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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2018年度 夏季 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問。

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解説5問/全5問(12,481字)
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都立大 物理 2018年度 夏季 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1数学留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数方針と極の内外判定 / 反交換関係だけで通すあり
2力学有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰一般の安定条件 / 1 の場合の閉軌道あり
3電磁気学・回路一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場エネルギー収支による検算 / 別解による検算あり
4量子力学調和振動子の生成消滅演算子と、二準位重ね合わせの時間発展交換関係の別の出し方 / 方針と初期条件の整合あり
5熱・統計力学箱の中の理想気体の分配関数と、重力場中の気体の比熱和を積分に直せる条件 / 熱的ド・ブロイ波長と検算あり

この年度の解説には失点しやすい点5件・検算2件が付いています。

前年度(2017年度 冬季)との違い

大問数
2017年度 冬季 5問 → 2018年度 夏季 5
2017年度 冬季のページを見る

1 — 数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数

方針と極の内外判定

sin2ϕ\sin^2\phi のままでは分母を zz の有理式にできない。半角公式で cosθ\cos\theta の一次式に直すと、 z=eiθz=e^{i\theta} の置換で分母が zz の二次式になり極がたかだか2個に決まる。設問1-1の倍角変換が 誘導しているのはこの一点である。極については、解と係数の関係から z+z=1z_{+}z_{-}=1 なので二つは 単位円に関して互いに反転の位置にあり、必ず一方だけが円内に入る。z=(21)2z_{-}=(\sqrt2-1)^2 と 書けば z<1|z_{-}|<1 が一目で言える。どちらの極を拾うかの根拠は必ず一行書く。

検算

p=1p=1 で直接計算する。虚部は θ2πθ\theta\to2\pi-\theta の対称性で消えるので 02πcosθ3cosθdθ=02π(1+33cosθ)dθ=2π+6π321=2π+3π2, \int_0^{2\pi}\frac{\cos\theta}{3-\cos\theta}\,\mathrm{d}\theta =\int_0^{2\pi}\left(-1+\frac{3}{3-\cos\theta}\right)\mathrm{d}\theta =-2\pi+\frac{6\pi}{\sqrt{3^2-1}}=-2\pi+\frac{3\pi}{\sqrt2}, 一方 π2(322)=3π22π\frac{\pi}{\sqrt2}(3-2\sqrt2)=\frac{3\pi}{\sqrt2}-2\pi で一致する。また 0<322<10<3-2\sqrt2<1 より pp\to\infty で値が 00 に収束するのは、eipθe^{ip\theta} の激しい振動による 打ち消しと整合する。

失点しやすい点

dθ=dz/(iz)\mathrm{d}\theta=\mathrm{d}z/(iz)1/(iz)1/(iz) を落とすと、z=0z=0 が極かどうかの判定まで狂う。 本問は p1p\ge1 なので zpz^{p}1/z1/z を打ち消し原点は極にならないが、p=0p=0 なら原点が一位の 極になり留数を追加しなければならない。「pp は正の整数」という条件がここで効いている。

設問2 パウリ行列の反交換関係と指数関数

反交換関係だけで通す

設問2-1で得た {σ1,σj}=O\{\sigma_1,\sigma_j\}=O(σ1)2=I(\sigma_1)^2=I の二つだけで、2-2から2-4まで すべて処理できる。角度が θ\theta でなく 2θ2\theta になるのは、σj\sigma_j を通すたびに符号が 反転して二つの指数関数が同じ側にまとまるという「両側から効く」構造そのものである。 成分計算に降りると符号ミスが増えるので、代数関係だけで進めるほうが答案としても短い。

