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都立大 システムデザイン研究科 情報科学域 専門科目 2026年度 夏季入試 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は確率・統計1問、情報1問、線形代数1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標、計算量理論などが出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分積分

指数関数の増大

x2e−xx^2e^{-x} のような形では、多項式より指数関数の方が速く増大する。ロピタルの定理を使う場合は、分子の次数が1回ずつ下がり、分母は常に exe^x のままなので、有限回の微分で 00 に落ちる。

制約付き最大値の落とし穴

ラグランジュの未定乗数法は停留候補を与える方法であって、最大値の存在を保証する方法ではない。この小問では制約集合が非有界であるため、候補点を計算しただけで「大きい方」を最大値にしてはいけない。実際に z≥1+2z\ge 1+\sqrt2 の枝では z→∞z\to\infty が可能であり、f=2z2f=2z^2 も無限大へ発散する。したがって、最適化問題ではまず有界性を確認することが重要である。

同次関数としての見方

z=x−1f(y/x)z=x^{-1}f(y/x) は、(x,y)(x,y) を同時に ss 倍すると値が s−1s^{-1} 倍される関数である。つまり次数 −1-1 の同次関数であり、オイラーの同次関数定理から xzx+yzy=−z xz_x+yz_y=-z が成り立つ。解答では連鎖律で直接示したが、この構造を見抜くと式が 00 になる理由を理解しやすい。

積分と変数変換の検算

不定積分は微分して戻るかを確認するのが最も確実である。 ddx{23(x+2)x−1}=xx−1 \frac{d}{dx}\left\{\frac{2}{3}(x+2)\sqrt{x-1}\right\} = \frac{x}{\sqrt{x-1}} となるので積分結果は正しい。重積分ではヤコビアンの符号ではなく絶対値を面積要素に使う点に注意する。今回の ∣det⁡J∣=1/2|\det J|=1/2 を落とすと答が2倍になってしまう。

解答

(1-1)(a) 指数関数を含む極限

求める極限は x2e−x=x2ex x^2 e^{-x}=\frac{x^2}{e^x} である。分子・分母はともに x→∞x\to\infty で発散するので、ロピタルの定理を2回用いると lim⁡x→∞x2ex=lim⁡x→∞2xex=lim⁡x→∞2ex=0 \lim_{x\to\infty}\frac{x^2}{e^x} =\lim_{x\to\infty}\frac{2x}{e^x} =\lim_{x\to\infty}\frac{2}{e^x}=0 となる。したがって極限値は 00 である。

(1-1)(b) 制約付き最適化

制約から x2+y2=z2,x+y=z+1 x^2+y^2=z^2,\qquad x+y=z+1 である。第1式より f=x2+y2+z2=2z2 f=x^2+y^2+z^2=2z^2 と書けるので、最大値の有無は実現できる zz の範囲を見ればよい。

実数 x,yx,y が和 x+y=z+1x+y=z+1、二乗和 x2+y2=z2x^2+y^2=z^2 をもつためには、判別式が非負であればよい。x,yx,y を方程式 T2−(z+1)T+(z+1)2−z22=0 T^2-(z+1)T+\frac{(z+1)^2-z^2}{2}=0 の2根と見ると、その判別式は Δ=(z+1)2−2{(z+1)2−z2}=z2−2z−1 \Delta=(z+1)^2-2\{(z+1)^2-z^2\} =z^2-2z-1 である。よって z2−2z−1≥0⟺z≤1−2またはz≥1+2 z^2-2z-1\ge 0 \quad\Longleftrightarrow\quad z\le 1-\sqrt2\quad\text{または}\quad z\ge 1+\sqrt2 なら制約を満たす点が存在する。

特に z≥1+2z\ge 1+\sqrt2 の枝では zz をいくらでも大きくでき、そのとき f=2z2→∞ f=2z^2\to\infty である。したがってこの制約条件のもとで ff は上に有界でなく、最大値は存在しない。

