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新潟大学 院試 過去問 解答例

新潟大 自然科学研究科 数理物質科学専攻 数理科学コース 数学 2018年度 第1回募集 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。線形代数2問・代数1問・微分積分・解析1問。

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解説6問/全6問(7,654字)
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途中式と最終答(最終答つき6問)
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新潟大 数学 2018年度 第1回募集 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は線形代数2問・代数1問・微分積分・解析1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1微分積分・解析逆正弦関数の冪級数展開と楕円体の切片の体積別解(線形変換)あり
2線形代数実対称行列の直交対角化と二次形式の標準形3I+J の分解が効く理由 / 正定値性の確認あり
3複素解析単位円上のハーディ内積とノルムの計算検算:0 の場合あり
4代数位数 <span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><mn>8</mn></mrow><annotation encoding="application/x-tex">8</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6444em;"></span><span class="mord">8</span></span></span></span> の有限群の部分群と自己同型(2)(iii) を落としやすい / (3) の別解あり
5幾何:サイクロイドを持ち上げた空間曲線の接触平面・曲率・捩率検算:0 での値 / 尖点の扱いあり
6線形代数自由変数を含む問題の基底解・最適解・双対自由変数が双対に与える影響 / &lt;0 を排除しないことあり

この年度の解説には失点しやすい点6件・検算2件が付いています。

前年度(2017年度 第2回募集)との違い

大問数
2017年度 第2回募集 6問 → 2018年度 第1回募集 6
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1 — 微分積分:逆正弦関数の冪級数展開と楕円体の切片の体積

方針

(1) は「展開したい関数の導関数のほうが展開しやすい」典型例である。 sin1x\sin^{-1}x を直接何度も微分するより、(1x2)1/2(1-x^2)^{-1/2} を二項級数で書いて 1回積分するほうが圧倒的に速い。 (2) は断面積を求めてから zz で積分する(カヴァリエリの原理)。 楕円の面積 πab\pi ab を使うのが要点で、これを円の面積と取り違えないこと。

検算

(1) の一般項は sin1x=k=0(2k)!4k(k!)2(2k+1)x2k+1\sin^{-1}x=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(2k)!}{4^k(k!)^2(2k+1)}x^{2k+1} である。 k=0,1,2k=0,1,21, 16, 3401,\ \frac{1}{6},\ \frac{3}{40} となり上と一致する。 x=12x=\frac12 を代入すると 0.5+0.0208+0.0023=0.52310.5+0.0208+0.0023=0.5231 で、 sin10.5=π/60.5236\sin^{-1}0.5=\pi/6\simeq0.5236 に近い。

(2) の検算として、楕円体全体の体積は 43π123=8π\frac43\pi\cdot1\cdot2\cdot3=8\pi である。 求めた 56π272.07π\frac{56\pi}{27}\simeq2.07\pi は全体の約 26%26\% で、 z1z\ge1 が高さ 66 のうち上側 13\frac13 にあたることを考えると妥当な大きさである。

別解(線形変換)

X=xX=xY=y/2Y=y/2Z=z/3Z=z/3 と置くと領域は X2+Y2+Z21X^2+Y^2+Z^2\le1Z13Z\ge\frac13 となり、 ヤコビアンは (x,y,z)(X,Y,Z)=6\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(X,Y,Z)}=6 である。 単位球の ZhZ\ge h の部分(球冠)の体積は π3(1h)2(2+h)\frac\pi3(1-h)^2(2+h) なので、 h=13h=\frac13 として π34973=28π81\frac\pi3\cdot\frac49\cdot\frac73=\frac{28\pi}{81}、 これを 66 倍して 56π27\frac{56\pi}{27} となり一致する。

失点しやすい点

(1) で「a0a_0 から a5a_5 まで」と指定されているので、 00 になる偶数次の係数も明示して答えること。 (2) では積分区間の下端を 00 としてしまうと、z1z\ge1 の条件を無視したことになる。 上端が 33 であること(z>3z>3 では楕円体の外)も確認する。