幾何的な意味

得られた式は (A,B)T=R(2θ)(σ2,σ3)T(A,B)^{\mathsf T}=R(2\theta)(\sigma_2,\sigma_3)^{\mathsf T}R(φ)=(cosφsinφsinφcosφ)R(\varphi)=\begin{pmatrix}\cos\varphi&\sin\varphi\\-\sin\varphi&\cos\varphi\end{pmatrix} と書ける。σ1\sigma_1 を軸とする角 2θ2\theta の回転が (σ2,σ3)(\sigma_2,\sigma_3) 平面に誘導されており、 σ1\sigma_1 自身は eiθσ1σ1eiθσ1=σ1e^{-i\theta\sigma_1}\sigma_1e^{i\theta\sigma_1}=\sigma_1 で不変な回転軸として 振る舞う。スピン 1/21/2 の回転を SU(2)\mathrm{SU}(2) で表すときの標準的な仕掛けである。

検算

行列式は相似変換の不変性から 1-1 と分かるが、2-3の結果からも確かめられる。 A(θ)=(sin2θicos2θicos2θsin2θ)A(\theta)=\begin{pmatrix}\sin2\theta&-i\cos2\theta\\ i\cos2\theta&-\sin2\theta\end{pmatrix} より detA=sin22θcos22θ=1\det A=-\sin^2 2\theta-\cos^2 2\theta=-1 である。二通りが一致することは2-3の係数の 符号の検算にもなる。θ=0\theta=0A=σ2A=\sigma_2B=σ3B=\sigma_3 に戻ることも必ず確認する。

失点しやすい点

σ1σ2=iσ3\sigma_1\sigma_2=i\sigma_3σ1σ3=iσ2\sigma_1\sigma_3=-i\sigma_2 の符号を取り違えると B(θ)B(\theta)σ2\sigma_2 の項の符号が反転する。覚え方に頼らず、その場で σ1σ3\sigma_1\sigma_3 を計算して iσ2-i\sigma_2 と突き合わせるのが確実である。また eiθσ1e^{i\theta\sigma_1} をスカラーのように cosθ+isinθ\cos\theta+i\sin\theta と書くと単位行列 II が抜け、1次結合表示が作れなくなる。

数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数の途中式・最終答をPDFで見る

2 — 力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰

一般の安定条件

円軌道の条件は「向心力の釣り合い」でも「Ueff()=0U_{\mathrm{eff}}'(\ell)=0」でも同じ関係 L2=nam2nL^2=nam\ell^{2-n} を与えるので、設問1-3で後者を確かめれば1-1の検算を兼ねられる。 二次係数 na(2n)/n+2na(2-n)/\ell^{n+2} の符号は 2n2-n だけで決まるから、0<n<20<n<2 で安定、n>2n>2 で 不安定、n=2n=2 が境界である。n=2n=2 がちょうど遠心力ポテンシャル L2/(2mr2)L^2/(2mr^2) と同じ rr 依存性をもつことが、二つが完全に打ち消し合う理由である。

n=1n=1 の場合の閉軌道

n=1n=1 での動径振動の角振動数 ωr=a/(m3)\omega_{\mathrm r}=\sqrt{a/(m\ell^3)} は、円運動の角速度 ωθ=v/=a/(m3)\omega_{\theta}=v/\ell=\sqrt{a/(m\ell^3)} と一致する。ωr=ωθ\omega_{\mathrm r}=\omega_\theta は軌道が 1周で閉じることを意味し、ケプラー問題の楕円軌道と整合する。この一致は1-1と1-3の計算が ともに正しいことの強い検算になる。

失点しやすい点

UeffU_{\mathrm{eff}} を作るとき、LL を保存量として固定した定数と扱うことを明記する。LLrr の関数のまま微分すると余計な項が生じる。また n=2n=2 を「二次係数がゼロだから4次で 決まる」と答えるのは誤りで、この LL の値では UeffU_{\mathrm{eff}} が恒等的に 00 になり、 すべての次数の項が消える。展開ではなく厳密な打ち消しである点を書く。

設問2 ばね振動子の強制振動と臨界減衰

位相のずれをどう書くか

本問には減衰項がないので位相差は 00π\pi の二値しか取らず、共鳴点で不連続に跳ぶ。 x0x_0 の符号をそのまま位相のずれと読み替えるのが正しい答え方である。減衰項 γx˙-\gamma\dot x が あれば位相差は 00 から π\pi まで連続に変わり、共鳴点でちょうど π/2\pi/2 になる。

