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東大 学際情報学府 学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目 2015年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は情報1問、微分積分・解析1問です。フーリエ変換、カルノーサイクル、熱力学第一・第二法則が出ています。解説・解答・最終答まで、このページですべて公開しています。問題本文は含みません。

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第1問 — ガウス関数のフーリエ変換

微分方程式への持ち込み

ガウス関数は微分しても xx 倍のガウス関数に戻る。この性質により、フーリエ変換の uu 微分で現れる xf(x)x f(x) を f′(x)f'(x) に置き換えられる。ここがこの問題の中心である。

境界項の確認

部分積分では [f(x)e−jux]−∞∞=0 \left[f(x)e^{-jux}\right]_{-\infty}^{\infty}=0 を明記する必要がある。指数因子 e−juxe^{-jux} は絶対値1で振動するだけであり、減衰は f(x)f(x) のガウス減衰が担う。

正規化定数の決定

微分方程式だけでは定数 CC は決まらない。u=0u=0 の値が元のガウス積分そのものになることを使って定数を決める。最終式は、幅 σ\sigma のガウス関数の変換が幅 1/σ1/\sigma に対応するガウス関数になることも示している。

解答

フーリエ変換を F(u)=∫−∞∞f(x)e−jux dx,f(x)=exp⁡(−x22σ2) F(u)=\int_{-\infty}^{\infty} f(x)e^{-jux}\,dx,\qquad f(x)=\exp\left(-\frac{x^2}{2\sigma^2}\right) とする。ここで f′(x)=−xσ2f(x)⟺xf(x)=−σ2f′(x) f'(x)=-\frac{x}{\sigma^2}f(x) \quad\Longleftrightarrow\quad xf(x)=-\sigma^2 f'(x) である。したがって dFdu=∫−∞∞f(x)(−jx)e−jux dx=jσ2∫−∞∞f′(x)e−jux dx. \frac{dF}{du} =\int_{-\infty}^{\infty} f(x)(-jx)e^{-jux}\,dx =j\sigma^2\int_{-\infty}^{\infty} f'(x)e^{-jux}\,dx . 部分積分を用いると、ガウス関数は無限遠で0に収束するので境界項は消え、 ∫−∞∞f′(x)e−jux dx=[f(x)e−jux]−∞∞+ju∫−∞∞f(x)e−jux dx=juF(u) \int_{-\infty}^{\infty} f'(x)e^{-jux}\,dx =\left[f(x)e^{-jux}\right]_{-\infty}^{\infty} +ju\int_{-\infty}^{\infty} f(x)e^{-jux}\,dx =juF(u) となる。よって dFdu=−σ2uF(u) \frac{dF}{du}=-\sigma^2uF(u) が示された。

この微分方程式は、F(u)≠0F(u)\neq 0 の範囲で 1FdFdu=−σ2u \frac{1}{F}\frac{dF}{du}=-\sigma^2u と書ける。積分して log⁡F(u)=−σ2u22+C0 \log F(u)=-\frac{\sigma^2u^2}{2}+C_0 を得るから、一般解は F(u)=Cexp⁡(−σ2u22) F(u)=C\exp\left(-\frac{\sigma^2u^2}{2}\right) である。

最後に u=0u=0 を代入すると F(0)=∫−∞∞f(x) dx=2πσ F(0)=\int_{-\infty}^{\infty} f(x)\,dx=\sqrt{2\pi}\sigma であるから C=2πσC=\sqrt{2\pi}\sigma である。

最終答

F(u)=2πσexp⁡(−σ2u22)\displaystyle F(u)=\sqrt{2\pi}\sigma\exp\left(-\frac{\sigma^2u^2}{2}\right)

第2問 — 乱数生成アルゴリズム

一様性の根拠

サイコロの式では [0,1)[0,1) を長さ 1/61/6 の6区間に分けているため、元の乱数が一様なら各目の確率は等しい。整数乱数を任意範囲に写すときは、単純な剰余で周期 mm と範囲長 NN が割り切れない場合にわずかな偏りが出るので、答案ではその注意を添えるとよい。

逆関数法

指数分布のように分布関数が明示的に逆関数を持つ場合、一様乱数 UU を確率 F(t)F(t) の軸に置いて t=F−1(U)t=F^{-1}(U) に戻すと、目的の分布を持つ乱数が得られる。

