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都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2022年度 夏季 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は数学1項目、電磁気学・回路1項目、熱・統計力学1項目です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 数学:ベクトル解析・複素積分・行列の対角化と偏微分方程式

問1 ベクトル解析と三重積分

方針

被積分関数も領域も球対称なので、球殻 r∼r+drr\sim r+dr(体積 4πr2dr4\pi r^2dr)で積分するのが最短である。 デカルト座標のまま計算するのは無駄が多い。

検算:次元と極限

答えは a5a^5 に比例する。被積分関数が [長さ]2[\text{長さ}]^2、体積が [長さ]3[\text{長さ}]^3 なので 合わせて [長さ]5[\text{長さ}]^5 となり整合する。 また球の慣性モーメントとの関係でも確認できる。一様な密度 ρ\rho の球の zz 軸まわりの慣性モーメントは ∭ρ(x2+y2)dV=23ρ⋅4πa55=25Ma2\iiint\rho(x^2+y^2)dV=\frac23\rho\cdot\frac{4\pi a^5}{5} =\frac25Ma^2 となり、既知の値と一致する(対称性から ∭x2dV\iiint x^2dV 等が等しいことを使った)。

失点しやすい点

b) の Δ\Delta は3次元のラプラシアンである。1次元と混同して f′′f'' だけにすると 2f′/r2f'/r の項が抜ける。また r=0r=0 では e−re^{-r} が滑らかでなく、 超関数的には −4πδ3(x⃗)-4\pi\delta^3(\vec x) の寄与が生じる。答案では r≠0r\ne0 と断っておく。

問2 2位の極を持つ関数の周回積分

なぜ C2C_2 で 00 になるか

f(z)=(z2+1)−2f(z)=\left(z^2+1\right)^{-2} は ∣z∣→∞|z|\to\infty で ∣f∣∼∣z∣−4|f|\sim|z|^{-4} と速く減衰する。 半径 R\mathcal R の円周上の積分は 2πR⋅R−4→02\pi\mathcal R\cdot\mathcal R^{-4}\to0 なので、 すべての極を囲む十分大きな円では積分が 00 になる。 留数の総和が 00 であることの裏返しである。

2位の極の扱い

1位の極と違い、(z−z0)2f(z)(z-z_0)^2f(z) の値を代入するだけでは足りず、1回微分してから代入する。 nn 位の極では 1(n−1)!dn−1dzn−1\dfrac{1}{(n-1)!}\dfrac{d^{n-1}}{dz^{n-1}} を作用させる。 微分を忘れると 2-1) の答えが 00 になり、C1C_1 と C2C_2 の違いが出なくなる。

検算

ff は実軸に関して f(zˉ)‾=f(z)\overline{f(\bar z)}=f(z) を満たす(係数がすべて実)。 このとき z=iz=i と z=−iz=-i の留数は互いに複素共役の −1-1 倍の関係になり、 実際 −i/4-i/4 と i/4i/4 は和が 00 の純虚数対になっている。 2-1) の答えが実数 π/2\pi/2 になることも、この対称性から予想できる。

問3 行列の対角化と2階偏微分方程式

方針

2階の線形偏微分方程式は、主要部の係数を行列とみなして対角化すれば標準形に落ちる。 AA の固有値は ±a2+b2\pm\sqrt{a^2+b^2} で符号が異なる(判別式 b2−a⋅(−a)=a2+b2>0b^2-a\cdot(-a)=a^2+b^2>0)ので、 式 (3) は双曲型であり、波動方程式と同じ「2本の特性直線」を持つ。 ξ=\xi= 一定、η=\eta= 一定がその特性線である。

波動方程式との対応

a=1,b=0a=1,b=0 とすると tan⁡2θ=0\tan2\theta=0 から θ=0\theta=0 となり、 式 (3) は uxx−uyy=0u_{xx}-u_{yy}=0、解は f(x)+h(y)f(x)+h(y) である。 yy を時間と読み替えれば u=f(x−t)+h(x+t)u=f(x-t)+h(x+t) というダランベールの解に対応する (回転角が π/4\pi/4 ずれるのは変数の取り方の違いによる)。

