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総合研究大学院大学 先端学術院 先端学術専攻 専門科目(天文科学コース) 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は電磁気学・回路1項目、量子力学1項目、力学1項目です。重積分と極座標、調和振動子、静電場などが出ています。2025年度と共通するテーマは静電場です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 複素数:単位根と原始根

複素数のべきは、絶対値と偏角に分けて考える。単位根を全て挙げるには偏角へ加える整数倍を残し、原始根では最小の周期を調べる。積の位数を示す際は、それぞれの指数の倍数でないことだけで証明を終えない。

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第2問 — 確率統計:ガウス分布と誤差伝播

設問1 極座標によるガウス積分

二次元でdx dy=r dr dθdx\,dy=r\,dr\,d\thetaとなる因子rrは座標変換のヤコビアンである。半径rr、厚さdrdr、角幅dθd\thetaの小領域の面積がr dr dθr\,dr\,d\thetaとなる幾何学からも理解できる。e−a(x2+y2)e^{-a(x^2+y^2)}は角度に依存しないので、この座標を選ぶと半径だけの積分になる。 x=u/ax=u/\sqrt aと置いてもI(a)=I(1)/aI(a)=I(1)/\sqrt aとなり、得たaa依存性を検証できる。aaを大きくすると山が細くなり積分値が減る。ヤコビアンrrを落とすと角度積分の後にもガウス積分が残り、上の計算を完結できない。

設問2 符号を含む尺度変換

平均はE[Y]=aE[X]E[Y]=aE[X]である。分散はVar⁡(Y)=E[(aX−aμ)2]=a2σ2\operatorname{Var}(Y)=E[(aX-a\mu)^2]=a^2\sigma^2なので、標準偏差はその非負の平方根となる。a<0a<0でも式が成り立つ点を密度変換と合わせて確認できる。例えばa=−2a=-2では分布が左右に反転して幅が2倍となり、標準偏差が負になることはない。 a<0a<0のときにdx=dy/adx=dy/aだけを用いて積分の上下限を変えないと、確率が負になってしまう。密度の公式には絶対値を付ける。大学の解答例に記されたaσa\sigmaはa>0a>0の場合の形であり、原題が許す負のaaには上の補足が必要である。

設問3 独立な正規変数の和

独立性は、同時確率密度をp1(x1)p2(x2)p_1(x_1)p_2(x_2)と積に分ける条件である。x2=xx_2=xを固定すると、和がyyとなる第1変数はx1=y−xx_1=y-xであり、その全ての分け方を積分するのが畳み込みになる。 計算の中心は指数中のxxの二次項を一つの平方へまとめることである。積分後の係数も含めて正規分布と一致する必要があり、指数だけの比較では規格化を確認できない。σ2→0\sigma_2\to0の極限ではX2X_2がμ2\mu_2に固定され、X1X_1をμ2\mu_2だけ平行移動した分布となる。標準偏差をσ1+σ2\sigma_1+\sigma_2と足すと、この分散の計算と合わない。

設問4 独立な変数の線形結合

平均の線形性には独立性は不要だが、分散の加法性には共分散の扱いが必要である。δXi=Xi−μi\delta X_i=X_i-\mu_iとすると Var⁡ ⁣(∑iaiXi)=∑iai2σi2+2∑i<jaiajE[δXiδXj]. \operatorname{Var}\!\left(\sum_i a_iX_i\right) =\sum_i a_i^2\sigma_i^2+2\sum_{i<j}a_ia_jE[\delta X_i\delta X_j]. 独立ならE[δXiδXj]=E[δXi]E[δXj]=0E[\delta X_i\delta X_j]=E[\delta X_i]E[\delta X_j]=0なので交差項が消える。さらに各変数がガウス分布であるため、和の分布形までガウスとなる。分散の式だけなら、無相関で有限な分散を持つ変数にも使える。 Y=X1−X2Y=X_1-X_2でも分散はσ12+σ22\sigma_1^2+\sigma_2^2である。平均を引く操作と分散を引く操作を混同してσ12−σ22\sigma_1^2-\sigma_2^2としない。

