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北大 情報科学院 情報科学専攻 生体情報工学コース 専門科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)

全8問の分野は生物3問、電磁気学・回路2問、線形代数1問です。固有値・固有ベクトル、線形空間・基底、オペアンプ回路などが出ています。2025年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトルです。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 生体情報の一元管理

採点の置き所

この設問は結論だけでなく、指定された4観点を独立した段落として扱うことが重要である。意義では包摂と効率化、技術課題では漏えい時の不可逆性と照合誤差、合意形成では監視・排除への対策、是非では条件付き賛否を根拠とともに書けているかが評価される。

典型ミス

「便利だから賛成」「危険だから反対」の一方向だけで終えると、技術面と社会面の論点が不足する。暗号化だけでなく、生体認証特有の誤拒否、代替手段、目的外利用の統制まで触れ、最後に自分の判断基準を示すと答案全体が締まる。

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第2問 — 線形代数

計算の確認

固有値の確認は、求めた固有ベクトルを直接掛ければ速い。たとえば A(011)=(044)=4(011) A\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}0\\4\\4\end{pmatrix} =4\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix} であり、他の2本も同様に確かめられる。階数の設問では、行列式が 00 であることだけでは階数が 22 とは限らないため、非零な 2×22\times2 小行列式を一つ示すのが採点上の要点である。

交代行列の典型ミス

交代行列の固有値を議論するとき、実ベクトルだけで考えると複素固有値を取りこぼす。複素化して v‾ Tv\overline{v}^{\,T}v を使うと、固有値の実部が 00 であることを一行で示せる。また、奇数次の行列式の証明では det⁡(−B)=(−1)ndet⁡B\det(-B)=(-1)^n\det B の符号を落とさないことが重要である。

解答

1. 行列 AA

行列を A=(0−22−3x3−113) A=\begin{pmatrix} 0&-2&2\\ -3&x&3\\ -1&1&3 \end{pmatrix} とおく。

  1. x=1x=1 のとき det⁡A=∣0−22−313−113∣=2(−3⋅1−1⋅(−1))+2((−3)⋅1−1⋅(−1))=−16. \det A = \begin{vmatrix} 0&-2&2\\ -3&1&3\\ -1&1&3 \end{vmatrix} = 2(-3\cdot 1-1\cdot(-1)) +2((-3)\cdot1-1\cdot(-1)) =-16.

  2. x=1x=1 のときの特性多項式は det⁡(λI−A)=(λ−4)(λ−2)(λ+2) \det(\lambda I-A)=(\lambda-4)(\lambda-2)(\lambda+2) である。よって固有値は 4,2,−24,2,-2 であり、それぞれ λ=4: (011),λ=2: (101),λ=−2: (110) \lambda=4:\ \begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix},\qquad \lambda=2:\ \begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix},\qquad \lambda=-2:\ \begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix} を固有ベクトルとしてとれる。したがって、各固有空間はこれらの非零定数倍全体である。

  3. 一般の xx について det⁡A=2(x−9). \det A=2(x-9). 階数が 22 になるには、まず det⁡A=0\det A=0 が必要なので x=9x=9 である。このとき、たとえば第1,3行・第1,2列の小行列式は ∣0−2−11∣=−2≠0 \begin{vmatrix}0&-2\\ -1&1\end{vmatrix}=-2\ne0 であるから階数は 11 以下には落ちない。よって求める値は x=9x=9 である。

2. 対称行列と交代行列

  1. C=(13−12)=C+CT2+C−CT2=(1112)+(02−20). C=\begin{pmatrix}1&3\\-1&2\end{pmatrix} = \frac{C+C^T}{2}+\frac{C-C^T}{2} = \begin{pmatrix}1&1\\1&2\end{pmatrix} + \begin{pmatrix}0&2\\-2&0\end{pmatrix}. 第1項は対称行列、第2項は交代行列である。

