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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2005年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析4問・線形代数2問・力学1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底)。2004年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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解説7問・解答7問・最終答7問(全7問)
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2005年度は解答・最終答まで全文公開
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東大 専門科目A 2005年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析4問・線形代数2問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数実対称行列の固有条件対称行列全体に作用する線形写像として見る / 零行列を除く条件あり
第2問微分積分・解析平坦関数と積分剰余平坦性の使い方 / 積分剰余の形あり
第3問微分積分・解析単調関数が誘導する距離引き戻し距離 / 完備性が連続性を強制する理由あり
第4問線形代数行列空間の二次外積上の形式外積に降りる条件 / 非退化性の確認あり
第5問力学円周上の射影力学系円周上の固定点と固有値 / (a) が開になる理由あり
第6問微分積分・解析切断をもつ対数と周回積分枝が存在する理由 / 符号の確認あり
第7問微分積分・解析畳み込み平均と無限遠極限(a) から (b) の核 / 一様連続性が必要な場所あり

2005年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に2テーマが出ています。

前年度(2004年度)との違い

大問数
2004年度 7問 → 2005年度 7問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2005年度で新しく出たテーマ
線形空間・基底
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第1問 — 実対称行列の固有条件

対称行列全体に作用する線形写像として見る

BB の成分を直接置くと、未知数は x,y,zx,y,z の 33 個で済む。条件 ABAT=αBABA^{\mathsf T}=\alpha B は、対称行列全体の 33 次元空間上の固有値問題になっている。この見方をすると、α\alpha を最初から仮定せずに決められる。

零行列を除く条件

固有値方程式だけを見ると x=0x=0 も連立方程式を満たすように見えるが、このとき y=z=0y=z=0 となり B=0B=0 である。最後に c≠0c\ne0 を明記するのが採点上の注意点である。

解答

BB を B=(xyyz)(x,y,z∈R) B= \begin{pmatrix} x & y\\ y & z \end{pmatrix} \qquad (x,y,z\in\mathbb{R}) とおく。BB は零でないので (x,y,z)≠(0,0,0)(x,y,z)\ne(0,0,0) である。与えられた行列を A=(41−40) A= \begin{pmatrix} 4 & 1\\ -4 & 0 \end{pmatrix} とすると、直接計算により ABAT=(16x+8y+z−16x−4y−16x−4y16x). ABA^{\mathsf T} = \begin{pmatrix} 16x+8y+z & -16x-4y\\ -16x-4y & 16x \end{pmatrix}. したがって ABAT=αBABA^{\mathsf T}=\alpha B は {16x+8y+z=αx,−16x−4y=αy,16x=αz \begin{cases} 16x+8y+z=\alpha x,\\ -16x-4y=\alpha y,\\ 16x=\alpha z \end{cases} と同値である。これは (x,y,z)(x,y,z) が線形写像 (x,y,z)⟼(16x+8y+z, −16x−4y, 16x) (x,y,z)\longmapsto (16x+8y+z,\,-16x-4y,\,16x) の固有ベクトルであることを意味する。

この線形写像の行列を MM と書くと M=(1681−16−401600) M= \begin{pmatrix} 16&8&1\\ -16&-4&0\\ 16&0&0 \end{pmatrix} であり、 det⁡(M−αI)=−(α−4)3 \det(M-\alpha I) =-(\alpha-4)^3 である。よって可能な α\alpha は α=4\alpha=4 のみである。

α=4\alpha=4 として連立方程式を解くと −16x−8y=0,16x−4z=0 -16x-8y=0,\qquad 16x-4z=0 から y=−2x,z=4x y=-2x,\qquad z=4x を得る。x=0x=0 なら B=0B=0 となるため、x≠0x\ne0 でなければならない。ゆえに B=c(1−2−24)(c∈R∖{0}) B= c \begin{pmatrix} 1&-2\\ -2&4 \end{pmatrix} \qquad (c\in\mathbb{R}\setminus\{0\}) がすべてである。

最終答

α=4\alpha=4、かつ B=c(1−2−24)B=c\begin{pmatrix}1&-2\\-2&4\end{pmatrix}(c≠0c\ne0)。

第2問 — 平坦関数と積分剰余

平坦性の使い方

e−1/xe^{-1/x} は x→+0x\to+0 で任意の xNx^N より速く 00 に近づく。このため、何回微分して x−1x^{-1} の多項式が前に出ても、00 での極限は 00 のままである。ここが C∞C^\infty 級性の本質である。