設問5 一次近似による誤差伝播

テイラー展開の一次係数gig_iは、その観測量を少し変えたときに結果がどれだけ変わるかを表す感度である。平均からのずれδXi\delta X_iは平均0なので、一次近似したffの平均はf(μ)f(\boldsymbol\mu)、分布はガウスとなる。二次項が無視できるという条件は、標準偏差の範囲で関数の傾きが大きく変わらないことに対応する。 例えばf=X2f=X^2でμ=0\mu=0なら一次係数は0だが、実際のX2X^2のばらつきは0ではない。こうした停留点では二次項が支配し、一次公式をそのまま使えない。また、観測量に相関があると2gigjCov⁡(Xi,Xj)2g_ig_j\operatorname{Cov}(X_i,X_j)も必要である。本問では小さい変動と独立性が指定されているので、この項を含まない式を用いる。

設問6(a) 等級と距離から求める量

常用対数はlog⁡10d=ln⁡d/ln⁡10\log_{10}d=\ln d/\ln10なので、微分には1/ln⁡101/\ln10が残る。距離の相対誤差は10/100=0.1010/100=0.10であり、これに5/ln⁡105/\ln10を掛けた0.217…0.217\ldotsが距離による等級の標準偏差になる。独立なmm由来の0.20.2とは二乗和の平方根で合成する。 誤差を有効数字1桁に丸めて0.30.3とし、中心値も同じ小数第1位まで示した。距離が大きく見積もられるとMMは小さくなるが、標準偏差の寄与は正である。負の感度をそのまま誤差から引いたり、0.2+0.2170.2+0.217を統計誤差としたりすると、指定の独立なガウス誤差に対応しない。

設問6(b) 積とべきの相対誤差

一般にf=AXuYvf=AX^uY^vの一次誤差は、独立なX,YX,Yについて(σf/f)2=u2(σX/X)2+v2(σY/Y)2(\sigma_f/f)^2=u^2(\sigma_X/X)^2+v^2(\sigma_Y/Y)^2となる。これは別の暗記公式を必要とせず、ln⁡f=ln⁡A+uln⁡X+vln⁡Y\ln f=\ln A+u\ln X+v\ln Yの微分から得られる。ここでは指数が1/21/2と−2-2なので、相対誤差をそれぞれ半分、2倍にする。 LL由来の3\%とTT由来の4\%から合成誤差は5\%となる。この比を先に求めれば、最後に中心値を掛けるだけで絶対誤差へ戻せる。T−2T^{-2}の負号は寄与の相殺を意味せず、二乗の中で消える。途中の中心値を先に2.8へ丸めず、誤差計算まで桁を保つ。

解答

設問1 極座標によるガウス積分

I=∫−∞∞e−ax2 dxI=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^2}\,dxと置く。a>0a>0なので積分は正かつ収束する。非負な被積分関数の二重積分を極座標へ変換して I2=∫02π∫0∞e−ar2r dr dθ=2π[−e−ar22a]0∞=πa. I^2=\int_0^{2\pi}\int_0^\infty e^{-ar^2}r\,dr\,d\theta =2\pi\left[-\frac{e^{-ar^2}}{2a}\right]_0^\infty=\frac\pi a. I>0I>0を用いて平方根を選ぶ。

設問2 符号を含む尺度変換

確率密度は同じ確率を表すように変換する。Y=aXY=aX、a≠0a\neq0なのでx=y/ax=y/a、∣dx/dy∣=1/∣a∣|dx/dy|=1/|a|である。したがって pY(y)=pX(y/a)1∣a∣=12π ∣a∣σexp⁡[−(y−aμ)22a2σ2]. p_Y(y)=p_X(y/a)\frac1{|a|} =\frac1{\sqrt{2\pi}\,|a|\sigma} \exp\left[-\frac{(y-a\mu)^2}{2a^2\sigma^2}\right].