  2. 実交代行列を BT=−BB^T=-B とし、複素固有ベクトル v≠0v\ne0 に対して Bv=λvBv=\lambda v とする。複素内積を用いると v‾ TBv=λ v‾ Tv. \overline{v}^{\,T}Bv=\lambda\,\overline{v}^{\,T}v. 一方で v‾ TBv‾=v‾ TBTv=−v‾ TBv \overline{\overline{v}^{\,T}Bv} = \overline{v}^{\,T}B^T v = -\overline{v}^{\,T}Bv となるので、v‾ TBv\overline{v}^{\,T}Bv は純虚数または 00 である。さらに v‾ Tv>0\overline{v}^{\,T}v>0 は実数だから、λ\lambda も純虚数または 00 である。

  3. 交代行列 BB が正則であれば (B−1)T=(BT)−1=(−B)−1=−B−1. (B^{-1})^T=(B^T)^{-1}=(-B)^{-1}=-B^{-1}. よって B−1B^{-1} も交代行列である。

  4. nn が奇数で、BB が n×nn\times n 交代行列なら det⁡B=det⁡BT=det⁡(−B)=(−1)ndet⁡B=−det⁡B. \det B=\det B^T=\det(-B)=(-1)^n\det B=-\det B. したがって 2det⁡B=02\det B=0 となり、det⁡B=0\det B=0 である。

最終答

1(1) −16-16、1(2) 固有値 4,2,−24,2,-2 と固有ベクトルはそれぞれ (0,1,1)T,(1,0,1)T,(1,1,0)T(0,1,1)^T,(1,0,1)^T,(1,1,0)^T の非零定数倍、1(3) x=9x=9。2(1) C=(1112)+(02−20)C=\begin{pmatrix}1&1\\1&2\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}0&2\\-2&0\end{pmatrix}。2(2)--(4) は上記の通り。

第3問 — 電気・電子回路

4端子行列の符号

この問題では I2I_2 が右向き、すなわち二端子対回路から負荷へ流れ出す向きに描かれている。この定義では直列インピーダンスが (1Z01)\begin{pmatrix}1&Z\\0&1\end{pmatrix}、並列アドミタンスが (10Y1)\begin{pmatrix}1&0\\Y&1\end{pmatrix} として扱える。もし I2I_2 を回路へ流れ込む向きに取り直すと符号が変わるため、図の矢印を最初に確認することが必要である。

検算

ω=1/LC\omega=1/\sqrt{LC} では1段の F11F_{11} が 00 になるので、2段接続後の F22F_{22} も 00 になる。この単純化を使うと入力インピーダンスの計算ミスを見つけやすい。オペアンプ回路では、R1=R2R_1=R_2 のとき利得が 1−jx1+jx \frac{1-jx}{1+jx} の形になる。分子と分母の絶対値が等しいため、全周波数で振幅が 11 になることをすぐ確認できる。

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第4問 — 細胞生物学

空欄補充の根拠

核膜孔、粗面小胞体、リボソーム、小胞体内 Ca2+\mathrm{Ca^{2+}} 貯蔵、糖鎖付加、ゴルジ体による修飾・選別、リソソームによる細胞内消化、エンドサイトーシス、ペルオキシソーム、過酸化水素の分解、という流れを器官の機能と対応させると取り違えにくい。葉緑体やナトリウムなど、動物細胞小器官の文脈に合わない語を早めに除外するのも有効である。

細胞周期の検算

A点を G1\mathrm{G_1} 開始点と読むと、DNA量は 11 から始まる。DNAが増えるのはS期だけで、G2\mathrm{G_2} 期とM期開始時には複製後なので 22 である。M期の終わりに娘細胞へ分配されて 11 に戻る。この「S期だけで増える」「分裂完了で半分になる」という2点がグラフの採点対象である。

