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新潟大 自然科学研究科 数理物質科学専攻 数理科学コース 数学 2019年度 第2回募集 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は位相・幾何1項目、線形代数1項目、代数1項目です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分積分:原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性

方針と構造

nn 次元では体積要素に rn−1r^{n-1} が付くので、被積分関数は rn−1−αr^{n-1-\alpha} になる。 ∫01rpdr\displaystyle\int_0^1r^{p}dr が収束する条件は p>−1p>-1 なので、 収束条件は一律に α<n\alpha<n となる。 表面積の因子(22、2π2\pi、4π4\pi)を掛ければ値も一目で書ける。 ∫∣x∣≤1, x≠0dx∣x∣α=σn−1n−α(0<α<n), \int_{|x|\le1,\,x\ne0}\frac{dx}{|x|^\alpha} =\frac{\sigma_{n-1}}{n-\alpha}\qquad(0<\alpha<n), ここで σn−1\sigma_{n-1} は n−1n-1 次元単位球面の面積である。

物理的な意味

33 次元でクーロンポテンシャル 1/r1/r(α=1\alpha=1)が可積分なのは 1<31<3 だからで、 電荷密度が有限なら点電荷のポテンシャルのエネルギー積分は原点で発散しない。 一方、電場の 22 乗 1/r41/r^4(α=4\alpha=4)は 4>34>3 なので発散し、 これが古典電磁気学における点電荷の自己エネルギー発散にあたる。

無限遠側との違い

本問は原点(内側)の特異性だが、外側 ∫∣x∣≥1dx∣x∣α\displaystyle\int_{|x|\ge1}\frac{dx}{|x|^\alpha} では 条件が逆転して α>n\alpha>n のとき収束する。 内側と外側の条件が α=n\alpha=n を境に反転するので、 Rn\mathbb R^n 全体で積分すると α\alpha をどう取っても発散する。

失点しやすい点

(2)(3) でヤコビアン(rr および r2sin⁡φr^2\sin\varphi)を落とすと、 すべて (1) と同じ条件 α<1\alpha<1 になってしまう。 また境界の α=n\alpha=n のときが対数発散であることも述べておくと丁寧である。 α>0\alpha>0 という前提があるので α≤0\alpha\le0 の場合は考えなくてよい。

解答

(1) 11 次元

ε>0\varepsilon>0 に対して、α≠1\alpha\ne1 のとき ∫ε1dxxα=[x1−α1−α]ε1=1−ε1−α1−α. \int_{\varepsilon}^{1}\frac{dx}{x^{\alpha}} =\left[\frac{x^{1-\alpha}}{1-\alpha}\right]_{\varepsilon}^{1} =\frac{1-\varepsilon^{1-\alpha}}{1-\alpha}. ε→+0\varepsilon\to+0 で ε1−α\varepsilon^{1-\alpha} が収束するのは 1−α>01-\alpha>0、 すなわち 0<α<10<\alpha<1 のときで、そのとき極限は 11−α\dfrac{1}{1-\alpha} である。 α>1\alpha>1 では ε1−α→∞\varepsilon^{1-\alpha}\to\infty で発散、 α=1\alpha=1 では ∫ε1dxx=−log⁡ε→∞\displaystyle\int_\varepsilon^1\frac{dx}{x}=-\log\varepsilon\to\infty で発散する。

(2) 22 次元

極座標 x=rcos⁡ϑx=r\cos\vartheta、y=rsin⁡ϑy=r\sin\vartheta に移すと (x2+y2)−α/2=r−α\left(x^2+y^2\right)^{-\alpha/2}=r^{-\alpha}、体積要素は r dr dϑr\,dr\,d\vartheta なので ∬ε2<x2+y2≤1dxdy(x2+y2)α/2=∫02π ⁣ ⁣dϑ∫ε1r−α⋅r dr=2π∫ε1r1−αdr. \iint_{\varepsilon^2<x^2+y^2\le1}\frac{dxdy}{\left(x^2+y^2\right)^{\alpha/2}} =\int_0^{2\pi}\!\!d\vartheta\int_{\varepsilon}^{1}r^{-\alpha}\cdot r\,dr =2\pi\int_{\varepsilon}^{1}r^{1-\alpha}dr . (1) と同じ計算で、1−α>−11-\alpha>-1 すなわち α<2\alpha<2 のとき収束し、値は 2π⋅12−α2\pi\cdot\dfrac{1}{2-\alpha} である。