失点しやすい点

3-3) で ∂x,∂y\partial_x,\partial_y を ∂ξ,∂η\partial_\xi,\partial_\eta で書き直すとき、 座標の変換 U−1U^{-1} と微分演算子の変換 UU が互いに逆であることに注意する。 また 2b ∂x∂y2b\,\partial_x\partial_y を行列に直す際、非対角成分は bb ずつ2つに分けること。 UU が直交行列(UT=U−1U^{\mathsf T}=U^{-1})だから 3-1) の結果がそのまま使える点も明記する。

解答

問1 ベクトル解析と三重積分

1-1) a) ∣∇⃗log⁡r∣2\left|\vec\nabla\log r\right|^2

r=x2+y2+z2r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} に対して ∂r∂x=xr\dfrac{\partial r}{\partial x}=\dfrac xr などが成り立つので ∇⃗log⁡r=1r∇⃗r=1r⋅x⃗r=x⃗r2. \vec\nabla\log r=\frac{1}{r}\vec\nabla r=\frac{1}{r}\cdot\frac{\vec x}{r}=\frac{\vec x}{r^{2}} . よって ∣∇⃗log⁡r∣2=∣x⃗∣2r4=1r2\left|\vec\nabla\log r\right|^2=\dfrac{|\vec x|^2}{r^4}=\dfrac{1}{r^2} である(r≠0r\ne0)。

1-1) b) Δ(e−r)\Delta\left(e^{-r}\right)

球対称な関数 f(r)f(r) に対して Δf=1r2ddr(r2dfdr)=f′′+2rf′\Delta f=\dfrac{1}{r^2}\dfrac{d}{dr}\left(r^2\dfrac{df}{dr}\right)=f''+\dfrac2rf' である。 f=e−rf=e^{-r} では f′=−e−rf'=-e^{-r}、f′′=e−rf''=e^{-r} なので Δ(e−r)=e−r−2re−r=(1−2r)e−r. \Delta\left(e^{-r}\right)=e^{-r}-\frac{2}{r}e^{-r}=\left(1-\frac2r\right)e^{-r}.

1-2) 三重積分

領域 RR は半径 aa の球なので球座標に移る。x2+y2+z2=r2x^2+y^2+z^2=r^2、 体積要素は dV=r2sin⁡ϑ dr dϑ dϕdV=r^2\sin\vartheta\,dr\,d\vartheta\,d\phi で、角度部分の積分は 4π4\pi を与える。 ∭R(x2+y2+z2)dxdydz=∫0ar2⋅4πr2 dr=4π[r55]0a=4πa55. \iiint_R\left(x^2+y^2+z^2\right)dxdydz =\int_0^{a}r^2\cdot4\pi r^2\,dr =4\pi\left[\frac{r^5}{5}\right]_0^{a} =\frac{4\pi a^{5}}{5}.

問2 2位の極を持つ関数の周回積分

被積分関数を f(z)=1(z+i)2(z−i)2\displaystyle f(z)=\frac{1}{(z+i)^2(z-i)^2} とおく。 極は z=±iz=\pm i の2つで、いずれも2位である。 2位の極 z=z0z=z_0 における留数は Res⁡z=z0f=lim⁡z→z0ddz[(z−z0)2f(z)]\displaystyle\operatorname*{Res}_{z=z_0}f=\lim_{z\to z_0}\frac{d}{dz}\left[(z-z_0)^2f(z)\right] で計算する。

2-1) C1:∣z−i∣=1/2C_1:|z-i|=1/2 の場合

中心 ii、半径 1/21/2 の円なので、内部にあるのは z=iz=i だけである(z=−iz=-i までの距離は 2>1/22>1/2)。 Res⁡z=if=ddz1(z+i)2∣z=i=−2(z+i)3∣z=i=−2(2i)3=−2−8i=14i=−i4. \operatorname*{Res}_{z=i}f =\left.\frac{d}{dz}\frac{1}{(z+i)^2}\right|_{z=i} =\left.\frac{-2}{(z+i)^3}\right|_{z=i} =\frac{-2}{(2i)^3}=\frac{-2}{-8i}=\frac{1}{4i}=-\frac i4 . 反時計回りなので ∮C1f(z) dz=2πi(−i4)=π2. \oint_{C_1}f(z)\,dz=2\pi i\left(-\frac i4\right)=\frac{\pi}{2}.

