東北大学 院試 過去問 解答例
東北大 工学研究科 応用物理学専攻 応用物理 2023年度 院試 解答例・解説
東北大学 工学研究科 応用物理学専攻 応用物理 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 力学:ばねで結ばれた二質点
方針
衝突そのものをばねの運動方程式に入れるのではなく、等質量の弾性衝突から衝突直後の初期条件を決めるのが最短である。衝突後は外力がないので、重心運動と相対運動に分けると一気に解ける。
重心と相対運動の意味
は、ばね力が内力であり全運動量を変えないことを表している。一方、 はばねの伸びであり、相対座標では有効的に角振動数 の単振動になる。角振動数に が入るのは、二つの質点が互いに近づく相対運動をしているためである。
検算
を代入すると であり、確かに かつ である。また微分すると となり、衝突直後の条件を満たす。
典型ミス
弾性衝突後の質点1の速度を としてしまう誤りが多い。 は質点1, 2からなる二体系の重心速度であり、衝突直後の質点1の速度ではない。また、ばねのポテンシャルは であり、自然長を引き忘れると平衡距離が になってしまう。
試験で書くポイント
ラグランジアン、二つの運動方程式、重心・相対座標での分離、初期条件の四つを明示すれば、途中計算が多少短くても答案として筋が通る。最小距離については、問題の仮定 との整合性にも一言触れるとよい。
第2問 — 電磁気学:導体球と球殻
方針
導体では内部電場がゼロで、導体表面は等電位面である。同心球の問題はガウスの法則により各面の電荷を決め、球殻が作るポテンシャルは内側で一定になることを使う。
導体球の誘起双極子
外部ポテンシャルを と書くと、 で角度依存性が消える条件から が決まる。ベクトル表示では を に戻せばよい。
球殻の電荷分布
の金属部分で電場をゼロにするには、内面電荷が でなければならない。球殻全体の電荷が なので、外面電荷は である。この符号を逆にすると、外部ポテンシャルや接地時の答えがすべて崩れる。
検算
容量 に が含まれないのは自然である。コンデンサとして電場が存在するのは の領域であり、外側導体の厚みや外半径は二極間の電位差に寄与しない。
試験で書くポイント
ポテンシャルの基準を明記し、各領域でどの電荷が 項を作り、どの電荷が定数項を作るかを分けて書く。接地問題では「」ではなく「 の電位が 」が条件であることを明確にする。
第3問 — 量子力学:円周上の粒子
方針
円周上の自由粒子と同じ構造で、定数ポテンシャル はエネルギーを一様にずらすだけである。量子化は微分方程式からではなく、波動関数が一周して同じ値に戻る条件から生じる。
角運動量演算子の導出
の符号はミスしやすい。、 を入れると である。一方、極座標では なので、確かに となる。
波束の分布
は位相だけでなく振幅も に依存する。絶対値を取ると の実部だけが残り、 となる。したがって粒子は 付近に局在しやすい。
検算
期待値の式に が出るので一見複素数になりそうだが、 の積分は である。角運動量の期待値は実数でなければならないので、この確認は有効な検算になる。
試験で書くポイント
展開式を使う設問では、単に「高次が小さい」と書くのではなく、重みが に比例することを示すと説得力がある。 成分が大きく混ざるため、正の角運動量成分だけからなるにもかかわらず平均値は より小さくなる。
第4問 — 統計力学:調和振動子の比熱
方針
古典部分はガウス積分、量子部分は等比級数で処理する。最後の低温比熱は、デバイ型の状態密度 とボース分布から 則を導く問題である。
古典分配関数の規格化
古典分配関数の位相空間積分は、そのままでは次元をもつ。通常は で割って無次元化する。この因子を省いても や は同じになるが、自由エネルギーの絶対値には影響するため、答案では明記しておくのが安全である。
ゼロ点エネルギー
量子調和振動子の内部エネルギーには が含まれる。しかしこれは温度に依存しないので、比熱には寄与しない。低温比熱の積分でもゼロ点エネルギーを入れる必要はない。
検算
量子比熱の高温極限 では となり、 で古典結果に戻る。低温では指数関数的に小さくなり、エネルギー準位の離散性を反映する。
典型ミス
低温のデバイ積分で を忘れると、 や の誤った温度依存性になる。状態密度の 、比熱微分から出る 、測度の を合わせて になる。
試験で書くポイント
最後の設問では、低温条件 から積分上限を に延長できることを書く。この一文がないと、与えられた定積分公式を使う根拠が曖昧になる。
第5問 — 物性物理:一次元イオン結晶
方針
二原子基底をもつ一次元格子では、一つの単位胞に二つの変位変数を置き、平面波を代入して の固有値問題にする。分散関係は行列式を とするだけで得られる。
位相因子の扱い
から 、 から が出る。これらを掛け合わせると となり、最終的に定数項は になる。ここで のまま残すと、 で音響モードが にならず、物理的にも誤りである。
音響モードと光学モード
長波長の音響モードでは同じ単位胞内の二つのイオンがほぼ同じ向きに動き、結晶全体の並進に近い運動になるため である。光学モードでは正負のイオンが逆向きに動くため、 でもばねが伸び縮みし、有限の が残る。
検算
を分散式に入れると と の二つの枝が出る。前者は一様並進で復元力がないこと、後者は単位胞内の相対振動で復元力があることに対応している。
典型ミス
音響モードの速度を求めるとき、 を残したまま近似しようとすると計算が複雑になる。小さい枝では なので と判断して落とせばよい。
試験で書くポイント
最後の物理説明では、「逆位相」と「電気分極」を単語として入れるだけでは不十分である。逆位相運動によって正負電荷の中心がずれ、振動する電気分極が生じ、その分極が電磁波の電場と結合する、という因果関係を一文で書く。