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千葉大学 院試 過去問 解答例

千葉大 融合理工学府 先進理化学専攻 物理学コース 物理学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・分配関数・ラグランジアン)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・分配関数。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

千葉大 物理学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—単振子と高周波駆動符号の確認 / 平均化で落としてよい項あり
第2問熱・統計力学二状態鎖の統計力学熱容量の極限 / ゆらぎの評価あり
第3問電磁気学・回路RLC回路と導体中の電磁波減衰条件の意味 / 位相の符号あり
第4問—井戸型ポテンシャルとデルタ井戸部分積分の注意 / 負エネルギー解の個数あり

この年度の解説には検算1件・典型ミス1件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に5テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 4問 → 2024年度 4問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・分配関数
2024年度で新しく出たテーマ
ラグランジアン・井戸型ポテンシャル・RLC回路
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第1問 — 単振子と高周波駆動

方針

前半は通常のラグランジュ方程式でよい。後半は高速成分を先に決め,その高速振動と外力の積の平均が低速運動に残る,という Kapitza 型の平均化で処理する。

符号の確認

電場の正方向を ϕ>0\phi>0 側に取ると Ue=−qExU_e=-qE x であるため,ラグランジアンには +qE0lsin⁡ϕcos⁡Ωt+qE_0l\sin\phi\cos\Omega t が入る。この符号を逆に取ると安定点の左右は入れ替わるが,閾値と有効ポテンシャルの形は同じである。

平均化で落としてよい項

ω0≪a1/2≪Ω\omega_0\ll a^{1/2}\ll\Omega の条件では,η\eta は振幅が小さく角振動数が大きい。低速方程式では η‾=0\overline{\eta}=0 だが,ηcos⁡Ωt‾\overline{\eta\cos\Omega t} は消えない。この項を残すことが,sin⁡Φcos⁡Φ\sin\Phi\cos\Phi の有効力を得る要点である。

検算

E0→0E_0\to0 では Ueff→−ω02cos⁡ΦU_{\mathrm{eff}}\to-\omega_0^2\cos\Phi となり,通常の単振子のポテンシャルに戻る。閾値では Ueff′′(0)=0U_{\mathrm{eff}}''(0)=0 となるので,二つの安定点が連続的に生じることも確認できる。

典型ミス

高周波成分を求める段階で Φ\Phi を微小角とみなして cos⁡Φ≃1\cos\Phi\simeq1 としてしまうと,後の安定点 Φ∗\Phi_* が出ない。問題の条件では η\eta は小さいが,Φ\Phi は必ずしも小さくない。

解答

重力だけの場合は,鉛直下向きからの角を ϕ\phi,最下点を位置エネルギーの基準に取ると T=12ml2ϕ˙2,Ug=mgl(1−cos⁡ϕ) T=\frac12 ml^2\dot{\phi}^2,\qquad U_g=mgl(1-\cos\phi) である。したがって L=12ml2ϕ˙2−mgl(1−cos⁡ϕ) L=\frac12 ml^2\dot{\phi}^2-mgl(1-\cos\phi) であり,オイラー・ラグランジュ方程式から ϕ¨+glsin⁡ϕ=0 \ddot{\phi}+\frac{g}{l}\sin\phi=0 を得る。微小振動では sin⁡ϕ≃ϕ\sin\phi\simeq\phi なので ω0=gl \omega_0=\sqrt{\frac{g}{l}} である。

水平方向の一様電場を加える。電場の正方向を ϕ>0\phi>0 側に取り, x=lsin⁡ϕx=l\sin\phi とすると,電気的ポテンシャルは Ue=−qE0lsin⁡ϕcos⁡Ωt U_e=-qE_0l\sin\phi\cos\Omega t である。よって ϕ¨+ω02sin⁡ϕ=acos⁡ϕcos⁡Ωt,a=qE0ml. \ddot{\phi}+\omega_0^2\sin\phi =a\cos\phi\cos\Omega t,\qquad a=\frac{qE_0}{ml}. 微小振動では ϕ¨+ω02ϕ=acos⁡Ωt \ddot{\phi}+\omega_0^2\phi=a\cos\Omega t となり,Ω≠ω0\Omega\ne\omega_0,ϕ(0)=ϕ0,ϕ˙(0)=0\phi(0)=\phi_0,\dot{\phi}(0)=0 から ϕ(t)=(ϕ0−aω02−Ω2)cos⁡ω0t+aω02−Ω2cos⁡Ωt. \phi(t)=\left(\phi_0-\frac{a}{\omega_0^2-\Omega^2}\right)\cos\omega_0t +\frac{a}{\omega_0^2-\Omega^2}\cos\Omega t .

