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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2010年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2010年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 階数低下と零固有値

階数が下がる理由

AA から A2A^2 へ移ったときに階数が下がるのは,単に AA が特異である だけでは足りない。零固有値の方向に長さ 22 以上のジョルダン鎖がある, という条件が必要である。三次行列では,この条件が 「特性多項式で 00 が少なくとも重根」という計算条件に反映される。

第2段階の見方

(1) の条件下では A2A^2 は階数 11 で固定される。したがって rankA2>rankA3\operatorname{rank}A^2>\operatorname{rank}A^3 を調べる問題は, A3A^3 が零行列になるかどうかだけを見る問題に変わる。

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(1) 特性多項式を p(λ)=det(λIA) p(\lambda)=\det(\lambda I-A) とおく。直接計算すると p(λ)=λ3(a+3)λ2+(3a+b+3c2)λ+2(a+b+c). p(\lambda) =\lambda^3-(a+3)\lambda^2+(3a+b+3c-2)\lambda+2(a+b+c).

rankA>rankA2 \operatorname{rank}A>\operatorname{rank}A^2 なら,ある vkerAv\notin\ker A に対して A2v=0A^2v=0 となる。したがって 00 に対応するジョルダン鎖の長さが少なくとも 22 であり, 00 は特性多項式の重根である。よって a+b+c=0,3a+b+3c2=0. a+b+c=0,\qquad 3a+b+3c-2=0. これを解くと b=1,a+c=1. b=-1,\qquad a+c=1.

逆に b=1, c=1ab=-1,\ c=1-a とすると A2=(a2+3a2a53a11000a23a+2a+53a+11). A^2= \begin{pmatrix} a^2+3a-2&-a-5&-3a-11\\ 0&0&0\\ -a^2-3a+2&a+5&3a+11 \end{pmatrix}. この行列は零行列でなく階数 11 である。一方, detA=2(a+b+c)=0 \det A=-2(a+b+c)=0 であり,例えば第 1,21,2 行,第 2,32,3 列の小行列式は det(1311)=2 \det\begin{pmatrix}-1&-3\\-1&-1\end{pmatrix}=-2 であるから rankA=2\operatorname{rank}A=2。したがって rankA=2>1=rankA2 \operatorname{rank}A=2>1=\operatorname{rank}A^2 となる。これで (1) の条件は必要十分である。

(2) さらに b=1, c=1ab=-1,\ c=1-a のもとでは,特性多項式は p(λ)=λ2{λ(a+3)} p(\lambda)=\lambda^2\{\lambda-(a+3)\} であり,実際に A3=(a+3)A2 A^3=(a+3)A^2 が成り立つ。したがって a3a\neq -3 なら rankA3=rankA2=1\operatorname{rank}A^3=\operatorname{rank}A^2=1 である。 一方 a=3a=-3 のときは A3=0A^3=0 かつ A20A^2\neq0 なので rankA2=1>0=rankA3. \operatorname{rank}A^2=1>0=\operatorname{rank}A^3.

最終答

(1)rankA>rankA2b=1,a+c=1 \text{(1)}\quad \boxed{ \operatorname{rank}A>\operatorname{rank}A^2 \quad\Longleftrightarrow\quad b=-1,\quad a+c=1 } (2)(a,b,c)=(3,1,4) \text{(2)}\quad \boxed{ (a,b,c)=(-3,-1,4) }

2 — コーシー型核の積分と畳み込み

aa の符号を落とさない

分母には a2a^2 が現れるため幅は a|a| で決まる。一方,関数全体の符号は a/aa/|a| で決まるので,最初の積分は 11 とは限らない。

畳み込みで幅が足される

コーシー核は畳み込みに対して閉じており,幅 α\alpha と幅 β\beta の 畳み込みは幅 α+β\alpha+\beta の核になる。ここでは同じ幅 a|a| を二回 畳み込むので,幅は 2a2|a| になる。

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(1) まず dxx2+a2=πa \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^2+a^2}=\frac{\pi}{|a|} である。したがって f(x)dx=aππa=aa. \int_{-\infty}^{\infty} f(x)\,dx =\frac{a}{\pi}\cdot\frac{\pi}{|a|} =\frac{a}{|a|}.