設問3 独立な正規変数の和

s1=σ12s_1=\sigma_1^2、s2=σ22s_2=\sigma_2^2、S=s1+s2S=s_1+s_2と置く。畳み込み積分の指数は、平方完成により (y−x−μ1)2s1+(x−μ2)2s2=Ss1s2(x−b)2+(y−μ1−μ2)2S,b=s2(y−μ1)+s1μ2S \frac{(y-x-\mu_1)^2}{s_1}+\frac{(x-\mu_2)^2}{s_2} =\frac{S}{s_1s_2}(x-b)^2+ \frac{(y-\mu_1-\mu_2)^2}{S},\qquad b=\frac{s_2(y-\mu_1)+s_1\mu_2}{S} となる。この式を代入し、設問1の積分を使うと pY(y)=e−(y−μ1−μ2)2/(2S)2πσ1σ2∫−∞∞e−S(x−b)2/(2s1s2) dx=12πSexp⁡[−(y−μ1−μ2)22S].\begin{align*} p_Y(y)&=\frac{e^{-(y-\mu_1-\mu_2)^2/(2S)}}{2\pi\sigma_1\sigma_2} \int_{-\infty}^{\infty}e^{-S(x-b)^2/(2s_1s_2)}\,dx\\ &=\frac1{\sqrt{2\pi S}}\exp\left[-\frac{(y-\mu_1-\mu_2)^2}{2S}\right]. \end{align*}

設問4 独立な変数の線形結合

設問2からaiXia_iX_iの平均はaiμia_i\mu_i、分散はai2σi2a_i^2\sigma_i^2である。尺度変換後も独立性は保たれるため、設問3を繰り返して和を取る。

設問5 一次近似による誤差伝播

gi=(∂f/∂Xi)X=μg_i=(\partial f/\partial X_i)_{\boldsymbol X=\boldsymbol\mu}と置く。二次以上の変動を無視できる範囲で f≃f(μ)+∑igiδXi. f\simeq f(\boldsymbol\mu)+\sum_i g_i\delta X_i. 定数項は分散に影響せず、設問4の式よりVar⁡(f)≃∑igi2σi2\operatorname{Var}(f)\simeq\sum_i g_i^2\sigma_i^2である。

設問6(a) 等級と距離から求める量

中心値を代入してM=6.0−5log⁡10100+5=1.0M=6.0-5\log_{10}100+5=1.0である。感度は ∂M∂m=1,∂M∂d=−5dln⁡10. \frac{\partial M}{\partial m}=1,\qquad \frac{\partial M}{\partial d}=-\frac5{d\ln10}. よって σM≃0.22+(5ln⁡1010100)2=0.2952…≃0.3. \sigma_M\simeq\sqrt{0.2^2+\left(\frac5{\ln10}\frac{10}{100}\right)^2} =0.2952\ldots\simeq0.3.

設問6(b) 積とべきの相対誤差

R=L1/2T−2R=L^{1/2}T^{-2}より中心値は0.50/0.502=2.8284…\sqrt{0.50}/0.50^2=2.8284\ldotsである。対数微分すると 1R∂R∂L=12L,1R∂R∂T=−2T. \frac1R\frac{\partial R}{\partial L}=\frac1{2L},\qquad \frac1R\frac{\partial R}{\partial T}=-\frac2T. したがって σRR≃(0.032×0.50)2+(2×0.010.50)2=0.032+0.042=0.05. \frac{\sigma_R}{R}\simeq \sqrt{\left(\frac{0.03}{2\times0.50}\right)^2+ \left(\frac{2\times0.01}{0.50}\right)^2} =\sqrt{0.03^2+0.04^2}=0.05. σR=0.1414…\sigma_R=0.1414\ldotsを有効数字1桁とする。

最終答

設問1 極座標によるガウス積分

I=πa.\displaystyle I=\sqrt{\frac\pi a}.