2-2) C2:∣z∣=2C_2:|z|=2 の場合

∣±i∣=1<2|\pm i|=1<2 なので両方の極が内部にある。同様に Res⁡z=−if=−2(z−i)3∣z=−i=−2(−2i)3=−28i=−14i=i4. \operatorname*{Res}_{z=-i}f =\left.\frac{-2}{(z-i)^3}\right|_{z=-i} =\frac{-2}{(-2i)^3}=\frac{-2}{8i}=-\frac{1}{4i}=\frac i4 . 留数の和は −i4+i4=0-\dfrac i4+\dfrac i4=0 であるから ∮C2f(z) dz=2πi⋅0=0. \oint_{C_2}f(z)\,dz=2\pi i\cdot0=0 .

問3 行列の対角化と2階偏微分方程式

3-1) λ\lambda と tan⁡2θ\tan2\theta

c=cos⁡θc=\cos\theta、s=sin⁡θs=\sin\theta とおく。UU は回転行列なので U−1=UT=(c−ssc)U^{-1}=U^{\mathsf T}=\begin{pmatrix}c&-s\\ s&c\end{pmatrix} である。直接計算すると U−1AU=(pqq−p),{p=acos⁡2θ−bsin⁡2θ,q=asin⁡2θ+bcos⁡2θ U^{-1}AU=\begin{pmatrix}p&q\\ q&-p\end{pmatrix}, \qquad \begin{cases} p=a\cos2\theta-b\sin2\theta,\\ q=a\sin2\theta+b\cos2\theta \end{cases} となる(c2−s2=cos⁡2θc^2-s^2=\cos2\theta、2cs=sin⁡2θ2cs=\sin2\theta を用いた)。 対角成分が 00 になる条件は p=0p=0、すなわち acos⁡2θ=bsin⁡2θ ⟹ tan⁡2θ=ab. a\cos2\theta=b\sin2\theta \ \Longrightarrow\ \tan2\theta=\frac ab . このとき b>0b>0 の側を取れば cos⁡2θ=ba2+b2\cos2\theta=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}、sin⁡2θ=aa2+b2\sin2\theta=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} であるから λ=q=a2+b2a2+b2=a2+b2. \lambda=q=\frac{a^2+b^2}{\sqrt{a^2+b^2}}=\sqrt{a^2+b^2}.

3-2) ∂2g/∂ξ∂η=0\partial^2g/\partial\xi\partial\eta=0 の一般解

∂∂η(∂g∂ξ)=0\dfrac{\partial}{\partial\eta}\left(\dfrac{\partial g}{\partial\xi}\right)=0 より ∂g∂ξ\dfrac{\partial g}{\partial\xi} は η\eta によらない。すなわち ξ\xi だけの関数 φ(ξ)\varphi(\xi) である。 これを ξ\xi で積分すると、積分定数は η\eta の任意関数になるので g(ξ,η)=f(ξ)+h(η) g(\xi,\eta)=f(\xi)+h(\eta) (f,hf,h は C2C^2 級の任意関数、f′=φf'=\varphi)。

3-3) 式 (3) の標準形と一般解

ξ=xcos⁡θ−ysin⁡θ\xi=x\cos\theta-y\sin\theta、η=xsin⁡θ+ycos⁡θ\eta=x\sin\theta+y\cos\theta は (ξη)=U−1(xy)\begin{pmatrix}\xi\\ \eta\end{pmatrix}=U^{-1}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} である。 連鎖律より (∂x∂y)=U(∂ξ∂η),すなわち∂x=c ∂ξ+s ∂η,∂y=−s ∂ξ+c ∂η. \begin{pmatrix}\partial_x\\ \partial_y\end{pmatrix} =U\begin{pmatrix}\partial_\xi\\ \partial_\eta\end{pmatrix}, \qquad\text{すなわち}\qquad \partial_x=c\,\partial_\xi+s\,\partial_\eta,\quad \partial_y=-s\,\partial_\xi+c\,\partial_\eta . 一方、式 (3) の左辺の微分作用素は、2b ∂x∂y=b ∂x∂y+b ∂y∂x2b\,\partial_x\partial_y =b\,\partial_x\partial_y+b\,\partial_y\partial_x と書き直せば a∂x2+2b∂x∂y−a∂y2=(∂x, ∂y)A(∂x∂y) a\partial_x^2+2b\partial_x\partial_y-a\partial_y^2 =\left(\partial_x,\ \partial_y\right)A \begin{pmatrix}\partial_x\\ \partial_y\end{pmatrix} と、まさに 3-1) の行列 AA による2次形式になっている。上の連鎖律を代入し UT=U−1U^{\mathsf T}=U^{-1} を使うと (∂ξ, ∂η)UTAU(∂ξ∂η)=(∂ξ, ∂η)(0λλ0)(∂ξ∂η)=2λ ∂ξ∂η. \left(\partial_\xi,\ \partial_\eta\right)U^{\mathsf T}AU \begin{pmatrix}\partial_\xi\\ \partial_\eta\end{pmatrix} =\left(\partial_\xi,\ \partial_\eta\right) \begin{pmatrix}0&\lambda\\ \lambda&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\partial_\xi\\ \partial_\eta\end{pmatrix} =2\lambda\,\partial_\xi\partial_\eta . a>0,b>0a>0,b>0 より λ=a2+b2≠0\lambda=\sqrt{a^2+b^2}\ne0 なので、式 (3) は ∂2u∂ξ∂η=0 \frac{\partial^2u}{\partial\xi\partial\eta}=0 と、式 (2) と同じ形になる。したがって 3-2) の結果から一般解は

