院試hub

新潟大学 院試 過去問 解答例

新潟大 自然科学研究科 数理物質科学専攻 数理科学コース 数学 2019年度 第2回募集 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問。

最終更新:

このページで公開
解説6問/全6問(6,602字)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

新潟大 数学 2019年度 第2回募集 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1微分積分・解析原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性方針と構造 / 無限遠側との違いあり
2線形代数対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値対称・交代分解の一意性あり
3位相・幾何収束列・コーシー列・有界性・部分列3つの命題の位置づけ / (2)(3) の使いどころ
4代数剰余類の一致条件と指数の小さい部分群(1) が土台になっていること / 指数 が特別な理由
5幾何:双曲線型の空間曲線の接線・接触平面・曲率・捩率−τ となること / 検算:0 での値あり
6図解法・双対問題・シンプレックス法なぜ双対を経由するか / 相補性条件による検算あり

この年度の解説には失点しやすい点6件・検算1件が付いています。

前年度(2019年度 第1回募集)との違い

大問数
2019年度 第1回募集 6問 → 2019年度 第2回募集 6
2019年度 第1回募集のページを見る

1 — 微分積分:原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性

方針と構造

nn 次元では体積要素に rn1r^{n-1} が付くので、被積分関数は rn1αr^{n-1-\alpha} になる。 01rpdr\displaystyle\int_0^1r^{p}dr が収束する条件は p>1p>-1 なので、 収束条件は一律に α<n\alpha<n となる。 表面積の因子(222π2\pi4π4\pi)を掛ければ値も一目で書ける。 x1,x0dxxα=σn1nα(0<α<n), \int_{|x|\le1,\,x\ne0}\frac{dx}{|x|^\alpha} =\frac{\sigma_{n-1}}{n-\alpha}\qquad(0<\alpha<n), ここで σn1\sigma_{n-1}n1n-1 次元単位球面の面積である。

物理的な意味

33 次元でクーロンポテンシャル 1/r1/rα=1\alpha=1)が可積分なのは 1<31<3 だからで、 電荷密度が有限なら点電荷のポテンシャルのエネルギー積分は原点で発散しない。 一方、電場の 221/r41/r^4α=4\alpha=4)は 4>34>3 なので発散し、 これが古典電磁気学における点電荷の自己エネルギー発散にあたる。

無限遠側との違い

本問は原点(内側)の特異性だが、外側 x1dxxα\displaystyle\int_{|x|\ge1}\frac{dx}{|x|^\alpha} では 条件が逆転して α>n\alpha>n のとき収束する。 内側と外側の条件が α=n\alpha=n を境に反転するので、 Rn\mathbb R^n 全体で積分すると α\alpha をどう取っても発散する。

失点しやすい点

(2)(3) でヤコビアン(rr および r2sinφr^2\sin\varphi)を落とすと、 すべて (1) と同じ条件 α<1\alpha<1 になってしまう。 また境界の α=n\alpha=n のときが対数発散であることも述べておくと丁寧である。 α>0\alpha>0 という前提があるので α0\alpha\le0 の場合は考えなくてよい。

微分積分:原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性の途中式・最終答をPDFで見る

2 — 線形代数:対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値

方針

(4) は「AA が対角化できないから固有値も分からない」と誤解しやすいが、 上三角化(シューア分解でもジョルダン分解でもよい)さえできれば 多項式 p(A)p(A) の固有値は p(λ)p(\lambda) で決まる。 実際、複素行列はつねに上三角化でき、 pp を作用させても上三角のまま対角成分が p(λi)p(\lambda_i) になる。

検算

(2):A1A^{-1} の各成分は detA=4\det A=4 で割った値なので、 AA1=IA\cdot A^{-1}=I を1行だけでも確かめておく。 第1行 (2,3,0)(-2,-3,0)A1A^{-1} の第1列 (52,2,2)\left(\frac52,-2,-2\right) の内積は 5+6+0=1-5+6+0=1、第2列との内積は 32+32+0=0-\frac32+\frac32+0=0 で正しい。

(3):特性多項式に λ=1\lambda=1 を入れると 15+84=01-5+8-4=0 で確かに根である。 また固有値の和 1+2+2=5=trA1+2+2=5=\operatorname{tr}A、積 122=4=detA1\cdot2\cdot2=4=\det A も合う。