積分剰余の形

本問の積分式は Taylor 公式の剰余そのものである。00 で低階導関数がすべて消えるため、多項式部分が消えて積分剰余だけが残る。

一意性

候補の差は f(n)f^{(n)} との Volterra 型畳み込みで常に 00 になる。畳み込みは Laplace 変換で積に変わるので、差の多項式が消えることが分かる。答案では、f(n)f^{(n)} が恒等的に 00 でない点を明記しておくとよい。

解答

(1) x>0x>0 では f(x)=e−1/xf(x)=e^{-1/x} は通常の合成関数として C∞C^\infty 級であり、x<0x<0 では恒等的に 00 である。問題は x=0x=0 だけである。

x>0x>0 において、任意の m≥0m\ge0 に対し f(m)(x)=Pm(1/x)e−1/x f^{(m)}(x)=P_m(1/x)e^{-1/x} となる多項式 PmP_m が存在することを示す。m=0m=0 は P0=1P_0=1 でよい。もし成り立つなら ddx{Pm(1/x)e−1/x}={−x−2Pm′(1/x)+x−2Pm(1/x)}e−1/x \frac{d}{dx}\{P_m(1/x)e^{-1/x}\} = \left\{-x^{-2}P_m'(1/x)+x^{-2}P_m(1/x)\right\}e^{-1/x} であり、右辺は再び 1/x1/x の多項式に e−1/xe^{-1/x} を掛けた形である。したがって帰納法で従う。

さらに任意の整数 N≥0N\ge0 に対し lim⁡x→+0x−Ne−1/x=0 \lim_{x\to+0} x^{-N}e^{-1/x}=0 である。よって各 mm について lim⁡x→+0f(m)(x)=0 \lim_{x\to+0} f^{(m)}(x)=0 となる。x<0x<0 側ではすべての導関数が 00 であるから、00 での右極限と左極限が一致し、すべての階数で f(m)(0)=0f^{(m)}(0)=0 と定められる。したがって ff は R\mathbb{R} 上 C∞C^\infty 級である。

(2) f(0)=f′(0)=⋯=f(n−1)(0)=0f(0)=f'(0)=\cdots=f^{(n-1)}(0)=0 なので、積分剰余形の Taylor 公式から f(x)=∫0x(x−t)n−1(n−1)! f(n)(t) dt f(x)= \int_0^x \frac{(x-t)^{n-1}}{(n-1)!}\,f^{(n)}(t)\,dt が成り立つ。x<0x<0 のときは積分区間上で f(n)(t)=0f^{(n)}(t)=0 であり、両辺とも 00 である。したがって pn(X)=Xn−1(n−1)! p_n(X)=\frac{X^{n-1}}{(n-1)!} が求める多項式である。

(3) 一意であることを示す。q(X)q(X) も同じ条件を満たすとし、 r(X)=q(X)−Xn−1(n−1)! r(X)=q(X)-\frac{X^{n-1}}{(n-1)!} とおく。このとき x>0x>0 で ∫0xr(x−t)f(n)(t) dt=0 \int_0^x r(x-t)f^{(n)}(t)\,dt=0 である。

g(t)=f(n)(t)g(t)=f^{(n)}(t) を t>0t>0 上の関数とみる。gg は恒等的に 00 ではなく、指数減衰を含むため Laplace 変換 G(s)=∫0∞e−stg(t) dt(s>0) G(s)=\int_0^\infty e^{-st}g(t)\,dt \qquad (s>0) が存在し、恒等的には 00 でない。上の畳み込み恒等式を Laplace 変換すると R(s)G(s)=0 R(s)G(s)=0 を得る。ただし R(s)=∫0∞e−sur(u) du R(s)=\int_0^\infty e^{-su}r(u)\,du は s>0s>0 上で定義される有理関数である。GG は恒等的に 00 でないので、R(s)R(s) は区間上で恒等的に 00 である。多項式 rr の Laplace 変換が恒等的に 00 になるのは r=0r=0 のときだけだから、q=pnq=p_n である。

