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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 工学研究科 応用物理学専攻 応用物理 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・物性物理1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数)。2021年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東北大 応用物理 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・物性物理1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学ばねで結ばれた二質点重心と相対運動の意味 / 試験で書くポイントあり
第2問電磁気学・回路導体球と球殻導体球の誘起双極子 / 球殻の電荷分布あり
第3問量子力学円周上の粒子角運動量演算子の導出 / 波束の分布あり
第4問熱・統計力学調和振動子の比熱古典分配関数の規格化 / ゼロ点エネルギーあり
第5問物性物理一次元イオン結晶位相因子の扱い / 音響モードと光学モードあり

この年度の解説には検算5件・典型ミス3件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に8テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 5問 → 2023年度 5問
2023年度で新しく出たテーマ
静電場・ラグランジアン・電磁波・角運動量
2021年度のページを見る

第1問 — 力学:ばねで結ばれた二質点

方針

衝突そのものをばねの運動方程式に入れるのではなく、等質量の弾性衝突から衝突直後の初期条件を決めるのが最短である。衝突後は外力がないので、重心運動と相対運動に分けると一気に解ける。

重心と相対運動の意味

X¨G=0\ddot{X}_G=0 は、ばね力が内力であり全運動量を変えないことを表している。一方、xr−l0x_r-l_0 はばねの伸びであり、相対座標では有効的に角振動数 2k/m\sqrt{2k/m} の単振動になる。角振動数に 22 が入るのは、二つの質点が互いに近づく相対運動をしているためである。

検算

t=0t=0 を代入すると x1(0)=−l02,x2(0)=l02, x_1(0)=-\frac{l_0}{2},\qquad x_2(0)=\frac{l_0}{2}, であり、確かに XG(0)=0X_G(0)=0 かつ x2(0)−x1(0)=l0x_2(0)-x_1(0)=l_0 である。また微分すると x˙1(0)=V02+V02=V0,x˙2(0)=V02−V02=0 \dot{x}_1(0)=\frac{V_0}{2}+\frac{V_0}{2}=V_0,\qquad \dot{x}_2(0)=\frac{V_0}{2}-\frac{V_0}{2}=0 となり、衝突直後の条件を満たす。

典型ミス

弾性衝突後の質点1の速度を V0/2V_0/2 としてしまう誤りが多い。V0/2V_0/2 は質点1, 2からなる二体系の重心速度であり、衝突直後の質点1の速度ではない。また、ばねのポテンシャルは k2(x2−x1−l0)2\frac{k}{2}(x_2-x_1-l_0)^2 であり、自然長を引き忘れると平衡距離が 00 になってしまう。

試験で書くポイント

ラグランジアン、二つの運動方程式、重心・相対座標での分離、初期条件の四つを明示すれば、途中計算が多少短くても答案として筋が通る。最小距離については、問題の仮定 x1<x2x_1<x_2 との整合性にも一言触れるとよい。

解答

衝突直後だけを初期条件として扱う。質量が等しい二質点の一次元弾性衝突なので、入射してきた質点は停止し、質点1は速度 V0V_0 を受け取る。したがって x˙1(0)=V0,x˙2(0)=0,x2(0)−x1(0)=l0 \dot{x}_1(0)=V_0,\qquad \dot{x}_2(0)=0,\qquad x_2(0)-x_1(0)=l_0 である。

質点1, 2からなる系のラグランジアンは L=m2x˙12+m2x˙22−k2(x2−x1−l0)2. L=\frac{m}{2}\dot{x}_1^2+\frac{m}{2}\dot{x}_2^2 -\frac{k}{2}(x_2-x_1-l_0)^2 . よってラグランジュ方程式から mx¨1=k(x2−x1−l0),mx¨2=−k(x2−x1−l0) m\ddot{x}_1=k(x_2-x_1-l_0),\qquad m\ddot{x}_2=-k(x_2-x_1-l_0) を得る。

重心座標と相対座標を XG=x1+x22,xr=x2−x1 X_G=\frac{x_1+x_2}{2},\qquad x_r=x_2-x_1 とおくと、 X¨G=0,x¨r+2km(xr−l0)=0. \ddot{X}_G=0,\qquad \ddot{x}_r+\frac{2k}{m}(x_r-l_0)=0 . すなわち、重心は等速直線運動をし、相対距離は自然長 l0l_0 のまわりで単振動する。

衝突直後の重心速度は X˙G(0)=x˙1(0)+x˙2(0)2=V02. \dot{X}_G(0)=\frac{\dot{x}_1(0)+\dot{x}_2(0)}{2}=\frac{V_0}{2}. また ω=2km,xr(0)=l0,x˙r(0)=x˙2(0)−x˙1(0)=−V0 \omega=\sqrt{\frac{2k}{m}},\qquad x_r(0)=l_0,\qquad \dot{x}_r(0)=\dot{x}_2(0)-\dot{x}_1(0)=-V_0 より xr(t)=l0−V0ωsin⁡ωt. x_r(t)=l_0-\frac{V_0}{\omega}\sin\omega t . したがって質点間距離の最小値は xr,min⁡=l0−V0ω=l0−V0m2k x_{r,\min}=l_0-\frac{V_0}{\omega} =l_0-V_0\sqrt{\frac{m}{2k}} である。ただし、問題の仮定 x1<x2x_1<x_2 が全時刻で成り立つには、この値が正である範囲を考える。