(2) 次に畳み込み積分を求める。標準的なコーシー核 Pα(x)=απ(x2+α2)(α>0) P_\alpha(x)=\frac{\alpha}{\pi(x^2+\alpha^2)} \qquad(\alpha>0) を用いると,今回の関数は f(x)=aaPa(x) f(x)=\frac{a}{|a|}P_{|a|}(x) である。フーリエ変換 Pα^(ξ)=eαξ \widehat{P_\alpha}(\xi)=e^{-\alpha|\xi|} を使えば PaPa^(ξ)=e2aξ=P2a^(ξ). \widehat{P_{|a|}*P_{|a|}}(\xi) =e^{-2|a||\xi|} =\widehat{P_{2|a|}}(\xi). よって (PaPa)(t)=P2a(t)=2aπ(t2+4a2). (P_{|a|}*P_{|a|})(t) =P_{2|a|}(t) =\frac{2|a|}{\pi(t^2+4a^2)}. 符号係数は二つ掛けると 11 になるので, f(x)f(tx)dx=2aπ(t2+4a2). \int_{-\infty}^{\infty} f(x)f(t-x)\,dx =\frac{2|a|}{\pi(t^2+4a^2)}.

最終答

(1)f(x)dx=aa, \text{(1)}\quad \boxed{ \int_{-\infty}^{\infty} f(x)\,dx=\frac{a}{|a|}, } (2)f(x)f(tx)dx=2aπ(t2+4a2) \text{(2)}\quad \boxed{ \int_{-\infty}^{\infty} f(x)f(t-x)\,dx =\frac{2|a|}{\pi(t^2+4a^2)} }

3 — 有界列空間と収束列の閉性

sup ノルムでの議論

この問題の距離は各項の差を一様に抑える距離である。したがって,極限値の差も 同じ上界で抑えられる。これが (1) の本質である。

閉性はコーシー性で示す

極限列の極限値を先に推測する必要はない。近い収束列を一つ固定し,その列の 後半がコーシーであることを使えば,極限として得られた列もコーシーであると 分かる。

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(1) {xn},{yn}C\{x_n\},\{y_n\}\in C とする。このとき F({xn})F({yn})=limn(xnyn)supn1xnyn=d({xn},{yn}). |F(\{x_n\})-F(\{y_n\})| =\left|\lim_{n\to\infty}(x_n-y_n)\right| \le \sup_{n\ge1}|x_n-y_n| =d(\{x_n\},\{y_n\}). したがって FF はリプシッツ定数 11 の写像であり,特に連続である。

(2) CC の列 {x(k)}k=1\{x^{(k)}\}_{k=1}^{\infty}BB の距離で xBx\in B に収束するとする。ここで x(k)=(x1(k),x2(k),),x=(x1,x2,) x^{(k)}=(x^{(k)}_1,x^{(k)}_2,\ldots), \qquad x=(x_1,x_2,\ldots) と書く。任意の ε>0\varepsilon>0 に対し,ある kk を選んで d(x(k),x)<ε3 d(x^{(k)},x)<\frac{\varepsilon}{3} とできる。また x(k)Cx^{(k)}\in C なので,ある NN が存在して n,mNxn(k)xm(k)<ε3 n,m\ge N\quad\Longrightarrow\quad |x^{(k)}_n-x^{(k)}_m|<\frac{\varepsilon}{3} である。すると n,mNn,m\ge N について xnxmxnxn(k)+xn(k)xm(k)+xm(k)xm<ε. |x_n-x_m| \le |x_n-x^{(k)}_n| +|x^{(k)}_n-x^{(k)}_m| +|x^{(k)}_m-x_m| <\varepsilon. よって {xn}\{x_n\} はコーシー列であり,実数列なので収束する。したがって xCx\in C である。つまり CCBB の閉集合である。

最終答

(1)F(x)F(y)d(x,y) \text{(1)}\quad \boxed{ |F(x)-F(y)|\le d(x,y) } であるから FF は連続である。 (2)C は B の閉集合である \text{(2)}\quad \boxed{C\text{ は }B\text{ の閉集合である}}