最終答

∣∇⃗log⁡r∣2=1r2\displaystyle \left|\vec\nabla\log r\right|^{2}=\frac{1}{r^{2}}

Δ(e−r)=(1−2r)e−r(r≠0)\displaystyle \Delta\left(e^{-r}\right)=\left(1-\frac{2}{r}\right)e^{-r} \qquad(r\ne0)

∭R(x2+y2+z2)dxdydz=4πa55\displaystyle \iiint_R\left(x^{2}+y^{2}+z^{2}\right)dxdydz=\frac{4\pi a^{5}}{5}

∮C1dz(z+i)2(z−i)2=π2\displaystyle \oint_{C_1}\frac{dz}{(z+i)^2(z-i)^2}=\frac{\pi}{2}

∮C2dz(z+i)2(z−i)2=0\displaystyle \oint_{C_2}\frac{dz}{(z+i)^2(z-i)^2}=0

λ=a2+b2,tan⁡2θ=ab\displaystyle \lambda=\sqrt{a^{2}+b^{2}},\qquad \tan2\theta=\frac ab

g(ξ,η)=f(ξ)+h(η)g(\xi,\eta)=f(\xi)+h(\eta)(f,hf,h は任意の2階微分可能な関数)

u(x,y)=f(xcos⁡θ−ysin⁡θ)+h(xsin⁡θ+ycos⁡θ)u(x,y)=f\left(x\cos\theta-y\sin\theta\right)+h\left(x\sin\theta+y\cos\theta\right) (f,hf,h は任意関数、θ\theta は tan⁡2θ=a/b\tan2\theta=a/b を満たす角)

第2問 — 力学:単振り子と巻取り軸つき円板の落下

問1 単振り子

1-6) の手順の意味

運動方程式に速度を掛けると左辺が運動エネルギーの時間微分になる、 というのがエネルギー積分の一般的な仕組みである。 右辺が位置だけの関数(保存力)なら、それも何かの時間微分になり全体が積分できる。 本問では sin⁡θ θ˙=−ddtcos⁡θ\sin\theta\,\dot\theta=-\dfrac{d}{dt}\cos\theta がその役割を果たす。

検算:1-5) と 1-3) の整合

1-5) で θ0≪1\theta_0\ll1 とすると cos⁡θ−cos⁡θ0≃θ02−θ22\cos\theta-\cos\theta_0\simeq\dfrac{\theta_0^2-\theta^2}{2} なので v≃gL(θ02−θ2)v\simeq\sqrt{gL\left(\theta_0^2-\theta^2\right)}。 θ=0\theta=0 で v=θ0gLv=\theta_0\sqrt{gL} となり 1-4) の最大値と一致する。

失点しやすい点

1-2) の張力に遠心力(向心加速度)の項 mLθ˙2mL\dot\theta^2 を入れ忘れる誤りが多い。 最下点 θ=0\theta=0 では T=mg+mLθ˙2>mgT=mg+mL\dot\theta^2>mg であり、静止時の mgmg より大きい。 また 1-4) では ∣v∣|\bm v| が絶対値であることに注意し、 負の部分を折り返した山が並ぶ形にすること。