微分積分:逆正弦関数の冪級数展開と楕円体の切片の体積の途中式・最終答をPDFで見る

2 — 線形代数:実対称行列の直交対角化と二次形式の標準形

A=3I+JA=3I+J の分解が効く理由

JJ は階数 11 なので固有値がすぐ分かる(00 が2重、トレース 33 が1重)。 II を足しても固有ベクトルは変わらず固有値だけ平行移動するので、 特性多項式を展開せずに AA の固有値が得られる。 一般に「対角成分がすべて aa、非対角成分がすべて bbnn 次行列」は 固有値 a+(n1)ba+(n-1)b(1重)と aba-bn1n-1 重)を持つ。

検算

trA=12=6+3+3\operatorname{tr}A=12=6+3+3detA=633=54\det A=6\cdot3\cdot3=54。 実際に行列式を計算すると 4(161)1(41)+1(14)=6033=544(16-1)-1(4-1)+1(1-4)=60-3-3=54 で一致する。

正定値性の確認

標準形の係数がすべて正なので QQ は正定値である。 主小行列式で確かめると 4>04>04114=15>0\begin{vmatrix}4&1\\1&4\end{vmatrix}=15>0detA=54>0\det A=54>0 で シルヴェスターの判定法とも整合する。

失点しやすい点

(3) で「直交行列」と指定されているので、固有ベクトルを規格化するだけでなく 重複固有値の固有空間内で直交化する必要がある。 (1,1,0)(1,-1,0)(1,0,1)(1,0,-1) をそのまま並べると PP は正則だが直交ではない。 (4) では二次形式の行列を作るとき、2x1x22x_1x_2 の係数 22a12=a21=1a_{12}=a_{21}=1 と半分ずつ振り分けること。 a12=2a_{12}=2 としてしまうと別の行列になる。

線形代数:実対称行列の直交対角化と二次形式の標準形の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 複素解析:単位円上のハーディ内積とノルムの計算

z1z^{-1} で展開する理由

α<1<z|\alpha|<1<|z| ではなく z=1>α|z|=1>|\alpha| なので、 1zα\dfrac{1}{z-\alpha}α\alpha のまわりではなく無限遠のまわりで展開する。 1z11α/z\dfrac1z\cdot\dfrac{1}{1-\alpha/z} と括り出すのがその操作で、 結果として負べきだけの級数(z1,z2,z^{-1},z^{-2},\dots)になる。 α>1|\alpha|>1 なら逆に 1α11z/α-\dfrac1\alpha\cdot\dfrac{1}{1-z/\alpha} と展開して正べきになる。

検算:β=0\beta=0 の場合

f2=1z(zα)=k0αkzk2f_2=\dfrac{1}{z(z-\alpha)}=\displaystyle\sum_{k\ge0}\alpha^kz^{-k-2} なので f22=11α2\left\|f_2\right\|^2=\dfrac{1}{1-|\alpha|^2} である。 一方、公式で β=0\beta=0 とすると αβ2=α2|\alpha-\beta|^2=|\alpha|^2β21β2=0\dfrac{|\beta|^2}{1-|\beta|^2}=0Reαβˉ1αβˉ=0\operatorname{Re}\dfrac{\alpha\bar\beta}{1-\alpha\bar\beta}=0 より 1α2α21α2=11α2\dfrac{1}{|\alpha|^2}\cdot\dfrac{|\alpha|^2}{1-|\alpha|^2}=\dfrac{1}{1-|\alpha|^2} で一致する。

もう一つの検算:β=α\beta=-\alphaα=r>0\alpha=r>0

f2=1z2r2=m0r2mz2m2f_2=\dfrac{1}{z^2-r^2}=\displaystyle\sum_{m\ge0}r^{2m}z^{-2m-2} より f22=11r4\left\|f_2\right\|^2=\dfrac{1}{1-r^4}。 公式では αβ2=4r2|\alpha-\beta|^2=4r^2r21r2×22Rer21+r2=2r21r2+2r21+r2=4r21r4\dfrac{r^2}{1-r^2}\times2-2\operatorname{Re}\dfrac{-r^2}{1+r^2} =\dfrac{2r^2}{1-r^2}+\dfrac{2r^2}{1+r^2}=\dfrac{4r^2}{1-r^4} なので 14r24r21r4=11r4\dfrac{1}{4r^2}\cdot\dfrac{4r^2}{1-r^4}=\dfrac{1}{1-r^4} で一致する。