4 — シルベスター型写像のジョルダン形

固有値は差で出る

AXXBAX-XB は左から AA,右から BB を作用させる写像である。したがって AA の固有値 α\alphaBB の固有値 β\beta から αβ\alpha-\beta が出る。ジョルダンブロックの大きさは,対角化できない側の ブロックを反映する。

可換条件は線形方程式

(2) では M,NM,N の成分が未知数で,条件はすべて一次式である。 最後まで抽象論で押し切るより,行列表現に直して解空間の次元を読む方が 計算ミスが少ない。

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(1) 与えられた二つの行列について χA(λ)=(λ4)(λ6),χB(λ)=(λ1)(λ2)2 \chi_A(\lambda)=(\lambda-4)(\lambda-6), \qquad \chi_B(\lambda)=(\lambda-1)(\lambda-2)^2 である。さらに AA は対角化可能で,BB は固有値 22 に対して 大きさ 22 のジョルダンブロックを一つ持つ。

XAXXBX\mapsto AX-XB は,列ベクトル化すれば I3ABTI2 I_3\otimes A-B^{\mathsf T}\otimes I_2 で表される。したがって固有値は αβ(α{4,6}, β{1,2}) \alpha-\beta \qquad (\alpha\in\{4,6\},\ \beta\in\{1,2\}) として現れる。BB の固有値 22 の部分が二次のジョルダンブロックで あるため,対応する差の固有値にも二次ブロックが残る。よって fA,BJ2(2)(3)J2(4)(5) f_{A,B}\sim J_2(2)\oplus (3)\oplus J_2(4)\oplus (5) である。

(2) 一般の M=(m11m12m21m22),N=(nij)1i,j3 M=\begin{pmatrix}m_{11}&m_{12}\\m_{21}&m_{22}\end{pmatrix}, \qquad N=(n_{ij})_{1\le i,j\le3} について fM,NfA,B=fA,BfM,N f_{M,N}f_{A,B}=f_{A,B}f_{M,N} を成分比較する。線形方程式を整理すると,解は五つの実数 u,v,s,t,ru,v,s,t,r を用いて M=(32u+v12uuv), M= \begin{pmatrix} \frac32u+v&-\frac12u\\ u&v \end{pmatrix}, N=(32s+52r12(sr)23s+13t+23r3s+3rst00r) N= \begin{pmatrix} -\frac32s+\frac52r&\frac12(s-r)&-\frac23s+\frac13t+\frac23r\\ -3s+3r&s&t\\ 0&0&r \end{pmatrix} と書ける。したがって自由度は 55 であり, dimVA,B=5. \dim V_{A,B}=5.

最終答

(1)fA,BJ2(2)(3)J2(4)(5) \text{(1)}\quad \boxed{f_{A,B}\sim J_2(2)\oplus(3)\oplus J_2(4)\oplus(5)} (2)dimVA,B=5 \text{(2)}\quad \boxed{\dim V_{A,B}=5}

5 — 偶関数を平方根で合成した滑らかさ

偶関数なので奇数次が消える

x\sqrt{x} を代入すると一見すると原点で特異に見える。しかし偶関数の Taylor 展開には奇数次項が出ないため,実際には t2=xt^2=x の滑らかな関数に なっている。

原点だけを丁寧に見る

(0,1)(0,1) 上では通常の合成関数なので問題はない。採点上重要なのは, x=0x=0 で右微分が存在し,導関数が右連続になることを明示する点である。

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偶関数 hhCC^\infty 級なら, Dh(t)={h(t)2t,t0,h(0)2,t=0 Dh(t)= \begin{cases} \dfrac{h'(t)}{2t},&t\ne0,\\[2mm] \dfrac{h''(0)}2,&t=0 \end{cases} で定める関数 DhDhCC^\infty 級の偶関数である。実際, h(t)t=01h(θt)dθ \frac{h'(t)}{t}=\int_0^1 h''(\theta t)\,d\theta と書けるので,右辺は t=0t=0 でも滑らかに延長される。

