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名大 情報学研究科 知能システム学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、情報1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 解析・線形代数

遷移行列の列の意味

ここでの行列 AA は,(an,bn)T(a_n,b_n)^{\mathsf T} に左から掛ける形で作る。第1列は「現在A群にいる要素が次にA群・B群へ行く割合」,第2列は「現在B群にいる要素が次にA群・B群へ行く割合」である。したがって各列の和が1になる。行の和を1にしようとすると転置した行列を作ってしまうので注意する。

長期挙動を決める固有値

固有値 11 は全体の割合 an+bn=1a_n+b_n=1 が保存されることに対応する。もう一つの固有値 0.60.6 は,初期値に依存するずれが毎ステップ 0.60.6 倍に縮むことを表している。そのため十分時間が経つと初期値の影響は消え,(3/4,1/4)(3/4,1/4) だけが残る。

バラ曲線の面積

極座標で面積を求めるときは,曲線が同じ領域を何回描くかを確認する必要がある。今回は 0≤θ≤π0\leq\theta\leq\pi で5枚の花弁を一度ずつ描くため, 12∫0πr2 dθ\frac12\int_0^\pi r^2\,d\theta をそのまま使える。もし各花弁だけを個別に計算するなら, 5⋅12∫0π/5sin⁡25θ dθ=π4 5\cdot\frac12\int_0^{\pi/5}\sin^2 5\theta\,d\theta = \frac{\pi}{4} としても同じ結果になる。

線形写像とアフィン写像の違い

最後の設問では,図形の見た目から平行四辺形内の座標変換を考えたくなるが,条件は線形写像である。したがって原点を基準にしたベクトルの比例関係がそのまま保存される。P=2DP=2D に気づけば,ほかの3点を使って行列全体を求める必要はない。

解答

    1. 1ステップ後の割合は an+1=0.9an+0.3bn,bn+1=0.1an+0.7bn a_{n+1}=0.9a_n+0.3b_n,\qquad b_{n+1}=0.1a_n+0.7b_n である。したがって Sn+1=ASn,A=(0.90.30.10.7) S_{n+1}=AS_n,\qquad A= \begin{pmatrix} 0.9 & 0.3\\ 0.1 & 0.7 \end{pmatrix} となる。

    2. 固有値は det⁡(A−λI)=∣0.9−λ0.30.10.7−λ∣=λ2−1.6λ+0.6=(λ−1)(λ−0.6) \det(A-\lambda I) = \begin{vmatrix} 0.9-\lambda & 0.3\\ 0.1 & 0.7-\lambda \end{vmatrix} =\lambda^2-1.6\lambda+0.6 =(\lambda-1)(\lambda-0.6) より λ1=1,λ2=0.6 \lambda_1=1,\qquad \lambda_2=0.6 である。

      λ1=1\lambda_1=1 に対しては −0.1x+0.3y=0 -0.1x+0.3y=0 なので固有ベクトルは (3,1)T(3,1)^{\mathsf T} の定数倍である。単位固有ベクトルの一つは u1=110(31). u_1=\frac{1}{\sqrt{10}}\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}. λ2=0.6\lambda_2=0.6 に対しては 0.3x+0.3y=0 0.3x+0.3y=0 なので固有ベクトルは (1,−1)T(1,-1)^{\mathsf T} の定数倍である。単位固有ベクトルの一つは u2=12(1−1). u_2=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}.

    3. 固有ベクトルを列に並べて P=(311−1) P= \begin{pmatrix} 3 & 1\\ 1 & -1 \end{pmatrix} とおく。このとき P−1=(141414−34) P^{-1} = \begin{pmatrix} \frac14 & \frac14\\ \frac14 & -\frac34 \end{pmatrix} であり, P−1AP=(1000.6) P^{-1}AP= \begin{pmatrix} 1 & 0\\ 0 & 0.6 \end{pmatrix} となる。

    4. S0=(1,0)TS_0=(1,0)^{\mathsf T} のとき P−1S0=(1414) P^{-1}S_0 = \begin{pmatrix} \frac14\\ \frac14 \end{pmatrix} である。よって Sn=P(1n000.6n)P−1S0=14(3+0.6n1−0.6n). S_n = P \begin{pmatrix} 1^n & 0\\ 0 & 0.6^n \end{pmatrix} P^{-1}S_0 = \frac14 \begin{pmatrix} 3+0.6^n\\ 1-0.6^n \end{pmatrix}. 0.65=0.077760.6^5=0.07776 だから a5=3.077764=0.76944,b5=0.922244=0.23056. a_5=\frac{3.07776}{4}=0.76944,\qquad b_5=\frac{0.92224}{4}=0.23056. 四捨五入して小数点以下第4位まで書くと a5=0.7694,b5=0.2306. a_5=0.7694,\qquad b_5=0.2306.

