東大 学際情報学府 学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目 2016年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)
全5問の分野は線形代数1問、微分積分・解析1問、力学1問です。固有値・固有ベクトル、フーリエ変換、固有振動数と振動系などが出ています。2015年度と共通するテーマはフーリエ変換です。解説・解答・最終答まで、このページですべて公開しています。問題本文は含みません。
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第1問 — ロジスティックモデル
ロジスティック解の検算
を代入すると 、 で となる。問題の条件 と、増加して環境収容力 に近づく挙動が一致している。
平衡点の扱い
連立系には複数の平衡点がある。減衰振動の議論は、正の をもつ共存平衡点まわりで行うのが自然である。そのため、まず により が必要であることを明示する。
線形安定性の条件
2次元線形系では、跡が負、行列式が正なら安定である。さらに振動を伴うには固有値が複素数、つまり判別式 が負でなければならない。この3点を分けて書くと、条件の意味が明確になる。
解答
方程式は である。変数分離すると であり、初期値 を用いると となる。
連立方程式は である。平衡点は および、正の共存平衡点が存在する場合 である。共存平衡点が第1象限にある条件は である。
Jacobi 行列は 共存平衡点 では 跡と行列式は 減衰振動しながら収束するには、固有値が負の実部をもつ複素共役であればよい。したがって が必要十分である。すなわち である。
最終答
。共存平衡点は 。減衰振動収束条件は かつ 。
第2問 — 動的計画法
貪欲法ではない
大きい数から順に選ぶ貪欲法は一般には失敗する。例えば大きな値を選ぶことで、その両隣の合計がさらに大きい場合を失うことがある。この問題では、各位置で「選ぶ・選ばない」の2通りを最適部分構造として残す動的計画法が確実である。
解答
列 に対して、隣接しないように選ぶ。最大値は であり、選ぶ部分集合は である。
先頭から 個まで見たときの最大合計値を とする。空集合を許すなら とおく。 では、 を選ばない場合は 、選ぶ場合は を選べないので である。したがって を順に計算すれば、求める最大合計値は である。
擬似コードで書くと次のようになる。
各 で定数回の比較と加算だけを行うため、時間計算量は である。上の擬似コードのように直前2個の値だけを保持すれば、追加メモリは で済む。選んだ要素自体も復元するなら、選択の有無を記録するため メモリを使う。
最終答
最大部分集合は 、合計 。一般には を用いる。時間計算量は 。
第3問 — 無線LANとフーリエ変換
正規化の確認
本答案では逆変換側に を置く約束を使った。この約束では、時間領域の積は周波数領域で 倍の畳み込みになる。余弦の変換に が出るため、最終的に のシフト和になる。
切片と零点
矩形パルスの は面積に等しいので である。三角波の も面積に等しいので である。原点の値を極限または面積で検算できる。
窓関数としての比較
矩形窓は時間幅の端で不連続なのでスペクトルの裾が大きく、漏れが強い。三角窓は端で連続的に0へ落ちるため漏れを抑えるが、主ローブが広がる。このトレードオフが窓関数の比較で最も重要である。
解答
2.4GHz帯は回折しやすく、壁などを通って遠くまで届きやすい。また古い機器を含め対応機器が多い。一方、5GHz帯は利用できるチャネルが多く、電子レンジやBluetoothなどとの干渉が比較的小さいため、近距離では高速・安定な通信を得やすい。
ここでは角周波数 に対して をフーリエ変換とする。対応する逆変換は である。
矩形パルスについて での値は極限により であり、零点は である。概形は偶関数の sinc 形で、原点から振動しながら 程度で減衰する。
である。時間領域の積は周波数領域の畳み込みに対応する。さらに なので つまり、矩形パルスのスペクトルが だけ平行移動し、半分ずつ重なったものになる。
三角波は偶関数なので では で、零点は である。矩形窓に比べて主ローブは広いが、スペクトルの裾は 程度で速く減衰し、サイドローブが小さい。したがって周波数分解能は下がるが、漏れは抑えやすい。
最終答
、、。
第4問 — 材料力学
軸力の符号
外力全体は左向き 、右向き でつり合っている。区間ごとの軸力は、切断面の片側だけを取り出してつり合いを書くと間違えにくい。
単位換算
は と同じである。したがって と直接読める。伸び計算では を使えば、長さの単位は のままそろう。
体積変化の近似
微小変形では体積変化率を3方向ひずみの和で近似できる。通常の金属のポアソン比は なので、軸方向に伸びる量が横方向2方向の縮みを上回り、体積が増える。
解答
重ね合わせの原理とは、材料が線形弾性範囲にあり、変形が微小で幾何学的非線形性を無視できるとき、複数の荷重による応力・ひずみ・変位が各荷重単独の応答の和として表せるという原理である。弾性限度を超える塑性変形、大変形、接触条件の変化がある場合には一般に成立しない。
引張を正とする。各区間の軸力は、切断面の左側に作用する外力のつり合いから求める。 いずれも引張応力である。