正規乱数

Box--Muller法は、2次元標準正規分布を極座標で見たとき、角度が一様、半径二乗が指数分布になることを利用している。標準正規の密度式をそのままサンプリングするのではなく、一様乱数から変換して作る点を明記する。

解答

  1. 整数の一様乱数の例として線形合同法を挙げる。内部状態 XkX_k に対し Xk+1=(aXk+c) mod m X_{k+1}=(aX_k+c)\bmod m を計算し、Xk+1X_{k+1} を整数乱数として用いる。区間 0,…,N−10,\ldots,N-1 にしたい場合は、周期や偏りを確認した上で剰余を取るか、偏りが出る余りを捨てる棄却法を用いる。

  2. サイコロの目は、U=random()U=\mathrm{random}() として D=⌊6U⌋+1 D=\lfloor 6U\rfloor+1 により生成できる。U∈[0,1)U\in[0,1) なので 6U∈[0,6)6U\in[0,6) であり、床関数により 0,…,50,\ldots,5 の6区間に等分される。最後に1を加えることで 1,…,61,\ldots,6 の目になる。

  3. 指数分布乱数は逆関数法で生成できる。指数分布の分布関数は F(t)=1−e−λt(t≥0) F(t)=1-e^{-\lambda t}\qquad (t\geq 0) であるから、U=random()U=\mathrm{random}() に対し T=F−1(U)=−1λlog⁡(1−U) T=F^{-1}(U)=-\frac{1}{\lambda}\log(1-U) とすればよい。1−U1-U も [0,1)[0,1) 上の一様乱数と同等に扱えるため、実装では −log⁡U/λ-\log U/\lambda と書くことも多い。

  4. 標準正規分布乱数はBox--Muller法で生成できる。独立な一様乱数 U1,U2∈(0,1)U_1,U_2\in(0,1) を用意し、 Z1=−2log⁡U1cos⁡(2πU2),Z2=−2log⁡U1sin⁡(2πU2) Z_1=\sqrt{-2\log U_1}\cos(2\pi U_2),\qquad Z_2=\sqrt{-2\log U_1}\sin(2\pi U_2) とする。この Z1,Z2Z_1,Z_2 は平均0、分散1の独立な正規乱数である。

最終答

一様整数: 線形合同法、サイコロ: ⌊6U⌋+1\lfloor 6U\rfloor+1、指数分布: −log⁡(1−U)/λ-\log(1-U)/\lambda、標準正規: Box--Muller法。

第3問 — レイトレーシング

可視点の意味

レイ上の点は tt の大小で視点からの奥行き順に並ぶ。したがって、複数の交点がある場合は「最も近い正の tt」が画素に見える面である。負の tt は視点の後方なので候補から除く。

球との交差判定

球の表面条件は中心からの距離が半径に等しいことである。レイの式を代入すると tt に関する2次方程式になり、判別式が幾何的な交差の有無を表す。Δ=0\Delta=0 は接する場合、Δ>0\Delta>0 は2点で交わる場合である。

高速化の観点

レイトレーシングの時間の多くは、シェーディングそのものよりも交差判定に使われる。複雑なポリゴンモデルでは、安価な境界判定を先に行い、高価な三角形判定を必要な部分だけに限定する説明が採点上重要である。

解答

  1. 空欄には、例えば次の処理を書く。

    交差点のうち視点に最も近い点を可視点として選ぶ \text{交差点のうち視点に最も近い点を可視点として選ぶ}

    レイが複数の物体と交差する場合、画素に見えるのはレイの始点から見て最小の正のパラメータ tt を持つ交点である。したがって、すべての交差候補を調べ、t>0t>0 かつ最小のものを選んでから、その点の色を計算する。

  2. 球の中心を SS、半径を rr、レイを P(t)=E+Vt,∥V∥=1 P(t)=E+Vt,\qquad \|V\|=1 とする。交差判定は ∥P(t)−S∥2=r2 \|P(t)-S\|^2=r^2 を満たす tt が存在するかを調べればよい。D=E−SD=E-S とおくと ∥D+Vt∥2=r2 \|D+Vt\|^2=r^2 より t2+2(V⋅D)t+∥D∥2−r2=0 t^2+2(V\cdot D)t+\|D\|^2-r^2=0 を得る。判別式 Δ=(V⋅D)2−(∥D∥2−r2) \Delta=(V\cdot D)^2-\left(\|D\|^2-r^2\right) が負なら交差しない。Δ≥0\Delta\geq 0 なら t=−(V⋅D)±Δ t=-(V\cdot D)\pm\sqrt{\Delta} が交点候補であり、このうち t>0t>0 で最小のものを可視点候補とする。交点座標は P=E+VtP=E+Vt で与えられる。