    5. 一般の初期値を S0=(a0,b0)TS_0=(a_0,b_0)^{\mathsf T} とし,a0+b0=1a_0+b_0=1 とする。 P−1S0=(a0+b04a0−3b04)=(14a0−3b04). P^{-1}S_0 = \begin{pmatrix} \frac{a_0+b_0}{4}\\[1mm] \frac{a_0-3b_0}{4} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac14\\[1mm] \frac{a_0-3b_0}{4} \end{pmatrix}. したがって Sn=14(31)+a0−3b04(0.6)n(1−1). S_n = \frac14 \begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix} + \frac{a_0-3b_0}{4}(0.6)^n \begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}. n→∞n\to\infty で (0.6)n→0(0.6)^n\to0 となるので, lim⁡n→∞an=34,lim⁡n→∞bn=14. \lim_{n\to\infty}a_n=\frac34,\qquad \lim_{n\to\infty}b_n=\frac14.

  1. 極座標で r=sin⁡5θr=\sin5\theta と見ればよい。

    1. 0≤θ≤π0\leq\theta\leq\pi の間に sin⁡5θ\sin5\theta は5つの山を作るため,曲線は原点を中心とする5弁のバラ曲線である。∣sin⁡5θ∣|\sin5\theta| が最大になるのは θ=π10, 3π10, 5π10, 7π10, 9π10 \theta=\frac{\pi}{10},\ \frac{3\pi}{10},\ \frac{5\pi}{10},\ \frac{7\pi}{10},\ \frac{9\pi}{10} である。ただし r<0r<0 となる区間では,点は角度を π\pi だけずらした側に描かれる。そのため実際の花弁は原点の周りに 2π/52\pi/5 間隔で配置される。

    2. 極座標表示で一度ずつ囲まれる部分の面積は 12∫r2 dθ \frac12\int r^2\,d\theta で求まる。ここでは 0≤θ≤π0\leq\theta\leq\pi で5枚の花弁がちょうど一度ずつ描かれるから, 面積=12∫0πsin⁡25θ dθ. \text{面積} = \frac12\int_0^\pi \sin^2 5\theta\,d\theta. sin⁡25θ=(1−cos⁡10θ)/2\sin^2 5\theta=(1-\cos10\theta)/2 より 12∫0πsin⁡25θ dθ=12[θ2−sin⁡10θ20]0π=π4. \frac12\int_0^\pi \sin^2 5\theta\,d\theta = \frac12\left[ \frac{\theta}{2}-\frac{\sin10\theta}{20} \right]_0^\pi = \frac{\pi}{4}.

  2. 線形写像なので,点の座標をベクトルとして比例関係をそのまま写せる。与えられた座標から P=(10,6,0)T=2(5,3,0)T=2D P=(10,6,0)^{\mathsf T} =2(5,3,0)^{\mathsf T} =2D である。したがって P′=f(P)=f(2D)=2f(D)=2D′. P'=f(P)=f(2D)=2f(D)=2D'. D′=(2,1,1)TD'=(2,1,1)^{\mathsf T} だから P′=(4,2,2)T. P'=(4,2,2)^{\mathsf T}.