高周波駆動では ϕ=Φ+η\phi=\Phi+\eta,η=η0cos⁡Ωt\eta=\eta_0\cos\Omega t とおく。短時間では Φ\Phi を定数,Φ¨\ddot{\Phi} を無視して,高周波成分を比べると −η0Ω2cos⁡Ωt=acos⁡Φcos⁡Ωt -\eta_0\Omega^2\cos\Omega t=a\cos\Phi\cos\Omega t より η0=−aΩ2cos⁡Φ. \eta_0=-\frac{a}{\Omega^2}\cos\Phi . 次に η\eta の一次まで sin⁡(Φ+η)≃sin⁡Φ+ηcos⁡Φ,cos⁡(Φ+η)≃cos⁡Φ−ηsin⁡Φ \sin(\Phi+\eta)\simeq\sin\Phi+\eta\cos\Phi,\qquad \cos(\Phi+\eta)\simeq\cos\Phi-\eta\sin\Phi とし,時間平均を取る。η‾=0\overline{\eta}=0, ηcos⁡Ωt‾=η0/2\overline{\eta\cos\Omega t}=\eta_0/2 なので Φ¨=−ω02sin⁡Φ+a22Ω2sin⁡Φcos⁡Φ. \ddot{\Phi}=-\omega_0^2\sin\Phi +\frac{a^2}{2\Omega^2}\sin\Phi\cos\Phi . これは Φ¨=−∂Ueff/∂Φ\ddot{\Phi}=-\partial U_{\mathrm{eff}}/\partial\Phi と書け, Ueff(Φ)=−ω02cos⁡Φ−a24Ω2sin⁡2Φ+const. U_{\mathrm{eff}}(\Phi)=-\omega_0^2\cos\Phi -\frac{a^2}{4\Omega^2}\sin^2\Phi+\text{const.} である。

Φ=0\Phi=0 まわりの安定性は Ueff′′(0)=ω02−a22Ω2 U_{\mathrm{eff}}''(0)=\omega_0^2-\frac{a^2}{2\Omega^2} で決まる。したがって閾値は Ec=2 mlω0Ωq. E_c=\frac{\sqrt{2}\,ml\omega_0\Omega}{q}. E0>EcE_0>E_c では,sin⁡Φ≠0\sin\Phi\ne0 の安定点が cos⁡Φ∗=2ω02Ω2a2=(EcE0)2 \cos\Phi_*=\frac{2\omega_0^2\Omega^2}{a^2} =\left(\frac{E_c}{E_0}\right)^2 を満たす。範囲 −π/2<Φ<π/2-\pi/2<\Phi<\pi/2 では Φ∗=±arccos⁡[(EcE0)2] \Phi_*=\pm\arccos\left[\left(\frac{E_c}{E_0}\right)^2\right] である。E0<EcE_0<E_c では UeffU_{\mathrm{eff}} は Φ=0\Phi=0 に単一の谷を持ち, E0>EcE_0>E_c では Φ=0\Phi=0 が山になり,左右対称の二つの谷が ±Φ∗\pm\Phi_* に現れる。