  3. 多数のポリゴンを含む複雑形状では、全ポリゴンと全レイを総当たりで交差判定すると計算量が大きい。高速化には、まず物体やポリゴン群をバウンディングボリュームで階層化する。レイが外側の箱や球と交差しなければ、その内部の多数の三角形判定をまとめて省略できる。さらにBVH、kd-tree、octreeなどで空間を分割し、レイが通過する領域だけをたどる。形状を階層的に枝刈りすることで、平均的な交差判定回数を大幅に減らせる。

最終答

最小の正の tt を持つ交点を可視点に選び、球とは2次方程式の判別式で交差判定する。複雑形状はBVHや空間分割で交差判定を枝刈りする。

第4問 — カルノーサイクル

熱と仕事の符号

高温側の等温膨張で熱を受け取り、低温側の等温圧縮で熱を捨てる。断熱過程では熱の出入りがないため、温度変化は仕事との釣り合いで起こる。この対応を取り違えないことが重要である。

効率式の導出

理想気体の詳細な状態方程式を用いても導出できるが、最短の説明は可逆過程のエントロピー収支である。可逆等温過程では ΔS=Q/T\Delta S=Q/T であり、サイクル全体では作動物質の状態が元に戻るためエントロピー変化は0である。

第二法則との関係

第2種永久機関の不可能性は、エネルギー保存だけでは説明できない。エネルギー量は保存していても、熱をすべて仕事へ変えるにはエントロピーを減少させる必要があるため、第二法則に反する。

解答

  1. カルノーサイクルは、理想化すれば次の4過程からなる。

    1. 温度 THT_H の高温熱源と接した等温膨張。作動気体は熱量 QHQ_H を受け取り、外部へ仕事をする。

    2. 熱源から切り離した断熱膨張。熱の出入りはなく、気体は仕事をしながら温度が THT_H から TLT_L へ下がる。

    3. 温度 TLT_L の低温熱源と接した等温圧縮。外部から仕事を受け、熱量 QLQ_L を低温熱源へ捨てる。

    4. 熱源から切り離した断熱圧縮。熱の出入りはなく、外部から仕事を受けて温度が TLT_L から THT_H へ戻る。

  2. pp--VV 線図では、準静的過程の仕事は W=∮p dV W=\oint p\,dV で表される。熱機関として時計回りに一周する場合、外部へ取り出される正味の仕事は閉曲線で囲まれる面積に等しい。

  3. 熱効率は η=WQH=1−QLQH \eta=\frac{W}{Q_H}=1-\frac{Q_L}{Q_H} である。可逆サイクルでは全サイクルのエントロピー変化が0なので、等温過程で QHTH=QLTL \frac{Q_H}{T_H}=\frac{Q_L}{T_L} が成り立つ。したがって QLQH=TLTH \frac{Q_L}{Q_H}=\frac{T_L}{T_H} であり、 η=1−TLTH \eta=1-\frac{T_L}{T_H} となる。

  4. 第2種永久機関は、単一熱源から受け取った熱をすべて仕事に変換し、他に変化を残さない装置である。これは低温熱源へ熱を捨てずに η=1\eta=1 を実現することを意味する。しかし熱力学第二法則により、循環機関が単一熱源から得た熱を完全に仕事へ変換することはできない。したがって第2種永久機関は実現不可能である。

最終答

4過程は等温膨張、断熱膨張、等温圧縮、断熱圧縮。仕事は pp--VV 線図の囲む面積であり、可逆性から η=1−TL/TH\eta=1-T_L/T_H。第2種永久機関は熱力学第二法則に反する。

第5問 — 緊急地震速報

速報の原理

緊急地震速報は、地震を予知する仕組みではなく、先に届く波を検知して後から来る強い揺れを推定する仕組みである。したがって、P波とS波の速度差、観測網、震源推定の3点を答案に入れる。