臨界減衰の見抜き方

抵抗係数が 2km2\sqrt{km} という中途半端でない値で与えられているのが誘導である。 mx¨=kxcx˙m\ddot x=-kx-c\dot x の判別式は c24kmc^2-4km なので、c=2kmc=2\sqrt{km} はちょうど臨界減衰にあたる。 ここで過減衰の二つの実指数解を書くと tt に比例する項が現れず、初期条件 x(0)=0, x˙(0)=v0x(0)=0,\ \dot x(0)=v_0 を満たせない。重解では (A+Bt)eλt(A+Bt)e^{\lambda t} とすることを忘れないこと。

検算

x˙=v0(1ω0t)eω0t\dot x=v_0(1-\omega_0t)e^{-\omega_0t}x¨=v0ω0(ω0t2)eω0t\ddot x=v_0\omega_0(\omega_0t-2)e^{-\omega_0t} を 方程式に戻すと x¨+2ω0x˙+ω02x=v0eω0t[ω02t2ω0+2ω02ω02t+ω02t]=0 \ddot x+2\omega_0\dot x+\omega_0^2x =v_0e^{-\omega_0t}\left[\omega_0^2t-2\omega_0+2\omega_0-2\omega_0^2t+\omega_0^2t\right]=0 で満たされる。xm=v0tm/ex_m=v_0t_m/e は「抵抗がなければ tmt_m の間に進む距離」の 1/e0.3681/e\simeq0.368 倍で、 失われたエネルギーの比 1e20.8651-e^{-2}\simeq0.865 もこの抑えられ方と整合する。

失点しやすい点

ΔE\Delta E を抵抗力のした仕事 0tm2kmx˙2dt\int_0^{t_m}2\sqrt{km}\,\dot x^2\,\mathrm{d}t から求めようとすると 計算量が増える。t=tmt=t_m で速度がちょうど 00 になることを使えば、終状態の力学的エネルギーが 弾性エネルギーだけになり引き算一つで済む。なお tmt_mx˙=0\dot x=0 の唯一の解であること (eω0te^{-\omega_0t}00 にならない)を一行添えると、最大値であることの根拠が明確になる。

力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場

方針

この種の問題では「磁場中にある面積」を一つの変数で表すことが出発点になる。ループ全体が 磁場に入り切らないという条件が置かれているのは、磁場中の面積が常に LztLz_{\mathrm t} で書けて dΦ/dt\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d}t が上辺の速度だけで決まることを保証するためである。上辺だけが力を 受けるという議論も必ず答案に書く。左右の辺の力が打ち消すことに触れないと、ILBILBLL が どの辺の長さなのかが不明確になる。

エネルギー収支による検算

終端速度では重力のする仕事率とジュール熱が釣り合うはずである。 mgv=(BLv)2R  v=mgRB2L2 mgv_\infty=\frac{(BLv_\infty)^2}{R} \ \Longrightarrow\ v_\infty=\frac{mgR}{B^2L^2} となり、運動方程式から得た終端速度と一致する。また tτt\ll\tau では vgtv\simeq gt となり、 磁気制動が効く前の自由落下に戻ることも確かめられる。

失点しやすい点

起電力を BLvBLv とするときの LL は「磁場の境界を横切る辺の長さ」であってループの周長では ない。また電流の向きをローレンツ力から導こうとすると、どの辺の自由電子で考えるかを 間違えやすい。磁束の増減とレンツの法則で答えるほうが短く確実である。力の向きは IL×BI\boldsymbol L\times\boldsymbol B の成分計算とレンツの法則の両方で書けば符号ミスを自分で潰せる。