(1) x=t2 (t>0)x=t^2\ (t>0) とおくと g(x)=f(t)g(x)=f(t) であり, g(x)=f(t)2t=Df(t). g'(x)=\frac{f'(t)}{2t}=Df(t). 上の事実から Df(t)Df(t)t=0t=0 まで連続に延長される。したがって g+(0)=Df(0)=12f(0) g'_+(0)=Df(0)=\frac12 f''(0) であり,gg[0,1)[0,1)C1C^1 級である。

(2) 同様に x>0x>0 では g(x)=D(Df)(t)=D2f(t). g''(x)=D(Df)(t)=D^2f(t). DfDfCC^\infty 級の偶関数なので,D2f(t)D^2f(t)t=0t=0 まで連続に 延長される。特に g+(0)=D2f(0)=112f(4)(0) g''_+(0)=D^2f(0)=\frac1{12}f^{(4)}(0) であり,gg[0,1)[0,1)C2C^2 級である。

(3) 帰納的に,x=t2>0x=t^2>0g(r)(x)=Drf(t)(r=0,1,2,) g^{(r)}(x)=D^r f(t)\qquad(r=0,1,2,\ldots) が成り立つ。上で見たように DDCC^\infty 級の偶関数を再び CC^\infty 級の偶関数へ送るから,すべての DrfD^r ft=0t=0 まで連続に 延長される。よって任意階の右導関数が存在し連続であり,gg[0,1)[0,1)CC^\infty 級である。

最終答

(1)g は [0,1) 上 C1 級 \text{(1)}\quad \boxed{g\text{ は }[0,1)\text{ 上 }C^1\text{ 級}} (2)g は [0,1) 上 C2 級 \text{(2)}\quad \boxed{g\text{ は }[0,1)\text{ 上 }C^2\text{ 級}} (3)g は [0,1) 上 C 級 \text{(3)}\quad \boxed{g\text{ は }[0,1)\text{ 上 }C^\infty\text{ 級}}

6 — 正弦関数の零点と留数の相殺

上下の零点を対で見る

この積分では,零点を一つずつ数えるよりも,上下に共役な二点の留数が 打ち消すことを見るのが速い。正方形が原点対称なので,内部に入るときは この二点が同時に入る。

境界上の確認

留数定理を使うときは,極が積分路上にないことも確認する。ここでは 実部が π/2+2mπ\pi/2+2m\pi,虚部が ±log(2+3)\pm\log(2+\sqrt3) であり,どちらも 正整数の境界値と一致しない。

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(1) z=x+iyz=x+iy と書くと sinz=sinxcoshy+icosxsinhy. \sin z=\sin x\cosh y+i\cos x\sinh y. sinz=2\sin z=2 は実数方程式なので cosxsinhy=0 \cos x\sinh y=0 が必要である。実数 xx では sinx1|\sin x|\le1 だから y=0y=0 は不可能である。 よって cosx=0\cos x=0 であり, x=π2+kπ. x=\frac{\pi}{2}+k\pi. このとき sinx=(1)k\sin x=(-1)^k なので,sinz=2\sin z=2 となるのは kk が偶数で coshy=2 \cosh y=2 のときである。したがって α=arcosh2=log(2+3) \alpha=\operatorname{arcosh}2=\log(2+\sqrt3) とおけば,零点は z=π2+2mπ±iα(mZ) z=\frac{\pi}{2}+2m\pi\pm i\alpha \qquad(m\in\mathbb Z) である。また,これらの点で cosz=isinhα=i3 \cos z=\mp i\sinh\alpha=\mp i\sqrt3 であり零でない。したがってすべて単純零点である。

(2) 留数定理を用いる。零点 zm±=π2+2mπ±iα z_m^\pm=\frac{\pi}{2}+2m\pi\pm i\alpha における留数は Resz=zm+1sinz2=1coszm+=i3, \operatorname*{Res}_{z=z_m^+}\frac{1}{\sin z-2} =\frac{1}{\cos z_m^+} =\frac{i}{\sqrt3}, Resz=zm1sinz2=1coszm=i3. \operatorname*{Res}_{z=z_m^-}\frac{1}{\sin z-2} =\frac{1}{\cos z_m^-} =-\frac{i}{\sqrt3}. したがって上下に対になって入る零点の留数和は 00 である。

n=1n=1 のときは α>1\alpha>1 であるため零点は内部にない。n2n\ge2 のとき, 内部に入る零点は必ず zm+,zmz_m^+,z_m^- の対で入る。境界上に零点が来ることは ない。よって留数の総和は常に 00 であり, 12πiCndzsinz2=0 \frac{1}{2\pi i}\int_{C_n}\frac{dz}{\sin z-2}=0 である。