(3) 33 次元

球座標に移すと体積要素は r2sin⁡φ dr dφ dϑr^2\sin\varphi\,dr\,d\varphi\,d\vartheta、 角度部分の積分は 4π4\pi を与えるので ∭ε2<x2+y2+z2≤1dxdydz(x2+y2+z2)α/2=4π∫ε1r2−αdr. \iiint_{\varepsilon^2<x^2+y^2+z^2\le1} \frac{dxdydz}{\left(x^2+y^2+z^2\right)^{\alpha/2}} =4\pi\int_{\varepsilon}^{1}r^{2-\alpha}dr . 2−α>−12-\alpha>-1 すなわち α<3\alpha<3 のとき収束し、値は 4π⋅13−α4\pi\cdot\dfrac{1}{3-\alpha} である。

最終答

0<α<10<\alpha<1 のとき収束し、値は 11−α\displaystyle\frac{1}{1-\alpha}

0<α<20<\alpha<2 のとき収束し、値は 2π2−α\displaystyle\frac{2\pi}{2-\alpha}

0<α<30<\alpha<3 のとき収束し、値は 4π3−α\displaystyle\frac{4\pi}{3-\alpha}

第2問 — 線形代数:対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値

方針

(4) は「AA が対角化できないから固有値も分からない」と誤解しやすいが、 上三角化(シューア分解でもジョルダン分解でもよい)さえできれば 多項式 p(A)p(A) の固有値は p(λ)p(\lambda) で決まる。 実際、複素行列はつねに上三角化でき、 pp を作用させても上三角のまま対角成分が p(λi)p(\lambda_i) になる。

検算

(2):A−1A^{-1} の各成分は det⁡A=4\det A=4 で割った値なので、 A⋅A−1=IA\cdot A^{-1}=I を1行だけでも確かめておく。 第1行 (−2,−3,0)(-2,-3,0) と A−1A^{-1} の第1列 (52,−2,−2)\left(\frac52,-2,-2\right) の内積は −5+6+0=1-5+6+0=1、第2列との内積は −32+32+0=0-\frac32+\frac32+0=0 で正しい。

(3):特性多項式に λ=1\lambda=1 を入れると 1−5+8−4=01-5+8-4=0 で確かに根である。 また固有値の和 1+2+2=5=tr⁡A1+2+2=5=\operatorname{tr}A、積 1⋅2⋅2=4=det⁡A1\cdot2\cdot2=4=\det A も合う。

対称・交代分解の一意性

A=S+TA=S+T(SS 対称、TT 交代)という分解は一意である。 転置を取ると AT=S−TA^{\mathsf T}=S-T となり、和と差から S,TS,T が確定するからである。 nn 次正方行列全体の空間が対称行列の空間と交代行列の空間の直和になる、 という事実の具体例になっている。

失点しやすい点

(3) で「重解があるから対角化できない」と結論するのは誤りである。 単位行列は重解を持つが対角化可能(すでに対角)である。 必ず固有空間の次元を調べること。 (4) では 220192^{2019} を計算しようとせず、そのままの形で答えてよい。

線形代数:対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 距離空間:収束列・コーシー列・有界性・部分列

3つの命題の位置づけ

(1) は「収束 ⇒\Rightarrow コーシー」で、どの距離空間でも成り立つ。 逆「コーシー ⇒\Rightarrow 収束」が成り立つ空間を完備という。 Q\mathbb Q(有理数)は完備でない典型例で、2\sqrt2 に近づく有理数列は コーシーだが Q\mathbb Q の中に極限を持たない。 (2)(3) はその完備性を議論するときの基本道具になる。

(2)(3) の使いどころ

Rn\mathbb R^n では「コーシー列 ⇒\Rightarrow 有界((2))⇒\Rightarrow 収束部分列が存在 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラス)⇒\Rightarrow もとの列も収束」という流れで 完備性が示される。最後の段では 「コーシー列が収束部分列を持てばもとの列も同じ極限に収束する」を使う。 (3) はその補題を組み立てる材料である。

nk≥kn_k\ge k を明示する理由

(3) で「部分列だから当然」と済ませると、 添字が飛ぶことによる NN の取り直しが必要かどうかが曖昧になる。 nk≥kn_k\ge k を示しておけば、k≥Nk\ge N から直ちに nk≥Nn_k\ge N が言え、 同じ NN をそのまま使えることがはっきりする。