設問2 密度が rr に比例する帯電球と、それを覆う中性導体球殻

方針

球対称なので電場はガウスの法則だけで決まる。密度が crcr なので内部電荷は cr4πr2drr4\int cr\cdot4\pi r^2\mathrm{d}r\propto r^4 となり、一様密度の場合の r3r^3 依存と混同しないこと。 電位は必ず「無限遠から内向きに EE を積分する」順で作り、r=ar=a での連続性を接続条件に使う。

別解による検算

静電エネルギーは W=12ρVdVW=\dfrac12\displaystyle\int\rho V\,\mathrm{d}V でも計算できる。球殻がない 場合の V(r)V(r) を使うと W=120a(cr)c(4a3r3)12ε04πr2dr=πc26ε0(a7a77)=πc2a77ε0 W=\frac12\int_0^{a}(cr)\cdot\frac{c(4a^3-r^3)}{12\varepsilon_0}\cdot4\pi r^2\,\mathrm{d}r =\frac{\pi c^2}{6\varepsilon_0}\left(a^7-\frac{a^7}{7}\right) =\frac{\pi c^2a^7}{7\varepsilon_0} となり、E2E^2 積分の結果と一致する。どちらも短いので、時間があれば答案に併記しておくとよい。

球殻を付けたときに何が変わるか

r>br>b の電場はまったく変わらない。囲まれる正味電荷が πca4\pi ca^4 のままだからである。 変わるのは a<r<ba<r<bE=0E=0 になること、およびその分だけ電位が全体に下がることで、 rar\le a では ca3/(4ε0)ca^3/(4\varepsilon_0)ca4/(4ε0b)ca^4/(4\varepsilon_0b) に置き換わる(b>ab>a なので必ず下がる)。 これは静電エネルギーが a<r<ba<r<b の分だけ減ったことに対応する。

失点しやすい点

球殻の内表面に Q-Q、外表面に +Q+Q が誘導されることを書かずに EE だけ並べると、なぜ a<r<ba<r<b00r>br>b で元に戻るのかの根拠が示せない。また概形を描くとき、VVr=ar=a でも r=br=b でも折れ曲がるが跳ばない。跳ぶのは EE であって VV ではない。r0r\to0 では ρr\rho\propto r なので E0E\to0VV は有限の最大値をとる。

電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場の途中式・最終答をPDFで見る

4 — 量子力学:調和振動子の生成消滅演算子と、二準位重ね合わせの時間発展

方針

q=xmω/q=x\sqrt{m\omega/\hbar} は無次元化された座標で、これにより HHω\hbar\omega という 一つのエネルギースケールと無次元の演算子だけで書ける。aaaa^{\dagger} の定義に 1/21/\sqrt2 が 入っているのは [a,a]\left[a,a^{\dagger}\right] をちょうど 11 にするためで、この規格化のおかげで 標準形 H=ω(aa+1/2)H=\hbar\omega(a^{\dagger}a+1/2) になる。ここから En=ω(n+1/2)E_n=\hbar\omega(n+1/2)、 とくに E1E0=ωE_1-E_0=\hbar\omega が従い、これは設問2でそのまま使う。

交換関係の別の出し方

[q,d/dq]=1\left[q,\mathrm{d}/\mathrm{d}q\right]=-1 だけを認めれば [a,a]=12[q+ddq,qddq]=12([q,ddq]+[ddq,q])=1 \left[a,a^{\dagger}\right] =\frac12\left[q+\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}q},\,q-\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}q}\right] =\frac12\left(-\left[q,\tfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}q}\right]+\left[\tfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}q},q\right]\right)=1 と2行で済む。試験関数に作用させる丁寧な計算か、交換子の双線形性を使う短い計算か、 どちらか一方を最後まで書き切ること。

失点しやすい点

aa^{\dagger} を作用させるとき、d/dq-\mathrm{d}/\mathrm{d}q の符号のおかげで2項が打ち消さずに 足し合わさる点が要である。符号を誤ると ψ1\psi_1 が恒等的に 00 になり、第一励起状態が 存在しないというおかしな結論に至る。また確率最大の位置は、波動関数 ψ1\psi_1 ではなく ψ12|\psi_1|^2 の最大で求めることを明示する。本問では一致するが、一般には区別が必要である。