失点しやすい点

(2)(3) で「留数定理で計算する」と考えると、 ffˉf\bar ffˉ\bar fzz の正則関数でないため素直には進まない。 z=1|z|=1 上では zˉ=1/z\bar z=1/z なので f(z)\overline{f(z)}1/z1/z の関数に書き換える手はあるが、 展開してパーセバルを使うほうがはるかに速い。 また級数の項別積分(一様収束の確認)に一言触れておくと丁寧である。

複素解析:単位円上のハーディ内積とノルムの計算の途中式・最終答をPDFで見る

4 — 代数:位数 <span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><mn>8</mn></mrow><annotation encoding="application/x-tex">8</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6444em;"></span><span class="mord">8</span></span></span></span> の有限群の部分群と自己同型

方針

位数 88 の群は Z/8\mathbb Z/8Z/4×Z/2\mathbb Z/4\times\mathbb Z/2(Z/2)3(\mathbb Z/2)^3、 二面体群 D4D_4、四元数群 Q8Q_8 の5種類に限られる。 しかし本問は分類を使わずに、ラグランジュの定理と初等的な論法だけで解ける。 分類を持ち出すと「5種類しかない」ことの証明が別途必要になるので、 一般論で押すほうが答案は短い。

(2)(iii) を落としやすい

「アーベルなら xx1x\mapsto x^{-1} でよい」で済ませると、 (Z/2)3(\mathbb Z/2)^3(すべての元が x1=xx^{-1}=x)の場合に ι=id\iota=\operatorname{id} となって反例になる。 この場合だけは別の自己同型(基底の入れ替え)を用意する必要がある。 場合分けの必然性がここにある。

(3) の別解

pp 群の中心は自明でない(類等式による)ので Z(G){2,4,8}|Z(G)|\in\{2,4,8\}。 非アーベルなので Z(G)8|Z(G)|\ne8。また Z(G)=4|Z(G)|=4 なら G/Z(G)G/Z(G) が位数 22 の巡回群となり、 「G/Z(G)G/Z(G) が巡回群なら GG はアーベル」により矛盾する。 よって Z(G)=2|Z(G)|=2 で、G/Z(G)G/Z(G) は位数 44 のアーベル群。 その位数 22 の部分群の逆像が位数 44 の正規部分群になる。 本文の解法(位数 44 の元を取る)のほうが短い。

失点しやすい点

(1) は「ラグランジュの定理により」と根拠を明示すること。 「686\nmid8 だから」だけでは定理の適用を書いたことにならない。 (3) では位数 44 の元の存在と、指数 22 の部分群が正規であることの 両方に証明を付けること。前者を「明らか」で済ませると、 (Z/2)3(\mathbb Z/2)^3 の場合を排除した根拠が消える。

代数:位数 <span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><mn>8</mn></mrow><annotation encoding="application/x-tex">8</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6444em;"></span><span class="mord">8</span></span></span></span> の有限群の部分群と自己同型の途中式・最終答をPDFで見る

5 — 幾何:サイクロイドを持ち上げた空間曲線の接触平面・曲率・捩率

方針

弧長パラメータでない曲線の曲率・捩率は、 κ=p×pp3\kappa=\dfrac{\left|\bm p'\times\bm p''\right|}{\left|\bm p'\right|^3}τ=det(p,p,p)p×p2\tau=\dfrac{\det\left(\bm p',\bm p'',\bm p'''\right)}{\left|\bm p'\times\bm p''\right|^2} の2式で計算できる。分母の冪が異なる(33 乗と 22 乗)ので取り違えないこと。 接触平面の法線は p×p\bm p'\times\bm p''(従法線方向)である。

検算:t=0t=0 での値

κ(0)=12+2(32)3/2=1\kappa(0)=\dfrac{\sqrt{1-2+2}}{(3-2)^{3/2}}=1τ(0)=112+2=1\tau(0)=\dfrac{-1}{1-2+2}=-1t=0t=0 では p=(0,0,1)\bm p'=(0,0,1)p=(0,1,0)\bm p''=(0,1,0) が直交して大きさ 11 なので、 曲率が 11 になるのは自然である。

尖点の扱い

平面サイクロイドは t=2nπt=2n\pi で速度が 00 になり尖点を持つが、 本問の曲線は z=tz=t を足しているので p=(0,0,1)0\bm p'=(0,0,1)\ne\bm 0 となり、 正則曲線のまま尖点が解消されている。 t=2nπt=2n\piκ=1\kappa=1τ=1\tau=-1 と有限にとどまるのはそのためである。

