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東大 学際情報学府 学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問です。固有値・固有ベクトル、固有振動数と振動系、ヒルベルト空間が出ています。2019年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトルです。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 基礎数学

対角化の検算

u1,u2,u3u_1,u_2,u_3 は正規直交であり、Au1=3u1, Au2=3u2, Au3=−3u3Au_1=3u_1,\ Au_2=3u_2,\ Au_3=-3u_3 が直接確認できる。重複固有値 33 では、固有空間内で正規直交基底を取り直す点が採点上重要である。

媒介変数微分の注意

d2y/dx2d^2y/dx^2 は ddt(dy/dx)\frac{d}{dt}(dy/dx) をさらに dx/dtdx/dt で割る。tt で2回微分した量をそのまま使う誤答が多い。また sin⁡t=0\sin t=0 または cos⁡t=0\cos t=0 では dx/dtdx/dt や式の分母が退化するため、通常点での公式として書くのが安全である。

微分方程式の型

(5a) は線形方程式として積分因子 e2x2e^{2x^2} を用いても同じ答えになる。(5c) は係数に x2,xx^2, x が付いたCauchy-Euler型なので、指数関数ではなく xλx^\lambda を試すのが最短である。

解答

  1. 連立一次方程式を消去する。第1式を基準にして整理すると y−z=15,−y+z=−15 y-z=15,\qquad -y+z=-15 が得られるので、独立な条件は y=z+15y=z+15 である。これを第1式に戻すと 3x−2(z+15)+z=4,7x−5(z+15)+2z=5 3x-2(z+15)+z=4,\qquad 7x-5(z+15)+2z=5 すなわち 3x−z=34,7x−3z=80 3x-z=34,\qquad 7x-3z=80 である。前者から z=3x−34z=3x-34、後者へ代入して 7x−9x+102=807x-9x+102=80 より x=11x=11。したがって z=−1, y=14z=-1,\ y=14。

  2. 行列 A=(12221−22−21) A=\begin{pmatrix}1&2&2\\2&1&-2\\2&-2&1\end{pmatrix} の固有値は 3,3,−33,3,-3 である。固有値 33 の固有空間は x=y+zx=y+z で表され、 互いに直交する固有ベクトルとして u1=16(211),u2=12(01−1) u_1=\frac{1}{\sqrt6}\begin{pmatrix}2\\1\\1\end{pmatrix},\qquad u_2=\frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}0\\1\\-1\end{pmatrix} を取れる。固有値 −3-3 には u3=13(−111) u_3=\frac{1}{\sqrt3}\begin{pmatrix}-1\\1\\1\end{pmatrix} を取る。よって P=(2/60−1/31/61/21/31/6−1/21/3) P=\begin{pmatrix} 2/\sqrt6&0&-1/\sqrt3\\ 1/\sqrt6&1/\sqrt2&1/\sqrt3\\ 1/\sqrt6&-1/\sqrt2&1/\sqrt3 \end{pmatrix} とすれば PP は直交行列であり、 PTAP=diag⁡(3,3,−3) P^{\mathsf T}AP=\operatorname{diag}(3,3,-3) である。

  3. s=sin⁡t, c=cos⁡ts=\sin t,\ c=\cos t とおく。媒介変数表示から dxdt=−5ac4s,dydt=5as4c \frac{dx}{dt}=-5ac^4s,\qquad \frac{dy}{dt}=5as^4c である。したがって、dxdt≠0\frac{dx}{dt}\ne0 の点で dydx=dy/dtdx/dt=−s3c3=−tan⁡3t. \frac{dy}{dx} =\frac{dy/dt}{dx/dt} =-\frac{s^3}{c^3} =-\tan^3 t. さらに d2ydx2=ddt(−tan⁡3t)/dxdt=−3tan⁡2tsec⁡2t−5ac4s=3sin⁡t5acos⁡8t. \frac{d^2y}{dx^2} =\frac{d}{dt}\left(-\tan^3t\right)\Big/\frac{dx}{dt} =\frac{-3\tan^2t\sec^2t}{-5ac^4s} =\frac{3\sin t}{5a\cos^8t}.

    1. 部分分数分解 1x2+9x+20=1x+4−1x+5 \frac{1}{x^2+9x+20} =\frac{1}{x+4}-\frac{1}{x+5} より dndxn1x2+9x+20=(−1)nn!{1(x+4)n+1−1(x+5)n+1}. \frac{d^n}{dx^n}\frac{1}{x^2+9x+20} =(-1)^n n!\left\{\frac{1}{(x+4)^{n+1}} -\frac{1}{(x+5)^{n+1}}\right\}.

