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東大 学際情報学府 学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目 2019年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問の分野は電磁気学・回路1問、流体力学1問です。固有値・固有ベクトル、線形空間・基底、RC回路の過渡応答などが出ています。2018年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、境界層です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 基礎数学

階数問題の落とし穴

行列式が 00 だから階数 22 と即断すると、全成分が 11 になる場合を落とす。階数 11 の可能性は2次小行列式の同時消滅で確認する必要がある。

最大化の検算

制約は ℓn\ell^n ノルムを固定する条件で、n≥2n\ge2 では対称性から全成分が等しい点が最大になる。Hölderの不等式 ∑ixi≤n1−1/n(∑ixin)1/n \sum_i x_i\le n^{1-1/n}\left(\sum_i x_i^n\right)^{1/n} を使っても同じ結論が得られる。

初期値問題

積分因子を掛けたあと、積分定数を初期条件で決める。e−xcos⁡xe^{-x}\cos x の積分で符号を間違えると初期条件を満たしても微分方程式に戻したときずれるため、最後に代入して確認する。

解答

  1. 行列を A=(1pp2q1q2r2r1) A=\begin{pmatrix} 1&p&p^2\\ q&1&q^2\\ r^2&r&1 \end{pmatrix} とおく。行列式を計算すると det⁡A=(pr−1)(pq−pr+q2r−1). \det A=(pr-1)(pq-pr+q^2r-1). よってこの値が 00 でなければ rank⁡A=3\operatorname{rank}A=3 である。

    次に det⁡A=0\det A=0 の場合を考える。階数が 11 になるには全ての2次小行列式が 00 でなければならない。特に 1−pq=0,q(p2−q)=0,p(p−q2)=0,r(q−r)=0,1−q2r=0 1-pq=0,\qquad q(p^2-q)=0,\qquad p(p-q^2)=0,\qquad r(q-r)=0,\qquad 1-q^2r=0 などが必要である。pq=1pq=1 より p,qp,q は非零で、q=p2, p=q2q=p^2,\ p=q^2 から p=p4p=p^4、実数解として p=1p=1、したがって q=1q=1。さらに r(q−r)=0r(q-r)=0 と他の小行列条件から r=1r=1。このとき行列は全成分が 11 となり、階数は 11 である。

    したがって rank⁡A={3,(pr−1)(pq−pr+q2r−1)≠0,1,(p,q,r)=(1,1,1),2,上記以外で (pr−1)(pq−pr+q2r−1)=0. \operatorname{rank}A= \begin{cases} 3, & (pr-1)(pq-pr+q^2r-1)\ne0,\\ 1, & (p,q,r)=(1,1,1),\\ 2, & \text{上記以外で }(pr-1)(pq-pr+q^2r-1)=0. \end{cases}

  2. 行列 A=(a000a−10−1a) A=\begin{pmatrix} a&0&0\\ 0&a&-1\\ 0&-1&a \end{pmatrix} は対称行列である。第1成分方向の固有ベクトル u1=(100) u_1=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix} に対する固有値は aa。残りの 2×22\times2 ブロックについて u2=12(011),u3=12(01−1) u_2=\frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix},\qquad u_3=\frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}0\\1\\-1\end{pmatrix} を取ると、それぞれ固有値は a−1, a+1a-1,\ a+1 である。したがって P=(10001/21/201/2−1/2) P=\begin{pmatrix} 1&0&0\\ 0&1/\sqrt2&1/\sqrt2\\ 0&1/\sqrt2&-1/\sqrt2 \end{pmatrix} とすれば PTAP=diag⁡(a,a−1,a+1). P^{\mathsf T}AP=\operatorname{diag}(a,a-1,a+1).

  3. u=a/xu=a/x とおくと、x→∞x\to\infty のとき u→0u\to0 であり xsin⁡ax=asin⁡uu. x\sin\frac{a}{x} =a\frac{\sin u}{u}. よって lim⁡x→∞xsin⁡ax=a. \lim_{x\to\infty}x\sin\frac{a}{x}=a.

  4. 制約 ∑i=1nxin=1,xi>0 \sum_{i=1}^n x_i^n=1,\qquad x_i>0 の下で S=∑ixiS=\sum_i x_i を最大化する。ラグランジュ関数 L=∑i=1nxi−λ(∑i=1nxin−1) L=\sum_{i=1}^n x_i-\lambda\left(\sum_{i=1}^n x_i^n-1\right) を用いると ∂L∂xi=1−λnxin−1=0. \frac{\partial L}{\partial x_i}=1-\lambda n x_i^{n-1}=0. すべての xix_i が等しくなるので xi=cx_i=c。制約から ncn=1,c=n−1/n. nc^n=1,\qquad c=n^{-1/n}. したがって x1=⋯=xn=n−1/n,Smax⁡=n⋅n−1/n=n1−1/n. x_1=\cdots=x_n=n^{-1/n},\qquad S_{\max}=n\cdot n^{-1/n}=n^{1-1/n}.