問2 巻取り軸つき円板の落下

方針

拘束条件 v=rωv=r\omega(および a=rαa=r\alpha)が並進と回転を結ぶ要である。 エネルギーで解く(2-1, 2-2)ときは TT が不要、 力とトルクで解く(2-3, 2-4)ときは TT を未知数として3式を連立する。 どちらでも同じ結果になることを確かめておくとよい。

検算

2-1) と 2-3) は整合していなければならない。 v=atv=at、h=12at2h=\frac12at^2 より v2=2ah=4gr2h2r2+R2v^2=2ah=\dfrac{4gr^2h}{2r^2+R^2} で、 ω=v/r\omega=v/r とすれば ω2=4gh2r2+R2\omega^2=\dfrac{4gh}{2r^2+R^2} となり 2-1) と一致する。

極限での挙動

r→Rr\to R とすると(糸を円板の縁に巻いた場合)a=2g/3a=2g/3、T=Mg/3T=Mg/3 で、 斜面を転がる円板と同じ「2/32/3 の重力加速度」になる。 逆に r≪Rr\ll R では a≃2gr2g/R2→0a\simeq2gr^2g/R^2\to0、T→MgT\to Mg となり、 軸が細いほどゆっくり落ちる。マクスウェルの独楽がゆっくり落ちるのはこのためである。

失点しやすい点

慣性モーメント MR2/2MR^2/2 は円板の半径 RR で決まるが、 拘束条件と張力のトルクの腕は巻取り軸の半径 rr である。 この2つを混同すると a=2g/3a=2g/3 という rr によらない誤答になる。 また張力は MgMg ではない。T=MgT=Mg とすると加速度が 00 になってしまう。

力学:単振り子と巻取り軸つき円板の落下の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電磁気学:3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答

問1 3つの点電荷にはたらく力

アーンショーの定理

静電場だけでは荷電粒子を安定に閉じ込められない、というのがアーンショーの定理である。 真空中では電位が ΔV=0\Delta V=0(ラプラス方程式)を満たすので、 ある方向に極小なら別の方向には極大にならざるを得ない。 本問の「xx に不安定・yy に安定」はその具体例で、 3方向の復元力の和が 00 になっていることを −1+12+12=0-1+\frac12+\frac12=0 と確かめられる。

検算

q1:q2:q3=4:−1:4q_1:q_2:q_3=4:-1:4 を 1-1) の3式に代入すると、 F1∝(−14+44⋅14)⋅F_1\propto\left(-\frac14+\frac44\cdot\frac14\right)\cdot(係数)=0=0、 F2∝(4−4)=0F_2\propto(4-4)=0、F3∝(−14+44⋅14)=0F_3\propto\left(-\frac14+\frac44\cdot\frac14\right)=0 で すべて 00 になる。

失点しやすい点

1-1) で q1q_1 と q3q_3 の距離を aa としてしまう誤りが多い。2a2a である。 1-3) を「FF の微分の符号」だけで論じると、横方向の安定性を見落として 「安定」と誤答しやすい。少なくとも2方向を調べること。

問2 回路がつくる磁場

円と正方形の比較

外接円の半径が同じ(a=2 la=\sqrt2\,l)2つの回路で比べると、 円は μ0I22 l≃0.354μ0Il\dfrac{\mu_0I}{2\sqrt2\,l}\simeq0.354\dfrac{\mu_0I}{l}、 正方形は 2μ0Iπl≃0.450μ0Il\dfrac{\sqrt2\mu_0I}{\pi l}\simeq0.450\dfrac{\mu_0I}{l} で正方形のほうが強い。 辺の中点が中心に近いぶん寄与が大きいためである。

検算

2-2) で z=0z=0 とすると μ0Ia22a3=μ0I2a\dfrac{\mu_0Ia^2}{2a^3}=\dfrac{\mu_0I}{2a} となり 2-1) に一致する。 また z≫az\gg a では Bz≃μ0Ia22z3=μ0m2πz3B_z\simeq\dfrac{\mu_0Ia^2}{2z^3}=\dfrac{\mu_0m}{2\pi z^3} (m=πa2Im=\pi a^2I は磁気モーメント)で、磁気双極子の軸上磁場の公式と合う。