    2. ライプニッツの公式を使う。0≤k≤min⁡(3,n)0\le k\le \min(3,n) に対し dkdxkx3=3!(3−k)!x3−k,dn−kdxn−kcos⁡3x=3n−kcos⁡(3x+(n−k)π2). \frac{d^k}{dx^k}x^3=\frac{3!}{(3-k)!}x^{3-k},\qquad \frac{d^{n-k}}{dx^{n-k}}\cos 3x =3^{n-k}\cos\left(3x+\frac{(n-k)\pi}{2}\right). よって dndxn{x3cos⁡3x}=∑k=0min⁡(3,n)(nk)3!(3−k)!x3−k3n−kcos⁡(3x+(n−k)π2). \frac{d^n}{dx^n}\{x^3\cos 3x\} =\sum_{k=0}^{\min(3,n)} \binom{n}{k}\frac{3!}{(3-k)!}x^{3-k}3^{n-k} \cos\left(3x+\frac{(n-k)\pi}{2}\right).

    1. y′+4xy=−4xy' +4xy=-4x は y=−1y=-1 を特解にもつ。u=y+1u=y+1 とおくと u′+4xu=0u'+4xu=0 なので y=Ce−2x2−1. y=C e^{-2x^2}-1.

    2. v=y′v=y' とおけば v′=2vv'=2v。したがって v=C1e2xv=C_1e^{2x} であり、 y=C2e2x+C3. y=C_2e^{2x}+C_3.

    3. Cauchy-Euler型として y=xλy=x^\lambda を代入すると λ(λ−1)+3λ−8=λ2+2λ−8=(λ−2)(λ+4)=0. \lambda(\lambda-1)+3\lambda-8 =\lambda^2+2\lambda-8 =(\lambda-2)(\lambda+4)=0. よって y=C4x2+C5x−4 y=C_4x^2+C_5x^{-4} である。ただし、解は x>0x>0 または x<0x<0 の区間で考える。

最終答

(1) (x,y,z)=(11,14,−1)(x,y,z)=(11,14,-1)。(2) 上記の PP により PTAP=diag⁡(3,3,−3)P^{\mathsf T}AP=\operatorname{diag}(3,3,-3)。(3) dydx=−tan⁡3t, d2ydx2=3sin⁡t5acos⁡8t\frac{dy}{dx}=-\tan^3t,\ \frac{d^2y}{dx^2}=\frac{3\sin t}{5a\cos^8t}。(4), (5) は上記各式。

第2問 — 画像検索

厳密一致と類似検索を分ける

完全一致では衝突確率の小さいハッシュ表が効率的である。一方、類似画像では同じハッシュになるとは限らないので、特徴量空間で距離を測る必要がある。この2つを混同しないことが採点上の基本である。

ヒストグラムの長所と限界

ヒストグラムは画素の場所を捨てるため、リサイズや軽い圧縮には強い。しかし、明るさの大幅変更、トーンカーブ変換、背景差し替えには弱い。また、異なる画像でも同じ明度分布を持つことがあるため、最終判定には上位候補の再照合を組み合わせるとよい。

尺度の書き方

「ユークリッド距離を使う」だけでは説明不足になりやすい。値が大きいほど類似なのか、小さいほど類似なのか、正規化をするのかを明記すると答案として安定する。

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第3問 — 重力走行と振動

角度の取り方

角度 α\alpha は水平面ではなく鉛直軸から測られている。したがって軌道方向の重力成分は gisin⁡αg_i\sin\alpha ではなく gicos⁡αg_i\cos\alpha である。α=0\alpha=0 なら鉛直落下で最大、α=π/2\alpha=\pi/2 なら水平でゼロになるので検算できる。

終端速度の検算

抵抗力を (C/3)v2(C/3)v^2、火星重力を g/3g/3 と置くと、終端速度の式では両方の 1/31/3 が消える。単位も mgC \frac{mg}{C} が速度の二乗になるため、平方根を取った式として整合する。

論述部分の採点観点

振動原因では「低重力で荷重が小さくなる」「火星では大気抵抗の時間変動がある」のように、月と火星の条件差を明示する。サスペンション設計では、ばねだけでなく減衰、ストローク、共振回避、環境耐性まで触れると答案の密度が上がる。

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第4問 — 交通流ボトルネック

基本図の読み取り

図をそのまま写す必要はないが、頂点と切片の値を読み取り、2本の直線式に直すことが重要である。自由流側の速度は傾き 80 km/h80\,\mathrm{km/h}、渋滞流側の後退波の傾きは −20 km/h-20\,\mathrm{km/h} と読める。

速度と衝撃波速度の違い

交通流速度は V=Q/KV=Q/K で求める車両そのものの平均速度である。衝撃波速度は状態境界の移動速度であり、 w=Q2−Q1K2−K1 w=\frac{Q_2-Q_1}{K_2-K_1} で求める。両者を混同すると、(2) と (3) の数値が入れ替わる。

