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都立大 システムデザイン研究科 情報科学域 専門科目 2025年度 冬季入試 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は線形代数1問、微分積分・解析1問です。線形空間・基底、フーリエ級数、最尤推定が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 合成関数・矩形積分・級数

連鎖律の見通し

この合成関数は「一次式 →\to gg →\to ff」という三段構造である。したがって、偏微分では外側から順に微分し、最後に一次式の x1x_1 に関する係数 w1w_1 を掛ける。x2x_2 で偏微分する場合は同じ形で最後の係数だけが w2w_2 になる。

シグモイドの二階微分

一階微分を g′(x)=g(x)(1−g(x))g'(x)=g(x)(1-g(x)) と書いておくと、二階微分は g′′(x)=g′(x)(1−g(x))−g(x)g′(x)=g′(x)(1−2g(x)) g''(x)=g'(x)(1-g(x))-g(x)g'(x)=g'(x)(1-2g(x)) と短く計算できる。指数関数の形に戻すと、符号が x=0x=0 で変わることも確認できる。

矩形積分の確認

I1I_1 では ω=0\omega=0 を別扱いにするのが減点を避けるポイントである。式 2sin⁡(ω/2)ω \frac{2\sin(\omega/2)}{\omega} は ω→0\omega\to 0 で 11 に近づくため連続に延長できるが、代入そのものはできない。I2I_2 は奇関数の対称区間積分なので、原始関数を出さなくても 00 と判断できる。

級数値の検算

∑1/n2\sum 1/n^2 は有名なバーゼル和である。値は π2/6≃1.6449\pi^2/6\simeq 1.6449 で、最初の数項 1+14+19+116=1.4236… 1+\frac14+\frac19+\frac1{16}=1.4236\ldots から少しずつ増えてこの値に近づく。極限値が 22 より小さいことは 1+∑n=2∞1n(n−1)=2 1+\sum_{n=2}^{\infty}\frac{1}{n(n-1)}=2 との比較でも確認できる。

解答

  1. 合成関数の微分では u=w1x1+w2x2,y=f(g(u)) u=w_1x_1+w_2x_2,\qquad y=f(g(u)) とおく。微分可能な点では連鎖律より ∂y∂x1=f′(g(u))g′(u)∂u∂x1=w1f′(g(w1x1+w2x2))g′(w1x1+w2x2). \frac{\partial y}{\partial x_1} =f'(g(u))g'(u)\frac{\partial u}{\partial x_1} =w_1 f'(g(w_1x_1+w_2x_2))g'(w_1x_1+w_2x_2).

    シグモイド関数を g(x)=11+e−x g(x)=\frac{1}{1+e^{-x}} とすると、 g′(x)=e−x(1+e−x)2=g(x)(1−g(x)). g'(x)=\frac{e^{-x}}{(1+e^{-x})^2} =g(x)(1-g(x)). さらに g′′(x)=g′(x)(1−2g(x))=e−x(e−x−1)(1+e−x)3. g''(x)=g'(x)(1-2g(x)) =\frac{e^{-x}(e^{-x}-1)}{(1+e^{-x})^3}.

    最後に、指定された値では u=2⋅1+3⋅0=2,f(x)=x u=2\cdot 1+3\cdot 0=2,\qquad f(x)=x であるから、y=g(u)y=g(u) である。したがって y=11+e−2=e21+e2. y=\frac{1}{1+e^{-2}}=\frac{e^2}{1+e^2}. また g′(2)=e−2(1+e−2)2=e2(1+e2)2 g'(2)=\frac{e^{-2}}{(1+e^{-2})^2} =\frac{e^2}{(1+e^2)^2} なので ∂y∂x1=2g′(2)=2e2(1+e2)2,∂y∂x2=3g′(2)=3e2(1+e2)2. \frac{\partial y}{\partial x_1}=2g'(2) =\frac{2e^2}{(1+e^2)^2},\qquad \frac{\partial y}{\partial x_2}=3g'(2) =\frac{3e^2}{(1+e^2)^2}.

