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名大 情報学研究科 知能システム学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、情報1問です。固有値・固有ベクトル、波動関数、ラグランジュの未定乗数法が出ています。2025年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、波動関数です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 解析・線形代数

重解の扱い

定数係数線形微分方程式では、特性方程式に重解 rr が出たとき、対応する基本解は erxe^{rx} と xerxxe^{rx} である。(b) は右辺が同次方程式の解 exe^x と重なっているため、未定係数法で単に AexAe^x と置くと失敗する。y=exvy=e^xv と置いて (D−1)2(D-1)^2 を直接処理すると、重なりの調整を機械的に行える。

2次形式の停留値

対称行列 AA による2次形式 uTAuu^TAu を単位球面上で考えると、停留点は固有ベクトル方向に限られる。これはラグランジュ未定乗数法から Au=λuAu=\lambda u が出るためである。したがって座標をすべて求めなくても、停留値と極値判定は固有値だけで決まる。最大固有値が極大値、最小固有値が極小値であり、今回の中間固有値 11 は球面上で増える方向と減る方向をどちらももつ。

置換の狙い

x2+1+x\sqrt{x^2+1}+x という置換は、逆数を取ると x2+1−x\sqrt{x^2+1}-x が現れる点が核心である。これにより、xx と x2+1\sqrt{x^2+1} を tt と 1/t1/t の和差で表せる。積分結果の対数項は log⁡t\log t から生じるので、最後に t=x+x2+1t=x+\sqrt{x^2+1} を戻す。

複素積分の注意

∣z∣|z| は正則関数ではないため、原始関数を使って端点だけで評価することはできない。経路をパラメータ表示し、各線分ごとに ∣z∣|z| と dzdz を計算する必要がある。今回の経路では実軸上で実数の寄与、縦方向の線分で純虚数の寄与が出るため、最終結果の実部と虚部を分けて確認できる。

解答

  1. 微分方程式について考える。

    1. 特性方程式は r2−2r+1=(r−1)2=0 r^2-2r+1=(r-1)^2=0 であり、重解 r=1r=1 をもつ。したがって一般解は y=(C1+C2x)ex y=(C_1+C_2x)e^x である。ただし C1,C2C_1,C_2 は任意定数である。

    2. 左辺は (D−1)2y(D-1)^2y と書ける。y=exv(x)y=e^xv(x) とおくと (D−1)y=exv′(x),(D−1)2y=exv′′(x) (D-1)y=e^xv'(x),\qquad (D-1)^2y=e^xv''(x) であるから、方程式は exv′′(x)=2ex,v′′(x)=2 e^xv''(x)=2e^x,\qquad v''(x)=2 となる。よって v(x)=x2+C1x+C2 v(x)=x^2+C_1x+C_2 であり、一般解は y=ex(x2+C1x+C2) y=e^x(x^2+C_1x+C_2) である。

  2. 2次形式について考える。u=(x,y,z)Tu=(x,y,z)^T とすると Q(x,y,z)=uTAu,A=(10201222−1) Q(x,y,z)=u^TAu,\qquad A= \begin{pmatrix} 1&0&2\\ 0&1&2\\ 2&2&-1 \end{pmatrix} である。

    1. まず (1,−1,0)T(1,-1,0)^T に対して A(1−10)=(1−10) A\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix} であるから、固有値 11 を得る。

      残りは x=yx=y の部分空間で調べればよい。ベクトルを (a,a,b)T(a,a,b)^T と書くと A(aab)=(a+2ba+2b4a−b) A\begin{pmatrix}a\\a\\b\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}a+2b\\a+2b\\4a-b\end{pmatrix} である。固有値を λ\lambda とすると a+2b=λa,4a−b=λb a+2b=\lambda a,\qquad 4a-b=\lambda b より det⁡(1−λ24−1−λ)=λ2−9=0 \det \begin{pmatrix} 1-\lambda&2\\ 4&-1-\lambda \end{pmatrix} =\lambda^2-9=0 となる。したがって λ=3,−3\lambda=3,-3 である。

      対応する単位固有ベクトルは、例えば λ=3:13(111),λ=1:12(1−10),λ=−3:16(11−2) \lambda=3:\quad \frac{1}{\sqrt3} \begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}, \qquad \lambda=1:\quad \frac{1}{\sqrt2} \begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix}, \qquad \lambda=-3:\quad \frac{1}{\sqrt6} \begin{pmatrix}1\\1\\-2\end{pmatrix} である。符号を全体に反転したものも同じ固有空間の単位固有ベクトルである。