失点しやすい点

(1) で ε\varepsilon をそのまま使うと d(xm,xn)<2εd(x_m,x_n)<2\varepsilon となり、 定義の形にならない。最初に ε/2\varepsilon/2 を取ること (2ε2\varepsilon でも任意性から同値だが、その旨を書く必要がある)。 (2) で「NN 以降は xNx_N の近くにいるから有界」だけでは、 最初の有限個を押さえていない。最大値を取る一手間が要る。

距離空間:収束列・コーシー列・有界性・部分列の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 代数:剰余類の一致条件と指数の小さい部分群

(1) が土台になっていること

(1) は「同じ剰余類に属する」ことを a−1b∈Ha^{-1}b\in H という代数的な条件に翻訳する。 この翻訳があるので、剰余類の集合に群構造を入れる際の well-defined 性の議論が簡単になる。 (2)(3) でも暗黙にこの同値性を使っている。

指数 22 が特別な理由

一般に指数の小さい部分群ほど正規になりやすい。 指数 22 ならつねに正規、指数 pp(∣G∣|G| の最小素因数)でも正規になることが知られている。 一方、指数 33 では正規でない例がある。 G=S3G=S_3、H={e,(12)}H=\left\{e,(12)\right\} は指数 33 だが (13)H={(13),(123)}(13)H=\{(13),(123)\}、H(13)={(13),(132)}H(13)=\{(13),(132)\} で一致しない。

位数 44 の群の分類

上の証明から、位数 44 の群は Z/4Z\mathbb Z/4\mathbb Z(巡回群)か Z/2Z×Z/2Z\mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z/2\mathbb Z(クラインの四元群)のいずれかで、 どちらも可換である。 より一般に「位数 p2p^2(pp 素数)の群は可換」が成り立ち、 これは類等式から中心が非自明であることを使って示される。

失点しやすい点

(2) で左剰余類だけを見て「gH=G∖HgH=G\setminus H だから正規」とすると、 右剰余類も同じ分割を与えることの確認が抜ける。 両方に触れること。 (3) で「∣G/H∣=4|G/H|=4 だから Z/4\mathbb Z/4 または Z/2×Z/2\mathbb Z/2\times\mathbb Z/2」と 分類を引用するなら、その分類自体の根拠(上の場合分け)を添えるとよい。

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第5問 — 幾何:双曲線型の空間曲線の接線・接触平面・曲率・捩率

κ=−τ\kappa=-\tau となること

τ/κ\tau/\kappa が定数の曲線を定傾曲線(一般らせん)といい、 接線ベクトルがある定方向と一定の角をなすことと同値である。 本問は比が −1-1 でその一例になっている。実際、単位接ベクトルは T=p′∣p′∣=(et, −e−t, 2)et+e−t \bm T=\frac{\bm p'}{\left|\bm p'\right|} =\frac{\left(e^{t},\,-e^{-t},\,\sqrt2\right)}{e^{t}+e^{-t}} で、d=12(1,−1,0)\bm d=\dfrac{1}{\sqrt2}(1,-1,0) との内積は T⋅d=12(et+e−t)et+e−t=12 \bm T\cdot\bm d=\frac{\frac{1}{\sqrt2}\left(e^{t}+e^{-t}\right)}{e^{t}+e^{-t}}=\frac{1}{\sqrt2} と tt によらない。すなわち接線は定方向 (1,−1,0)(1,-1,0) とつねに 45∘45^\circ をなす。 ∣τ/κ∣=1\left|\tau/\kappa\right|=1 がこの 45∘45^\circ に対応している。

検算:t=0t=0 での値

κ(0)=24≃0.354\kappa(0)=\dfrac{\sqrt2}{4}\simeq0.354、τ(0)=−24\tau(0)=-\dfrac{\sqrt2}{4}。 p′(0)=(1,−1,2)\bm p'(0)=(1,-1,\sqrt2) の大きさは 1+1+2=2\sqrt{1+1+2}=2、 p′(0)×p′′(0)=(−2,2,2)\bm p'(0)\times\bm p''(0)=(-\sqrt2,\sqrt2,2) の大きさは 2+2+4=22\sqrt{2+2+4}=2\sqrt2 なので κ=2223=24\kappa=\dfrac{2\sqrt2}{2^3}=\dfrac{\sqrt2}{4} で一致する。

曲線の形

xy=et⋅e−t=1xy=e^t\cdot e^{-t}=1 なので、この曲線は双曲柱面 xy=1xy=1 上にあり、 z=2 tz=\sqrt2\,t で高さが決まる。 t→±∞t\to\pm\infty で κ,∣τ∣→0\kappa,|\tau|\to0 となり、遠方ではほぼ直線的になる。 最も曲がるのは t=0t=0 の付近である。