XG(0)=0X_G(0)=0 であるから XG(t)=V02t. X_G(t)=\frac{V_0}{2}t . ゆえに x1(t)=XG(t)−xr(t)2=V02t−l02+V02ωsin⁡ωt, x_1(t)=X_G(t)-\frac{x_r(t)}{2} =\frac{V_0}{2}t-\frac{l_0}{2} +\frac{V_0}{2\omega}\sin\omega t, x2(t)=XG(t)+xr(t)2=V02t+l02−V02ωsin⁡ωt. x_2(t)=X_G(t)+\frac{x_r(t)}{2} =\frac{V_0}{2}t+\frac{l_0}{2} -\frac{V_0}{2\omega}\sin\omega t .

最終答

X˙G=V02,xr,min⁡=l0−V0m2k, \dot{X}_G=\frac{V_0}{2},\qquad x_{r,\min}=l_0-V_0\sqrt{\frac{m}{2k}}, x1(t)=V02t−l02+V02m2ksin⁡ ⁣(2kmt), x_1(t)=\frac{V_0}{2}t-\frac{l_0}{2} +\frac{V_0}{2}\sqrt{\frac{m}{2k}}\sin\!\left(\sqrt{\frac{2k}{m}}t\right), x2(t)=V02t+l02−V02m2ksin⁡ ⁣(2kmt). x_2(t)=\frac{V_0}{2}t+\frac{l_0}{2} -\frac{V_0}{2}\sqrt{\frac{m}{2k}}\sin\!\left(\sqrt{\frac{2k}{m}}t\right).

第2問 — 電磁気学:導体球と球殻

方針

導体では内部電場がゼロで、導体表面は等電位面である。同心球の問題はガウスの法則により各面の電荷を決め、球殻が作るポテンシャルは内側で一定になることを使う。

導体球の誘起双極子

外部ポテンシャルを −E0rcos⁡θ+Acos⁡θr2 -E_0r\cos\theta+\frac{A\cos\theta}{r^2} と書くと、r=Rr=R で角度依存性が消える条件から A=E0R3A=E_0R^3 が決まる。ベクトル表示では cos⁡θ\cos\theta を E0⋅r/(E0r)\bm{E}_0\cdot\bm{r}/(E_0r) に戻せばよい。

球殻の電荷分布

S2S_2 の金属部分で電場をゼロにするには、内面電荷が −q1-q_1 でなければならない。球殻全体の電荷が q2q_2 なので、外面電荷は q1+q2q_1+q_2 である。この符号を逆にすると、外部ポテンシャルや接地時の答えがすべて崩れる。

検算

容量 CC に R3R_3 が含まれないのは自然である。コンデンサとして電場が存在するのは R1<r<R2R_1<r<R_2 の領域であり、外側導体の厚みや外半径は二極間の電位差に寄与しない。

試験で書くポイント

ポテンシャルの基準を明記し、各領域でどの電荷が 1/r1/r 項を作り、どの電荷が定数項を作るかを分けて書く。接地問題では「q1=0q_1=0」ではなく「S1S_1 の電位が 00」が条件であることを明確にする。

電磁気学:導体球と球殻の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学:円周上の粒子

方針

円周上の自由粒子と同じ構造で、定数ポテンシャル V0V_0 はエネルギーを一様にずらすだけである。量子化は微分方程式からではなく、波動関数が一周して同じ値に戻る条件から生じる。

角運動量演算子の導出

ℓ^z\hat{\ell}_z の符号はミスしやすい。px=−iℏ∂xp_x=-i\hbar\partial_x、py=−iℏ∂yp_y=-i\hbar\partial_y を入れると ℓ^z=−iℏ(x∂y−y∂x) \hat{\ell}_z=-i\hbar(x\partial_y-y\partial_x) である。一方、極座標では ∂θ=−y∂x+x∂y\partial_\theta=-y\partial_x+x\partial_y なので、確かに ℓ^z=−iℏ∂θ\hat{\ell}_z=-i\hbar\partial_\theta となる。

波束の分布

Φ=Cexp⁡(eiθ)\Phi=C\exp(e^{i\theta}) は位相だけでなく振幅も θ\theta に依存する。絶対値を取ると eiθe^{i\theta} の実部だけが残り、∣Φ∣2∝e2cos⁡θ|\Phi|^2\propto e^{2\cos\theta} となる。したがって粒子は θ=0\theta=0 付近に局在しやすい。