最終答

(1)f∈C∞(R) \text{(1)}\quad \boxed{f\in C^\infty(\mathbb{R})} (2)pn(X)=Xn−1(n−1)! \text{(2)}\quad \boxed{ p_n(X)=\frac{X^{n-1}}{(n-1)!} } (3)この多項式は一意である。 \text{(3)}\quad \boxed{\text{この多項式は一意である。}}

第3問 — 単調関数が誘導する距離

引き戻し距離

dfd_f は、ff によって実数直線の通常の距離を引き戻したものである。したがって距離空間としての性質は、像 f(R+)f(\mathbb{R}_+) の性質に置き換えると見通しがよい。

完備性が連続性を強制する理由

単調関数の不連続は跳びである。跳びの直前または直後へ近づく列は、ff の値としては Cauchy になるが、その極限値は像に含まれない。これが完備性と矛盾する。

端点条件

連続な狭義単調関数の像は開区間である。開区間が通常距離で完備になるのは、それが実数直線全体になる場合だけである。したがって両端の極限がそれぞれ −∞-\infty、+∞+\infty であることが必要十分となる。

解答

(1) df(x,y)=∣f(x)−f(y)∣d_f(x,y)=|f(x)-f(y)| は非負で対称であり、三角不等式は実数の絶対値の三角不等式から従う。また、df(x,y)=0d_f(x,y)=0 なら f(x)=f(y)f(x)=f(y) である。ff は狭義単調増加だから単射であり、したがって x=yx=y である。よって dfd_f は距離である。

(2) ff がある点 c∈R+c\in\mathbb{R}_+ で連続でないと仮定する。単調関数なので左極限 L−=lim⁡x→c−0f(x) L_-=\lim_{x\to c-0} f(x) と右極限 L+=lim⁡x→c+0f(x) L_+=\lim_{x\to c+0} f(x) は存在する。連続でなければ、少なくとも片側で f(c)f(c) との間に隙間がある。

例えば L−<f(c)L_-<f(c) の場合を考える。xm<cx_m<c、xm→cx_m\to c となる列を取ると f(xm)→L− f(x_m)\to L_- であるから、(xm)(x_m) は距離 dfd_f に関して Cauchy 列である。完備性より、ある x∈R+x\in\mathbb{R}_+ に dfd_f 収束する。これは f(xm)→f(x) f(x_m)\to f(x) を意味するので f(x)=L−f(x)=L_- である。

しかし x<cx<c なら狭義単調性により f(x)<L−f(x)<L_-、x≥cx\ge c なら f(x)≥f(c)>L−f(x)\ge f(c)>L_- であり、どちらも矛盾する。右側に隙間がある場合も、xm>cx_m>c、xm→cx_m\to c として同様に矛盾する。したがって ff は連続である。

(3) ff が連続かつ狭義単調増加であるとき、ff は R+\mathbb{R}_+ を区間 I=(lim⁡x→+0f(x), lim⁡x→+∞f(x)) I= \left( \lim_{x\to+0}f(x),\, \lim_{x\to+\infty}f(x) \right) へ等長に写す。ただし端点が無限大の場合は拡張実数の意味で読む。すなわち df(x,y)=∣f(x)−f(y)∣ d_f(x,y)=|f(x)-f(y)| であるから、(R+,df)(\mathbb{R}_+,d_f) の完備性は、通常の距離をもつ II の完備性と同値である。

実数直線の部分集合としての開区間 II が完備であるためには、有限の端点を持ってはならない。左端が有限なら、その左端に近づく II 内の列は Cauchy だが II 内で収束しない。右端が有限の場合も同じである。逆に I=R I=\mathbb{R} なら完備である。

したがって必要十分条件は lim⁡x→+0f(x)=−∞,lim⁡x→+∞f(x)=+∞ \lim_{x\to+0}f(x)=-\infty, \qquad \lim_{x\to+\infty}f(x)=+\infty である。

最終答

(1)df は R+ の距離である。 \text{(1)}\quad d_f\text{ は }\mathbb{R}_+\text{ の距離である。} (2)(R+,df) が完備なら f は通常の意味で連続である。 \text{(2)}\quad (\mathbb{R}_+,d_f)\text{ が完備なら }f\text{ は通常の意味で連続である。} (3)lim⁡x→+0f(x)=−∞,lim⁡x→+∞f(x)=+∞ \text{(3)}\quad \begin{gathered} \lim_{x\to+0}f(x)=-\infty,\qquad \lim_{x\to+\infty}f(x)=+\infty \end{gathered}