対称・交代分解の一意性

A=S+TA=S+TSS 対称、TT 交代)という分解は一意である。 転置を取ると AT=STA^{\mathsf T}=S-T となり、和と差から S,TS,T が確定するからである。 nn 次正方行列全体の空間が対称行列の空間と交代行列の空間の直和になる、 という事実の具体例になっている。

失点しやすい点

(3) で「重解があるから対角化できない」と結論するのは誤りである。 単位行列は重解を持つが対角化可能(すでに対角)である。 必ず固有空間の次元を調べること。 (4) では 220192^{2019} を計算しようとせず、そのままの形で答えてよい。

線形代数:対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 距離空間:収束列・コーシー列・有界性・部分列

3つの命題の位置づけ

(1) は「収束 \Rightarrow コーシー」で、どの距離空間でも成り立つ。 逆「コーシー \Rightarrow 収束」が成り立つ空間を完備という。 Q\mathbb Q(有理数)は完備でない典型例で、2\sqrt2 に近づく有理数列は コーシーだが Q\mathbb Q の中に極限を持たない。 (2)(3) はその完備性を議論するときの基本道具になる。

(2)(3) の使いどころ

Rn\mathbb R^n では「コーシー列 \Rightarrow 有界((2))\Rightarrow 収束部分列が存在 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラス)\Rightarrow もとの列も収束」という流れで 完備性が示される。最後の段では 「コーシー列が収束部分列を持てばもとの列も同じ極限に収束する」を使う。 (3) はその補題を組み立てる材料である。

nkkn_k\ge k を明示する理由

(3) で「部分列だから当然」と済ませると、 添字が飛ぶことによる NN の取り直しが必要かどうかが曖昧になる。 nkkn_k\ge k を示しておけば、kNk\ge N から直ちに nkNn_k\ge N が言え、 同じ NN をそのまま使えることがはっきりする。

失点しやすい点

(1) で ε\varepsilon をそのまま使うと d(xm,xn)<2εd(x_m,x_n)<2\varepsilon となり、 定義の形にならない。最初に ε/2\varepsilon/2 を取ること (2ε2\varepsilon でも任意性から同値だが、その旨を書く必要がある)。 (2) で「NN 以降は xNx_N の近くにいるから有界」だけでは、 最初の有限個を押さえていない。最大値を取る一手間が要る。

距離空間:収束列・コーシー列・有界性・部分列の途中式・最終答をPDFで見る

4 — 代数:剰余類の一致条件と指数の小さい部分群

(1) が土台になっていること

(1) は「同じ剰余類に属する」ことを a1bHa^{-1}b\in H という代数的な条件に翻訳する。 この翻訳があるので、剰余類の集合に群構造を入れる際の well-defined 性の議論が簡単になる。 (2)(3) でも暗黙にこの同値性を使っている。

指数 22 が特別な理由

一般に指数の小さい部分群ほど正規になりやすい。 指数 22 ならつねに正規、指数 ppG|G| の最小素因数)でも正規になることが知られている。 一方、指数 33 では正規でない例がある。 G=S3G=S_3H={e,(12)}H=\left\{e,(12)\right\} は指数 33 だが (13)H={(13),(123)}(13)H=\{(13),(123)\}H(13)={(13),(132)}H(13)=\{(13),(132)\} で一致しない。

位数 44 の群の分類

上の証明から、位数 44 の群は Z/4Z\mathbb Z/4\mathbb Z(巡回群)か Z/2Z×Z/2Z\mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z/2\mathbb Z(クラインの四元群)のいずれかで、 どちらも可換である。 より一般に「位数 p2p^2pp 素数)の群は可換」が成り立ち、 これは類等式から中心が非自明であることを使って示される。

失点しやすい点

(2) で左剰余類だけを見て「gH=GHgH=G\setminus H だから正規」とすると、 右剰余類も同じ分割を与えることの確認が抜ける。 両方に触れること。 (3) で「G/H=4|G/H|=4 だから Z/4\mathbb Z/4 または Z/2×Z/2\mathbb Z/2\times\mathbb Z/2」と 分類を引用するなら、その分類自体の根拠(上の場合分け)を添えるとよい。