最終答

L=12ml2ϕ˙2−mgl(1−cos⁡ϕ)L=\frac12ml^2\dot{\phi}^2-mgl(1-\cos\phi), ϕ¨+ω02sin⁡ϕ=0\ddot{\phi}+\omega_0^2\sin\phi=0, ω0=g/l\omega_0=\sqrt{g/l}。 交流電場下では ϕ¨+ω02sin⁡ϕ=(qE0/ml)cos⁡ϕcos⁡Ωt\ddot{\phi}+\omega_0^2\sin\phi=(qE_0/ml)\cos\phi\cos\Omega t。 微小振動解は ϕ(t)=(ϕ0−qE0/mlω02−Ω2)cos⁡ω0t+qE0/mlω02−Ω2cos⁡Ωt\phi(t)=\left(\phi_0-\frac{qE_0/ml}{\omega_0^2-\Omega^2}\right)\cos\omega_0t+\frac{qE_0/ml}{\omega_0^2-\Omega^2}\cos\Omega t。 高周波平均では Ueff=−ω02cos⁡Φ−14Ω2(qE0/ml)2sin⁡2ΦU_{\mathrm{eff}}=-\omega_0^2\cos\Phi-\frac{1}{4\Omega^2}(qE_0/ml)^2\sin^2\Phi, Ec=2mlω0Ω/qE_c=\sqrt{2}ml\omega_0\Omega/q, E0>EcE_0>E_c で Φ∗=±arccos⁡[(Ec/E0)2]\Phi_*=\pm\arccos[(E_c/E_0)^2]。

第2問 — 二状態鎖の統計力学

方針

前半は独立な二準位系として処理する。後半は隣接条件を転送行列のゼロ成分として入れると,周期境界条件が自然に tr⁡MN\operatorname{tr}M^N になる。

熱容量の極限

低温で小さいのは励起分子が指数関数的に少ないためである。高温で小さいのは,二状態がほぼ等確率になり,温度を上げてもエネルギーがそれ以上増えにくいためである。

ゆらぎの評価

uu は全エネルギーを NN で割った量なので,分散に 1/N1/N が出る。標準偏差は 1/N1/\sqrt{N} であり,平均値そのものが消えるという意味ではなく,相対的な揺らぎが熱力学極限で見えなくなるという意味である。

配置数の読み替え

配置数を数えるときは,許された配置をすべて重み 11 で数える。したがって ε=0\varepsilon=0 として転送行列の成分を 00 または 11 にするのが最短である。周期境界条件なので,開鎖のフィボナッチ数そのものではなく Lucas 型の λ+N+λ−N\lambda_+^N+\lambda_-^N が現れる。

二状態鎖の統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — RLC回路と導体中の電磁波

方針

回路は電荷 QQ を一度導入し,最後に I=Q˙I=\dot Q で微分方程式を電流だけにする。導体中の電磁波は Maxwell 方程式から波動方程式を作り,複素波数の虚部を減衰長として読む。

減衰条件の意味

一定電圧では右辺が消え,電流は同次方程式に従う。R2<4L/CR^2<4L/C では根が複素数になり,電流は振動しながら減衰する。問題で指定された純粋な指数減衰形が存在するには実根が必要である。

位相の符号

ωL>1/ωC\omega L>1/\omega C なら誘導性で,電流は電圧より遅れるので α>0\alpha>0 である。容量性では α<0\alpha<0 となる。この符号確認を入れると,tan⁡α\tan\alpha の分子の順序を間違えにくい。

表皮厚さの検算

σ\sigma や μ\mu が大きいほど δ\delta は小さくなり,周波数が高いほど浅い領域しか浸透しない。これは導体中の遮蔽として物理的に自然である。

RLC回路と導体中の電磁波の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 井戸型ポテンシャルとデルタ井戸

方針

無限井戸部分は境界条件だけで量子化する。デルタ関数ポテンシャルでは,波動関数は連続,導関数だけが有限量だけ跳ぶ。この跳び条件を正しく使えば,ほぼ全ての設問が解ける。

部分積分の注意

E≥min⁡UE\ge\min U の証明では,運動エネルギー項が非負になることを明示する必要がある。境界条件により表面項が消えることを書かないと,証明として不十分になる。

負エネルギー解の個数

κcoth⁡(κa)\kappa\coth(\kappa a) 型の左辺は,κ→0\kappa\to0 で 1/a1/a に近づく。したがって引力の強さ gg がこの値を超えるかどうかが,負エネルギー解の有無を決める。グラフで説明するなら,横軸を κ\kappa,縦軸を左辺とし,水平線 gg との交点数を見る。

概形の描き分け

基底状態が正のときは通常の井戸の節なし曲線に近く,E=0E=0 ではデルタ点から壁へ直線的に落ちるしきい値形,E<0E<0 ではデルタ井戸付近に強く局在した双曲線関数型になる。試験では式だけでなく,この三つの違いが分かる図を添えるとよい。

井戸型ポテンシャルとデルタ井戸の途中式・最終答をPDFで見る

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