第4問 — 行列空間の二次外積上の形式

外積に降りる条件

a∧ba\wedge b によって定まる写像を作るには、a,ba,b を入れ替えると符号が反転することが必要である。同じことが x,yx,y 側にも必要であり、そこでは跡の巡回性が効く。

非退化性の確認

抽象的に議論するより、行列単位で係数を直接取り出すのが確実である。eij∧ekle_{ij}\wedge e_{kl} の係数は、対応する「反対向き」の eli∧ejke_{li}\wedge e_{jk} と pairing することで取り出せる。したがって、すべての pairing が 00 なら元そのものが 00 でなければならない。

解答

(1) まず F(a,b,x,y)=tr⁡(xayb−xbya) F(a,b,x,y)=\operatorname{tr}(xayb-xbya) とおく。これは a,b,x,ya,b,x,y のそれぞれについて線形である。また F(b,a,x,y)=−F(a,b,x,y) F(b,a,x,y)=-F(a,b,x,y) であり、さらに跡の巡回性を用いると F(a,b,y,x)=tr⁡(yaxb−ybxa)=tr⁡(xbya−xayb)=−F(a,b,x,y). \begin{aligned} F(a,b,y,x) &=\operatorname{tr}(yaxb-ybxa)\\ &=\operatorname{tr}(xbya-xayb)\\ &=-F(a,b,x,y). \end{aligned} したがって FF は (a,b)(a,b) について交代的、かつ (x,y)(x,y) について交代的である。外積の普遍性により、ただ一つの双線形形式 ϕ:∧2V×∧2V→R \phi:\wedge^2 V\times \wedge^2 V\to\mathbb{R} が存在し、 ϕ(a∧b,x∧y)=F(a,b,x,y) \phi(a\wedge b,x\wedge y)=F(a,b,x,y) を満たす。

(2) 行列単位の積は eijekl=δjkeil e_{ij}e_{kl}=\delta_{jk}e_{il} である。したがって eijeklepq=δjkδlpeiq e_{ij}e_{kl}e_{pq} = \delta_{jk}\delta_{lp}e_{iq} であり、 tr⁡(eijeklepq)=δjkδlpδiq \operatorname{tr}(e_{ij}e_{kl}e_{pq}) = \delta_{jk}\delta_{lp}\delta_{iq} となる。

(3) u∈∧2Vu\in\wedge^2V を u=12∑i,j,k,lcij,kl eij∧ekl u=\frac12 \sum_{i,j,k,l} c_{ij,kl}\,e_{ij}\wedge e_{kl} と書く。ただし ckl,ij=−cij,kl c_{kl,ij}=-c_{ij,kl} とする。この表示で、すべての係数 cij,klc_{ij,kl} が 00 であることと u=0u=0 であることは同値である。

任意の添字 (i,j,k,l)(i,j,k,l) に対し、x=elix=e_{li}、y=ejky=e_{jk} とおく。上の積公式を 44 個の行列の積に用いると ϕ(eab∧ecd, eli∧ejk)=δiaδbjδkcδdl−δicδdjδkaδbl. \begin{aligned} &\phi(e_{ab}\wedge e_{cd},\,e_{li}\wedge e_{jk})\\ &\quad = \delta_{ia}\delta_{bj}\delta_{kc}\delta_{dl} - \delta_{ic}\delta_{dj}\delta_{ka}\delta_{bl}. \end{aligned} したがって、反対称条件 ckl,ij=−cij,klc_{kl,ij}=-c_{ij,kl} と係数 12\frac12 に注意すると、uu との pairing は ϕ(u,eli∧ejk)=12{cij,kl−ckl,ij}=cij,kl \phi(u,e_{li}\wedge e_{jk}) = \frac12\{c_{ij,kl}-c_{kl,ij}\} = c_{ij,kl} である。もしすべての w∈∧2Vw\in\wedge^2V に対して ϕ(u,w)=0\phi(u,w)=0 なら、特に w=eli∧ejkw=e_{li}\wedge e_{jk} と取って cij,kl=0 c_{ij,kl}=0 がすべての添字について成り立つ。ゆえに u=0u=0 である。すなわち ϕ\phi は非退化である。

