束しない。右端が有限の場合も同じである。逆に なら完備である。
したがって必要十分条件は である。
最終答
第4問 — 行列空間の二次外積上の形式
外積に降りる条件
によって定まる写像を作るには、 を入れ替えると符号が反転することが必要である。同じことが 側にも必要であり、そこでは跡の巡回性が効く。
非退化性の確認
抽象的に議論するより、行列単位で係数を直接取り出すのが確実である。 の係数は、対応する「反対向き」の と pairing することで取り出せる。したがって、すべての pairing が なら元そのものが でなければならない。
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(1) まず とおく。これは のそれぞれについて線形である。また であり、さらに跡の巡回性を用いると したがって は について交代的、かつ について交代的である。外積の普遍性により、ただ一つの双線形形式 が存在し、 を満たす。
(2) 行列単位の積は である。したがって であり、 となる。
(3) を と書く。ただし とする。この表示で、すべての係数 が であることと であることは同値である。
任意の添字 に対し、、 とおく。上の積公式を 個の行列の積に用いると したがって、反対称条件 と係数 に注意すると、 との pairing は である。もしすべての に対して なら、特に と取って がすべての添字について成り立つ。ゆえに である。すなわち は非退化である。
最終答
第5問 — 円周上の射影力学系
円周上の固定点と固有値
正規化しているため、固有値の絶対値ではなく符号が重要である。正の固有値の方向は固定され、負の固有値の方向は反対側へ移る。ここを取り違えると (a) の判定を誤りやすい。
(a) が開になる理由
次元で行列式が負なら、固有値は必ず実数で異符号である。この条件は という開条件で表せる。
(b) の落とし穴
すべての反復で固定点を持つという条件は強そうに見えるが、重固有値をもつ Jordan 型の行列を含んでしまう。その近くには複素固有値をもつ行列があり、固定点数が突然 になる。これが開でない理由である。
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固定点の基本観察 が の固定点であることは と同値である。したがって、ある正の実数 が存在して となることと同値である。つまり、固定点は の正の実固有値に対応する固有方向から生じる。ひとつの固有直線は円周上の 点を与える。
また合成については、方向だけを見る写像なので である。
(a) なら、 は互いに異符号の実固有値をもつ。正の固有値に対応する固有直線だけが の固定点を与えるので 一方 の固有値は正であり、通常は二つの固有直線が固定点を与える。もし固有値が と の形であれば となり、 は恒等写像になる。この場合も固定点は無限個であり、やはり より多い。したがって なら (a) の条件を満たす。
逆に のとき、実固有値があれば二つとも同符号である。二つとも正なら と の固定方向は同じであり、二つとも負なら は固定点を持たない。複素固有値の場合も固定点はない。よって (a) は成り立たない。
したがって (a) の集合は であり、これは開集合である。
(b) (b) の集合は開ではない。反例として を取る。このとき であり、各 について正の固有値 をもち、固有直線は一つである。したがって であり、 は (b) の集合に属する。
しかし任意に小さい に対し は に近いが、固有値は であり実固有方向を持たない。したがって は固定点を持たず、(b) の集合に属さない。よって (b) は開集合ではない。
最終答
例えば は条件(b)を満たすが、任意に近くに固定点を持たない行列がある。
第6問 — 切断をもつ対数と周回積分
枝が存在する理由
比 は、線分 をちょうど負の実軸へ送る。したがってその線分を除けば、主値対数の切断に触れず、一価正則な対数を取れる。
符号の確認
上側と下側の対数の差は である。境界の向きにより外側の円周積分にはさらに負号が付くため、最終的な符号は になる。
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(1) とおく。 に対し、 は にならず、また負の実軸上の値を取らない。実際、 が負の実数なら、 と は反対向きの実数倍であり、 は実軸上で と の間にあることになる。
したがって主値対数を用いて を定義すれば、これは 上の一価正則関数である。 では なので、この正則関数は通常の実対数 と一致する。
(2) 上で定めた枝を と書く。円周の内側から線分 を除いた領域で は正則である。線分の上側と下側での境界値を比べる。
とすると、 は負の実数である。上側から近づくと偏角は 、下側から近づくと偏角は になるので である。
切断の上下を含む境界積分を考えると、外側の円周積分はこの jump の寄与で決まる。向きに注意すると
最終答
が求める一価正則な枝を与える。
第7問 — 畳み込み平均と無限遠極限
(a) から (b) の核
畳み込みは、無限遠での の値を で重み付け平均したものである。可積分核の遠い尾部は小さく、残りの有限範囲では が一様に成り立つ。
一様連続性が必要な場所
(b) から (a) では、短い区間平均の極限から点値の極限を取り出す。一様連続性があるから、 と近くの値 が一様に近い。単なる連続性だけでは、この比較を に依存せず行うことができない。
核の選び方
任意の について成り立つという仮定を、特に短い区間の指示関数に適用する。これにより、点値 に近い局所平均を直接扱える。
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条件 (a) から条件 (b) 変数変換 により と書ける。 は有界なので、ある に対し が成り立つ。
を任意に取る。 は非負で可積分なので、十分大きい を取れば とできる。一方、仮定 (a) より、 のとき は 上で一様に成り立つ。したがって十分大きい について である。
よって 右辺は任意に小さくできるので (b) が従う。
条件 (b) から条件 (a) は一様連続である。 に対し、ある が存在して となる。
ここで を取ると、 である。仮定 (b) より である。
一方、 では だから である。したがって とすると右辺の第二項は へ収束する。 は任意であるから が従う。よって (a) と (b) は同値である。
最終答
以上により条件 (a) と条件 (b) は同値である。