符号の検算

需要 16001600 が容量 15001500 を上回るため、渋滞領域は上流へ伸びる。正方向が下流向きなら衝撃波速度は負になる。この物理的な向きと計算結果の符号が一致している。

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第5問 — 近代家族と親密権

採点観点

小問(1)では、近代家族を「昔から自然にある家族」と書かず、産業化、性別役割分業、愛情による結婚、子ども中心主義を結びつける。指定語であるロマンティックラブイデオロギーは、恋愛と婚姻と性を結合する規範として説明する。

親密権の位置づけ

小問(2)では、制度の紹介だけで終わらせず、親密な関係を選び、公的・社会的に尊重される権利として論じる。法律婚との差、アウティングや可視化のリスク、婚姻平等との関係まで触れると答案に厚みが出る。

典型的な不足点

「多様性が大事」とだけ述べる答案は抽象的である。制度がどの場面の不利益を減らすのか、どの権利が残る課題なのかを具体化すると、社会学・法制度の両面から評価されやすい。

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第6問 — 文化政策とソフトパワー

規制と推進を対にする

規制だけを書くと古典的な検閲論に偏る。助成、教育、文化財保護、ミュージアム、国語政策のような推進策も、文化を選別し人々を形成する権力作用であると示すのがこの設問の中心である。

ソフト・パワーの定義

ソフト・パワーは、報酬や威嚇ではなく、魅力や正統性によって他者の選好を形成する力である。飲料の流通量だけでなく、ブランドが結びつく価値観やライフスタイルを説明する必要がある。

典型的な不足点

「アメリカ文化が広がった」とだけ書くと一方向的すぎる。受け手側の翻訳、ローカライズ、抵抗、再意味化を入れると、文化研究の答案として説得力が増す。

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第7問 — メディア・リテラシー

複数の系譜を明示する

「メディアを正しく使う力」とだけ書くと狭い。批判的読解、情報技術、民主主義的参加、制作・共有の少なくとも三つ以上を分けて説明すると、設問の「複数の系譜」に正面から答えられる。

差異の書き方

第2小問では、系譜の列挙を繰り返すだけでは足りない。何を能力とみなすか、何を危険とみなすか、教育で何を評価するかが異なる、という比較軸を置くと論旨が明確になる。

現代的観点

SNS、レコメンド、検索順位、生成されるデータ、プラットフォーム規約に触れると、古典的なテレビ批判だけでなく現代のメディア環境に即した答案になる。

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年度別の解答例(11年度)

  • 2020年度(このページ・全7問)

    基礎数学 / 画像検索 / 重力走行と振動

  • 2019年度(全7問)

    基礎数学 / オペアンプ回路 / 流体の無次元数

  • 2018年度(全5問)

    二次曲線 / CとRPN / 色空間とDCT

  • 2017年度(全5問)

    回帰と正則化 / Cと正規表現 / 二色性反射

  • 2016年度(全5問)最終答まで公開

    ロジスティックモデル / 動的計画法 / 無線LANとフーリエ変換

  • 2015年度(全5問)最終答まで公開

    ガウス関数のフーリエ変換 / 乱数生成アルゴリズム / レイトレーシング

  • 2014年度(全5問)最終答まで公開

    積分とアステロイド / 水量計測と状態探索 / 画像処理

  • 2013年度(全5問)最終答まで公開

    QR分解と最小二乗 / 集合データ構造 / 信号処理

  • 2012年度(全5問)最終答まで公開

    線形最小二乗 / ソートの計算量 / 線形システムと相互情報量

  • 2011年度(全7問)最終答まで公開

    固有値と漸化式 / 命題論理 / 信号解析

  • 2010年度(全11問)最終答まで公開

    線形微分方程式 / 漸化式と高速計算 / z 変換とデジタルフィルタ

2020年度の出題内容

全7問
大問主題解説の小見出し最終答
第1問基礎数学対角化の検算 / 媒介変数微分の注意あり
第2問画像検索厳密一致と類似検索を分ける / ヒストグラムの長所と限界あり
第3問重力走行と振動角度の取り方 / 終端速度の検算あり
第4問交通流ボトルネック基本図の読み取り / 速度と衝撃波速度の違いあり
第5問近代家族と親密権採点観点 / 親密権の位置づけあり
第6問文化政策とソフトパワー規制と推進を対にする / ソフト・パワーの定義あり
第7問メディア・リテラシー複数の系譜を明示する / 差異の書き方あり

同じテーマを出した他大学・他年度

3テーマ

前年度(2019年度)との違い

大問数
2019年度 7問 → 2020年度 7問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2020年度で新しく出たテーマ
固有振動数と振動系・ヒルベルト空間
2019年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2010〜2020(先端表現情報学コースとして公開されている専門科目)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC 等の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFを公開。
院試hubの最終確認
2026-07-05
東京大学の公式過去問PDF