代数:剰余類の一致条件と指数の小さい部分群の途中式・最終答をPDFで見る

5 — 幾何:双曲線型の空間曲線の接線・接触平面・曲率・捩率

κ=τ\kappa=-\tau となること

τ/κ\tau/\kappa が定数の曲線を定傾曲線(一般らせん)といい、 接線ベクトルがある定方向と一定の角をなすことと同値である。 本問は比が 1-1 でその一例になっている。実際、単位接ベクトルは T=pp=(et,et,2)et+et \bm T=\frac{\bm p'}{\left|\bm p'\right|} =\frac{\left(e^{t},\,-e^{-t},\,\sqrt2\right)}{e^{t}+e^{-t}} で、d=12(1,1,0)\bm d=\dfrac{1}{\sqrt2}(1,-1,0) との内積は Td=12(et+et)et+et=12 \bm T\cdot\bm d=\frac{\frac{1}{\sqrt2}\left(e^{t}+e^{-t}\right)}{e^{t}+e^{-t}}=\frac{1}{\sqrt2} tt によらない。すなわち接線は定方向 (1,1,0)(1,-1,0) とつねに 4545^\circ をなす。 τ/κ=1\left|\tau/\kappa\right|=1 がこの 4545^\circ に対応している。

検算:t=0t=0 での値

κ(0)=240.354\kappa(0)=\dfrac{\sqrt2}{4}\simeq0.354τ(0)=24\tau(0)=-\dfrac{\sqrt2}{4}p(0)=(1,1,2)\bm p'(0)=(1,-1,\sqrt2) の大きさは 1+1+2=2\sqrt{1+1+2}=2p(0)×p(0)=(2,2,2)\bm p'(0)\times\bm p''(0)=(-\sqrt2,\sqrt2,2) の大きさは 2+2+4=22\sqrt{2+2+4}=2\sqrt2 なので κ=2223=24\kappa=\dfrac{2\sqrt2}{2^3}=\dfrac{\sqrt2}{4} で一致する。

曲線の形

xy=etet=1xy=e^t\cdot e^{-t}=1 なので、この曲線は双曲柱面 xy=1xy=1 上にあり、 z=2tz=\sqrt2\,t で高さが決まる。 t±t\to\pm\inftyκ,τ0\kappa,|\tau|\to0 となり、遠方ではほぼ直線的になる。 最も曲がるのは t=0t=0 の付近である。

失点しやすい点

(3) で p3\left|\bm p'\right|^3 の割り算、 (4) で p×p2\left|\bm p'\times\bm p''\right|^233 乗ではない)を取り違えないこと。 また p2=e2t+e2t+2\left|\bm p'\right|^2=e^{2t}+e^{-2t}+2(et+et)2\left(e^t+e^{-t}\right)^2 と見抜けるかで計算量が大きく変わる。 e2t+e2t=(et+et)22e^{2t}+e^{-2t}=\left(e^t+e^{-t}\right)^2-2 を思い出すこと。

幾何:双曲線型の空間曲線の接線・接触平面・曲率・捩率の途中式・最終答をPDFで見る

6 — 線形計画:図解法・双対問題・シンプレックス法

なぜ双対を経由するか

主問題は \ge 型なので、スラック変数を引くと初期基底解が x=0\bm x=\bm 0、 スラック =b<0=-\bm b<0 となって実行可能でない。 2段階法や人為変数が必要になる。 双対に移すと \le 型の最大化になり、原点が実行可能なので スラック変数をそのまま初期基底にできる。 (3) が「双対をシンプレックス法で解け」と指示しているのはこのためである。

相補性条件による検算

最適解では「主の制約が不等号(緩い)なら対応する双対変数は 00」 「双対変数が正なら対応する主の制約は等号」が成り立つ。 (5,5)(5,5) では第1制約 35+5=20>163\cdot5+5=20>16、第4制約 5+10=15>145+10=15>14 が緩く、 実際 y1=y4=0y_1=y_4=0 である。逆に第2・第3制約は等号で y2,y3>0y_2,y_3>0。 すべて整合している。