設問2 重ね合わせ状態の時間発展と遷移確率

方針と初期条件の整合

時間発展は固有状態ごとに位相因子が付くだけなので、ΦA\Phi_{\mathrm A} の係数に eiEjt/e^{-iE_jt/\hbar} を掛けるだけでよい。ΦB\Phi_{\mathrm B} は時刻 00 の波動関数で定義されて いるので、内積を取るときに ΦB\Phi_{\mathrm B} 側に位相因子を付けてはいけない。t=0t=0 では A=c1c2+1c2c=0\mathcal A=-c\sqrt{1-c^2}+\sqrt{1-c^2}\,c=0 で、(1c2,c)(\sqrt{1-c^2},c)(c,1c2)(-c,\sqrt{1-c^2}) が 直交する単位ベクトルの組であることを反映している。この P(0)=0P(0)=0 は検算として一行書いておく。

確率の最大値がもつ意味

最大値 4c2(1c2)4c^2(1-c^2) は、u=c2(0,1)u=c^2\in(0,1) とおくと 4u(1u)14u(1-u)\le1 で、等号は u=1/2u=1/2、 すなわち c=1/2c=1/\sqrt2 のときに限る。つまり二つの固有状態を等しい重みで混ぜたときだけ、 系はある時刻に確率 11ΦB\Phi_{\mathrm B} に見出される。2準位系のラビ振動と同じ構造で、 混合の偏りが大きいほど振動の振幅は小さくなる。

位相の扱い

eiαeiβ2=22cos(αβ)=4sin2αβ2\left|e^{-i\alpha}-e^{-i\beta}\right|^2=2-2\cos(\alpha-\beta)=4\sin^2\frac{\alpha-\beta}{2} を使えば一行で済む。要点は、絶対値の2乗に残るのは二つのエネルギーの差だけで、全体に 共通する位相は物理量に効かないことである。エネルギーの原点をずらしても遷移確率が 変わらないことも、この結果から読み取れる。

失点しやすい点

ΦA\Phi_{\mathrm A}ΦB\Phi_{\mathrm B} の係数の入れ替わりと符号反転を取り違えると A\mathcal A が二つの指数関数の和になり、t=0t=0 で確率が 00 にならず矛盾する。時刻 00 での 値を必ず確かめること。また周期を 4π/(E1E0)4\pi\hbar/(E_1-E_0) と書く誤りも多い。sin2\sin^2 の周期は sin\sin の周期の半分である。

量子力学:調和振動子の生成消滅演算子と、二準位重ね合わせの時間発展の途中式・最終答をPDFで見る

5 — 統計力学:箱の中の理想気体の分配関数と、重力場中の気体の比熱

1/N!1/N! をどう説明するか

古典的に扱える温度領域では、NN 個の同種粒子の状態を「どの粒子がどの準位にいるか」で 数えると同じ物理状態を N!N! 回数えることになる。これを補正するのがギブスの因子 1/N!1/N! で、 これがないと FF が示量的にならず混合のパラドックスが生じる。設問1-1は式の形だけでなく、 この根拠を一言添えることが求められている。

和を積分に直せる条件

隣り合う項の比 eβE0[(n+1)2n2]=eβE0(2n+1)e^{-\beta E_0\left[(n+1)^2-n^2\right]}=e^{-\beta E_0(2n+1)}11 に近いこと、 すなわち βE01\beta E_0\ll1 が置き換えの根拠である。E0=π22/(2mL2)E_0=\pi^2\hbar^2/(2mL^2) は箱が大きいほど 小さいので、巨視的な箱では室温でこの近似は極めてよい。下端を n=1n=1 から n=0n=0 に伸ばす誤差も O(1)O(1) 項で、3N3N 乗の指数に比べて無視できる。

