大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報数理学専攻 専門科目(情報数理学) 2022年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報数理学専攻 専門科目(情報数理学) 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
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第1問 — 情報基礎
中央の配列で分解する
条件 は、 を固定すると左側の候補数と右側の候補数の積に分解できる。アルゴリズムBはこの分解を使って、三つ組を直接列挙する代わりに個数だけを足し上げている。
なぜ二分探索で十分か
`sort` 後の配列では、条件 を満たす部分は先頭から連続し、 を満たす部分は末尾側に連続する。この境界位置だけを見つければ個数が分かるため、全要素を数える必要がない。
2. 符号付き和の判定
- で となるかを調べる。これは、 とする添字集合を とおくと すなわち となる部分集合があるかを調べる問題である。 したがって、全体和 が奇数なら直ちに「なし」と判定する。 が偶数のとき、目標値 に対する部分和問題として動的計画法を用いる。 とし、 を「先頭 個の整数からいくつか選んで和 を作れるか」とする。初期条件を とし、 で更新する。ただし の項は false とみなす。最後に が true なら「あり」、false なら「なし」と答える。
- 上の動的計画法では、表の大きさは であり、各成分は定数時間で計算できる。したがって時間計算量は である。入力整数の大きさを値そのものとして測ると擬多項式時間である。
- 判定問題DがNPに属することを示すには、証拠を多項式時間で検証できればよい。証拠として符号列 を与える。この長さは で入力長に対して多項式である。検証者は各 が または であることを確認し、和 を計算して かどうかを調べる。これは 回の加算と乗算で済むので、多項式時間である。よって判定問題DはNPに属する。
符号問題は分割問題
を付ける整数と を付ける整数に分けると、両群の和が等しいかを問う形になる。したがって、全体和が奇数ならそもそも不可能であり、偶数なら半分の和を作れるかを調べればよい。
NP所属で示すこと
NPに属することは「速く解ける」ことではない。解候補が与えられたとき、それが正しいことを速く確認できることを示す。ここでは符号列を受け取り、和が0かどうかを計算するだけでよい。
3. 連結無向グラフの直径・半径・次数
- 図のグラフでは、最長の最短距離は例えば と の間で達成され、長さは である。したがって直径は である。 各頂点から最も遠い頂点までの距離を調べると、 からはすべての頂点へ距離 以下で到達できる。一方、他の頂点では最大距離が少なくとも になる。よって中心は であり、半径は である。最大次数は、 が と接続しているので である。
- 成り立つ。中心を とし、直径を実現する2頂点を とする。中心の定義から である。三角不等式より なので である。また、半径はある頂点から他の頂点までの距離の最大値であり、直径は任意の2頂点間距離の最大値なので、任意の頂点の離心度は 以下である。したがって である。以上より が成り立つ。
- 成り立つ。中心からの幅優先探索を考えると、距離0の層は1個、距離1の層は高々 個、距離 の層は、親へ戻る辺を除いて高々 個である。したがって である。この右辺は なら 以下である。 の連結グラフは高々2頂点なので、 または で直接確認できる。よって任意の連結グラフについて が成り立つ。
中心は平均的に近い頂点ではない
中心は、他の頂点までの距離の平均ではなく、最大距離を最小にする頂点である。したがって全頂点への距離を見て、最も遠い頂点までの距離だけを比較する。
半径と直径の関係
は定義から直ちに分かる。 は中心を経由する道で直径を実現する2頂点を結ぶ、という三角不等式の使い方が核心である。
最大次数による頂点数評価
中心から幅優先探索木を伸ばすと、距離1では高々 個、距離2以降では親へ戻る辺を除いて高々 本ずつ枝分かれする。このため精密な上界は であり、 を用いた和はそれより粗いが扱いやすい上界である。
第2問 — 数理基礎
尤度比順に選ぶ
は「状態 のときに と判定する確率」と読める。 の下での期待値を 以下に抑えながら の下での期待値を最大にするので、効率 が高い状態から採用するのが自然である。
双対の意味
双対変数 は制約 の価格である。 を固定すると、 が正の状態だけが採用される。これは比 がしきい値 を超える状態を選ぶという形で、(2) の解と対応している。
2. 超立方体内の2点間距離
, とする。各座標について は独立な 上一様分布である。
- とおく。 の密度は である。したがって であり、 なので である。
- の期待値は上で求めた通り である。また なので
- であり、各項は独立同分布である。したがって であり、 である。
- は独立同分布な確率変数 の標本平均である。大数の法則により に確率収束する。さらに中心極限定理より である。したがって が大きいとき、 は近似的に に従い、極限では に集中する。
1次元の差から始める
高次元距離の2乗は座標ごとの差の2乗の和である。したがって、まず1次元で の分布を求め、独立な和として期待値と分散を足し上げるのが最短である。
距離の集中
高次元では、距離の2乗を次元で割った量が平均値 の近くに集中する。これは高次元立方体内のランダムな2点間距離が、次元で正規化するとほぼ一定になることを意味する。
3. 3変数二値分布の最尤推定
- 対数尤度は である。例えば で微分すると ここで であるから を得る。 についても同様に なので、与えられた式が従う。