失点しやすい点

2-3) で「一辺 2l2l」を ll と読み違えると答えが2倍ずれる。 また4辺の寄与が同じ向きに足し合わさることを、電流の向きから確認して書くこと。

問3 RC回路の過渡応答

なぜ VCV_C が連続か

t=t1t=t_1 で電源電圧は不連続に跳ぶが、コンデンサの電荷は有限の電流では 瞬時に変化できないので QQ、したがって VCV_C は連続である。 一方、抵抗にかかる電圧 V−VCV-V_C は t1t_1 で不連続に跳び、 電流も V0−VC(t1)R\dfrac{V_0-V_C(t_1)}{R} から −VC(t1)R\dfrac{-V_C(t_1)}{R} へ符号を変える。

パルス幅と時定数の関係

t1−t0≫τt_1-t_0\gg\tau なら VC(t1)≃V0V_C(t_1)\simeq V_0 まで充電され、その後ゆっくり放電する。 逆に t1−t0≪τt_1-t_0\ll\tau なら VC(t1)≃V0t1−t0τV_C(t_1)\simeq V_0\dfrac{t_1-t_0}{\tau} と小さく、 回路は入力を積分したような応答になる(積分回路)。 時定数とパルス幅の大小関係で振る舞いが変わることが、この設問の眼目である。

失点しやすい点

3-2) で初期値を V0V_0 としてしまうと、パルス幅が有限であることを無視した答えになる。 t1−t0t_1-t_0 が有限である以上、VC(t1)<V0V_C(t_1)<V_0 である。 また指数の肩を −t/RC-t/RC と書くと t=t1t=t_1 での値が合わない。 必ず −(t−t1)/RC-(t-t_1)/RC のように起点をそろえること。

電磁気学:3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 量子力学:周期境界条件と無限井戸、スピン 1/2 の2準位系

問1 自由粒子と無限井戸

周期境界条件と固定端の違い

周期境界条件では進行波 eikxe^{ikx} が固有関数になり、±k\pm k が縮退する。 固定端(無限井戸)では定在波 sin⁡(nπx/L)\sin(n\pi x/L) になり縮退はない。 また波数の刻みも 2π/L2\pi/L と π/L\pi/L で異なる。 どちらを課すかで固有値の間隔が変わることを意識しておく。

検算:状態密度

周期境界条件では Δk=2π/L\Delta k=2\pi/L、固定端では Δk=π/L\Delta k=\pi/L だが、 固定端は k>0k>0 のみを数えるので、単位長さあたりの状態数はどちらも同じになる。 熱力学極限で境界条件の取り方が結果に効かないことの確認である。

失点しやすい点

1-3) で unu_n の規格化定数を落とす、あるいは EnE_n に π2\pi^2 と 4π24\pi^2 の どちらが入るかを取り違える誤りが多い。kn=2πn/Lk_n=2\pi n/L を経由して書くと安全である。 1-5) では VV が実数であることを使う点を明記すること。 VV が複素なら確率は保存せず、∂tρ+∂xj=2ℏIm⁡(V)ρ\partial_t\rho+\partial_xj=\frac{2}{\hbar}\operatorname{Im}(V)\rho となる。

問2 スピン 1/21/2 の2準位系

結果の意味

(⟨σ^x⟩,⟨σ^y⟩,⟨σ^z⟩)=(0,1,0)\left(\langle\hat\sigma_x\rangle,\langle\hat\sigma_y\rangle,\langle\hat\sigma_z\rangle\right)=(0,1,0) は 単位ベクトルで、この状態が +y+y 方向を向いたスピンの固有状態であることを示す。 実際 σ^y∣ψ⟩=∣ψ⟩\hat\sigma_y|\psi\rangle=|\psi\rangle が直接確かめられる。 ∣a∣2=∣b∣2=1/2|a|^2=|b|^2=1/2 なので SzS_z の測定では上下が半々だが、 相対位相 ii(90∘90^{\circ})がスピンの向きを xx 軸から yy 軸へ回している。