最終答

(1)零点は単純で π2+2mπ±ilog(2+3)(mZ) \text{(1)}\quad \boxed{ \text{零点は単純で } \frac{\pi}{2}+2m\pi\pm i\log(2+\sqrt3) \qquad(m\in\mathbb Z) } (2)12πiCndzsinz2=0(n=1,2,) \text{(2)}\quad \boxed{ \frac{1}{2\pi i}\int_{C_n}\frac{dz}{\sin z-2}=0 \qquad(n=1,2,\ldots) }

7 — 一次分数変換と対数距離

対数距離では比だけを見る

ρ(x,y)\rho(x,y) は通常の差ではなく比の対数である。したがって一次分数変換の値域の 両端比を見ると,(1) の評価がすぐに得られる。

最良定数は対数座標の微分で出る

(2) は対数座標でのリプシッツ評価である。最大値は acx+bdx acx+\frac{bd}{x} が最小になる点,つまり x=bd/acx=\sqrt{bd/ac} で生じる。ここで平方根を使った 定数が自然に現れる。

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Δ=adbc \Delta=ad-bc とおく。係数はすべて正なので,x0x\ge0 に対して f(x)>0f(x)>0 である。

(1) x>0x>0 を動かすと,f(x)f(x)bdac \frac{b}{d} \quad\text{と}\quad \frac{a}{c} の間の値を取る。したがって任意の x,y>0x,y>0 について, f(x)f(y) \frac{f(x)}{f(y)} は二つの端点比で挟まれる。すなわち logf(x)f(y)loga/cb/d=logadbc. \left|\log\frac{f(x)}{f(y)}\right| \le \left|\log\frac{a/c}{b/d}\right| = \left|\log\frac{ad}{bc}\right|. これで (1) が示された。

(2) 対数座標に移す。s=logxs=\log x とし, H(s)=logf(es) H(s)=\log f(e^s) とおく。このとき ρ(f(x),f(y))=H(logx)H(logy),ρ(x,y)=logxlogy. \rho(f(x),f(y))=|H(\log x)-H(\log y)|, \qquad \rho(x,y)=|\log x-\log y|. 平均値の定理を使うために HH' を評価する。x=esx=e^s とすれば H(s)=xf(x)f(x)=x(adbc)(ax+b)(cx+d). H'(s) =\frac{x f'(x)}{f(x)} =\frac{x(ad-bc)}{(ax+b)(cx+d)}. よって H(s)=adbcacx+(ad+bc)+bd/x. |H'(s)| = \frac{|ad-bc|}{acx+(ad+bc)+bd/x}. 分母は相加相乗平均より acx+bdx2abcd acx+\frac{bd}{x}\ge2\sqrt{abcd} だから H(s)adbcad+bc+2abcd=adbcad+bc. |H'(s)| \le \frac{|ad-bc|}{ad+bc+2\sqrt{abcd}} = \frac{|\sqrt{ad}-\sqrt{bc}|}{\sqrt{ad}+\sqrt{bc}}. したがって平均値の定理により ρ(f(x),f(y))adbcad+bcρ(x,y). \rho(f(x),f(y)) \le \frac{|\sqrt{ad}-\sqrt{bc}|}{\sqrt{ad}+\sqrt{bc}}\rho(x,y).

最終答

(1)ρ(f(x),f(y))logadbc \text{(1)}\quad \boxed{ \rho(f(x),f(y))\le \left|\log\frac{ad}{bc}\right| } (2)ρ(f(x),f(y))adbcad+bcρ(x,y) \text{(2)}\quad \boxed{ \rho(f(x),f(y)) \le \frac{|\sqrt{ad}-\sqrt{bc}|}{\sqrt{ad}+\sqrt{bc}}\rho(x,y) }

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