検算

期待値の式に eiθe^{i\theta} が出るので一見複素数になりそうだが、sin⁡θe2cos⁡θ\sin\theta e^{2\cos\theta} の積分は 00 である。角運動量の期待値は実数でなければならないので、この確認は有効な検算になる。

試験で書くポイント

展開式を使う設問では、単に「高次が小さい」と書くのではなく、重みが 1/(n!)21/(n!)^2 に比例することを示すと説得力がある。n=0n=0 成分が大きく混ざるため、正の角運動量成分だけからなるにもかかわらず平均値は ℏ\hbar より小さくなる。

量子力学:円周上の粒子の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 統計力学:調和振動子の比熱

方針

古典部分はガウス積分、量子部分は等比級数で処理する。最後の低温比熱は、デバイ型の状態密度 g(ω)∝ω2g(\omega)\propto\omega^2 とボース分布から T3T^3 則を導く問題である。

古典分配関数の規格化

古典分配関数の位相空間積分は、そのままでは次元をもつ。通常は hNh^N で割って無次元化する。この因子を省いても UU や CC は同じになるが、自由エネルギーの絶対値には影響するため、答案では明記しておくのが安全である。

ゼロ点エネルギー

量子調和振動子の内部エネルギーには Nℏω0/2N\hbar\omega_0/2 が含まれる。しかしこれは温度に依存しないので、比熱には寄与しない。低温比熱の積分でもゼロ点エネルギーを入れる必要はない。

検算

量子比熱の高温極限 x=ℏω0/(kBT)≪1x=\hbar\omega_0/(k_{\mathrm B}T)\ll1 では x2ex(ex−1)2→1 x^2\frac{e^x}{(e^x-1)^2}\to 1 となり、C→NkBC\to Nk_{\mathrm B} で古典結果に戻る。低温では指数関数的に小さくなり、エネルギー準位の離散性を反映する。

典型ミス

低温のデバイ積分で dω=(kBT/ℏ)dxd\omega=(k_{\mathrm B}T/\hbar)dx を忘れると、T2T^2 や T4T^4 の誤った温度依存性になる。状態密度の ω2\omega^2、比熱微分から出る x2x^2、測度の dωd\omega を合わせて T3T^3 になる。

試験で書くポイント

最後の設問では、低温条件 kBT≪ℏωDk_{\mathrm B}T\ll\hbar\omega_D から積分上限を ∞\infty に延長できることを書く。この一文がないと、与えられた定積分公式を使う根拠が曖昧になる。

統計力学:調和振動子の比熱の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 物性物理:一次元イオン結晶

方針

二原子基底をもつ一次元格子では、一つの単位胞に二つの変位変数を置き、平面波を代入して 2×22\times2 の固有値問題にする。分散関係は行列式を 00 とするだけで得られる。

位相因子の扱い

Bn−1B_{n-1} から e−ike^{-ik}、An+1A_{n+1} から eike^{ik} が出る。これらを掛け合わせると (1+e−ik)(1+eik)=4cos⁡2(k/2) (1+e^{-ik})(1+e^{ik})=4\cos^2(k/2) となり、最終的に定数項は 4C2sin⁡2(k/2)4C^2\sin^2(k/2) になる。ここで cos⁡2\cos^2 のまま残すと、k=0k=0 で音響モードが ω=0\omega=0 にならず、物理的にも誤りである。

音響モードと光学モード

長波長の音響モードでは同じ単位胞内の二つのイオンがほぼ同じ向きに動き、結晶全体の並進に近い運動になるため ω→0\omega\to0 である。光学モードでは正負のイオンが逆向きに動くため、k→0k\to0 でもばねが伸び縮みし、有限の ω0\omega_0 が残る。

検算

k=0k=0 を分散式に入れると ω=0\omega=0 と ω=ω0\omega=\omega_0 の二つの枝が出る。前者は一様並進で復元力がないこと、後者は単位胞内の相対振動で復元力があることに対応している。

典型ミス

音響モードの速度を求めるとき、ω4\omega^4 を残したまま近似しようとすると計算が複雑になる。小さい枝では ω2=O(k2)\omega^2=O(k^2) なので ω4=O(k4)\omega^4=O(k^4) と判断して落とせばよい。

試験で書くポイント

最後の物理説明では、「逆位相」と「電気分極」を単語として入れるだけでは不十分である。逆位相運動によって正負電荷の中心がずれ、振動する電気分極が生じ、その分極が電磁波の電場と結合する、という因果関係を一文で書く。

物性物理:一次元イオン結晶の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 応用物理 院試 過去問の収録3年度

  • 2024年度(全5問)

    力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2023年度(このページ・全5問)

    力学:ばねで結ばれた二質点 / 電磁気学:導体球と球殻 / 量子力学:円周上の粒子

  • 2021年度(全5問)

    減衰振動と強制振動 / 回転コイルの起電力 / 調和振動子と摂動