相対位相の役割

∣ψ′⟩=12(∣α⟩+∣β⟩)|\psi'\rangle=\frac{1}{\sqrt2}(|\alpha\rangle+|\beta\rangle) なら ⟨σ^x⟩=1\langle\hat\sigma_x\rangle=1、⟨σ^y⟩=0\langle\hat\sigma_y\rangle=0 で +x+x 方向を向く。 ∣a∣,∣b∣|a|,|b| が同じでも相対位相が変われば向きが変わるので、 「確率だけでは状態は決まらない」ことの実例になっている。

検算

求めた3つの行列は σ^i2=I\hat\sigma_i^2=I、σ^xσ^y=iσ^z\hat\sigma_x\hat\sigma_y=i\hat\sigma_z を満たす (パウリ行列の代数)。また期待値の2乗和は 0+1+0=10+1+0=1 で、 純粋状態のブロッホベクトルの長さが 11 であることと整合する。

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第5問 — 統計力学:古典理想気体の分配関数と連続弾性体の格子振動

問1 古典理想気体

方針

古典理想気体は「HH が座標と運動量に分離する」ことで積分が完全に実行できる。 FF を求めてから熱力学の関係式で pp、SS、UU を導く流れは、 どの統計力学の問題でも共通の型である。

検算:内部エネルギー

U=−∂log⁡Z∂β=3N2kTU=-\dfrac{\partial\log Z}{\partial\beta}=\dfrac{3N}{2}kT で、 単原子分子理想気体のエネルギー等分配則と一致する。 定積比熱は CV=32NkC_V=\frac32Nk である。

1-1) と 1-4) のつながり

1/N!1/N! は「粒子が区別できない」という量子論的な事実を古典計算に持ち込む補正である。 一方 1-4) の条件は「それ以上の量子効果(統計性そのもの)は無視できる」という条件で、 両者は別のことを言っている。1/N!1/N! だけでは量子統計を再現できない点に注意する。

問2 連続弾性体の格子振動

方針

独立な振動子の集まりでは、分配関数が積、log⁡Z\log Z が和(連続極限で積分)になる。 g(ω)g(\omega) はモードの数え上げを引き受ける関数で、 弾性体の形や次元の情報はすべてここに入る。 デバイ模型は g(ω)∝ω2g(\omega)\propto\omega^2(カットオフ付き)と置いた場合に相当する。

高温極限による検算

kT≫ℏωkT\gg\hbar\omega では nˉ≃kTℏω−12\bar n\simeq\dfrac{kT}{\hbar\omega}-\dfrac12 となり ε≃kT\varepsilon\simeq kT。これは1次元調和振動子のエネルギー等分配則 (運動エネルギーと位置エネルギーで 12kT\frac12kT ずつ)と一致する。 比熱は ∫g(ω)k dω\int g(\omega)k\,d\omega で温度によらず、デュロン・プティの法則になる。

低温での比熱

T→0T\to0 では ε→ℏω/2\varepsilon\to\hbar\omega/2 が温度によらないので、 零点エネルギーは比熱に寄与しない。比熱を担うのは第2項で、 3次元弾性体の g(ω)∝ω2g(\omega)\propto\omega^2 を入れると C∝T3C\propto T^3 という デバイの T3T^3 則が得られる。

失点しやすい点

2-1) で Z=Z1 モード数Z=Z_1^{\,\text{モード数}} を積の形のまま書き、 log⁡\log を取って積分に直す段を飛ばすと、g(ω)g(\omega) がどこで効くのかが見えない。 また 2-2) で −∂βlog⁡Z1-\partial_\beta\log Z_1 の符号を落とすと ε\varepsilon が負になる。 Z1Z_1 の定義に (−1)(-1) 乗が付いていることに注意して計算する。

統計力学:古典理想気体の分配関数と連続弾性体の格子振動の途中式・最終答をPDFで見る

物理の解答・解説PDF

2016〜2026年度・19回 · ¥3,200

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年度別の解答例(19年度)

  • 2026年冬季(解説4項目)

    解析力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2026年夏季(解説4項目)

    力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2025年冬季(解説5項目)

    線形代数・微積分 / 強制振動 / 電磁気

  • 2025年夏季(解説5項目)

    複素積分 / ばね振動と波動 / 電磁気

  • 2024年冬季(解説5項目)

    数学 / 剛体の転がり / 静電ポテンシャル

  • 2024年夏季(解説5項目)

    偏微分方程式・留数積分 / 力学 / 電磁気学

  • 2023年度 冬季(解説5項目)

