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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報数理学専攻 専門科目(情報数理学) 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。数学1問。テーマタグは4件(重積分と極座標・留数定理・フーリエ級数)。

最終更新:

収録5年度分の解答PDF:大阪大学 情報科学研究科 情報数理学専攻 専門科目(情報数理学)(¥2,880・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

阪大 専門科目(情報数理学) 2021年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は数学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—情報基礎転倒数を見ると評価回数まで分かる / べき乗の回数は下位ビットで決まるあり
第2問—数理基礎線形計画のパラメータは凸包で読む / 極座標ではなく傾きで変換するあり
第3問数学数学解析極が単位円の内外どちらにあるか / 積分因子の決め方あり
第4問—情報物理双極子近似の有効範囲 / 非干渉光源では強度を積分するあり

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

第1問 — 情報基礎

転倒数を見ると評価回数まで分かる

この整列法は、左へ戻りながら隣接転倒を1つずつ解消する gnome sort 型の手続きである。交換回数だけなら転倒数そのものだが、条件式の評価回数は「前進した回数」も必要になる。ii の増減を収支で見ると、真の回数と交換回数の関係が一気に決まる。

べき乗の回数は下位ビットで決まる

平方は2進表記の桁数から決まり、追加で aa を掛ける回数は、最上位を除いた1ビットの数で決まる。a15a^{15} の例では通常の平方反復より、加法鎖をうまく選ぶ方が少ない乗算で済む。

行列の対角和の意味

(A3)ii(A^3)_{ii} は頂点 ii から出発して3歩で ii に戻る歩道の数である。単純無向グラフで長さ3の閉歩道が存在するのは三角形を回るときであり、1つの三角形は6通りに数えられる。この対応を書ければ、最大値・最小辺数の議論は三角形の数え上げに帰着できる。

解答

1. 整列アルゴリズム
  1. 配列を 11 始まりで表す。if文の条件式が評価される直前の (i,A)(i,A) は、順に iA0(2,6,1,3,8)1(2,6,1,3,8)2(2,6,1,3,8)1(2,1,6,3,8)0(1,2,6,3,8)1(1,2,6,3,8)2(1,2,6,3,8)3(1,2,6,3,8)2(1,2,3,6,8)3(1,2,3,6,8)4(1,2,3,6,8) \begin{array}{c|c} i & A\\ \hline 0 & (2,6,1,3,8)\\ 1 & (2,6,1,3,8)\\ 2 & (2,6,1,3,8)\\ 1 & (2,1,6,3,8)\\ 0 & (1,2,6,3,8)\\ 1 & (1,2,6,3,8)\\ 2 & (1,2,6,3,8)\\ 3 & (1,2,6,3,8)\\ 2 & (1,2,3,6,8)\\ 3 & (1,2,3,6,8)\\ 4 & (1,2,3,6,8) \end{array} である。最後に i=5i=5 となって while ループを抜ける。
  2. このアルゴリズムで隣接交換が起こるたびに、配列の転倒数はちょうど1だけ減る。初期配列の転倒数を SS とすると、交換回数は SS 回である。 条件式が真になった反復では ii が1増え、偽になった反復では交換後に ii が1減る。初期値は i=0i=0、終了時は i=Ni=N だから、真になった回数を UU とすると U−S=N,U=N+S U-S=N,\qquad U=N+S である。条件式の評価回数は真偽を合わせて T=N+2S T=N+2S である。 転倒数の最小値は 00、最大値は逆順配列での N(N−1)/2N(N-1)/2 なので Tmin⁡(N)=N,Tmax⁡(N)=N2 T_{\min}(N)=N,\qquad T_{\max}(N)=N^2 である。
  3. 相異なる NN 個の実数がランダム順序で格納されているとする。各組 (p,q)(p,q), p<qp<q について、A[p]>A[q]A[p]>A[q] となる確率は 1/21/2 である。したがって転倒数 SS の期待値は E[S]=(N2)12=N(N−1)4 \mathbb{E}[S] =\binom{N}{2}\frac12 =\frac{N(N-1)}4 である。よって Tave(N)=N+2E[S]=N+N(N−1)2=N(N+1)2 T_{\mathrm{ave}}(N) =N+2\mathbb{E}[S] =N+\frac{N(N-1)}2 =\frac{N(N+1)}2 となる。
2. べき乗計算
  1. a5a^5 では再帰呼び出しが 5→2→1 5\to 2\to 1 と進む。n=2n=2 の段で1回の平方、n=5n=5 の段で平方1回と奇数補正の乗算1回が行われるので、乗算回数は 3 3 である。
  2. nn の2進表記を n=(bkbk−1⋯b0)2,bk=1 n=(b_kb_{k-1}\cdots b_0)_2,\qquad b_k=1 とする。再帰で nn を2で割っていくと、基底 11 に達するまでの非基底段は kk 段ある。各段で平方の乗算が1回ずつ行われるので、平方による乗算回数は kk 回である。 さらに、各段の現在値が奇数なら aa を掛ける。この奇数判定は、最上位ビットだけになった最後の 11 では実行されないため、寄与するのは下位ビット b0,…,bk−1b_0,\ldots,b_{k-1} である。したがって乗算回数は k+∑j=0k−1bj k+\sum_{j=0}^{k-1} b_j である。
  3. 上のアルゴリズムで a15a^{15} を求めると、15=(1111)215=(1111)_2 なので乗算回数は 3+(1+1+1)=6 3+(1+1+1)=6 である。より少ない方法として、例えば a2=a⋅a,a3=a2⋅a,a5=a3⋅a2,a10=a5⋅a5,a15=a10⋅a5 a^2=a\cdot a,\quad a^3=a^2\cdot a,\quad a^5=a^3\cdot a^2,\quad a^{10}=a^5\cdot a^5,\quad a^{15}=a^{10}\cdot a^5 と計算すれば、乗算は5回で済む。
3. 隣接行列と三角形
  1. 単純無向グラフでは、tr⁡(A3)\operatorname{tr}(A^3) は長さ3の閉歩道の総数を数える。三角形1個は始点の選び方が3通り、向きが2通りあるので、T(G)T(G) には 66 と数えられる。 G1G_1 は四角形のみで三角形を含まないから T(G1)=0 T(G_1)=0 である。G2G_2 は対角線によって2個の三角形を含むので T(G2)=6⋅2=12 T(G_2)=6\cdot2=12 である。
  2. T(G)>0T(G)>0 であるためには少なくとも1個の三角形が必要である。三角形だけで辺は3本であり、残りの N−3N-3 頂点を連結に保って加えるには、木のように1本ずつ辺を追加すればよい。したがって辺数 3+(N−3)=N 3+(N-3)=N で条件を満たせる。 一方、連結グラフが三角形を含むなら、その三角形の3辺に加えて、残り N−3N-3 頂点を三角形を含む成分へ接続するために少なくとも N−3N-3 本の辺が必要である。よって最小値は N N である。
  3. T(G)T(G) は三角形数の6倍である。三角形数を最大にするには、すべての3頂点の組が三角形になればよく、これは完全グラフ KNK_N で達成される。したがって max⁡T(G)=6(N3)=N(N−1)(N−2) \max T(G)=6\binom{N}{3} =N(N-1)(N-2) である。

