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新潟大学 院試 過去問 解答例

新潟大 自然科学研究科 数理物質科学専攻 数理科学コース 数学 2017年度 第1回募集 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問。

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解説6問/全6問(6,783字)
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途中式と最終答(最終答つき6問)
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新潟大 数学 2017年度 第1回募集 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1微分積分・解析三角形の山を持つ関数列と極限の交換各点収束と一様収束の違い / 定理との関係あり
2線形代数べき等行列と直交行列の固有値特性方程式による確認 / 一般化あり
3位相・幾何コンパクト性と連続全単射が同相になる条件定理の構造 / どこで仮定が破れるかあり
4代数アーベル群のべき写像と準同型定理加法的に書くと見やすい / なぜ可換性が必要かあり
5幾何:空間曲線(常螺旋)の接線・接触平面・曲率常螺旋の性質 / 検算:0 の極限あり
6確率統計:離散一様分布の平均・分散・積率母関数・累積分布関数検算:積率母関数から平均と分散 / 1 と 2 での確認あり

この年度の解説には失点しやすい点6件が付いています。

1 — 微分積分:三角形の山を持つ関数列と極限の交換

方針

fnf_n の形を「幅 1/n1/n、高さ 11 の三角形の山が原点近くにある」と読み替えるのが第一歩である。 nfnnf_n は「幅 1/n1/n、高さ nn の山」で、面積は 1/21/2 に保たれたまま 山がどんどん細く高くなる。 面積が消えないのに各点では 00 に落ちる、というのが (2) の反例の核心である。

各点収束と一様収束の違い

各点収束は「xx を固定してから nn を大きくする」、 一様収束は「nn を大きくすれば全部の xx で同時に小さくなる」を意味する。 本問では山の位置が nn とともに 00 へ移動していくため、 どの xx も最後には山の外に出て 00 になるが、 どの nn でも山の頂上には高さ nn の点が残る。

定理との関係

一様収束すれば積分と極限は交換できるので、(2) が成り立つ以上 (3) は自動的に従う。 逆に (3) を直接示せば (2) の理由が説明できる。 また優収束定理の観点では、nfnnf_n を上から押さえる可積分関数が存在しないことが原因である。 実際 supnnfn(x)12x\sup_n nf_n(x)\ge\dfrac{1}{2x}xx の近くに頂点が来る nn を選ぶ)で、 これは [0,1][0,1] 上可積分でない。

失点しやすい点

(2) で「右辺は 00」と結論するには、各点で nfn(x)0nf_n(x)\to0 を示す必要がある。 x=0x=0 の場合を別に扱うこと(fn(0)=0f_n(0)=0)。 (3) で「nfnnf_n00 に収束しない」と書くと誤りで、 各点では収束する。収束の仕方が一様でないことを述べる。

微分積分:三角形の山を持つ関数列と極限の交換の途中式・最終答をPDFで見る

2 — 線形代数:べき等行列と直交行列の固有値

AA が射影行列であること

A2=AA^2=A かつ AA が対称なので、AA は直交射影である。 trA=(1c)+(1+c)2=1\operatorname{tr}A=\dfrac{(1-c)+(1+c)}{2}=1detA=(1c)(1+c)s24=0\det A=\dfrac{(1-c)(1+c)-s^2}{4}=0 なので 固有値は 1100 が1つずつ、すなわち AA は1次元部分空間への射影である。 その方向は固有値 11 の固有ベクトル (sinθ2 に比例する向き)\left(\sin\frac\theta2\ \text{に比例する向き}\right)、 具体的には (sinθ2, cosθ2)\left(-\sin\frac\theta2,\ \cos\frac\theta2\right) 方向である。

特性方程式による確認

BB の特性方程式は λ2(trB)λ+detB=λ22cosθλ+1=0\lambda^2-\left(\operatorname{tr}B\right)\lambda+\det B =\lambda^2-2\cos\theta\,\lambda+1=0 で、 λ=cosθ±isinθ=e±iθ\lambda=\cos\theta\pm i\sin\theta=e^{\pm i\theta}。確かに λ=1|\lambda|=1 である。 θ=0,π\theta=0,\pi では実固有値 ±1\pm1 になる。

一般化

(2) の議論は「多項式 pp について p(A)=Op(A)=O ならば固有値は p(λ)=0p(\lambda)=0 の根」という 一般的な事実の特別な場合である。 (4) の議論は「直交行列(より一般にユニタリ行列)の固有値は絶対値 11」という定理そのもので、 BB=IB^{*}B=I さえあれば次数や成分によらず成り立つ。

失点しやすい点

(2) で「AA の特性方程式を解く」と答えても正しいが、 (1) を使うよう誘導されているので A2=AA^2=A から導くほうが趣旨に合う。 (4) では固有値が複素数になりうることを見落とし、 実ベクトルのまま議論すると θ0,π\theta\ne0,\pi で固有ベクトルが存在せず行き詰まる。 複素ベクトル空間で考えることを明示すること。