図解での確認

最適解が L2L_2L3L_3 の交点であることは、 目的関数の勾配 (4,5)(4,5)L2L_2 の法線 (1,1)(1,1)L3L_3 の法線 (2,3)(2,3) の 非負結合になっていることと同値である。 実際 (4,5)=2(1,1)+1(2,3)(4,5)=2(1,1)+1(2,3) で、係数 2211 がそのまま y2,y3y_2,y_3 になっている。 双対変数の意味がここに見える。

失点しやすい点

(1) で頂点を列挙するとき、2直線の交点がすべて頂点になるとは限らない。 他の制約を満たすかを必ず確認すること (本問では L1L3L_1\cap L_3L1L4L_1\cap L_4L2L4L_2\cap L_4 が脱落する)。 (3) では「計算過程も記述すること」と指定されているので、 各回のピボット列・ピボット行の選び方(最大係数規則と最小比規則)を書くこと。

線形計画:図解法・双対問題・シンプレックス法の途中式・最終答をPDFで見る

新潟大 数学 院試 過去問の収録12年度

  • 2023年度 第2回募集(全6問)

    逆正接関数 / 対角化 / ユニタリ群

  • 2023年度 第1回募集(全6問)

    積分計算 / 行列の累乗 / 距離空間の連続性

  • 2022年度 第2回募集(全6問)

    逆三角関数と積分 / 対称行列の直交対角化 / コンパクト集合と閉集合の和

  • 2022年度 第1回募集(全6問)

    楕円体の体積 / 2次行列の対角化 / 距離空間と同相写像

  • 2020年度 第2回募集(全6問)

    2変数関数の極値 / 対角化と行列の累乗 / HolderとMinkowskiの不等式

  • 2020年度 第1回募集(全6問)

    微分積分:2変数関数の偏導関数とヘッセ行列による極値判定 / 線形代数:対合行列の対角化と <span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><msup><mi>A</mi><mi>n</mi></msup></mrow><annotation encoding="application/x-tex">A^{n}</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6833em;"></span><span class="mord"><span class="mord mathnormal">A</span><span class="msupsub"><span class="vlist-t"><span class="vlist-r"><span class="vlist" style="height:0.6644em;"><span style="top:-3.063em;margin-right:0.05em;"><span class="pstrut" style="height:2.7em;"></span><span class="sizing reset-size6 size3 mtight"><span class="mord mtight"><span class="mord mathnormal mtight">n</span></span></span></span></span></span></span></span></span></span></span></span> / 位相:閉包と連結性の保存

  • 2019年度 第2回募集(このページ・全6問)

    微分積分:原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性 / 線形代数:対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値 / 距離空間:収束列・コーシー列・有界性・部分列

  • 2019年度 第1回募集(全6問)

    ガンマ関数とベータ関数 / ジョルダン標準形 / 極分解

  • 2018年度 第2回募集(全6問)

    微分積分:部分分数分解・広義積分の収束・極座標による重積分 / 線形代数:<span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><mn>4</mn><mo>×</mo><mn>4</mn></mrow><annotation encoding="application/x-tex">4\times4</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.7278em;vertical-align:-0.0833em;"></span><span class="mord">4</span><span class="mspace" style="margin-right:0.2222em;"></span><span class="mbin">×</span><span class="mspace" style="margin-right:0.2222em;"></span></span><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6444em;"></span><span class="mord">4</span></span></span></span> 対称行列の行列式・固有値・直交対角化 / 位相:閉包の点列的でない特徴づけと連続写像による像の閉包

  • 2018年度 第1回募集(全6問)

    微分積分:逆正弦関数の冪級数展開と楕円体の切片の体積 / 線形代数:実対称行列の直交対角化と二次形式の標準形 / 複素解析:単位円上のハーディ内積とノルムの計算

  • 2017年度 第2回募集(全6問)

    線形代数:対角化・行列のべき・対角化可能性の判定 / 微分積分:平坦な関数の無限回微分可能性とガウス積分 / 微分方程式:接線の内分条件から定まる曲線

  • 2017年度 第1回募集(全6問)

    微分積分:三角形の山を持つ関数列と極限の交換 / 線形代数:べき等行列と直交行列の固有値 / 位相:コンパクト性と連続全単射が同相になる条件