  5. u=x+yu=x+y とおくと u′=1+y′=1+u2. u'=1+y'=1+u^2. よって du1+u2=dx,arctan⁡u=x+C. \frac{du}{1+u^2}=dx,\qquad \arctan u=x+C. したがって x+y=tan⁡(x+C),y=tan⁡(x+C)−x. x+y=\tan(x+C),\qquad y=\tan(x+C)-x.

  6. 微分方程式は y′+2y=e−xcos⁡x,y(0)=0 y'+2y=e^{-x}\cos x,\qquad y(0)=0 である。積分因子は e2xe^{2x} なので (e2xy)′=excos⁡x. (e^{2x}y)'=e^x\cos x. ∫excos⁡x dx=ex(sin⁡x+cos⁡x)2 \int e^x\cos x\,dx=\frac{e^x(\sin x+\cos x)}{2} より y=12e−x(sin⁡x+cos⁡x)+Ce−2x. y=\frac12 e^{-x}(\sin x+\cos x)+Ce^{-2x}. 初期条件から 0=12+C0=\frac12+C、すなわち C=−12C=-\frac12。よって y=12{e−x(sin⁡x+cos⁡x)−e−2x}. y=\frac12\left\{e^{-x}(\sin x+\cos x)-e^{-2x}\right\}.

最終答

階数は上記の場合分け。(2) PTAP=diag⁡(a,a−1,a+1)P^{\mathsf T}AP=\operatorname{diag}(a,a-1,a+1)。(3) aa。(4) xi=n−1/nx_i=n^{-1/n}, Smax⁡=n1−1/nS_{\max}=n^{1-1/n}。(5) y=tan⁡(x+C)−xy=\tan(x+C)-x。(6) y=12{e−x(sin⁡x+cos⁡x)−e−2x}y=\frac12\{e^{-x}(\sin x+\cos x)-e^{-2x}\}。

第2問 — オペアンプ回路

仮想短絡と仮想接地

非反転入力が接地され、負帰還が成立しているとき、反転入力は接地電位に近い。この点を「仮想接地」と呼ぶ。ただし入力端子へ電流が流れないことも同時に使う必要がある。

抵抗値選択の観点

同じ利得比でも絶対値が極端に小さい場合と大きい場合で問題が変わる。低抵抗側では電流・負荷・発熱、高抵抗側では雑音・バイアス電流・寄生容量を挙げれば十分である。

符号の扱い

電流電圧変換の符号は、入力電流の向きの定義に依存する。本解答では電流が反転入力の加算点へ流れ込む向きを正にしたため、出力電圧は負になる。

オペアンプ回路の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 流体の無次元数

単位換算

速度は必ず m/s\mathrm{m/s} に直す。80 km/h80\,\mathrm{km/h} は 22.2 m/s22.2\,\mathrm{m/s}、50 km/h50\,\mathrm{km/h} は 13.9 m/s13.9\,\mathrm{m/s} である。粘性係数と動粘性係数は ν=μ/ρ\nu=\mu/\rho の関係にあり、本問の数値でも 1.8×10−5/1.2=1.5×10−51.8\times10^{-5}/1.2=1.5\times10^{-5} となる。

相似則

レイノルズ相似では粘性と慣性の比をそろえる。船の造波抵抗を主に見る模型実験では、重力波との関係が重要なのでフルード相似をそろえる。寸法比 1/4001/400 なら速度比は平方根を取って 1/201/20 になる。

数値の解釈

ボールのレイノルズ数は 11 よりはるかに大きい。したがって計算結果からは、粘性力だけが支配的な低レイノルズ数流れではなく、慣性効果が大きい流れであることも読み取れる。