熱的ド・ブロイ波長と検算

1粒子分配関数は z=(π/(4βE0))3/2=V/λ3z=\left(\pi/(4\beta E_0)\right)^{3/2}=V/\lambda^3λ=h/2πmkT\lambda=h/\sqrt{2\pi mkT}(熱的ド・ブロイ波長)と書ける。FFlog(V/(Nλ3))\log\left(V/(N\lambda^3)\right) の形にまとめると示量性が一目で確認でき、古典近似の条件が Nλ3/V1N\lambda^3/V\ll1 であることも読める。検算としては S=(F/T)V,N=Nk[logVN(2πmkTh2)3/2+52]S=-\left(\partial F/\partial T\right)_{V,N} =Nk\left[\log\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi mkT}{h^2}\right)^{3/2}+\frac52\right] を求め、E=F+TS=32NkT\langle E\rangle=F+TS=\frac32NkT が再現されることを見ればよい。

設問2 重力場中の単原子理想気体の内部エネルギーと比熱

方針と二つの極限での検算

運動量部分と位置部分がハミルトニアンで分離しているので分配関数も積に分かれ、平均値は 別々に計算できる。位置部分は高さ方向の1次元積分だけなので、x,yx,y 方向の箱の大きさ LL は 最後まで出てこない。結果 v=kTmgH/(eβmgH1)\langle v\rangle=kT-mgH/\left(e^{\beta mgH}-1\right) は、 HH\to\infty(あるいは低温)で vkT\langle v\rangle\to kT となり半無限の等温大気の結果に戻り、 高温 βmgH0\beta mgH\to0 では vmgH/2\langle v\rangle\to mgH/2 で密度一様な気体の平均高度 H/2H/2 に 対応する。どちらも自明な答えなので、符号や係数の確認に使える。

1次のポテンシャルと2次のポテンシャル

等分配則は「2次形式なら1自由度 12kT\frac12kT」と覚えられがちだが、正しくは一般化等分配則 xiH/xj=δijkT\left\langle x_i\,\partial\mathcal H/\partial x_j\right\rangle=\delta_{ij}kT である。 v=mgzv=mgzzz の1次なので zv/z=vz\,\partial v/\partial z=v となり平均値はそのまま kTkT、 2次形式 12κz2\frac12\kappa z^2 なら zv/z=2vz\,\partial v/\partial z=2v12kT\frac12kT になる。係数が 12\frac1211 かはポテンシャルの冪で決まる。

比熱の温度変化

上の図は比熱を温度の関数として描いたものである。E\langle E\rangleTT で微分すると CNk=52(mgH/kT)2emgH/kT(emgH/kT1)2 \frac{C}{Nk}=\frac{5}{2}-\frac{\left(mgH/kT\right)^2e^{mgH/kT}} {\left(e^{mgH/kT}-1\right)^2} となり、低温側で 52\frac52、高温側で 32\frac32 に漸近する。境目は kTmgHkT\sim mgH、すなわち 熱運動で登れる高さが箱の高さと同程度になる温度である。設問2-5は、この「天井が効くか どうか」で位置自由度が凍結する側と生きる側が入れ替わる、という描像を言葉にすればよい。

失点しやすい点

設問2-4を「T0T\to0 なので比熱も 00」と答える誤りが多い。ここでの T0T\to0kTmgHkT\ll mgH と いう古典統計の範囲内の低温であって、量子効果による自由度の凍結は考えていない。実際 E\langle E\rangleT0T\to052NkT\frac52NkTTT に比例し、比熱は有限の定数に近づく。 また設問2-3で「TT の1次まで」と言われたとき、定数項 NmgH/2NmgH/2 を落としてはいけない。

統計力学:箱の中の理想気体の分配関数と、重力場中の気体の比熱の途中式・最終答をPDFで見る

都立大 物理 院試 過去問の収録19年度

  • 2026年冬季(全4問)

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  • 2026年夏季(全4問)

    力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2025年冬季(全5問)