なお、ラグランジュの未定乗数法で停留候補を確認すると、条件式は 2x=2λ1x+λ2,2y=2λ1y+λ2,2z=−2λ1z−λ2 2x=2\lambda_1x+\lambda_2,\quad 2y=2\lambda_1y+\lambda_2,\quad 2z=-2\lambda_1z-\lambda_2 である。最初の2式の差から (1−λ1)(x−y)=0(1-\lambda_1)(x-y)=0 となる。もし λ1=1\lambda_1=1 なら λ2=0\lambda_2=0 かつ z=0z=0 となり、制約と矛盾する。したがって x=y=tx=y=t である。制約は 2t2=z2,2t−z=1 2t^2=z^2,\qquad 2t-z=1 となり、 t=1±22,z=1±2 t=1\pm\frac{\sqrt2}{2},\qquad z=1\pm\sqrt2 を得る。これらは境界的な最小候補であって、最大値ではない。

(1-2)(a) 偏微分

w=yx,z=1xf(w) w=\frac{y}{x},\qquad z=\frac{1}{x}f(w) とおく。連鎖律より ∂w∂x=−yx2=−wx,∂w∂y=1x \frac{\partial w}{\partial x}=-\frac{y}{x^2}=-\frac{w}{x}, \qquad \frac{\partial w}{\partial y}=\frac{1}{x} である。したがって ∂z∂x=−1x2f(w)+1xf′(w)(−wx)=−f(w)+wf′(w)x2, \frac{\partial z}{\partial x} =-\frac{1}{x^2}f(w)+\frac{1}{x}f'(w)\left(-\frac{w}{x}\right) =-\frac{f(w)+w f'(w)}{x^2}, ∂z∂y=1xf′(w)1x=f′(w)x2. \frac{\partial z}{\partial y} =\frac{1}{x}f'(w)\frac{1}{x} =\frac{f'(w)}{x^2}.

(1-2)(b) 恒等式の確認

上の結果を代入すると x∂z∂x+y∂z∂y+z=x{−f(w)+wf′(w)x2}+yf′(w)x2+f(w)x=−f(w)x−wf′(w)x+yx2f′(w)+f(w)x. \begin{aligned} x\frac{\partial z}{\partial x} +y\frac{\partial z}{\partial y} +z &= x\left\{-\frac{f(w)+w f'(w)}{x^2}\right\} +y\frac{f'(w)}{x^2} +\frac{f(w)}{x} \\ &= -\frac{f(w)}{x}-\frac{w f'(w)}{x} +\frac{y}{x^2}f'(w) +\frac{f(w)}{x}. \end{aligned} ここで y/x=wy/x=w なので y/x2=w/xy/x^2=w/x であり、 −wf′(w)x+wf′(w)x=0 -\frac{w f'(w)}{x}+\frac{w f'(w)}{x}=0 となる。よって全体は恒等的に 00 である。

(1-3)(a) 不定積分

u=x−1 u=x-1 とおくと、x=u+1, dx=dux=u+1,\ dx=du である。したがって ∫xx−1 dx=∫u+1u du=∫(u1/2+u−1/2) du=23u3/2+2u1/2+C. \begin{aligned} \int \frac{x}{\sqrt{x-1}}\,dx &=\int \frac{u+1}{\sqrt u}\,du \\ &=\int\left(u^{1/2}+u^{-1/2}\right)\,du \\ &=\frac{2}{3}u^{3/2}+2u^{1/2}+C. \end{aligned} 元に戻すと ∫xx−1 dx=23(x−1)3/2+2x−1+C=23(x+2)x−1+C \int \frac{x}{\sqrt{x-1}}\,dx = \frac{2}{3}(x-1)^{3/2}+2\sqrt{x-1}+C = \frac{2}{3}(x+2)\sqrt{x-1}+C である。