典型ミス

核局在タンパク質を粗面小胞体で翻訳されると書く誤りが多い。核内タンパク質の多くは遊離リボソームで作られ、核膜孔を通る。一方、分泌タンパク質や膜貫通タンパク質は粗面小胞体からゴルジ体を経由する。この区別を書くと、設問(2)の輸送過程の説明が明確になる。

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第5問 — 微分方程式

常微分方程式の検算

この常微分方程式は,左辺の y′′,2y′,yy'',2y',y が (D+1)2(D+1)^2 になっていることを見抜くと短く処理できる。最後に (D+1)2{(C1+C2x)e−x}=0,(D+1)2e−2x=e−2x,(D+1)2(−2x+4)=−2x (D+1)^2\{(C_1+C_2x)e^{-x}\}=0,\quad (D+1)^2e^{-2x}=e^{-2x},\quad (D+1)^2(-2x+4)=-2x を確認すれば,代入検算も済む。

境界条件の使い方

拡散方程式では,境界 x=0,πx=0,\pi がともに 0 なので正弦級数だけが残る。初期値 sin⁡2x\sin^2x は一見すると余弦を含む形に見えるが,区間 0<x<π0<x<\pi で両端 0 の条件を満たす関数として正弦級数に展開する。ここで余弦級数にしてしまうと境界条件を満たさない。

係数の符号

係数公式 bn=−8πn(n2−4) b_n=-\frac{8}{\pi n(n^2-4)} は n=1n=1 では正,n=3,5,…n=3,5,\ldots では負である。特に最初の係数は b1=8/(3π)b_1=8/(3\pi) となり,sin⁡2x\sin^2x が区間中央で正であることと矛盾しない。

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第6問 — 電磁気学

磁場が仕事をしない理由

磁場による力は速度に常に直交する。したがって速さは変えず,速度の向きだけを変える。円運動やらせん運動が現れるのはこのためであり,電場がない限り運動エネルギーは保存される。

円筒座標の符号

この問題では zz 軸正方向から見て反時計回りを θ\theta の正方向としている。q>0q>0,Bz>0B_z>0 のとき,vθ>0v_\theta>0 と仮定すると Fr=qvθBz>0F_r=qv_\theta B_z>0 となり外向きになる。等速円運動には内向きの力が必要なので,正しい符号は vθ<0v_\theta<0 である。

磁気ミラーの見方

BzB_z が ∣z∣|z| とともに大きくなる領域では,磁力線は中央から離れるほど軸側へ曲がる。これは z>0z>0 で Br<0B_r<0,z<0z<0 で Br>0B_r>0 と読むのが要点である。さらに vθ<0v_\theta<0 なので Fz=−qvθBrF_z=-qv_\theta B_r の符号は BrB_r の符号と同じになり,常に中央へ戻す力になる。

典型ミス

FzF_z の符号だけを暗記すると,θ\theta 方向の取り方を変えたときに誤る。まず局所的な円運動から vθ<0v_\theta<0 を決め,次に磁力線から BrB_r の符号を決める,という順に書けば採点上も根拠が明確になる。

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第7問 — 生化学

タンパク質構造の根拠

一次構造はアミノ酸どうしのペプチド結合の並びで決まる。二次構造である α\alpha-ヘリックスと β\beta-シートは,主鎖のカルボニル酸素とアミド水素の水素結合で安定化される。三次構造では,疎水性相互作用,イオン性相互作用,ジスルフィド結合などが同時に寄与する。

ジスルフィド結合

ジスルフィド結合は一般のペプチド主鎖ではなく,システイン側鎖の −SH\mathrm{-SH} が酸化されてできる −S−S−\mathrm{-S-S-} 結合である。答案ではシステイン名だけでなく,CH2SH\mathrm{CH_2SH} 側鎖を含む構造を書けていることが重要である。

酸化還元計算の採点点

ΔE∘\Delta E^\circ は「受容体の還元電位」から「供与体の還元電位」を引く。ここで符号を逆にすると ΔG∘\Delta G^\circ が正になり,NADH から酸素への電子移動が強く有利であるという生化学的事実と合わない。

