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新潟大学 院試 過去問 解答例

新潟大 自然科学研究科 数理物質科学専攻 数理科学コース 数学 2023年度 第2回募集 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。線形代数1問・微分積分・解析1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・群論・環論)。2023年度 第1回募集と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・群論・環論。

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収録12年度分の解答PDF:新潟大学 自然科学研究科 数理物質科学専攻 数理科学コース 数学(¥3,200・紙面見本あり)

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

新潟大 数学 2023年度 第2回募集 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析逆正接関数偏導関数 / 積分順序の選択あり
第2問—対角化通常の対角化と直交対角化 / 答案上の注意あり
第3問—ユニタリ群行列式写像を見る / 全射性あり
第4問—位相と連続写像逆像で押し切る / コンパクト性の証明あり
第5問線形代数ヤコビ行列とコンパクト性階数の見方 / コンパクト性あり
第6問—双対問題とシンプレックス法双対を解く利点 / 主問題側の確認あり

2023年度 第2回募集の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2023年度 第1回募集)との違い

大問数
2023年度 第1回募集 6問 → 2023年度 第2回募集 6問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・群論・環論
2023年度 第2回募集で新しく出たテーマ
線形空間・基底・直交対角化
2023年度 第1回募集のページを見る

第1問 — 逆正接関数

偏導関数

tan⁡−1(y/x)\tan^{-1}(y/x) は合成関数である。外側の微分 (tan⁡−1u)′=1/(1+u2)(\tan^{-1}u)'=1/(1+u^2) と,内側 u=y/xu=y/x の偏微分を分けて書けば 符号のミスを防げる。 ただし tan⁡−1(y/x)\tan^{-1}(y/x) を角度関数として扱うときは,x=0x=0 をまたぐ枝の扱いに 注意する。この問題の偏微分計算では,通常の 1 変数関数 tan⁡−1\tan^{-1} と y/xy/x の合成として定義される領域上で計算している。

積分順序の選択

三角形領域では,被積分関数が yy だけの関数であることに注目する。 xx を先に積分すると横幅が yy になり,1 変数積分 ∫012y/(1+y2) dy\int_0^1 2y/(1+y^2)\,dy に直ちに落ちる。 逆順で積分してもよいが,その場合は 0≤x≤1, x≤y≤10\le x\le1,\ x\le y\le1 と 境界を読み替える必要がある。領域の不等式を先に固定してから積分順序を決めると, 三角形の上端・下端を取り違えにくい。

解答

(1) f(x,y)=tan⁡−1yx f(x,y)=\tan^{-1}\frac{y}{x} とする。ここでは x≠0x\ne0 の点で計算する。u=y/xu=y/x とおくと ∂f∂x=11+u2∂∂x(yx)=11+y2/x2(−yx2)=−yx2+y2, \frac{\partial f}{\partial x} =\frac{1}{1+u^2}\frac{\partial}{\partial x}\left(\frac yx\right) =\frac{1}{1+y^2/x^2}\left(-\frac{y}{x^2}\right) =-\frac{y}{x^2+y^2}, ∂f∂y=11+u21x=xx2+y2. \frac{\partial f}{\partial y} =\frac{1}{1+u^2}\frac{1}{x} =\frac{x}{x^2+y^2}. 最後の形では分母が x2+y2x^2+y^2 になっており,符号は xx 微分だけに負号が出ることを確認しておく。

(2) 部分積分を用いる。u=tan⁡−1x, dv=dxu=\tan^{-1}x,\ dv=dx と取れば ∫tan⁡−1x dx=xtan⁡−1x−∫x1+x2 dx=xtan⁡−1x−12log⁡(1+x2)+C. \int \tan^{-1}x\,dx =x\tan^{-1}x-\int \frac{x}{1+x^2}\,dx =x\tan^{-1}x-\frac12\log(1+x^2)+C. 微分して戻すと ddx{xtan⁡−1x−12log⁡(1+x2)}=tan⁡−1x+x1+x2−x1+x2=tan⁡−1x \frac{d}{dx}\left\{x\tan^{-1}x-\frac12\log(1+x^2)\right\} =\tan^{-1}x+\frac{x}{1+x^2}-\frac{x}{1+x^2} =\tan^{-1}x となるので,定数以外の取り落としはない。