最終答

(1)ϕ(a∧b,x∧y)=tr⁡(xayb−xbya) で定まる。 \text{(1)}\quad \phi(a\wedge b,x\wedge y)=\operatorname{tr}(xayb-xbya)\text{ で定まる。} (2)tr⁡(eijeklepq)=δjkδlpδiq \text{(2)}\quad \operatorname{tr}(e_{ij}e_{kl}e_{pq}) = \delta_{jk}\delta_{lp}\delta_{iq} (3)行列単位の外積係数を pairing で回収できるため、ϕ は非退化である。 \text{(3)}\quad \text{行列単位の外積係数を pairing で回収できるため、}\phi\text{ は非退化である。}

第5問 — 円周上の射影力学系

円周上の固定点と固有値

正規化しているため、固有値の絶対値ではなく符号が重要である。正の固有値の方向は固定され、負の固有値の方向は反対側へ移る。ここを取り違えると (a) の判定を誤りやすい。

(a) が開になる理由

22 次元で行列式が負なら、固有値は必ず実数で異符号である。この条件は det⁡L<0\det L<0 という開条件で表せる。

(b) の落とし穴

すべての反復で固定点を持つという条件は強そうに見えるが、重固有値をもつ Jordan 型の行列を含んでしまう。その近くには複素固有値をもつ行列があり、固定点数が突然 00 になる。これが開でない理由である。

解答

固定点の基本観察 v∈S1v\in S^1 が fLf_L の固定点であることは Lv∣Lv∣=v \frac{Lv}{|Lv|}=v と同値である。したがって、ある正の実数 λ>0\lambda>0 が存在して Lv=λv Lv=\lambda v となることと同値である。つまり、固定点は LL の正の実固有値に対応する固有方向から生じる。ひとつの固有直線は円周上の 22 点を与える。

また合成については、方向だけを見る写像なので fLm=fLm f_L^m=f_{L^m} である。

(a) det⁡L<0\det L<0 なら、LL は互いに異符号の実固有値をもつ。正の固有値に対応する固有直線だけが fLf_L の固定点を与えるので #Fix⁡(fL)=2. \#\operatorname{Fix}(f_L)=2. 一方 L2L^2 の固有値は正であり、通常は二つの固有直線が固定点を与える。もし固有値が λ\lambda と −λ-\lambda の形であれば L2=λ2IL^2=\lambda^2 I となり、fL2f_L^2 は恒等写像になる。この場合も固定点は無限個であり、やはり 22 より多い。したがって det⁡L<0\det L<0 なら (a) の条件を満たす。

逆に det⁡L>0\det L>0 のとき、実固有値があれば二つとも同符号である。二つとも正なら fLf_L と fL2f_L^2 の固定方向は同じであり、二つとも負なら fLf_L は固定点を持たない。複素固有値の場合も固定点はない。よって (a) は成り立たない。

したがって (a) の集合は {L∈GL(2,R)∣det⁡L<0} \{L\in GL(2,\mathbb{R})\mid \det L<0\} であり、これは開集合である。

(b) (b) の集合は開ではない。反例として L0=(1101) L_0= \begin{pmatrix} 1&1\\ 0&1 \end{pmatrix} を取る。このとき L0m=(1m01) L_0^m= \begin{pmatrix} 1&m\\ 0&1 \end{pmatrix} であり、各 m≥1m\ge1 について正の固有値 11 をもち、固有直線は一つである。したがって #Fix⁡(fL0m)=2 \#\operatorname{Fix}(f_{L_0}^m)=2 であり、L0L_0 は (b) の集合に属する。

しかし任意に小さい ε>0\varepsilon>0 に対し Lε=(11−ε1) L_\varepsilon= \begin{pmatrix} 1&1\\ -\varepsilon&1 \end{pmatrix} は L0L_0 に近いが、固有値は 1±iε 1\pm i\sqrt{\varepsilon} であり実固有方向を持たない。したがって fLεf_{L_\varepsilon} は固定点を持たず、(b) の集合に属さない。よって (b) は開集合ではない。