設問2 符号を含む尺度変換

Y∼N(aμ,∣a∣σ)Y\sim N(a\mu,|a|\sigma)。平均はaμa\mu、標準偏差は∣a∣σ|a|\sigma。

設問3 独立な正規変数の和

Y∼N(μ1+μ2,σ12+σ22).\displaystyle Y\sim N\left(\mu_1+\mu_2,\sqrt{\sigma_1^2+\sigma_2^2}\right).

設問4 独立な変数の線形結合

E[Y]=∑i=1kaiμi,σY=∑i=1kai2σi2.\displaystyle E[Y]=\sum_{i=1}^k a_i\mu_i,\qquad \sigma_Y=\sqrt{\sum_{i=1}^k a_i^2\sigma_i^2}.

設問5 一次近似による誤差伝播

σf≃∑i=1k(∂f∂Xi∣μ)2σi2.\displaystyle \sigma_f\simeq \sqrt{\sum_{i=1}^k\left(\left.\frac{\partial f}{\partial X_i}\right|_{\boldsymbol\mu}\right)^2\sigma_i^2}.

設問6(a) 等級と距離から求める量

M=1.0±0.3M=1.0\pm0.3。

設問6(b) 積とべきの相対誤差

R=2.8±0.1R=2.8\pm0.1。

第3問 — 力学:銀河内の円軌道と微小振動

軸対称な重力場では、軸まわりのトルクが0なので角運動量が保存される。円軌道の位置と安定性は有効ポテンシャルで調べ、微小振動では角速度を固定しない。周期比から得る形状と、原題の鉛直変位の表記条件を分けて扱う。

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第4問 — 電磁気:平面波のエネルギーと放射圧

電場と磁場の関係をMaxwell方程式から作り、その積で運ばれるエネルギーを計算する。時間平均では正弦波の二乗の平均が現れる。放射圧は運動量の受け渡しであり、完全吸収と反射を含む場合とで係数が変わる。

電磁気:平面波のエネルギーと放射圧の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 熱統計:絞り過程と量子振動子

絞り過程では気体を押し出す仕事も含め、内部エネルギーとエンタルピーを区別する。温度の変化は熱力学関係式から導く。量子振動子は分配関数を微分し、零点エネルギーと高温極限の両方で符号を確かめる。

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専門科目(天文科学コース)の解答・解説PDF

2021〜2026年度(6年度) · ¥3,200

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(このページ・解説5項目)

    複素数:単位根と原始根 / 確率統計:ガウス分布と誤差伝播 / 力学:銀河内の円軌道と微小振動

  • 2025年度(解説5項目)

    ベクトル解析:曲面の法線と線積分 / 解析:最小二乗法とフーリエ級数 / 相対論:粒子反応のしきい値とコンプトン散乱

  • 2024年度(解説5項目)

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  • 2023年度(解説5項目)

    線形代数:エルミート行列の固有値と直交性 / 解析:周期延長の違いとラプラス変換 / 天体力学:二体問題と視線速度による質量測定

  • 2022年度(解説5項目)

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  • 2021年度(解説5項目)

    微分方程式:変数分離と線形化 / 解析力学:変分原理と回転するワイヤー / 解析:フーリエ係数と熱統計の積分

2026年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は電磁気学・回路1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問単位根と原始根—あり
第2問ガウス分布と誤差伝播—あり
第3問力学銀河内の円軌道と微小振動—あり
第4問電磁気学・回路平面波のエネルギーと放射圧—あり
第5問量子力学絞り過程と量子振動子—あり

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前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 5問 → 2026年度 5問
両年度に出たテーマ
静電場
2025年度の解答例

総合研究大学院大学の公式過去問

公開年度範囲
2021〜2026年度入学・五年一貫制博士課程 専門科目
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-10-24
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