(1-3)(b) 極方程式の面積

面積公式を用いると S=12∫02πa2(1+cos⁡θ)2 dθ=a22∫02π(1+2cos⁡θ+cos⁡2θ) dθ. \begin{aligned} S &=\frac12\int_0^{2\pi} a^2(1+\cos\theta)^2\,d\theta \\ &=\frac{a^2}{2}\int_0^{2\pi} \left(1+2\cos\theta+\cos^2\theta\right)\,d\theta. \end{aligned} ここで ∫02π1 dθ=2π,∫02πcos⁡θ dθ=0,∫02πcos⁡2θ dθ=π \int_0^{2\pi}1\,d\theta=2\pi,\qquad \int_0^{2\pi}\cos\theta\,d\theta=0,\qquad \int_0^{2\pi}\cos^2\theta\,d\theta=\pi だから S=a22(2π+π)=3π2a2. S=\frac{a^2}{2}(2\pi+\pi)=\frac{3\pi}{2}a^2. これが 3π2\frac{3\pi}{2} に等しいので a2=1a^2=1 である。さらに 1+cos⁡θ≥01+\cos\theta\ge 0 であり、曲線全体で r(θ)≥0r(\theta)\ge 0 とするには a≥0a\ge 0 が必要である。したがって a=1 a=1 である。

(1-3)(c) 変数変換による重積分

u=x+y,v=x−y u=x+y,\qquad v=x-y とおくと x=u+v2,y=u−v2 x=\frac{u+v}{2},\qquad y=\frac{u-v}{2} である。したがって J=∂(x,y)∂(u,v)=(121212−12),det⁡J=−12,∣det⁡J∣=12. J= \frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)} = \begin{pmatrix} \frac12 & \frac12\\[2mm] \frac12 & -\frac12 \end{pmatrix}, \qquad \det J=-\frac12,\qquad |\det J|=\frac12. 領域は 0≤u≤π,0≤v≤π 0\le u\le \pi,\qquad 0\le v\le \pi という長方形に移るので、 I=∫0π∫0πeusin⁡v⋅12 dv du=12(∫0πeu du)(∫0πsin⁡v dv)=12(eπ−1)⋅2=eπ−1. \begin{aligned} I &=\int_0^\pi\int_0^\pi e^u\sin v\cdot \frac12\,dv\,du\\ &=\frac12 \left(\int_0^\pi e^u\,du\right) \left(\int_0^\pi \sin v\,dv\right)\\ &=\frac12(e^\pi-1)\cdot 2\\ &=e^\pi-1. \end{aligned}

最終答

(1-1)(a) 00。 (1-1)(b) 最大値は存在しない。制約上で f=2z2f=2z^2 は上に有界でない。 (1-2)(a) zx=−f(w)+wf′(w)x2,zy=f′(w)x2\displaystyle z_x=-\frac{f(w)+wf'(w)}{x^2},\quad z_y=\frac{f'(w)}{x^2}。 (1-2)(b) xzx+yzy+z≡0\displaystyle xz_x+yz_y+z\equiv 0。 (1-3)(a) 23(x+2)x−1+C\displaystyle \frac{2}{3}(x+2)\sqrt{x-1}+C。 (1-3)(b) a=1a=1。 (1-3)(c) I=eπ−1\displaystyle I=e^\pi-1。

第2問 — 線形代数

線形独立性は一次関係で判定する

3本のうち1本が残り2本の和で表せると、ただちに線形従属である。次元を求めるときは、従属であることだけで終わらず、独立なベクトルが何本残るかまで確認する必要がある。今回は v1,v2v_1,v_2 が独立なので次元は 22 で止まる。

唯一解と行列式

連立一次方程式の係数行列が正則なら、右辺にかかわらず唯一解が存在する。ここでは行列式が偶然にも定数 11 になり、aa による例外がない。パラメータ付き問題では、最後に「除外される値がない」ことを明記すると答案として締まる。

外積・射影・体積のつながり

a×ba\times b は、a,ba,b の張る平面に垂直で、長さがその平行四辺形の面積に等しい。したがって単位法線、正射影、平行六面体の体積はすべて外積を軸に計算できる。特に体積は ∣det⁡(a b c)∣=∣(a×b)⋅c∣ |\det(a\ b\ c)|=|(a\times b)\cdot c| であり、成分計算の符号が変わっても絶対値を取るため体積は非負である。

行列多項式の扱い

固有多項式が λ(λ−1)(λ−2)\lambda(\lambda-1)(\lambda-2) と分解できるため、ケーリー・ハミルトンの定理を使うと行列そのものが同じ多項式を満たす。A3−3A2+2A=OA^3-3A^2+2A=O を得たあとは、目的の指数に合わせて An−3A^{n-3} を掛ければよい。固有値が異なる3つの値なので AA は対角化可能だが、漸化式の証明自体には対角化まで書く必要はない。