最終答

条件(a)開集合である。実際、条件は det⁡L<0 と同値である。 \text{条件(a)}\quad \text{開集合である。実際、条件は }\det L<0\text{ と同値である。} 条件(b)開集合ではない。 \text{条件(b)}\quad \text{開集合ではない。} 例えば (1101)\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix} は条件(b)を満たすが、任意に近くに固定点を持たない行列がある。

第6問 — 切断をもつ対数と周回積分

枝が存在する理由

比 (z−a)/(z−b)(z-a)/(z-b) は、線分 [a,b][a,b] をちょうど負の実軸へ送る。したがってその線分を除けば、主値対数の切断に触れず、一価正則な対数を取れる。

符号の確認

上側と下側の対数の差は −2πi-2\pi i である。境界の向きにより外側の円周積分にはさらに負号が付くため、最終的な符号は +2πi(eb−ea)+2\pi i(e^b-e^a) になる。

解答

(1) w(z)=z−az−b w(z)=\frac{z-a}{z-b} とおく。z∈C∖[a,b]z\in\mathbb{C}\setminus[a,b] に対し、w(z)w(z) は 00 にならず、また負の実軸上の値を取らない。実際、w(z)w(z) が負の実数なら、z−az-a と z−bz-b は反対向きの実数倍であり、zz は実軸上で aa と bb の間にあることになる。

したがって主値対数を用いて Log⁡w(z) \operatorname{Log} w(z) を定義すれば、これは C∖[a,b]\mathbb{C}\setminus[a,b] 上の一価正則関数である。x>bx>b では (x−a)/(x−b)>0(x-a)/(x-b)>0 なので、この正則関数は通常の実対数 log⁡x−ax−b \log\frac{x-a}{x-b} と一致する。

(2) 上で定めた枝を L(z)=Log⁡z−az−b L(z)=\operatorname{Log}\frac{z-a}{z-b} と書く。円周の内側から線分 [a,b][a,b] を除いた領域で ezL(z)e^zL(z) は正則である。線分の上側と下側での境界値を比べる。

x∈(a,b)x\in(a,b) とすると、(x−a)/(x−b)(x-a)/(x-b) は負の実数である。上側から近づくと偏角は −π-\pi、下側から近づくと偏角は +π+\pi になるので L+(x)−L−(x)=−2πi L_+(x)-L_-(x)=-2\pi i である。

切断の上下を含む境界積分を考えると、外側の円周積分はこの jump の寄与で決まる。向きに注意すると ∫CezL(z) dz=−∫abex{L+(x)−L−(x)} dx=2πi∫abex dx=2πi(eb−ea). \begin{aligned} \int_C e^zL(z)\,dz &= -\int_a^b e^x\{L_+(x)-L_-(x)\}\,dx\\ &= 2\pi i\int_a^b e^x\,dx\\ &= 2\pi i(e^b-e^a). \end{aligned}

最終答

(1)Log⁡z−az−b \text{(1)}\quad \boxed{ \operatorname{Log}\frac{z-a}{z-b} } が求める一価正則な枝を与える。 (2)∫Cezlog⁡z−az−b dz=2πi(eb−ea) \text{(2)}\quad \boxed{ \int_C e^z\log\frac{z-a}{z-b}\,dz = 2\pi i(e^b-e^a) }

第7問 — 畳み込み平均と無限遠極限

(a) から (b) の核

畳み込みは、無限遠での ff の値を φ\varphi で重み付け平均したものである。可積分核の遠い尾部は小さく、残りの有限範囲では t−s→∞t-s\to\infty が一様に成り立つ。

一様連続性が必要な場所

(b) から (a) では、短い区間平均の極限から点値の極限を取り出す。一様連続性があるから、f(t)f(t) と近くの値 f(t−s)f(t-s) が一様に近い。単なる連続性だけでは、この比較を tt に依存せず行うことができない。

核の選び方

任意の φ∈S\varphi\in S について成り立つという仮定を、特に短い区間の指示関数に適用する。これにより、点値 f(t)f(t) に近い局所平均を直接扱える。

解答

条件 (a) から条件 (b) 変数変換 s=t−rs=t-r により (φ∗f)(t)=∫−∞∞φ(s)f(t−s) ds (\varphi*f)(t) = \int_{-\infty}^{\infty}\varphi(s)f(t-s)\,ds と書ける。ff は有界なので、ある M>0M>0 に対し ∣f(t)∣≤M|f(t)|\le M が成り立つ。