    数学:固有値問題・行列の指数関数・不定積分 / 力学:一様棒の物理振り子と回転軸の移動 / 電磁気学:直交電磁場中の荷電粒子とサイクロイド運動

  • 2023年度 夏季(解説5項目)

    数学:演算子の指数関数と留数定理による実積分 / 力学:ばねで連結された2質点と中空円板の制動 / 電磁気学:電流間の力・電磁波の横波性・点電荷系の遠方展開

  • 2022年度 冬季(解説5項目)

    数学:実対称行列の直交対角化と留数定理による実積分 / 力学:円板の物理振り子と周期を最小にする支点 / 電磁気学:点電荷の電場と接地導体面の鏡像法

  • 2022年度 夏季(このページ・解説5項目)

    数学:ベクトル解析・複素積分・行列の対角化と偏微分方程式 / 力学:単振り子と巻取り軸つき円板の落下 / 電磁気学:3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答

  • 2021年度 冬季(解説5項目)

    数学:複素数の方程式 sin z=2 と実対称行列の指数関数 / 力学:あらい斜面上を転がる円柱と滑りから転がりへの移行 / 電磁気学:平行板コンデンサの電荷配置と各領域の電場

  • 2019年度 冬季(解説5項目)

    数学:固有値・ベクトル解析・フーリエ余弦級数 / 力学:一様密度球の重力場と質点の運動 / 電磁気学:同軸ケーブルの静電容量と自己インダクタンス

  • 2019年度 夏季(解説5項目)

    数学:ラゲール多項式とパウリ行列の指数関数 / 力学:斜面を転がり落ちる剛体球 / 電磁気学:一様帯電球の静電エネルギーと円電流にはたらく力

  • 2018年度 冬季(解説5項目)

    数学:極座標変換によるガウス積分と拡散方程式の変数分離 / 力学:完全非弾性衝突後の単振動と斜面を転がる剛体 / 電磁気学:電気双極子と鏡像法、円電流と磁気双極子

  • 2018年度 夏季(解説5項目)

    数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数 / 力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰 / 電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場

  • 2017年度 冬季(解説5項目)

    数学:複素積分と巡回行列の指数関数 / 力学:3質点・4ばね系の基準振動 / 電磁気学:導体球殻の静電場と円柱電流の磁場

  • 2017年度 夏季(解説5項目)

    数学:母関数・行列の固有値・定積分・微分方程式 / 力学:剛体の制動回転と円すい面上の質点 / 電磁気学:帯電円環板の静電場とRLC共振回路

  • 2016年度 冬季(解説5項目)最終答まで公開

    数学:母関数・行列の固有値・本質的特異点まわりの積分 / 力学:バネにつながれた物体への衝突と、二軸に拘束された棒の運動 / 電磁気学:一様帯電球の電場と電位、回転する帯電球の磁束密度

  • 2016年度 夏季(解説5項目)最終答まで公開

    数学:母関数・行列指数関数・境界値問題 / 力学:連結ばね・斜面の摩擦・滑車の回転 / 電磁気学:変位電流と共焦点回転楕円体導体

2022年度 夏季の出題内容

解説5項目

この5問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学ベクトル解析・複素積分・行列の対角化と偏微分方程式検算:次元と極限 / なぜ C_2 で 0 になるかあり
第2問力学単振り子と巻取り軸つき円板の落下1-6) の手順の意味 / 検算:1-5) と 1-3) の整合あり
第3問電磁気学・回路3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答アーンショーの定理 / 円と正方形の比較あり
第4問量子力学周期境界条件と無限井戸、スピン 1/2 の2準位系周期境界条件と固定端の違い / 検算:状態密度あり
第5問熱・統計力学古典理想気体の分配関数と連続弾性体の格子振動検算:内部エネルギー / 1-1) と 1-4) のつながりあり

2022年度 夏季の解説には失点しやすい点5件・検算4件が付いています。

前年度(2021年度 冬季)との違い

大問数
2021年度 冬季 5問 → 2022年度 夏季 5問
2021年度 冬季の解答例

東京都立大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026(夏季・冬季)
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
物理の公式過去問ページではTOEIC公開テスト・TOEFL-iBT・IELTS Academicのスコア評価を案内。出願年度の条件は募集要項を確認。
院試hubの最終確認
2026-10-17
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