線形代数:べき等行列と直交行列の固有値の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 位相:コンパクト性と連続全単射が同相になる条件

定理の構造

(2) の証明で使ったのは「XX のコンパクト性」と「ZZ のハウスドルフ性」だけである。 前者は f(F)f(F) をコンパクトにするために、 後者はコンパクト集合を閉集合にするために使われている。 どちらか一方でも落とすと定理は成り立たない。

どこで仮定が破れるか

(3) の反例では ZZ のハウスドルフ性は保たれているが、 YY がコンパクトでないため (1) の議論が使えない。 局所コンパクト性は「各点の近くではコンパクト」を言うだけで、 空間全体を有限個の開集合で覆えることは保証しない。

別の反例

YY を離散位相を入れた R\mathbb R(各点が孤立点なので局所コンパクト)、 ZZ を通常の位相の R\mathbb Rgg を恒等写像とするのも反例になる。 gg は連続全単射だが、g1g^{-1} は連続でない(離散位相のほうが真に細かい)。 こちらは「位相の細かさ」の観点からの反例である。

失点しやすい点

(1) で「コンパクト空間の閉部分集合はコンパクト」という補題を証明なしに使うと、 証明すべき内容の中心を飛ばしたことになる。 (2) では「ハウスドルフ空間のコンパクト集合は閉」も同様で、 少なくとも一方は証明を書いておきたい。 (3) では反例を挙げるだけでなく、なぜ同相でないかの理由(コンパクト性の不変性)を 明示することが求められている。

位相:コンパクト性と連続全単射が同相になる条件の途中式・最終答をPDFで見る

4 — 代数:アーベル群のべき写像と準同型定理

加法的に書くと見やすい

G=Z/33ZG=\mathbb Z/33\mathbb Z と同一視すると、H6=6G={6kmod33}H_6=6G=\{6k\bmod33\} である。 gcd(6,33)=3\gcd(6,33)=3 なので 6G=3G={0,3,6,,30}6G=3G=\{0,3,6,\dots,30\} で、要素は 1111 個。 T6={y6y0}={0,11,22}T_6=\{y\mid 6y\equiv0\}=\{0,11,22\}33 個。 33=11×333=11\times3 となって (2) の同型が数の上でも確かめられる。

なぜ可換性が必要か

非可換群では xxnx\mapsto x^n は一般に準同型にならず、 HnH_n は部分群ですらないことがある。 たとえば3次対称群 S3S_3n=2n=2 とすると H2={x2}={e,(123),(132)}H_2=\{x^2\}=\{e,(123),(132)\} は偶然部分群になるが、 n=3n=3 では H3={e,(12),(13),(23)}H_3=\{e,(12),(13),(23)\} となり積で閉じない。 (1)(2) の証明で可換性をどこで使ったかを明示することが大切である。

一般の場合

GG が有限アーベル群で G=m|G|=m のとき、 巡回群の直積分解 GZ/miZG\cong\prod\mathbb Z/m_i\mathbb Z を使えば Tn=gcd(n,mi)\left|T_n\right|=\prod\gcd(n,m_i)Hn=migcd(n,mi)\left|H_n\right|=\prod\dfrac{m_i}{\gcd(n,m_i)} となる。 本問は成分が1つの場合にあたる。

失点しやすい点

(3) で「位数 3333 のアーベル群は巡回群」という点を断らずに Z/33Z\mathbb Z/33\mathbb Z で計算すると、一般性の確認が抜ける。 また H6\left|H_6\right| を直接数えようとすると x6x^6 の重複を数え違えやすい。 (2) の同型を使って G/T6|G|/\left|T_6\right| に直すほうが確実である。

代数:アーベル群のべき写像と準同型定理の途中式・最終答をPDFで見る

5 — 幾何:空間曲線(常螺旋)の接線・接触平面・曲率

常螺旋の性質

p(t)=(acost, asint, bt)\bm p(t)=(a\cos t,\ a\sin t,\ bt) は常螺旋(円柱螺旋)で、 p=a2+b2\left|\bm p'\right|=\sqrt{a^2+b^2} が一定、曲率も捩率も一定になる。 一般には κ=aa2+b2\kappa=\dfrac{a}{a^2+b^2}τ=ba2+b2\tau=\dfrac{b}{a^2+b^2} である。 本問は a=2, b=3a=2,\ b=3 なので κ=213\kappa=\dfrac{2}{13}τ=313\tau=\dfrac{3}{13} となる。 κ\kappatt によらないことは、螺旋がどの点でも同じ形をしていること (円柱面上を一定の傾きで進むこと)の表れである。