    2. 制約 x2+y2+z2=1x^2+y^2+z^2=1 は ∥u∥=1\|u\|=1 である。ラグランジュ未定乗数法を用いると ∇(uTAu)=2Au,∇(uTu)=2u \nabla(u^TAu)=2Au,\qquad \nabla(u^Tu)=2u であるから、停留点では Au=λu Au=\lambda u が成り立つ。よって停留点における QQ の値は、AA の固有値そのものである。

      したがって値は 3,1,−3 3,\quad 1,\quad -3 である。このうち 33 は球面上での極大値、−3-3 は球面上での極小値である。値 11 は中間の固有値に対応し、極大でも極小でもない。

  3. 置換と複素積分について考える。

    1. t=x2+1+x t=\sqrt{x^2+1}+x とおくと 1t=x2+1−x \frac{1}{t}=\sqrt{x^2+1}-x である。したがって、和と差をとれば x=12(t−1t)=t2−12t,x2+1=12(t+1t)=t2+12t. x=\frac{1}{2}\left(t-\frac1t\right) =\frac{t^2-1}{2t}, \qquad \sqrt{x^2+1}=\frac{1}{2}\left(t+\frac1t\right) =\frac{t^2+1}{2t}. また xx2+1=14(t−1t)(t+1t)=t4−14t2. x\sqrt{x^2+1} = \frac14\left(t-\frac1t\right)\left(t+\frac1t\right) = \frac{t^4-1}{4t^2}.

    2. 上の置換から dx=12(1+1t2) dt,x2+1=12(t+1t) dx=\frac12\left(1+\frac1{t^2}\right)\,dt, \qquad \sqrt{x^2+1}=\frac12\left(t+\frac1t\right) である。よって ∫x2+1 dx=∫14(t+1t)(1+1t2) dt=14∫(t+2t+1t3) dt=18(t2−1t2)+12log⁡t+C. \begin{aligned} \int\sqrt{x^2+1}\,dx &= \int \frac14\left(t+\frac1t\right) \left(1+\frac1{t^2}\right)\,dt \\ &= \frac14\int\left(t+\frac2t+\frac1{t^3}\right)\,dt \\ &= \frac18\left(t^2-\frac1{t^2}\right) +\frac12\log t+C. \end{aligned} ここで t=x2+1+x>0t=\sqrt{x^2+1}+x>0 であり、 18(t2−1t2)=12xx2+1 \frac18\left(t^2-\frac1{t^2}\right) =\frac12x\sqrt{x^2+1} だから ∫x2+1 dx=12xx2+1+12log⁡(x+x2+1)+C \int\sqrt{x^2+1}\,dx = \frac12x\sqrt{x^2+1} +\frac12\log\left(x+\sqrt{x^2+1}\right)+C である。

    3. 経路を、実軸上の部分 C1C_1 と縦方向の部分 C2C_2 に分ける。 まず C1C_1 では z=sz=s, 0≤s≤10\le s\le 1 とおけるので ∫C1∣z∣ dz=∫01s ds=12. \int_{C_1}|z|\,dz=\int_0^1 s\,ds=\frac12. 次に C2C_2 では z=1+isz=1+is, 0≤s≤10\le s\le 1 とおけるので ∣z∣=1+s2,dz=i ds |z|=\sqrt{1+s^2},\qquad dz=i\,ds である。したがって ∫C2∣z∣ dz=i∫011+s2 ds=i2(2+log⁡(1+2)). \int_{C_2}|z|\,dz = i\int_0^1\sqrt{1+s^2}\,ds = \frac{i}{2} \left(\sqrt2+\log(1+\sqrt2)\right). 以上より ∫C∣z∣ dz=12+i2(2+log⁡(1+2)). \int_C |z|\,dz = \frac12+ \frac{i}{2}\left(\sqrt2+\log(1+\sqrt2)\right).

