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名大 情報学研究科 知能システム学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、情報1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標、波動関数が出ています。2024年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、重積分と極座標です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 解析・線形代数

高階微分方程式を1階系に直す理由

高階の線形微分方程式は、x,x′,x′′x,x',x'' を状態変数に並べると1階の線形システムになる。最後の行だけが元の方程式から決まり、今回なら x′′′=3x′′+6x′−8xx'''=3x''+6x'-8x なので、行列の第3行は (−8,6,3)(-8,6,3) である。ここで符号を間違えると特性方程式全体が変わるため、最初に移項の向きを確認しておくのが重要である。

同伴行列と特性方程式

行列 AA の固有値は、微分方程式に x=eλtx=e^{\lambda t} を代入したときの特性方程式の解と一致する。したがって、固有値を求めてから一般解を書く流れは、行列を対角化していることと同じ意味をもつ。3つの固有値が異なるので、解には et,e4t,e−2te^t,e^{4t},e^{-2t} がそれぞれ1回ずつ現れる。

正三角形を複素数で表すコツ

正三角形は、重心を原点に移すと3頂点が a,aω,aω2a,a\omega,a\omega^2 の形になる。ここで ω\omega は1の3乗根であり、1+ω+ω2=01+\omega+\omega^2=0 が計算を一気に短くする。証明したい式は平行移動で不変なので、重心を原点にしてから計算してよい。

断面積の変数変換

x2/3+y2/3x^{2/3}+y^{2/3} という形から、x=rcos⁡3t, y=rsin⁡3tx=r\cos^3t,\ y=r\sin^3t と置くのが自然である。この置換では指数 2/32/3 が消えて r2/3r^{2/3} だけが残る。面積計算では範囲だけでなくヤコビアン 3rcos⁡2tsin⁡2t3r\cos^2t\sin^2t を必ず掛ける必要がある。断面積は k=1k=1 で0になり、境界値とも整合する。

解答

[1] 微分方程式

u=t(x,x′,x′′)u={}^t(x,x',x'') とおく。成分ごとに微分すると u′=t(x′,x′′,x′′′) u'={}^t(x',x'',x''') であり、与えられた方程式から x′′′=3x′′+6x′−8xx'''=3x''+6x'-8x である。したがって dudt=Au,A=(010001−863). \frac{du}{dt}=Au,\qquad A= \begin{pmatrix} 0&1&0\\ 0&0&1\\ -8&6&3 \end{pmatrix}.

この行列は同伴行列の形なので、固有値は特性方程式 λ3−3λ2−6λ+8=0 \lambda^3-3\lambda^2-6\lambda+8=0 の解である。因数分解すると λ3−3λ2−6λ+8=(λ−1)(λ−4)(λ+2) \lambda^3-3\lambda^2-6\lambda+8 =(\lambda-1)(\lambda-4)(\lambda+2) であるから、固有値は λ=1,4,−2 \lambda=1,\quad 4,\quad -2 である。よって一般解は x(t)=C1et+C2e4t+C3e−2t x(t)=C_1e^t+C_2e^{4t}+C_3e^{-2t} となる。ただし C1,C2,C3C_1,C_2,C_3 は任意定数である。

[2] 複素数

(a) a1=3+i, a2=2ia_1=\sqrt3+i,\ a_2=2i とする。 a1a2=3+i2i=1−3 i2. \frac{a_1}{a_2} =\frac{\sqrt3+i}{2i} =\frac{1-\sqrt3\,i}{2}. したがって絶対値は ∣a1a2∣=(12)2+(−32)2=1 \left|\frac{a_1}{a_2}\right| =\sqrt{\left(\frac12\right)^2+\left(-\frac{\sqrt3}{2}\right)^2} =1 であり、偏角は主値で arg⁡a1a2=−π3 \arg\frac{a_1}{a_2}=-\frac{\pi}{3} である。

(b) 正三角形の重心を cc とし、原点中心に平行移動した頂点を w1=z1−c,w2=z2−c,w3=z3−c w_1=z_1-c,\quad w_2=z_2-c,\quad w_3=z_3-c とおく。正三角形の3頂点は、ある複素数 aa と ω=e2πi/3\omega=e^{2\pi i/3} を用いて w1=a,w2=aω,w3=aω2 w_1=a,\qquad w_2=a\omega,\qquad w_3=a\omega^2 と書ける。ここで 1+ω+ω2=01+\omega+\omega^2=0 である。