最終答

整列アルゴリズムの条件評価回数は N+2SN+2S。よって Tmin⁡(N)=NT_{\min}(N)=N, Tmax⁡(N)=N2T_{\max}(N)=N^2, Tave(N)=N(N+1)/2T_{\mathrm{ave}}(N)=N(N+1)/2。べき乗の乗算回数は k+∑j=0k−1bjk+\sum_{j=0}^{k-1}b_j。グラフでは T(G)=6×T(G)=6\times三角形数なので、T(G1)=0T(G_1)=0, T(G2)=12T(G_2)=12, 条件を満たす連結グラフの最小辺数は NN, 最大値は N(N−1)(N−2)N(N-1)(N-2)。

第2問 — 数理基礎

線形計画のパラメータは凸包で読む

xix_i は非負で和が1なので、各列ベクトルを混ぜる重みである。したがって実行可能な (α,β)(\alpha,\beta) は、行列計算を解くよりも、4点の凸包として見るのが最も早い。

極座標ではなく傾きで変換する

T=Y/XT=Y/X は角度そのものではなく傾きである。右半円では X>0X>0 なので TT は全実数を動く。ヤコビアン s/(1+t2)s/(1+t^2) を落とすと密度の規格化が崩れる。

対応のある検定

同じ対象を2つの秤で測っているので、独立2標本ではなく差 di=xi−yid_i=x_i-y_i の1標本検定として扱う。自由度は標本数5に対して 44 であり、両側検定では表の上側確率 0.0250.025 の列を使う。

数理基礎の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 数学解析

極が単位円の内外どちらにあるか

複素積分では、aa の値によって極 ±ia\pm ia が単位円の内側に入るかが変わる。a>1a>1 の場合は外側の極を直接扱うのではなく、z=0z=0 まわりの級数展開で留数を読むと、極限まで自然に計算できる。

積分因子の決め方

λ\lambda が xyxy だけの関数である、という指定を使うと完全性条件が常微分方程式に落ちる。この問題では xP−yQxP-yQ と Py−QxP_y-Q_x が同じ形になり、λ′+λ=0\lambda'+\lambda=0 が直ちに得られる。

級数公式はParsevalで出す

部分分数展開を使ってもよいが、この設問の流れではフーリエ係数を計算し、Parseval の等式を使うのが最短である。aa が整数でないため分母 k+ak+a が0にならない点も明記しておくと答案として安定する。

数学解析の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 情報物理

双極子近似の有効範囲

遠方近似では、電荷間隔 dd に比べて観測距離 rr が十分大きいことが必要である。このとき単極子項は +q+q と −q-q で打ち消し合い、最初に残る項が双極子モーメント p=qd z^\mathbf{p}=qd\,\hat{\mathbf{z}} に比例する。

非干渉光源では強度を積分する

光源上の異なる点から出た光は位相関係がランダムなので、電場振幅を足してから二乗してはいけない。各点光源が作る二重ピンホール干渉の強度を、光源幅にわたって積分する。この平均化が sin⁡α/α\sin\alpha/\alpha の因子を生み、光源が広がるほど縞が見えにくくなる。

鮮明度と視直径

鮮明度の零点は、広がった光源の両端からの寄与が干渉項を打ち消す条件を表す。最初の零点を使うと測定誤差に比較的強く、D/r=λ/dD/r=\lambda/d という簡潔な形で光源の視直径を推定できる。

発色の分類

虹は分散と幾何光学、夕焼けは散乱、タマムシの羽は薄膜・多層構造による干渉で説明する。名称だけでなく、どの波長が強く届くか、または強め合うかまで書くと物理の答案になる。

情報物理の途中式・最終答をPDFで見る

阪大 専門科目(情報数理学) 院試 過去問の収録5年度