ε>0\varepsilon>0 を任意に取る。φ\varphi は非負で可積分なので、十分大きい R>0R>0 を取れば ∫∣s∣>Rφ(s) ds<εM+∣A∣+1 \int_{|s|>R}\varphi(s)\,ds < \frac{\varepsilon}{M+|A|+1} とできる。一方、仮定 (a) より、t→∞t\to\infty のとき f(t−s)→Af(t-s)\to A は ∣s∣≤R|s|\le R 上で一様に成り立つ。したがって十分大きい tt について ∣f(t−s)−A∣<ε(∣s∣≤R) |f(t-s)-A|<\varepsilon \qquad (|s|\le R) である。

よって ∣(φ∗f)(t)−A∫−∞∞φ(s) ds∣≤∫∣s∣≤Rφ(s)∣f(t−s)−A∣ ds+∫∣s∣>Rφ(s)∣f(t−s)−A∣ ds≤ε∫−∞∞φ(s) ds+(M+∣A∣)∫∣s∣>Rφ(s) ds. \begin{aligned} &\left| (\varphi*f)(t) - A\int_{-\infty}^{\infty}\varphi(s)\,ds \right|\\ &\quad\le \int_{|s|\le R}\varphi(s)|f(t-s)-A|\,ds +\int_{|s|>R}\varphi(s)|f(t-s)-A|\,ds\\ &\quad\le \varepsilon\int_{-\infty}^{\infty}\varphi(s)\,ds +(M+|A|)\int_{|s|>R}\varphi(s)\,ds. \end{aligned} 右辺は任意に小さくできるので (b) が従う。

条件 (b) から条件 (a) ff は一様連続である。ε>0\varepsilon>0 に対し、ある δ>0\delta>0 が存在して ∣u−v∣≤δ⟹∣f(u)−f(v)∣<ε |u-v|\le\delta \quad\Longrightarrow\quad |f(u)-f(v)|<\varepsilon となる。

ここで φδ(s)={1,0≤s≤δ,0,otherwise \varphi_\delta(s)= \begin{cases} 1,&0\le s\le\delta,\\ 0,&\text{otherwise} \end{cases} を取ると、φδ∈S\varphi_\delta\in S である。仮定 (b) より ∫0δf(t−s) ds⟶Aδ(t→∞) \int_0^\delta f(t-s)\,ds \longrightarrow A\delta \qquad (t\to\infty) である。

一方、0≤s≤δ0\le s\le\delta では ∣t−(t−s)∣≤δ|t-(t-s)|\le\delta だから ∣f(t)−f(t−s)∣<ε |f(t)-f(t-s)|<\varepsilon である。したがって ∣f(t)−A∣≤∣f(t)−1δ∫0δf(t−s) ds∣+∣1δ∫0δf(t−s) ds−A∣≤ε+∣1δ∫0δf(t−s) ds−A∣. \begin{aligned} |f(t)-A| &\le \left| f(t)-\frac1\delta\int_0^\delta f(t-s)\,ds \right| + \left| \frac1\delta\int_0^\delta f(t-s)\,ds-A \right|\\ &\le \varepsilon + \left| \frac1\delta\int_0^\delta f(t-s)\,ds-A \right|. \end{aligned} t→∞t\to\infty とすると右辺の第二項は 00 へ収束する。ε>0\varepsilon>0 は任意であるから f(t)→A f(t)\to A が従う。よって (a) と (b) は同値である。

最終答

(a)⇒(b)可積分核の尾部を有界性で抑え、有限区間では f(t−s)→A を一様に使う。 \text{(a)}\Rightarrow\text{(b)}\quad \text{可積分核の尾部を有界性で抑え、有限区間では }f(t-s)\to A\text{ を一様に使う。} (b)⇒(a)短い区間の指示関数を核に取り、一様連続性で区間平均と点値を比較する。 \text{(b)}\Rightarrow\text{(a)}\quad \text{短い区間の指示関数を核に取り、一様連続性で区間平均と点値を比較する。} 以上により条件 (a) と条件 (b) は同値である。

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