  2. 矩形関数は区間 [−1/2,1/2][-1/2,1/2] の外で 00 になるので、 I1(ω)=∫−1/21/2cos⁡ωt dt. I_1(\omega)=\int_{-1/2}^{1/2}\cos \omega t\,dt. ω≠0\omega\ne 0 のとき I1(ω)=[sin⁡ωtω]−1/21/2=sin⁡(ω/2)−sin⁡(−ω/2)ω=2sin⁡(ω/2)ω. I_1(\omega)= \left[\frac{\sin \omega t}{\omega}\right]_{-1/2}^{1/2} =\frac{\sin(\omega/2)-\sin(-\omega/2)}{\omega} =\frac{2\sin(\omega/2)}{\omega}. ω=0\omega=0 のときは I1(0)=∫−1/21/21 dt=1I_1(0)=\int_{-1/2}^{1/2}1\,dt=1 であり、上の式の極限とも一致する。

    一方、sin⁡ωt\sin\omega t は tt について奇関数で、積分区間は原点対称である。したがって I2(ω)=∫−1/21/2sin⁡ωt dt=0 I_2(\omega)=\int_{-1/2}^{1/2}\sin\omega t\,dt=0 である。これは ω=0\omega=0 でも成り立つ。

  3. SN=∑n=1N1n2 S_N=\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{n^2} の極限を求めるため、[−π,π][-\pi,\pi] 上の関数 x2x^2 のフーリエ級数を用いる。偶関数なので余弦項だけを計算すればよい。 a0=1π∫−ππx2 dx=2π23. a_0=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}x^2\,dx =\frac{2\pi^2}{3}. また n≥1n\ge 1 について an=2π∫0πx2cos⁡nx dx=2π[x2sin⁡nxn+2xcos⁡nxn2−2sin⁡nxn3]0π=4(−1)nn2. \begin{aligned} a_n &=\frac{2}{\pi}\int_0^\pi x^2\cos nx\,dx \\ &=\frac{2}{\pi} \left[ \frac{x^2\sin nx}{n} +\frac{2x\cos nx}{n^2} -\frac{2\sin nx}{n^3} \right]_0^\pi =\frac{4(-1)^n}{n^2}. \end{aligned} よって x2=π23+4∑n=1∞(−1)ncos⁡nxn2 x^2=\frac{\pi^2}{3} +4\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^n\cos nx}{n^2} が成り立つ。ここで x=πx=\pi を代入すると π2=π23+4∑n=1∞1n2. \pi^2=\frac{\pi^2}{3} +4\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}. したがって ∑n=1∞1n2=π2−π2/34=π26. \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2} =\frac{\pi^2-\pi^2/3}{4} =\frac{\pi^2}{6}.

最終答

∂y∂x1=w1f′(g(w1x1+w2x2))g′(w1x1+w2x2),g′(x)=e−x(1+e−x)2,g′′(x)=e−x(e−x−1)(1+e−x)3,y=e21+e2,∂y∂x1=2e2(1+e2)2,∂y∂x2=3e2(1+e2)2,I1(ω)={2sin⁡(ω/2)ω,ω≠0,1,ω=0,I2(ω)=0,lim⁡N→∞SN=π26. \begin{gathered} \frac{\partial y}{\partial x_1} =w_1 f'(g(w_1x_1+w_2x_2))g'(w_1x_1+w_2x_2),\\ g'(x)=\frac{e^{-x}}{(1+e^{-x})^2},\qquad g''(x)=\frac{e^{-x}(e^{-x}-1)}{(1+e^{-x})^3},\\ y=\frac{e^2}{1+e^2},\qquad \frac{\partial y}{\partial x_1}=\frac{2e^2}{(1+e^2)^2},\qquad \frac{\partial y}{\partial x_2}=\frac{3e^2}{(1+e^2)^2},\\ I_1(\omega)= \begin{cases} \dfrac{2\sin(\omega/2)}{\omega},& \omega\ne 0,\\[0.5em] 1,& \omega=0, \end{cases} \qquad I_2(\omega)=0,\qquad \lim_{N\to\infty}S_N=\dfrac{\pi^2}{6}. \end{gathered}

第2問 — 行列計算と連立方程式

階数は行列式で一気に判定する

3次正方行列の階数を問われたとき、まず行列式を見るのが最短である。行列式が非零なら階数はただちに 33 と決まる。行基本変形に進むのは、行列式が 00 になった場合でよい。

逆行列の検算

求めた逆行列は、例えば第1行との積で (−3,2,2)(−1−21)=3−4+2=1,(−3,2,2)(01−1)=0 (-3,2,2) \begin{pmatrix} -1\\-2\\1 \end{pmatrix} =3-4+2=1,\quad (-3,2,2) \begin{pmatrix} 0\\1\\-1 \end{pmatrix} =0 となる。残りの成分も同様に確認でき、DD−1=IDD^{-1}=I である。