失点しやすい点

(3) で ∣p′∣3\left|\bm p'\right|^3 の割り算、 (4) で ∣p′×p′′∣2\left|\bm p'\times\bm p''\right|^2(33 乗ではない)を取り違えないこと。 また ∣p′∣2=e2t+e−2t+2\left|\bm p'\right|^2=e^{2t}+e^{-2t}+2 を (et+e−t)2\left(e^t+e^{-t}\right)^2 と見抜けるかで計算量が大きく変わる。 e2t+e−2t=(et+e−t)2−2e^{2t}+e^{-2t}=\left(e^t+e^{-t}\right)^2-2 を思い出すこと。

幾何:双曲線型の空間曲線の接線・接触平面・曲率・捩率の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 線形計画:図解法・双対問題・シンプレックス法

なぜ双対を経由するか

主問題は ≥\ge 型なので、スラック変数を引くと初期基底解が x=0\bm x=\bm 0、 スラック =−b<0=-\bm b<0 となって実行可能でない。 2段階法や人為変数が必要になる。 双対に移すと ≤\le 型の最大化になり、原点が実行可能なので スラック変数をそのまま初期基底にできる。 (3) が「双対をシンプレックス法で解け」と指示しているのはこのためである。

相補性条件による検算

最適解では「主の制約が不等号(緩い)なら対応する双対変数は 00」 「双対変数が正なら対応する主の制約は等号」が成り立つ。 (5,5)(5,5) では第1制約 3⋅5+5=20>163\cdot5+5=20>16、第4制約 5+10=15>145+10=15>14 が緩く、 実際 y1=y4=0y_1=y_4=0 である。逆に第2・第3制約は等号で y2,y3>0y_2,y_3>0。 すべて整合している。

図解での確認

最適解が L2L_2 と L3L_3 の交点であることは、 目的関数の勾配 (4,5)(4,5) が L2L_2 の法線 (1,1)(1,1) と L3L_3 の法線 (2,3)(2,3) の 非負結合になっていることと同値である。 実際 (4,5)=2(1,1)+1(2,3)(4,5)=2(1,1)+1(2,3) で、係数 22 と 11 がそのまま y2,y3y_2,y_3 になっている。 双対変数の意味がここに見える。

失点しやすい点

(1) で頂点を列挙するとき、2直線の交点がすべて頂点になるとは限らない。 他の制約を満たすかを必ず確認すること (本問では L1∩L3L_1\cap L_3、L1∩L4L_1\cap L_4、L2∩L4L_2\cap L_4 が脱落する)。 (3) では「計算過程も記述すること」と指定されているので、 各回のピボット列・ピボット行の選び方(最大係数規則と最小比規則)を書くこと。

線形計画:図解法・双対問題・シンプレックス法の途中式・最終答をPDFで見る

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年度別の解答例(12年度)

2019年度 第2回募集の出題内容

解説6項目

この6問の分野は位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析原点の特異性を持つ広義積分の収束次元依存性方針と構造 / 無限遠側との違いあり
第2問線形代数対称・交代分解、逆行列、対角化可能性、多項式の固有値対称・交代分解の一意性あり
第3問位相・幾何収束列・コーシー列・有界性・部分列3つの命題の位置づけ / (2)(3) の使いどころ—
第4問代数剰余類の一致条件と指数の小さい部分群(1) が土台になっていること / 指数 2 が特別な理由—
第5問—幾何:双曲線型の空間曲線の接線・接触平面・曲率・捩率\kappa=-τ となること / 検算:t=0 での値あり
第6問図解法・双対問題・シンプレックス法なぜ双対を経由するか / 相補性条件による検算あり

2019年度 第2回募集の解説には失点しやすい点6件・検算1件が付いています。

前年度(2019年度 第1回募集)との違い

大問数
2019年度 第1回募集 6問 → 2019年度 第2回募集 6問
2019年度 第1回募集の解答例

新潟大学の公式過去問

公開年度範囲
平成29〜令和5年度(2017〜2023相当。令和3年度は筆記試験実施なし)
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
一般選抜の外国語[英語]はTOEICまたはTOEFL(iBT・改訂版ペーパー・ITP)のスコアシート提出に基づき評価(研究科公式案内PDFに明記)。
院試hubの最終確認
2026-09-05
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