院試hub

早稲田大学 基幹理工学研究科 数学応用数理専攻 専門科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全12問)

全12問の分野は微分積分・解析3問、代数2問、確率・統計1問です。固有値・固有ベクトル、ヒルベルト空間、フーリエ変換などが出ています。2023年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、フーリエ変換です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 微分積分

流れ写像の標準計算

常微分方程式の解を初期値で微分すると、変分方程式が現れる。行列式の微分公式 ddtdet⁡Y=tr⁡(Y′Y−1)det⁡Y\frac{d}{dt}\det Y=\operatorname{tr}(Y'Y^{-1})\det Y を使うと、発散だけが体積変化率として残る。

保測性の意味

J(t)=1J(t)=1 は局所的に面積倍率が 11 であることを表す。これを領域全体に積分したものが面積保存であり、流体力学では非圧縮性の数学的表現である。

解答

流れ写像を Φt(x)=y(x;t)\Phi_t(x)=y(x;t) と書き、DxΦtD_x\Phi_t を xx に関するヤコビ行列とする。

  1. yy は微分方程式 y˙=u(y,t)\dot y=u(y,t) の解であるから、xjx_j で微分して連鎖律を用いると ddt∂yi∂xj=∑k=12∂ui∂yk(y(x;t),t)∂yk∂xj(i,j=1,2) \frac{d}{dt}\frac{\partial y_i}{\partial x_j} =\sum_{k=1}^2 \frac{\partial u_i}{\partial y_k}(y(x;t),t) \frac{\partial y_k}{\partial x_j}\qquad (i,j=1,2) となる。これは設問の等式そのものである。

  2. A(t)=Dyu(y(x;t),t)A(t)=D_yu(y(x;t),t) とおくと、前項は ddtDxΦt=A(t)DxΦt \frac{d}{dt}D_x\Phi_t=A(t)D_x\Phi_t である。ヤコビ行列式を J(t)=det⁡DxΦtJ(t)=\det D_x\Phi_t とすれば、行列式の微分公式から J′(t)=tr⁡A(t)J(t)=(∂u1∂y1+∂u2∂y2)(y(x;t),t)J(t) J'(t)=\operatorname{tr}A(t)J(t) =\left(\frac{\partial u_1}{\partial y_1}+ \frac{\partial u_2}{\partial y_2}\right)(y(x;t),t)J(t) を得る。

  3. 発散が 00 なら J′(t)=0J'(t)=0 である。初期時刻では Φ0\Phi_0 は恒等写像なので J(0)=1J(0)=1、したがって J(t)=1J(t)=1 である。任意の有界可測領域 DD に対し、変数変換公式より ∣Φt(D)∣=∫D∣det⁡DxΦt(x)∣ dx=∫D1 dx=∣D∣. |\Phi_t(D)|=\int_D |\det D_x\Phi_t(x)|\,dx=\int_D 1\,dx=|D|. よって Φt\Phi_t は面積を保つ。

最終答

J′(t)=(div⁡u)(y(x;t),t)J(t)J'(t)=(\operatorname{div}u)(y(x;t),t)J(t)。特に div⁡u=0\operatorname{div}u=0 なら J(t)=1J(t)=1 で、流れ写像は保測である。

第2問 — 線形代数

射影行列の確認点

正射影であることは、P2=PP^2=P や PT=PP^T=P を示すだけでも足りるが、定義に沿って WW 上で恒等、W⊥W^\perp 上で零となることを直接確認すると採点上明快である。

対角化と射影の関係

対角化は基底を固有ベクトルに取り替える操作で、射影 PiP_i はそのうち固有値 λi\lambda_i の成分だけを取り出す操作である。最後の式 A=∑λiPiA=\sum\lambda_iP_i が、この問題の全体像である。

線形代数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 基礎数理 3A・3B

縮小写像の型

コーシー性は隣接項の距離を等比級数で押さえるのが定石である。完備性は極限点の存在にだけ使われる。

多項式の固有性

最高次項が無限遠で支配することを示せば、コンパクト集合の逆像が無限遠へ逃げない。閉性は連続性から自動的に従う。

基礎数理 3A・3Bの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 代数

偶奇で分ける発想

k[s2,st,t2]k[s^2,st,t^2] の唯一の関係は (st)2=s2t2(st)^2=s^2t^2 である。剰余を r0+yr1r_0+yr_1 まで落とすと、代入後の単項式の偶奇が分かれ、核に残れないことが分かる。

代数の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 代数

クンマー理論の基本形

根の比がすべて KK 内の nn 乗根になるため、自己同型群は α\alpha に掛ける根の選び方で記述できる。逆向きはヒルベルト90を使って、自己同型で固有値 ζ\zeta を持つ元を作るのが核心である。

代数の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 解析

近似単位とフーリエ反転

F[Wk]\mathcal F[W_k] は質量 2π2\pi をもつガウス核で、k→∞k\to\infty により原点へ集中する。一方、直接に近似単位として扱うより、畳み込みをフーリエ側の積に変換して Wk(z)→1W_k(z)\to1 を使うと、反転公式の形が自然に現れる。符号は変数変換 η=−z\eta=-z で確認すると間違えにくい。

解析の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 解析

積分因子

一次線形方程式は左辺を一つの微分にまとめるのが最短である。極限問題では、定数係数の平衡解を先に見つけ、差を取って減衰を示すと見通しがよい。

解析の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 幾何

円周のホモロジー

円周は連結成分を一つ持ち、独立な一次元の穴を一つ持つ。長完全列はこの直感を、区間の可縮性から厳密に取り出す道具である。

幾何の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 幾何

フレーム多様体

互いに直交する2本の単位ベクトルを選ぶと、外積で3本目が一意に決まる。したがって問題の空間は回転行列全体と同じである。

幾何の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 確率統計

特性関数の読み方

指数の一次項が平均、二次項が共分散である。条件付き正規分布の問題は、まず条件付き特性関数を書き、その後で条件を外して期待値を取ると計算が整理される。

確率統計の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 応用数理

隣接行列

無向性は対称性、ループなしは対角成分 00 に対応する。正則グラフでは全成分 11 のベクトルが最も自然な固有ベクトルである。

応用数理の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 応用数理

交叉と和集合の違い

条件をすべて同時に満たす集合を集める交叉は閉性を保つ。一方、和集合は「どれか一つの族に入る」だけなので、可算和を取った結果が同じ族に残る保証がない。

応用数理の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

2024年度の出題内容

全12問

この12問の分野は微分積分・解析3問・代数2問・確率・統計1問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析微分積分流れ写像の標準計算 / 保測性の意味あり
第2問線形代数—射影行列の確認点 / 対角化と射影の関係あり
第3問—基礎数理 3A・3B縮小写像の型 / 多項式の固有性あり
第4問代数—偶奇で分ける発想あり
第5問代数—クンマー理論の基本形あり
第6問微分積分・解析解析近似単位とフーリエ反転あり
第7問微分積分・解析解析積分因子あり
第8問—幾何円周のホモロジーあり
第9問—幾何フレーム多様体あり
第10問確率・統計確率統計特性関数の読み方あり
第11問—応用数理隣接行列あり
第12問—応用数理交叉と和集合の違いあり

同じテーマを出した他大学・他年度

6テーマ

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 12問 → 2024年度 12問
2024年度で新しく出たテーマ
ヒルベルト空間・群論・環論・ラプラス変換・特性関数
2023年度の解答例

早稲田大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2027年度(現行一覧。大学は過去3年分の公開と案内)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-09-26
早稲田大学の公式過去問PDF