最終答

[1] (a) y=(C1+C2x)ex,(b) y=ex(x2+C1x+C2),[2] A=(10201222−1),λ=3,1,−3,λ=3:13(1,1,1)T,λ=1:12(1,−1,0)T,λ=−3:16(1,1,−2)T,∥u∥=1 での停留値は 3,1,−3。3 は極大値、−3 は極小値、1 は極値でない。[3] (a) x=t2−12t, x2+1=t2+12t, xx2+1=t4−14t2,(b) ∫x2+1 dx=12xx2+1+12log⁡(x+x2+1)+C,(c) ∫C∣z∣ dz=12+i2(2+log⁡(1+2)). \begin{gathered} [1]\ (a)\ y=(C_1+C_2x)e^x,\qquad (b)\ y=e^x(x^2+C_1x+C_2),\\ [2]\ A= \begin{pmatrix} 1&0&2\\ 0&1&2\\ 2&2&-1 \end{pmatrix},\quad \lambda=3,1,-3,\\ \lambda=3:\frac1{\sqrt3}(1,1,1)^T,\quad \lambda=1:\frac1{\sqrt2}(1,-1,0)^T,\quad \lambda=-3:\frac1{\sqrt6}(1,1,-2)^T,\\ \|u\|=1\text{ での停留値は }3,1,-3。 3\text{ は極大値、}-3\text{ は極小値、}1\text{ は極値でない。}\\ [3]\ (a)\ x=\frac{t^2-1}{2t},\ \sqrt{x^2+1}=\frac{t^2+1}{2t},\ x\sqrt{x^2+1}=\frac{t^4-1}{4t^2},\\ (b)\ \int\sqrt{x^2+1}\,dx =\frac12x\sqrt{x^2+1} +\frac12\log\left(x+\sqrt{x^2+1}\right)+C,\\ (c)\ \displaystyle \int_C|z|\,dz =\frac12+\frac{i}{2}\left(\sqrt2+\log(1+\sqrt2)\right). \end{gathered}

第2問 — 確率・統計

グループ分けの数え方

3名と4名のグループは人数で区別できるので、3名のグループだけを選べば分け方が一意に決まる。このため全事象を (73)=35\binom73=35 と置くのが最も簡単である。人数の異なるグループをさらにラベル付きで数える必要はない。

条件付き確率で重みが変わる理由

[1](d) では、同じ「a,ca,c が同じグループ」という状況でも、そのグループが3名か4名かで、2人が選ばれる確率が異なる。3名グループなら相手候補は2人、4名グループなら相手候補は3人である。したがって単に該当する分け方の個数だけを数えると誤りになる。観測手順に従って、各分け方に 1/71/7 または 2/212/21 の重みを掛ける必要がある。

最大値の分布

最大値 MM の問題では、密度を直接考えるよりも累積分布関数から入る方が安全である。max⁡(X1,X2)≤m\max(X_1,X_2)\le m は X1≤mX_1\le m かつ X2≤mX_2\le m と同値であり、独立性から F(m)2F(m)^2 になる。最後に微分して 2F(m)f(m)2F(m)f(m) を得る。区間ごとに FF と ff の式が変わるため、境界 m=1/3m=1/3 を忘れずに分けることが重要である。

確率・統計の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — プログラミング

空欄補充の考え方

`update' の後半では、pupu 側のリスト末尾に pvpv 側のリストをつなぎ、さらに pvpv から始まるリスト上の各ラベルの代表値を T[pu][0]T[pu][0] に書き換えている。したがって pupu は残す代表、pvpv は吸収される代表でなければならない。問題文の代入規則は、代表値の小さい方を pupu、大きい方を pvpv にするという意味である。

走査中のラベル付け

各マスの更新では、上、左、左上、右上の既処理または既参照の値を調べている。非零要素が上または左とつながると既存ラベルを引き継ぎ、左または左上と右上が同時に存在すると `update' によってラベル集合が統合される。35行目の表示は各行の処理後に行われるので、問2では2行目までしか更新されていない点に注意する。

42行目の表示が変わる条件

37行目が偽のままなら、辞書 TT では代表値が統合されていても、配列 AA の中の古いラベルはそのまま残る。37行目を真にした場合だけ、40行目で AA の全要素が代表ラベルに置換される。問4では 1,2,31,2,3 がすべて代表 11 に属するため、非零要素がすべて 11 になる。

一部の接続判定を外した場合

問5では、左上と右上を利用する分岐が実行されないため、斜め方向の接続で本来同一成分になる部分が分離して扱われる。その結果、右端上側の成分は代表 33、下側の成分は代表 44 として残り、ラベル 55 は 44 に統合される。最後の代表ラベル置換により、配列中の 55 は 44 へ変わるが、辞書 TT には統合履歴として 55 の項目が残る。

プログラミングの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

  • 2026年度(このページ・全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

  • 2025年度(全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

  • 2024年度(全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

2026年度の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・情報1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—解析・線形代数重解の扱い / 2次形式の停留値あり
第2問確率・統計—グループ分けの数え方 / 条件付き確率で重みが変わる理由あり
第3問情報プログラミング空欄補充の考え方 / 走査中のラベル付けあり

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3テーマ

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 3問 → 2026年度 3問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・波動関数
2026年度で新しく出たテーマ
ラグランジュの未定乗数法
2025年度の解答例

名古屋大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(博士前期課程)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-09-26
名古屋大学の公式過去問PDF