最終答

[1][1] A=(0.90.30.10.7)A=\begin{pmatrix}0.9&0.3\\0.1&0.7\end{pmatrix},固有値は 1,0.61,0.6,対応する単位固有ベクトルの一例は 110(3,1)T\frac1{\sqrt{10}}(3,1)^{\mathsf T},12(1,−1)T\frac1{\sqrt2}(1,-1)^{\mathsf T}。 S0=(1,0)TS_0=(1,0)^{\mathsf T} のとき a5=0.7694, b5=0.2306a_5=0.7694,\ b_5=0.2306,極限は (an,bn)→(3/4,1/4)(a_n,b_n)\to(3/4,1/4)。 [2][2] 5弁のバラ曲線,面積は π/4\pi/4。 [3][3] P′=(4,2,2)TP'=(4,2,2)^{\mathsf T}。

第2問 — 確率・統計

積が素数になる条件

2枚とも 22 以上なら積は必ず合成数である。したがって積が素数になる唯一の形は,片方が 11,もう片方が素数である場合に限られる。この条件を見落として「素数同士を選ぶ」と数えると誤りになる。

期待値の計算を楽にする恒等式

∑i<jij\sum_{i<j}ij を直接並べて足すのは時間がかかる。二乗の展開 (∑ii)2=∑ii2+2∑i<jij \left(\sum_i i\right)^2 = \sum_i i^2+2\sum_{i<j}ij を使うと,対称な組み合わせの和を一度で求められる。カードを無作為に2枚選ぶ問題ではこの恒等式がよく使える。

残りの和との比較

p>sp>s の設問は,残り11枚を直接扱うより,全体の和 9191 から選んだ2枚を引くほうが簡単である。 不等式 ij>91−i−jij>91-i-j を (i+1)(j+1)>92(i+1)(j+1)>92 に変形すると,境界が単調になるため,ii を固定して jj の個数を数えやすい。

周辺密度と対称性

fX(x)f_X(x) は xx の偶関数である。そのため E[X]=0\mathrm{E}[X]=0 は積分を全部計算しなくても判断できる。一方で Var⁡(X+1)\operatorname{Var}(X+1) では定数シフトにより平均は変わるが,ばらつきは変わらない。ここで Var⁡(X+1)=Var⁡(X)\operatorname{Var}(X+1)=\operatorname{Var}(X) と書けることが計算量を減らす鍵である。

独立性を仮定しない

同時密度 x2+y/3x^2+y/3 は g(x)h(y)g(x)h(y) の形に分離できない。したがって最後の期待値を E[X2]E[Y3+Y2]\mathrm{E}[X^2]\mathrm{E}[Y^3+Y^2] としてはいけない。密度を掛けた二重積分から出発し,足し算の形に分けて計算するのが安全である。

確率・統計の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — プログラミング

Numpyの演算と表示

Numpy配列では,スカラー加算やスライスは各要素・各添字に一括で作用する。配列の表示では通常のPythonリストと異なり,カンマが出ない。答案では値だけでなく,行列の形が崩れていないことも重要である。

ミュータブルとイミュータブル

リストのようなミュータブルなオブジェクトは,関数内で要素を書き換えると呼び出し元からも変更が見える。一方,整数や文字列のようなイミュータブルなオブジェクトは,代入によって元のオブジェクトが変わるのではなく,変数名の束縛先が変わる。この違いが,a[0]\texttt{a[0]} と b\texttt{b} の挙動の差として現れる。

浮動小数点数を等号で止めない

小数を繰り返し加算するループでは,等号比較を停止条件にするのは危険である。特に 0.10.1 のような10進では短い小数でも,2進では循環小数になる値がある。試験では「なぜ止まらないか」を,浮動小数点の丸め誤差と等号比較の組み合わせとして説明できれば十分である。

素数判定の流れ

空欄 a\texttt{a} は「割り切れたら素数でない」という判定,空欄 b\texttt{b} は「最後まで割り切れなかったらリストに追加」という判定である。外側のループが降順なので,出力リストも降順になる。

テンプレート照合として読む

最後の関数は,画像処理でいう単純なテンプレート照合に近い。各位置の小窓を取り出し,テンプレートとの差が全画素で閾値以下かを判定し,条件を満たした小窓を置換する。実装上は関数が x\texttt{x} を直接変更して返すため,2回目の呼び出しは1回目の出力を入力として使う点を落としやすい。

プログラミングの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

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    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

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  • 2024年度(このページ・全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

2024年度の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・情報1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—解析・線形代数遷移行列の列の意味 / 長期挙動を決める固有値あり
第2問確率・統計—積が素数になる条件 / 期待値の計算を楽にする恒等式あり
第3問情報プログラミングNumpyの演算と表示 / ミュータブルとイミュータブル—

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公開年度範囲
2023〜2026(博士前期課程)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
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2026-09-26
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