(3) 領域を 0≤x≤y≤10\leq x\leq y\leq1 と見れば, ∬D21+y2 dx dy=∫01∫0y21+y2 dx dy=∫012y1+y2 dy=log⁡2. \iint_D \frac{2}{1+y^2}\,dx\,dy =\int_0^1\int_0^y\frac{2}{1+y^2}\,dx\,dy =\int_0^1\frac{2y}{1+y^2}\,dy =\log2.

最終答

(1) fx(x,y)=−yx2+y2,fy(x,y)=xx2+y2, f_x(x,y)=-\frac{y}{x^2+y^2},\qquad f_y(x,y)=\frac{x}{x^2+y^2},

(2) ∫tan⁡−1x dx=xtan⁡−1x−12log⁡(1+x2)+C. \int \tan^{-1}x\,dx=x\tan^{-1}x-\frac12\log(1+x^2)+C.

(3) ∬D21+y2 dx dy=log⁡2. \iint_D\frac{2}{1+y^2}\,dx\,dy=\log2.

第2問 — 対角化

通常の対角化と直交対角化

固有ベクトルが 3 本一次独立に取れるため,通常の対角化は可能である。 重複固有値 22 について 2 本の一次独立な固有ベクトルを取れている点が重要で, 代数的重複度だけを見ても対角化可能性は判定できない。 一方,実行列が直交対角化できるなら対称行列でなければならない。 この問題では行列が対称でないため,通常の対角化ができても直交対角化はできない。

答案上の注意

(3) では「固有値が実数だから可能」としてはいけない。実固有値を持つことは 直交対角化の必要条件ではあるが十分条件ではない。対称性を確認するのが最短で確実である。 また,対角化行列 PP は列の順に固有ベクトルを並べるので,対角行列の固有値の順序も 同じ順に並ぶ。列を入れ替えた場合は,対角成分の順序も対応して入れ替える。

対角化の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — ユニタリ群

行列式写像を見る

SU(n)SU(n) を正規部分群として扱う最短ルートは,行列式を群準同型として見ることである。 正規性を共役計算で直接示すこともできるが,核であることを使う方が構造が明確になる。 ここでは det⁡(A∗)=det⁡A‾\det(A^*)=\overline{\det A} を使い、A∗A=InA^*A=I_n から 行列式が絶対値 11 になることを明示しておくと、写像の値域が本当に U(1)U(1) に入ることまで確認できる。

全射性

商群が U(1)U(1) と同型であることまで言うには,行列式写像が全射であることが必要である。 対角行列 diag⁡(α,1,…,1)\operatorname{diag}(\alpha,1,\ldots,1) を用いれば,任意の ∣α∣=1|\alpha|=1 が行列式として実現される。 最後は U(n)/ker⁡(det⁡)≃Im⁡(det⁡) U(n)/\ker(\det)\simeq \operatorname{Im}(\det) という第一同型定理を適用し、ker⁡(det⁡)=SU(n)\ker(\det)=SU(n) と Im⁡(det⁡)=U(1)\operatorname{Im}(\det)=U(1) を代入するだけでよい。

ユニタリ群の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 位相と連続写像

逆像で押し切る

位相の問題では,写像そのものよりも逆像を計算する方が安定する。 逆像は任意和と任意交叉を保つため,開集合族の公理と相性がよい。 第1小問の位相は「逆像が開になる集合を開集合と呼ぶ」という作り方であり, この定義を採用した瞬間に ff は連続になる。