限界の書き方

「完全ではない」と書くだけでは不十分である。震源近傍では猶予が短い、初期推定ではデータ点が少ない、複数地震やノイズで誤認識が起きる、というように、なぜ限界が生じるかまで述べる。

加速度モニタリングの意義

震源・規模の推定値はモデルを介した間接情報である。一方、加速度のリアルタイム監視は観測された揺れの実測値であり、推定結果の妥当性を検証する独立した手掛かりになる。

解答

  1. 空欄は、典型的には次のように答える。 (a) 地震計または地震観測網,(b) P,(c) 震源と規模,(d) S \text{(a) 地震計または地震観測網,\quad (b) P,\quad (c) 震源と規模,\quad (d) S} すなわち、各地の観測点で先に到達するP波を検知し、地震の震源位置と規模を推定して、主要動であるS波の到達時刻や揺れの大きさを予測する。

  2. P波は縦波で伝播速度が速く、一般に揺れのエネルギーはS波より小さい。S波は横波でP波より遅いが、振幅が大きく被害に結びつきやすい主要動をもたらす。この速度差を利用することで、S波到達前に短い猶予時間を作る。

  3. 技術的限界の例として、震源に近い地域ではP波検知からS波到達までの時間が極めて短く、警報が間に合わないことがある。また、初期の少数観測点だけで震源や規模を推定するため、地震の規模が大きい場合や複数地震が近接して起きる場合には推定誤差が大きくなり得る。

  4. 誤報の原因として、単独観測点のノイズ、機器異常、または複数の地震波の取り違えが考えられる。初期段階では利用できるデータが少ないため、局所的な大振幅や別の事象を大地震のP波として扱うと、震源やマグニチュードを過大推定する可能性がある。

  5. 観測点ごとの加速度振幅をリアルタイムに監視すると、実際に広い範囲で強い揺れが増大しているかを直接確認できる。震源推定だけに頼らず揺れそのものの空間分布と時間変化を照合できるため、孤立した異常値や誤った震源推定による誤報を抑えやすい。

最終答

P波を地震観測網で検知し、震源と規模を推定してS波到達を予測する。速度差を利用するが、震源近傍・初期推定・ノイズには限界があり、リアルタイム揺れ監視が誤報低減に有効である。

年度別の解答例(11年度)

  • 2020年度(全7問)

    基礎数学 / 画像検索 / 重力走行と振動

  • 2019年度(全7問)

    基礎数学 / オペアンプ回路 / 流体の無次元数

  • 2018年度(全5問)

    二次曲線 / CとRPN / 色空間とDCT

  • 2017年度(全5問)

    回帰と正則化 / Cと正規表現 / 二色性反射

  • 2016年度(全5問)最終答まで公開

    ロジスティックモデル / 動的計画法 / 無線LANとフーリエ変換

  • 2015年度(このページ・全5問)最終答まで公開

    ガウス関数のフーリエ変換 / 乱数生成アルゴリズム / レイトレーシング

  • 2014年度(全5問)最終答まで公開

    積分とアステロイド / 水量計測と状態探索 / 画像処理

  • 2013年度(全5問)最終答まで公開

    QR分解と最小二乗 / 集合データ構造 / 信号処理

  • 2012年度(全5問)最終答まで公開

    線形最小二乗 / ソートの計算量 / 線形システムと相互情報量

  • 2011年度(全7問)最終答まで公開

    固有値と漸化式 / 命題論理 / 信号解析

  • 2010年度(全11問)最終答まで公開

    線形微分方程式 / 漸化式と高速計算 / z 変換とデジタルフィルタ

2015年度の出題内容

全5問

この5問の分野は情報1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析ガウス関数のフーリエ変換微分方程式への持ち込み / 境界項の確認あり
第2問情報乱数生成アルゴリズム一様性の根拠 / 逆関数法あり
第3問—レイトレーシング可視点の意味 / 球との交差判定あり
第4問—カルノーサイクル熱と仕事の符号 / 効率式の導出あり
第5問—緊急地震速報速報の原理 / 限界の書き方あり

同じテーマを出した他大学・他年度

3テーマ

前年度(2014年度)との違い

大問数
2014年度 5問 → 2015年度 5問
2014年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2010〜2020(先端表現情報学コースとして公開されている専門科目)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC 等の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFを公開。
院試hubの最終確認
2026-07-05
東京大学の公式過去問PDF