長さは 、、全長 なので である。断面積 、ヤング率 を用いると、伸びは
一軸引張で軸方向の垂直ひずみを とすると、横ひずみはおよそ である。微小変形では体積ひずみは3方向の垂直ひずみの和で となる。通常の金属ではポアソン比 なので、、すなわち体積は増加する。
鋼の応力ひずみ線図は、初期に直線的な弾性域を持ち、その後、降伏、加工硬化、最大応力、くびれ、破断へ進む。
弾性限度は、荷重を除けば元に戻る範囲の上限である。降伏点は、応力がほぼ増えないまま塑性ひずみが進む点または領域である。引張強さは公称応力の最大値で、最大荷重を元の断面積で割った値に対応する。
最終答
断面応力は 、、 の引張。棒の伸びは約 。
第5問 — エレベータ待ち行列
待ち時間の定義
本問では、1階で停止している時間は待ち時間に含めない。したがって「出発時刻」ではなく「1階で扉が開く時刻」までを待ち時間として計算する。これにより、(3) では ではなく 、(4) では が基準になる。
連続流としての扱い
到着が一様であるため、到着率 人/分の連続流として計算している。60分後の待ち人数は、累計到着人数から、その時点までに出発したエレベータの輸送人数を引けばよい。
容量比の直感
需要容量比が1を超えると、待ち行列は解消せず時間とともに増える。(4) は定員が増えてもサイクルが長くなれば容量が下がる例であり、エレベータや交通施設では「1回の輸送量」だけでなく「周期」を同時に見る必要がある。
解答
1サイクルは、上昇3分、展望階停止2分、下降3分、1階停止2分の合計10分である。測定開始直後に出発するので、次に1階で扉が開くのは8分後である。待ち時間には1階停止中の2分を含めないため、到着時刻をサイクル内の とすると である。一様到着より平均待ち時間は
到着率は である。容量は10分ごとに20人なので したがって需要容量比は である。1サイクルあたり到着は 人、輸送は20人なので、待ち人数は1サイクルごとに2人増える。60分後は6サイクル後であり、 が1階で待っている。
回目の出発時刻は 分、1階で扉が開く時刻は 分である。FIFOで乗るので、 回目のエレベータに乗る最後の客は、連続流として見ると累計 人目であり、到着時刻は 分である。全員の待ち時間が10分以上となるには、この最後の客でも を満たせばよい。これより なので最小の整数は である。したがって最初のエレベータは に出発する。
この場合、1サイクルは上昇3分、展望階停止2分、下降3分、1階停止3分で である。容量は11分ごとに21人なので、1時間あたり容量は したがって需要容量比は
60分までに出発するのは 分の5回であり、輸送人数は である。一方、60分間の到着人数は なので、待ち人数は である。
回目の出発時刻は 分、1階で扉が開く時刻は 分である。 回目の最後の乗客は累計 人目であり、到着時刻は 分である。全員が10分以上待つ条件は である。すなわち となるので、最小の整数は である。出発時刻は である。
1回あたりの定員は20人から21人に増えているが、1階停止時間が1分延びたため、サイクル長が10分から11分に増える。容量は 人/時から約 人/時へ下がり、需要容量比は から約 へ悪化する。少し定員を増やしても、停止時間が延びると総輸送力は低下し、待ち行列の増加が速くなる。
最終答
(1) 平均待ち時間 分。(2) 需要容量比 、60分後の待ち人数 人。(3) 分後。(4) 需要容量比約 、60分後 人、全員10分以上待つ最初の出発は 分後。
年度別の解答例(11年度)
基礎数学 / 画像検索 / 重力走行と振動
基礎数学 / オペアンプ回路 / 流体の無次元数
二次曲線 / CとRPN / 色空間とDCT
回帰と正則化 / Cと正規表現 / 二色性反射
2016年度(このページ・全5問)最終答まで公開
ロジスティックモデル / 動的計画法 / 無線LANとフーリエ変換
2015年度(全5問)最終答まで公開
ガウス関数のフーリエ変換 / 乱数生成アルゴリズム / レイトレーシング
2014年度(全5問)最終答まで公開
積分とアステロイド / 水量計測と状態探索 / 画像処理
2013年度(全5問)最終答まで公開
QR分解と最小二乗 / 集合データ構造 / 信号処理
2012年度(全5問)最終答まで公開
線形最小二乗 / ソートの計算量 / 線形システムと相互情報量
2011年度(全7問)最終答まで公開
固有値と漸化式 / 命題論理 / 信号解析
2010年度(全11問)最終答まで公開
線形微分方程式 / 漸化式と高速計算 / z 変換とデジタルフィルタ
2016年度の出題内容
全5問
同じテーマを出した他大学・他年度
6テーマ
前年度(2015年度)との違い
東京大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2010〜2020(先端表現情報学コースとして公開されている専門科目)
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 英語の扱い
- TOEFL/TOEIC 等の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFを公開。
- 院試hubの最終確認
- 2026-07-05