示すべき式の左辺を E(z1,z2,z3)=z12+z22+z32−z1z2−z2z3−z3z1 E(z_1,z_2,z_3) =z_1^2+z_2^2+z_3^2-z_1z_2-z_2z_3-z_3z_1 とおく。3点を同じだけ平行移動しても EE は変わらない。実際、 E(z1+c,z2+c,z3+c)=E(z1,z2,z3) E(z_1+c,z_2+c,z_3+c)=E(z_1,z_2,z_3) が直接計算で従う。したがって重心を原点に移した wiw_i で計算すればよい。 E(w1,w2,w3)=a2(1+ω2+ω4)−a2(ω+ω3+ω2)=a2(1+ω+ω2)−a2(1+ω+ω2)=0. \begin{aligned} E(w_1,w_2,w_3) &=a^2(1+\omega^2+\omega^4) -a^2(\omega+\omega^3+\omega^2)\\ &=a^2(1+\omega+\omega^2) -a^2(1+\omega+\omega^2)=0. \end{aligned} よって指定された等式が成り立つ。

[3] 立体の体積

平面 z=kz=k による断面が空でないためには 0≤k≤10\le k\le 1 が必要である。このとき断面 SS は x2/3+y2/3≤1−k2/3,x≥0, y≥0 x^{2/3}+y^{2/3}\le 1-k^{2/3},\qquad x\ge0,\ y\ge0 で与えられる。

(a) x=rcos⁡3t, y=rsin⁡3tx=r\cos^3t,\ y=r\sin^3t とおくと、第一象限だけを扱うので 0≤t≤π2,r≥0 0\le t\le \frac{\pi}{2},\qquad r\ge0 である。また x2/3+y2/3=r2/3(cos⁡2t+sin⁡2t)=r2/3. x^{2/3}+y^{2/3} =r^{2/3}(\cos^2t+\sin^2t)=r^{2/3}. したがって 0≤r≤(1−k2/3)3/2,0≤t≤π2. 0\le r\le (1-k^{2/3})^{3/2},\qquad 0\le t\le \frac{\pi}{2}.

(b) ヤコビアンは ∣∂(x,y)∂(r,t)∣=∣cos⁡3t−3rcos⁡2tsin⁡tsin⁡3t3rsin⁡2tcos⁡t∣=3rcos⁡2tsin⁡2t. \left|\frac{\partial(x,y)}{\partial(r,t)}\right| = \begin{vmatrix} \cos^3t&-3r\cos^2t\sin t\\ \sin^3t&3r\sin^2t\cos t \end{vmatrix} =3r\cos^2t\sin^2t. よって、R=(1−k2/3)3/2R=(1-k^{2/3})^{3/2} とおくと Area⁡(S)=∫0π/2∫0R3rcos⁡2tsin⁡2t dr dt=3R22∫0π/2sin⁡2tcos⁡2t dt=3R22⋅π16=3π32(1−k2/3)3. \begin{aligned} \operatorname{Area}(S) &=\int_0^{\pi/2}\int_0^R 3r\cos^2t\sin^2t\,dr\,dt\\ &=\frac{3R^2}{2}\int_0^{\pi/2}\sin^2t\cos^2t\,dt\\ &=\frac{3R^2}{2}\cdot\frac{\pi}{16} =\frac{3\pi}{32}(1-k^{2/3})^3. \end{aligned}

(c) 体積は断面積を k=0k=0 から 11 まで積分して Vol⁡(V)=3π32∫01(1−k2/3)3 dk=3π32∫01(1−3k2/3+3k4/3−k2) dk=3π32(1−95+97−13)=π70. \begin{aligned} \operatorname{Vol}(V) &=\frac{3\pi}{32}\int_0^1(1-k^{2/3})^3\,dk\\ &=\frac{3\pi}{32}\int_0^1 \left(1-3k^{2/3}+3k^{4/3}-k^2\right)\,dk\\ &=\frac{3\pi}{32} \left(1-\frac{9}{5}+\frac{9}{7}-\frac13\right) =\frac{\pi}{70}. \end{aligned}

最終答

[1]A=(010001−863),λ=1,4,−2,x(t)=C1et+C2e4t+C3e−2t[1]\quad A=\begin{pmatrix}0&1&0\\0&0&1\\-8&6&3\end{pmatrix},\quad \lambda=1,4,-2,\quad x(t)=C_1e^t+C_2e^{4t}+C_3e^{-2t}.

[2]∣a1/a2∣=1, arg⁡(a1/a2)=−π/3[2]\quad \left|a_1/a_2\right|=1,\ \arg(a_1/a_2)=-\pi/3。 また、正三角形の3頂点では z12+z22+z32−z1z2−z2z3−z3z1=0z_1^2+z_2^2+z_3^2-z_1z_2-z_2z_3-z_3z_1=0.