酵素と共役反応

酵素は遷移状態を安定化して活性化エネルギーを下げるが,反応の始状態と終状態の自由エネルギー差 ΔG\Delta G は変えない。ATP 加水分解との共役では,別々の反応を足し合わせた全体の ΔG\Delta G が負になることを示すのが説明の中心である。

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第8問 — 分子遺伝学

あいまい記号の読み方

RR は purine,YY は pyrimidine の頭文字に対応する。SS は Strong であり,水素結合 3 本の G\mathrm{G}-C\mathrm{C} 塩基対に由来するため G\mathrm{G} または C\mathrm{C} を表す。したがって UGS\mathrm{UGS} は 2 個の具体的なコドンへ展開してから表を読む。

欠失位置の決め方

欠失後の配列は 21 塩基になり,AUG から 7 コドン分にちょうど分かれる。第 9 塩基を消すと 3 番目のコドンが CAC\mathrm{CAC},第 10 塩基を消すと CAU\mathrm{CAU} になるが,どちらも His である。その後の読み枠が AUA UUU UCA AAA\mathrm{AUA\ UUU\ UCA\ AAA} となるため,指定されたアミノ酸列に一致する。

スプライシング配列

長いピリミジン列に続く AG\mathrm{AG} は,イントロンの 3' 末端側にあるアクセプター部位の特徴である。エキソン内部の翻訳配列として読むのではなく,pre-mRNA からイントロンを除くための目印として読む。

減数分裂の分配

減数分裂 I では相同染色体が分離し,減数分裂 II では姉妹染色分体が分離する。問題の遺伝子はセントロメア近傍にあるため,乗換えによる第二分裂分離を考えず,相同染色体がどちらの極へ向くかで四分子の型が決まる。

確率計算の検算

4 種類の配偶子が等頻度なので,AA 座位だけを見れば A1:A2=1:1A_1:A_2=1:1,BB 座位だけを見れば B1:B2=1:1B_1:B_2=1:1 である。したがって A2A2A_2A_2 は 1/41/4,B1B2B_1B_2 は 1/21/2 で,積は 1/81/8 になる。また,両座位ともヘテロになる確率は 1/2×1/2=1/41/2\times 1/2=1/4 であり,列挙計算と一致する。

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年度別の解答例(2年度)

  • 2026年度(このページ・全8問)

    生体情報の一元管理 / 線形代数 / 電気・電子回路

  • 2025年度(全8問)

    小論文:BMIの医療応用 / 線形代数 / 電気・電子回路

2026年度の出題内容

全8問

この8問の分野は生物3問・電磁気学・回路2問・線形代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—生体情報の一元管理——
第2問線形代数—計算の確認 / 交代行列の典型ミスあり
第3問電磁気学・回路電気・電子回路4端子行列の符号あり
第4問生物細胞生物学空欄補充の根拠 / 細胞周期の検算あり
第5問微分方程式—常微分方程式の検算 / 境界条件の使い方あり
第6問電磁気学・回路電磁気学磁場が仕事をしない理由 / 円筒座標の符号あり
第7問生物生化学タンパク質構造の根拠 / ジスルフィド結合あり
第8問生物分子遺伝学あいまい記号の読み方 / 欠失位置の決め方あり

2026年度の解説には典型ミス3件・検算1件・採点の置き所1件が付いています。

同じテーマを出した他大学・他年度

4テーマ

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 8問 → 2026年度 8問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2026年度で新しく出たテーマ
線形空間・基底・オペアンプ回路・拡散方程式
2025年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2025〜2026年度(専門科目1・2。2025年度分は公式過年度ページで確認)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2027年4月修士はTOEIC L&R・TOEFL iBT・IELTS Academicの指定スコアで評価。IP/ITP不可、TOEFL Special Home Edition可、MyBest不可。
院試hubの最終確認
2026-10-15
北海道大学の公式過去問PDF