曲率・捩率の変化

s=1cost[0,2]s=1-\cos t\in[0,2] とおくと κ=s2+1(2s+1)3/2\kappa=\dfrac{\sqrt{s^2+1}}{(2s+1)^{3/2}}τ=1s2+1\tau=\dfrac{-1}{s^2+1} である。 s=0s=0t=2nπt=2n\pi)で κ=1\kappa=1 と最大、s=2s=2t=(2n+1)πt=(2n+1)\pi)で κ=553/2=15\kappa=\dfrac{\sqrt5}{5^{3/2}}=\dfrac15 と最小になる。 捩率は s=0s=01-1s=2s=215-\dfrac15 である。 どちらも周期 2π2\pi で変動し、螺旋のように一定にはならない。

失点しやすい点

(3) の分母を p×p3\left|\bm p'\times\bm p''\right|^3 としたり、 p6\left|\bm p'\right|^6 としたりする誤りが多い。 また三重積の符号を落とすと捩率の正負が反転する。 本問では負の値になり、曲線が左巻きであることを意味する。

幾何:サイクロイドを持ち上げた空間曲線の接触平面・曲率・捩率の途中式・最終答をPDFで見る

6 — 線形計画:自由変数を含む問題の基底解・最適解・双対

自由変数が双対に与える影響

主問題の変数に符号条件が付くと、対応する双対制約は不等号になる。 逆に自由変数なら双対制約は等号になる。 本問で x4x_4 が自由なので 2y1y2=4-2y_1-y_2=4 が等式制約として現れ、 その結果、双対の実行可能領域が平面内の「面」ではなく「線分」になっている。 図が線分になるのはこの構造の反映である。

x4<0x_4<0 を排除しないこと

最適解 x4=34x_4=-\dfrac34 は負だが、x4x_4 に非負条件がないので実行可能である。 (1) の列挙で x4<0x_4<0 の解を捨ててしまうと最適解そのものを見落とし、 最小値を 225\dfrac{22}{5} と誤答する。制約条件をそのまま読むことが大切である。

有界性の確認

基底解を比べるだけでは、目的関数が下に非有界でないことは言えない。 双対に実行可能解が1つでも存在すれば、弱双対定理から主問題の値は その双対値以上に押さえられ、下に有界であることが分かる。 (3) はこの意味でも (2) の答えを支えている。

失点しやすい点

双対の目的関数の係数は b\bm b(制約の右辺)であって c\bm c ではない。 また b1=1b_1=-1 なので目的関数は y1+2y2-y_1+2y_2 となり、符号を落としやすい。 図示では、直線 2y1y2=4-2y_1-y_2=4 上のどの範囲が実行可能かを 他の3本の不等式から絞り込むことを忘れないこと。

線形計画:自由変数を含む問題の基底解・最適解・双対の途中式・最終答をPDFで見る

新潟大 数学 院試 過去問の収録12年度

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  • 2018年度 第2回募集(全6問)

    微分積分:部分分数分解・広義積分の収束・極座標による重積分 / 線形代数:<span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><mn>4</mn><mo>×</mo><mn>4</mn></mrow><annotation encoding="application/x-tex">4\times4</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.7278em;vertical-align:-0.0833em;"></span><span class="mord">4</span><span class="mspace" style="margin-right:0.2222em;"></span><span class="mbin">×</span><span class="mspace" style="margin-right:0.2222em;"></span></span><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6444em;"></span><span class="mord">4</span></span></span></span> 対称行列の行列式・固有値・直交対角化 / 位相:閉包の点列的でない特徴づけと連続写像による像の閉包

  • 2018年度 第1回募集(このページ・全6問)

    微分積分:逆正弦関数の冪級数展開と楕円体の切片の体積 / 線形代数:実対称行列の直交対角化と二次形式の標準形 / 複素解析:単位円上のハーディ内積とノルムの計算

  • 2017年度 第2回募集(全6問)

    線形代数:対角化・行列のべき・対角化可能性の判定 / 微分積分:平坦な関数の無限回微分可能性とガウス積分 / 微分方程式:接線の内分条件から定まる曲線

  • 2017年度 第1回募集(全6問)

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