流体の無次元数の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 列車運行と待ち時間

平均残余時間

一定間隔なら平均待ち時間は間隔の半分である。しかし指数分布では、記憶なし性により「すでにどれだけ待ったか」に依存せず、残り待ち時間の平均は元の平均と同じになる。

不等間隔の計算

8分間隔と12分間隔を単純平均して10分、その半分で5分とすると誤りである。ランダムに駅へ来る人は長い間隔に入りやすいので、間隔長で重み付けする必要がある。

運行管理の論述

列車運行の調整は、個々の列車を早く走らせることだけではない。前後間隔、駅の旅客滞留、追越し関係、遅延伝播を制御するという観点で書くとよい。

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第5問 — 実証主義と解釈主義

対比軸

存在論、方法論、研究者の位置、データの種類を対にして書くと整理しやすい。実証主義を「数字」、解釈主義を「感想」と単純化せず、それぞれの妥当性の作り方を述べる。

価値中立

価値中立は、研究者に価値がないという意味ではない。実証主義では価値判断を手続きから排除・統制する規範、解釈主義では研究者の位置性を反省的に扱う課題として説明するとよい。

典型的な不足点

「実証主義は客観的、解釈主義は主観的」とだけ書く答案は弱い。解釈主義にも資料の読み、文脈、相互主観的確認という妥当性の基準があることを補うと、偏った評価を避けられる。

実証主義と解釈主義の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 受け手研究

効果研究との違い

批判学派的アプローチは「メディアがどれだけ態度を変えたか」だけを測るのではない。メッセージの意味、制度、受け手の社会的位置、解読の多様性を扱う点を明示する。

受動性と能動性の両立

受け手は完全に操られる存在でも、完全に自由な存在でもない。支配的意味が提示される一方で、受け手は生活経験に基づいて交渉的・対抗的に読むことがある、というバランスが重要である。

メリットとデメリット

メリットだけを書くと設問の半分を落とす。過剰な政治的読解、サンプルの偏り、定量的な検証の弱さ、研究者の解釈権力といった限界も具体的に述べる。

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第7問 — 問題基盤型学習

定義の核

単なるグループワークや課題解決学習ではなく、問題が学習の出発点になる点が重要である。講義で知識を先に与えるのではなく、問題に直面して知識の必要性を発見する。

起源

PBLは医学教育の文脈で発展したことを押さえる。患者事例を通じて基礎知識と実践的推論を結びつける必要があった、という背景まで書くと暗記的な説明に見えない。

事例答案の作り方

良い事例は、問題提示、既有知識の確認、学習課題の設定、自己学習、再討議、振り返りの流れを含む。単に「地域課題を調べて発表した」と書くより、PBLの手順が見えるように書く。

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年度別の解答例(11年度)

  • 2020年度(全7問)

    基礎数学 / 画像検索 / 重力走行と振動

  • 2019年度(このページ・全7問)

    基礎数学 / オペアンプ回路 / 流体の無次元数

  • 2018年度(全5問)

    二次曲線 / CとRPN / 色空間とDCT

  • 2017年度(全5問)

    回帰と正則化 / Cと正規表現 / 二色性反射

  • 2016年度(全5問)最終答まで公開

    ロジスティックモデル / 動的計画法 / 無線LANとフーリエ変換

  • 2015年度(全5問)最終答まで公開

    ガウス関数のフーリエ変換 / 乱数生成アルゴリズム / レイトレーシング

  • 2014年度(全5問)最終答まで公開

    積分とアステロイド / 水量計測と状態探索 / 画像処理

  • 2013年度(全5問)最終答まで公開

    QR分解と最小二乗 / 集合データ構造 / 信号処理

  • 2012年度(全5問)最終答まで公開

    線形最小二乗 / ソートの計算量 / 線形システムと相互情報量

  • 2011年度(全7問)最終答まで公開

    固有値と漸化式 / 命題論理 / 信号解析

  • 2010年度(全11問)最終答まで公開

    線形微分方程式 / 漸化式と高速計算 / z 変換とデジタルフィルタ

2019年度の出題内容

全7問

この7問の分野は電磁気学・回路1問・流体力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—基礎数学階数問題の落とし穴 / 最大化の検算あり
第2問電磁気学・回路オペアンプ回路仮想短絡と仮想接地 / 抵抗値選択の観点あり
第3問流体力学流体の無次元数単位換算 / 相似則あり
第4問—列車運行と待ち時間平均残余時間 / 不等間隔の計算あり
第5問—実証主義と解釈主義対比軸 / 価値中立あり
第6問—受け手研究効果研究との違い / 受動性と能動性の両立あり
第7問—問題基盤型学習定義の核 / 起源あり

同じテーマを出した他大学・他年度

5テーマ

前年度(2018年度)との違い

大問数
2018年度 5問 → 2019年度 7問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・境界層
2018年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2010〜2020(先端表現情報学コースとして公開されている専門科目)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC 等の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFを公開。
院試hubの最終確認
2026-07-05
東京大学の公式過去問PDF