検算:b0b\to0 の極限

b=0b=0 とすると半径 aa の円になり、κ1a\kappa\to\dfrac1a である。 本問の公式 aa2+b2\dfrac{a}{a^2+b^2}b=0b=0 とすると確かに 1a\dfrac1a。 また a0a\to0zz 軸上の直線)では κ0\kappa\to0 で、直線の曲率 00 と合う。 本問の値 213\dfrac{2}{13}12\dfrac12(半径 22 の円)より小さく、 「zz 方向に伸びているぶん曲がりが緩い」ことを示している。

接触平面の意味

接触平面は、曲線に3次の精度で接する平面(曲線を局所的に最もよく含む平面)である。 p\bm p'p\bm p'' が張る平面がそれで、法線方向 b=p×pp×p\bm b=\dfrac{\bm p'\times\bm p''}{\left|\bm p'\times\bm p''\right|} が 従法線ベクトルである。本問では b=1213(33,3,4)\bm b=\dfrac{1}{2\sqrt{13}}\left(3\sqrt3,-3,4\right) となり、 その zz 成分 4213=213\dfrac{4}{2\sqrt{13}}=\dfrac{2}{\sqrt{13}} が一定であることが 螺旋の特徴(従法線が zz 軸と一定の角をなす)を表している。

失点しやすい点

(3) で p3\left|\bm p'\right|^3 の割り算を忘れて κ=p=2\kappa=\left|\bm p''\right|=2 としてしまう誤りが多い。 曲率の定義 κ=dTds\kappa=\left|\dfrac{d\bm T}{ds}\right| は弧長 ss による微分であり、 tt が弧長でないぶんの補正が p3\left|\bm p'\right|^3 である。 本問では p=131\left|\bm p'\right|=\sqrt{13}\ne1 なので必ず必要になる。 また (2) で法線ベクトルの外積の第2成分の符号(余因子展開で - が付く)を落としやすい。

幾何:空間曲線(常螺旋)の接線・接触平面・曲率の途中式・最終答をPDFで見る

6 — 確率統計:離散一様分布の平均・分散・積率母関数・累積分布関数

検算:積率母関数から平均と分散

gX(θ)g_X(\theta)θ=0\theta=0 のまわりで展開すると gX(θ)=1+E(X)θ+E(X2)2θ2+g_X(\theta)=1+E(X)\theta+\dfrac{E(X^2)}{2}\theta^2+\cdots である。 θ\theta が小さいとき eθk1+θk+θ2k22e^{\theta k}\simeq1+\theta k+\frac{\theta^2k^2}{2} を代入して gX(θ)1+N+12θ+(N+1)(2N+1)12θ2g_X(\theta)\simeq1+\dfrac{N+1}{2}\theta+\dfrac{(N+1)(2N+1)}{12}\theta^2 となり、 (1) の結果と一致する。gX(0)=E(X)g'_X(0)=E(X)gX(0)=E(X2)g''_X(0)=E(X^2) を使えば (1) を (2) から再導出できる。

N=1N=1N=2N=2 での確認

N=1N=1 では X1X\equiv1 なので E(X)=1E(X)=1V(X)=0V(X)=0。 公式でも 1+12=1\dfrac{1+1}{2}=11112=0\dfrac{1-1}{12}=0 で合う。 N=2N=2 では E(X)=1.5E(X)=1.5V(X)=312=0.25V(X)=\dfrac{3}{12}=0.25 で、 {1,2}\{1,2\} が等確率のときの分散 (12)2=0.25\left(\dfrac12\right)^2=0.25 と一致する。

連続一様分布との対応

区間 [0,N][0,N] 上の連続一様分布では分散が N212\dfrac{N^2}{12} である。 離散版の N2112\dfrac{N^2-1}{12} はこれより 112\dfrac{1}{12} だけ小さく、 NN が大きいときは両者がほぼ一致する。 この 112-\frac{1}{12} の差はシェパードの補正として知られ、 連続分布を階級に区切って離散化したときの分散のずれにあたる。

失点しやすい点

(2) で θ=0\theta=0 の場合を書かないと、分母が 00 になる点で定義されない式を答えたことになる。 積率母関数は θ=0\theta=0 の近傍で定義される必要があるので、この場合分けは必須である。 (3) では「x=1,,Nx=1,\dots,N での値」だけを答えるのは不十分で、 FXF_X は実数全体で定義された右連続な階段関数である。 床関数を使うか、区間ごとに k/Nk/N と書き並べること。

確率統計:離散一様分布の平均・分散・積率母関数・累積分布関数の途中式・最終答をPDFで見る

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  • 2017年度 第1回募集(このページ・全6問)

    微分積分:三角形の山を持つ関数列と極限の交換 / 線形代数:べき等行列と直交行列の固有値 / 位相:コンパクト性と連続全単射が同相になる条件