    線形代数・微積分 / 強制振動 / 電磁気

  • 2025年夏季(全5問)

    複素積分 / ばね振動と波動 / 電磁気

  • 2024年冬季(全5問)

    数学 / 剛体の転がり / 静電ポテンシャル

  • 2024年夏季(全5問)

    偏微分方程式・留数積分 / 力学 / 電磁気学

  • 2023年度 冬季(全5問)

    数学:固有値問題・行列の指数関数・不定積分 / 力学:一様棒の物理振り子と回転軸の移動 / 電磁気学:直交電磁場中の荷電粒子とサイクロイド運動

  • 2023年度 夏季(全5問)

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  • 2022年度 冬季(全5問)

    数学:実対称行列の直交対角化と留数定理による実積分 / 力学:円板の物理振り子と周期を最小にする支点 / 電磁気学:点電荷の電場と接地導体面の鏡像法

  • 2022年度 夏季(全5問)

    数学:ベクトル解析・複素積分・行列の対角化と偏微分方程式 / 力学:単振り子と巻取り軸つき円板の落下 / 電磁気学:3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答

  • 2021年度 冬季(全5問)

    数学:複素数の方程式 <span class="katex"><span class="katex-mathml"><math xmlns="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><semantics><mrow><mi>sin</mi><mo>⁡</mo><mi>z</mi><mo>=</mo><mn>2</mn></mrow><annotation encoding="application/x-tex">\sin z=2</annotation></semantics></math></span><span class="katex-html" aria-hidden="true"><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6679em;"></span><span class="mop">sin</span><span class="mspace" style="margin-right:0.1667em;"></span><span class="mord mathnormal" style="margin-right:0.044em;">z</span><span class="mspace" style="margin-right:0.2778em;"></span><span class="mrel">=</span><span class="mspace" style="margin-right:0.2778em;"></span></span><span class="base"><span class="strut" style="height:0.6444em;"></span><span class="mord">2</span></span></span></span> と実対称行列の指数関数 / 力学:あらい斜面上を転がる円柱と滑りから転がりへの移行 / 電磁気学:平行板コンデンサの電荷配置と各領域の電場

  • 2019年度 冬季(全5問)

    数学:固有値・ベクトル解析・フーリエ余弦級数 / 力学:一様密度球の重力場と質点の運動 / 電磁気学:同軸ケーブルの静電容量と自己インダクタンス

  • 2019年度 夏季(全5問)

    数学:ラゲール多項式とパウリ行列の指数関数 / 力学:斜面を転がり落ちる剛体球 / 電磁気学:一様帯電球の静電エネルギーと円電流にはたらく力

  • 2018年度 冬季(全5問)

    数学:極座標変換によるガウス積分と拡散方程式の変数分離 / 力学:完全非弾性衝突後の単振動と斜面を転がる剛体 / 電磁気学:電気双極子と鏡像法、円電流と磁気双極子

  • 2018年度 夏季(このページ・全5問)

    数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数 / 力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰 / 電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場

  • 2017年度 冬季(全5問)

    数学:複素積分と巡回行列の指数関数 / 力学:3質点・4ばね系の基準振動 / 電磁気学:導体球殻の静電場と円柱電流の磁場

  • 2017年度 夏季(全5問)

    数学:母関数・行列の固有値・定積分・微分方程式 / 力学:剛体の制動回転と円すい面上の質点 / 電磁気学:帯電円環板の静電場とRLC共振回路

  • 2016年度 冬季(全5問)解答・最終答まで全文公開

    数学:母関数・行列の固有値・本質的特異点まわりの積分 / 力学:バネにつながれた物体への衝突と、二軸に拘束された棒の運動 / 電磁気学:一様帯電球の電場と電位、回転する帯電球の磁束密度

  • 2016年度 夏季(全5問)解答・最終答まで全文公開

    数学:母関数・行列指数関数・境界値問題 / 力学:連結ばね・斜面の摩擦・滑車の回転 / 電磁気学:変位電流と共焦点回転楕円体導体