自己逆行列の条件

F=F−1F=F^{-1} は「二乗すると単位行列」という条件に置き換えると扱いやすい。上三角行列の二乗は対角成分が α2,γ2\alpha^2,\gamma^2、右上成分が β(α+γ)\beta(\alpha+\gamma) になるため、場合分けは α\alpha と γ\gamma の符号だけで済む。

無数解の条件

3変数の連立方程式で最初の2式が独立なら、その2式だけでは解集合は直線になる。第3式を加えても無数解にするには、第3式がその直線を削らないこと、つまり係数と右辺が同じ一次結合で表されることが必要である。係数だけが一次結合でも、右辺がずれると解なしになる点に注意する。

行列計算と連立方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 幾何分布と最尤推定

幾何分布の数え方

この分布では、確率変数は「成功までの試行回数」ではなく「成功までに出た失敗回数」を表す。したがって3回目で初めて成功する場合の失敗回数は 22 であり、確率は (1−p)2p(1-p)^2p になる。ここで x=3x=3 としてしまうと1回分ずれる。

正規化の確認

確率関数の総和が1になる理由は、失敗が何回続いても最終的に成功する場合をすべて足し上げているからである。計算上は初項 pp、公比 1−p1-p の等比級数で、収束条件 0<1−p<10<1-p<1 は仮定 0<p<10<p<1 から従う。

最尤推定の形

p^=11+xˉ \hat p=\frac{1}{1+\bar x} という形は直感とも合う。観測された平均失敗回数 xˉ\bar x が大きいほど、成功しにくい試行だったと判断され、推定される成功確率は小さくなる。逆にすべての標本で失敗が0回なら、成功確率は 11 に近いと推定される。

対数尤度を使う理由

尤度 pn(1−p)Sp^n(1-p)^S をそのまま微分してもよいが、対数を取ると指数が係数に下りて nlog⁡p+Slog⁡(1−p) n\log p+S\log(1-p) となり、計算ミスが少ない。対数関数は単調増加なので、尤度を最大にする pp と対数尤度を最大にする pp は一致する。

幾何分布と最尤推定の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 最大フローと最小カット

まず上界を見る

終点 tt に入る辺は d→td\to t と c→tc\to t であり、合計容量は 6+10=16. 6+10=16. したがって、どのような流し方をしても tt へ届く量は 1616 を超えられない。この上界を達成するフローを作れれば、その時点で最大フローだと分かる。

構成したフローの意味

上のフローでは、d→td\to t に 66、c→tc\to t に 1010 を流して、終点直前の2本をちょうど飽和させている。内訳は b→d:5,a→d:1,b→c:8,a→c:2 b\to d:5,\quad a\to d:1,\quad b\to c:8,\quad a\to c:2 であり、各中間頂点で入る量と出る量が一致する。容量制約と流量保存の両方を書いておくと、単なる候補ではなく実行可能フローであることが明確になる。

最小カットとの一致

カット S={s,a,b,c,d}S=\{s,a,b,c,d\}, T={t}T=\{t\} は、終点の直前でネットワークを切るカットである。この容量が 1616 で、構成したフロー値も 1616 なので、最大フロー最小カット定理により両者は最適である。残余ネットワークで見ても、d→td\to t と c→tc\to t が飽和しているため tt へ進む残余容量は残らない。

別解があり得る箇所

最大フローを実現する流し方は一意とは限らない。この問題でも、dd へ入れる 66 と cc へ入れる 1010 を容量内で配分できれば、別の最大フローが作れる。重要なのは、フロー値が 1616 であること、そして容量 1616 のカットを併記して最適性を証明することである。

最大フローと最小カットの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

  • 2026年度 冬季入試(全4問)

    微分積分の基本計算 / 一次独立性と同時対角化 / 密度関数と最尤推定

  • 2026年度 夏季入試(全4問)

    微分積分 / 線形代数 / 確率・統計

  • 2025年度 冬季入試(このページ・全4問)

    合成関数・矩形積分・級数 / 行列計算と連立方程式 / 幾何分布と最尤推定

2025年度 冬季入試の出題内容

全4問

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析合成関数・矩形積分・級数連鎖律の見通し / シグモイドの二階微分あり
第2問線形代数行列計算と連立方程式階数は行列式で一気に判定する / 逆行列の検算あり
第3問—幾何分布と最尤推定幾何分布の数え方 / 正規化の確認あり
第4問—最大フローと最小カットまず上界を見る / 構成したフローの意味あり

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