コンパクト性の証明

連続像のコンパクト性は,像の開被覆を逆像で XX の開被覆に戻し,有限部分被覆を 再び像側へ送る,という流れで証明する。像 f(X)f(X) の開集合は一般に YY 全体の 開集合ではなく相対開集合なので,Uλ=f(X)∩VλU_\lambda=f(X)\cap V_\lambda と一度書き直すと 論理が明確になる。Hausdorff 性などの仮定は不要である。

位相と連続写像の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ヤコビ行列とコンパクト性

階数の見方

3 行の一次独立性を直接示すのが簡潔である。MM の条件は,二つのベクトル (x,y),(z,w)(x,y),(z,w) がともに長さ 11 で直交することを意味している。この直交性を 内積計算に使うと,係数 a,b,ca,b,c が順に消える。

コンパクト性

逆像として閉性を示し,方程式から有界性を示す。Rn\mathbb{R}^n では Heine--Borel の定理により閉有界性とコンパクト性が同値であるため,この二点で十分である。

ヤコビ行列とコンパクト性の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 双対問題とシンプレックス法

双対を解く利点

主問題は最小化で制約が「≥\geq」型なので,双対は 2 変数の最大化問題になる。 図形的にもシンプレックス法でも扱いやすく,最適値 270270 がすぐに確認できる。

主問題側の確認

相補性から,双対最適解では第 1,2 制約が等号で,第 3 制約は余裕を持つ。 したがって主問題では x3=0x_3=0 が自然に予想される。実際, 基底解 (6/5,1/5,0,0,0)\left(6/5,1/5,0,0,0\right) の目的関数値は 190⋅6/5+210⋅1/5=270190\cdot6/5+210\cdot1/5=270 で,双対最適値と一致する。

双対問題とシンプレックス法の途中式・最終答をPDFで見る

新潟大 数学 院試 過去問の収録12年度

  • 2023年度 第2回募集(このページ・全6問)

    逆正接関数 / 対角化 / ユニタリ群

  • 2023年度 第1回募集(全6問)

    積分計算 / 行列の累乗 / 距離空間の連続性

  • 2022年度 第2回募集(全6問)

    逆三角関数と積分 / 対称行列の直交対角化 / コンパクト集合と閉集合の和

  • 2022年度 第1回募集(全6問)

    楕円体の体積 / 2次行列の対角化 / 距離空間と同相写像

  • 2020年度 第2回募集(全6問)

    2変数関数の極値 / 対角化と行列の累乗 / HolderとMinkowskiの不等式

  • 2020年度 第1回募集(全6問)

    微分積分:2変数関数の偏導関数とヘッセ行列による極値判定 / 線形代数:対合行列の対角化と A^n / 位相:閉包と連結性の保存

  • 2019年度 第2回募集(全6問)

    微分積分:原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性 / 線形代数:対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値 / 距離空間:収束列・コーシー列・有界性・部分列

  • 2019年度 第1回募集(全6問)

    ガンマ関数とベータ関数 / ジョルダン標準形 / 極分解

  • 2018年度 第2回募集(全6問)

    微分積分:部分分数分解・広義積分の収束・極座標による重積分 / 線形代数:4\times4 対称行列の行列式・固有値・直交対角化 / 位相:閉包の点列的でない特徴づけと連続写像による像の閉包

  • 2018年度 第1回募集(全6問)

    微分積分:逆正弦関数の冪級数展開と楕円体の切片の体積 / 線形代数:実対称行列の直交対角化と二次形式の標準形 / 複素解析:単位円上のハーディ内積とノルムの計算

  • 2017年度 第2回募集(全6問)

    線形代数:対角化・行列のべき・対角化可能性の判定 / 微分積分:平坦な関数の無限回微分可能性とガウス積分 / 微分方程式:接線の内分条件から定まる曲線

  • 2017年度 第1回募集(全6問)

    微分積分:三角形の山を持つ関数列と極限の交換 / 線形代数:べき等行列と直交行列の固有値 / 位相:コンパクト性と連続全単射が同相になる条件