線形代数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 確率・統計

ポアソン分布の基本性質

ポアソン分布では「0件」の確率が e−λe^{-\lambda} になるため、「1件以上」は余事象で処理するのが最短である。また、平均と分散がともに λ\lambda になるのはポアソン分布の代表的な性質だが、答案ではモーメント母関数を微分して導出することが求められる。特に分散は MX′′(0)M_X''(0) そのものではなく、 MX′′(0)−{MX′(0)}2 M_X''(0)-\{M_X'(0)\}^2 である点を落とさないようにする。

検定の結論の書き方

検定統計量が負になっても、両側検定では絶対値で臨界値と比較する。今回の Z=−5Z=-5 は、サーバAの標本平均がサーバBより小さい方向に大きく離れていることを示す。ただし検定の結論としては、指定された対立仮説に合わせて「差がある」と述べるのが正確である。どちらが速いかまで書く場合は、標本平均ではAの方が小さい、という観察に基づく補足として扱う。

標準誤差の検算

母分散が既知で両標本サイズが等しいため、標準誤差は 2⋅825=0.8 \sqrt{2\cdot\frac{8}{25}}=0.8 とかなり小さい。平均差が −4-4 なので、標準誤差の5倍の差が出ている。したがって棄却という判定は数値感覚としても自然である。

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第4問 — データ構造とアルゴリズム

最後の一手で分類する

階段DPの標準的な考え方は「最後の一手」を見ることである。最後が1段なら残りは N−1N-1 段の問題、最後が2段なら残りは N−2N-2 段の問題になる。これにより、複雑な列挙をせずに aN=aN−1+aN−2 a_N=a_{N-1}+a_{N-2} が得られる。

a0=1a_0=1 の意味

a0=0a_0=0 としてしまうと、a2=a1+a0=1a_2=a_1+a_0=1 となり、2段を一度で上る方法を数え落とす。a0=1a_0=1 は「何もしないで到達済み」という空の手順を1通りとして数えるための初期条件である。動的計画法では、このような空のケースを正しく置くことが漸化式全体の整合性を支える。

トップダウン法とボトムアップ法の違い

トップダウン法は再帰で必要になった値だけを計算し、配列 rr に保存して同じ値の再計算を避ける。もし r[N]≥0r[N]\ge 0 ならすでに計算済みなので、すぐに返すのがメモ化の要点である。ボトムアップ法は r[0],r[1]r[0],r[1] から出発し、i=2,3,…,Ni=2,3,\ldots,N の順に表を埋める。

計算量

メモ化なしの単純再帰では同じ部分問題を何度も解くため、計算量が指数的に増える。今回のトップダウン法とボトムアップ法はいずれも各 i=0,…,Ni=0,\ldots,N の値を高々1回だけ確定するので、時間計算量は O(N) O(N) である。配列 r[0..N]r[0..N] を使うため、空間計算量も O(N) O(N) である。

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年度別の解答例(3年度)

  • 2026年度 冬季入試(全4問)

    微分積分の基本計算 / 一次独立性と同時対角化 / 密度関数と最尤推定

  • 2026年度 夏季入試(このページ・全4問)

    微分積分 / 線形代数 / 確率・統計

  • 2025年度 冬季入試(全4問)

    合成関数・矩形積分・級数 / 行列計算と連立方程式 / 幾何分布と最尤推定

2026年度 夏季入試の出題内容

全4問

この4問の分野は確率・統計1問・情報1問・線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析微分積分指数関数の増大 / 制約付き最大値の落とし穴あり
第2問線形代数—線形独立性は一次関係で判定する / 唯一解と行列式あり
第3問確率・統計—ポアソン分布の基本性質 / 検定の結論の書き方あり
第4問情報データ構造とアルゴリズム最後の一手で分類する / a_0=1 の意味あり

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前年度(2025年度 冬季入試)との違い

大問数
2025年度 冬季入試 4問 → 2026年度 夏季入試 4問
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