[3]0≤k≤1, 0≤r≤(1−k2/3)3/2, 0≤t≤π/2,Area⁡(S)=3π32(1−k2/3)3,Vol⁡(V)=π70.[3]\quad 0\le k\le1,\ 0\le r\le(1-k^{2/3})^{3/2},\ 0\le t\le\pi/2,\quad \operatorname{Area}(S)=\frac{3\pi}{32}(1-k^{2/3})^3,\quad \operatorname{Vol}(V)=\frac{\pi}{70}.

第2問 — 確率・統計

二項分布で数える部分

同じコインを独立に複数回投げる問題は、表の回数だけを問うなら二項分布でよい。一方、連続して出るかどうかは順序に依存するため、単に (42)\binom42 を使うだけでは不足する。今回の(b)では、2個の表が隣り合う並び、3個の表を含む並び、4個すべて表の並びに分けると重複なく数えられる。

ベイズの定理で事前確率を忘れない

(c)では「表が1回だけ」という結果は、表が出にくいコインAの方を強く支持する。計算では、コインを選ぶ事前確率 P(A)=P(B)=1/2P(A)=P(B)=1/2 も掛ける。ただし今回は等確率なので最後に相殺され、尤度 P(E∣A)P(E\mid A) と P(E∣B)P(E\mid B) の比だけを比較しても同じ答えになる。

密度関数の正規化

確率密度関数では、値そのものではなく面積が確率を表す。したがって最初に全積分を1にする条件から kk を決める。ここを飛ばして累積分布を作ると、後続の F(x)F(x) の値がすべてずれる。

単調性による解の選別

0<x<20<x<2 では f(x)>0f(x)>0 なので、F(x)F(x) は単調増加である。三次方程式に複数の代数的な根が出ても、分布の定義域に入る根だけを採用する。特に F(x)=1/2F(x)=1/2 では 1+31+\sqrt3 も因数分解上は現れるが、これは2を超えるため対応する値ではない。

線形変換後の密度

Y=2X+1Y=2X+1 のような単調な線形変換では、密度に ∣dx/dy∣|dx/dy| を掛ける。区間も同時に変わり、X∈[0,2]X\in[0,2] は Y∈[1,5]Y\in[1,5] に移る。式だけでなく台を明記することで、密度関数として完全な答えになる。

確率・統計の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — プログラミング

このプログラムが行っていること

各再帰呼び出しでは、まだ処理していない右下部分から絶対値最小の非零成分を探し、それを現在のピボット位置 (s,s)(s,s) に移す。その後、ピボット列とピボット行の他の成分を、整数の商を用いた行・列操作で小さくしていく。整数行列に対する Smith 標準形の計算に近い構造である。

同時代入で入れ替える理由

行や列の入れ替えでは、片方を先に上書きすると元の値が失われる。NumPy の高度な添字指定を使って A[[s, i], :] = A[[i, s], :] の形にすると、右辺が先に評価されるため、退避変数なしで2行を入れ替えられる。列についても同じ考え方である。

床関数と Python の整数除算

問題文の ⌊x⌋\lfloor x\rfloor は、Python では // に対応する。特に負の値を含むとき、int(a/b) のような0方向への丸めとは結果が異なる場合がある。今回の行列では負成分も現れるため、床関数を実装するには // を使う必要がある。

表示行列を追跡する位置

表示は手続きの最初に実行される。したがって、ある呼び出しの中で行・列操作をした直後の行列は、その場では表示されず、次の再帰呼び出しに入った時点で表示される。2回目以降の表示を求めるときは、再帰呼び出しの引数として渡される行列を追跡するのが安全である。

変更後条件の意味

変更後の条件は、現在のピボットの行と列がすでに整理されているときだけ check を実行する、という制御になる。元の True では毎回 check が走るため、右下ブロックの割り切れない成分を見つけると行・列を追加で変形する。変更後はそのタイミングが遅れるため、3回目以降の表示行列が元のプログラムと異なる。

プログラミングの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

  • 2026年度(全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

  • 2025年度(このページ・全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

  • 2024年度(全3問)

    解析・線形代数 / 確率・統計 / プログラミング

2025年度の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・情報1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—解析・線形代数高階微分方程式を1階系に直す理由 / 同伴行列と特性方程式あり
第2問確率・統計—二項分布で数える部分 / ベイズの定理で事前確率を忘れないあり
第3問情報プログラミングこのプログラムが行っていること / 同時代入で入れ替える理由—

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3テーマ

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 3問 → 2025年度 3問
2025年度で新しく出たテーマ
波動関数
2024年度の解答例

名古屋大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(博士前期課程)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-09-26
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