- 最尤推定では尤度方程式から、モデルの期待値が標本平均に一致する。与えられた度数から また
- である。二値変数では が成り立てば、残りの組合せの確率も周辺確率から決まるため独立である。よって と は独立である。 同様に なので、 と も独立である。
- とおく。上で求めた1次・2次モーメントから各同時確率は と表せる。 このモデルには3体相互作用項がないので、対数確率の3次交互作用は0である。すなわち であり、 が成り立つ。上の表を代入すると 非負性から であり、この範囲の解は である。したがって
指数型分布族の最尤方程式
指数型分布族では、自然パラメータで微分すると「観測された十分統計量の合計」から「モデルの期待値に を掛けたもの」を引いた形になる。最尤点ではこれが0になるため、十分統計量の経験平均とモデル平均が一致する。
二値変数の独立性
0/1変数では、、 である。したがって積率の等式 は、1になる事象どうしの積の確率が積に分解することを意味し、二値の場合は独立性そのものになる。
3体項がないことの使い方
1次と2次の期待値だけでは一般には は決まらない。しかし本問のモデルは2体相互作用までしか持たないため、対数線形モデルの3次交互作用が0という追加条件が入る。これが最後の方程式になり、三重積の期待値を決める。
第3問 — 数学解析
複素数化で一変数にする
係数行列 は、複素数 に対する掛け算 に対応する。外力も と書けるため、連立方程式を一つの複素一次方程式として解ける。
軌跡の読み取り
初期値0の解は である。角度は とともに増え、半径は から へ単調に増える。したがって単なる円運動ではなく、単位円を極限円とする螺旋である。
2. パラメータ付き定積分
を用いる。標準積分 を使うと、, に対して したがって
偶関数のフーリエ変換
の余弦変換は指数関数 になる。 を に直すと、この公式をそのまま使える。 なので減衰因子は である。
3. Haar型関数系
- 各 は値が なので である。また とする。 が一定である各小区間を、 はさらに等分して正負を同じ長さだけ取る。したがってその小区間上の積分は0であり、全体でも である。さらに定数関数 と各 の内積も、正の部分と負の部分の長さが等しいため0である。よって は正規直交系である。
- 正規直交系への最小二乗近似では、係数は内積で与えられる。したがって である。これは、誤差 が近似空間の各基底関数に直交するという正規方程式から従う。
- のとき また は長さ の小区間ごとに符号を交互に変える。1周期の長さを とすると、その前半と後半の寄与の差は であり、周期は 個ある。よって である。
直交性は正負の打ち消し
高い番号の関数は、低い番号の関数が一定である区間の中で正負を同じ長さだけ取る。そのため積を積分すると必ず打ち消し合う。この構造を言葉で説明できれば、細かい図を完全に描けなくても得点しやすい。
最小二乗係数は射影
正規直交系では、最小二乗近似の係数は単に内積である。基底が直交しているため、連立方程式を解く必要がなく、各係数が独立に決まる。
第4問 — 情報物理
divの右辺の違い
電場側には電荷密度が現れるが、磁場側は0である。この非対称性は、通常の電磁気学では磁気単極子を仮定しないことを表している。磁力線が閉曲線として描かれる理由もこの点にある。
波動方程式の導出
回転をもう一度取って、 の恒等式を使うのが定石である。自由空間では なので勾配項が消え、ラプラシアンと時間2階微分だけが残る。
2. 透明薄膜の反射
- 入射振幅を とする。薄膜表面で直接反射する光の振幅は である。薄膜内へ透過し、底面で1回反射して空気中に戻る光は、透過、反射、逆向き透過を1回ずつ受け、さらに1往復分の位相差を持つので である。
- 空気中に戻る反射光の総振幅は、薄膜内での繰り返し反射の等比級数で したがって ストークスの関係 , を用いると となる。振幅反射率を実数として扱えば、強度は である。
- のとき、分子は である。無反射となるには であればよい。したがって が条件である。
- 垂直入射で である。 より となり、整理して を得る。したがって である。 薄膜中の波長を とすると、1往復による位相差は である。無反射条件 から である。最も薄い膜は である。
等比級数として見る
薄膜内で1往復するたびに、振幅は 倍される。したがって多重反射は等比級数で和を取れる。直接反射の項と、薄膜内に入ってから戻る項を分けると符号を間違えにくい。
反射を消す二つの条件
無反射には、2つの反射波の大きさがそろうことと、位相が反対になることが必要である。屈折率条件 が大きさをそろえ、膜厚条件 が位相を反対にする。
3. 自然界で見られる色
- 花火の色は主に炎色反応による。金属原子や金属イオンが加熱されると、電子が高いエネルギー準位へ励起される。その電子が低い準位へ戻るとき、準位差に対応する波長の光を放出する。ストロンチウムは赤、バリウムは緑、銅は青緑など、元素ごとに準位構造が異なるため、固有の発光色が現れる。
- シャボン玉の色は薄膜干渉による。膜の表面で反射した光と、膜の裏面で反射して戻ってきた光が重ね合わさる。膜厚や屈折率によって光路差が変わり、ある波長は強め合い、別の波長は弱め合う。膜厚が場所によって少しずつ違うため、見る位置や時間に応じて虹色の模様が変化する。
- 牛乳が白く見える主因は散乱である。牛乳中には脂肪球やカゼインミセルなど、可視光の波長と同程度の粒子が多数分散している。入射光はこれらの粒子で多方向に散乱され、特定の波長だけでなく可視域の広い波長が混ざって目に届く。そのため透明ではなく白濁して見える。
発光・干渉・散乱を区別する
花火は物質が自ら光を出す発光、シャボン玉は同じ光が重なって強弱を作る干渉、牛乳は外から来た光が粒子で散らされる散乱である。現象名だけでなく、色が選ばれる物理的理由まで書くと答案として強い。