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総合研究大学院大学 先端学術院 先端学術専攻 専門科目(天文科学コース) 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目です。静電場、正定値行列、二次形式などが出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。原題の条件だけでは答えが一つに決まらないため、確定答案を収録していない箇所が1項目あります。各項目に対象の小問と収録範囲を記載しています。問題本文は含みません。

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第1問 — ベクトル解析:曲面の法線と線積分

曲面の法線は等位面の勾配から求め、指定された向きへ正規化する。曲線上の積分は直接計算とStokesの定理で確認できる。向きを逆にすると線積分の符号も変わるため、使う向きを答案の初めに示す。

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第2問 — 解析:最小二乗法とフーリエ級数

最小二乗近似は誤差の二乗積分を小さくする係数を選ぶ問題である。三角関数の直交性を用いると係数の条件が独立になり、非負な二次項から最小性も分かる。級数から数の和を求める際は、代入点での収束値を確認する。

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第3問 — 相対論:粒子反応のしきい値とコンプトン散乱

一部の確定答案なし

原題は加速距離・電位差または加速時間を同じにする指定がないため、速度比を一つに定めた確定答案は収録していません。等距離なら94%、等時間なら99%となる条件付きの導出と、他の設問の解答を収録しています。

相対論では全エネルギーと運動量の不変量を用いて、反応前後の慣性系をつなぐ。しきい値は重心系に余分な運動が残らない条件から求める。同じ電場での加速は時間と距離の指定を区別し、光子の散乱では運動量をベクトルで保存させる。

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第4問 — 観測機器:光検出と信号の整定時間

光検出の限界波長は、光子1個のエネルギーと必要な励起エネルギーを比較する。画素の電圧変化では面積と厚さをSI単位へ直し、容量を求める。信号の整定は回路の微分方程式から導き、初期値と定常値の両方を確かめる。

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第5問 — 恒星大気:静水圧平衡と星風のエネルギー

設問1(a) 静水圧平衡

面積dSdS、厚さdrdrの小要素には、内側の面からP(r)dSP(r)dS、外側から−P(r+dr)dS-P(r+dr)dSの圧力が働く。その差は−(dP/dr)dSdr-(dP/dr)dSdrとなり、体積で割ると圧力勾配力を得る。球対称で接線方向の変化がなく、大気の自己重力と自転の遠心力を無視するという原題条件を使っている。 ρ>0\rho>0、M>0M>0ならdP/dr<0dP/dr<0で、外側ほど圧力が低くなる。その圧力差が外向きの支持力となる。dP/dr=+ρGM/r2dP/dr=+\rho GM/r^2と書くと、圧力勾配力と重力がともに内向きとなって釣り合わない。

設問1(b) 等温大気の密度と局所スケールハイト

スケールハイトはH−1=−dln⁡ρ/drH^{-1}=-d\ln\rho/drと定義する局所的な長さである。rrに依存する重力の下ではHHもr2r^2に比例して変わるため、全領域で一つの指数e−r/He^{-r/H}と書くことはできない。表面近くでh=r−A≪Ah=r-A\ll Aなら1/r−1/A≃−h/A21/r-1/A\simeq-h/A^2となり、ρ≃ρAe−h/H(A)\rho\simeq\rho_Ae^{-h/H(A)}という通常の指数大気へ近づく。 r>Ar>Aでは指数が負になり密度が減る。r→∞r\to\inftyで密度が有限の小さい値へ近づく点は、等温・静止・自己重力無視のモデルを無限遠まで延ばした結果である。真空へ接する大気全体の現実的な境界条件まで、この近似だけで与えたとはいえない。

設問1(c) 放射を含む有効重力

κ\kappaの単位はm2 kg−1\mathrm{m^2\,kg^{-1}}であり、粒子1個の有効断面積SSを単位質量あたりに換算した量である。放射フラックスの運動量流はF/cF/cなので、断面積を掛けると粒子1個の力となり、さらに粒子数密度を掛けて体積あたりの力へそろえる。 放射力は外向きなので重力の一部を打ち消し、0<κL/(4πcGM)<10<\kappa L/(4\pi cGM)<1ならスケールハイトは元のHHより大きくなる。比が1に近づけば密度勾配が小さくなる。比が1を越えたときの負のHmodH_{\mathrm{mod}}は、外へ密度が減る通常の静的な大気を同じモデルで支えられないことを示す。放射を追加してHHを小さくする符号を選ぶと、力の方向に反する。

設問1(d) 密度勾配が消える光度

この光度はエディントン光度と呼ばれる。重力と放射力がともにr−2r^{-2}に比例するため、その比は半径に依存せず、一つの光度で大気全体の有効重力が0になる。SSが定数、球対称で光度が一定という原題の仮定が、この簡約に必要である。 有効断面積が大きい粒子ほど同じ光度から大きな力を受けるので、LEL_Eはκ\kappaに反比例する。κ\kappaを分子に置くとこの傾向も単位も合わない。ここで密度一定という結果は等温条件と合わせたもので、温度勾配を持つ別の大気へそのまま拡張しない。

設問1(e) 太陽での大きさの比較

粒子1個の放射力SL/(4πcr2)SL/(4\pi cr^2)を、質量μ~/NA\tilde\mu/N_Aに働く重力GMμ~/(NAr2)GM\tilde\mu/(N_Ar^2)で割れば、比はκL/(4πcGM)=L/LE\kappa L/(4\pi cGM)=L/L_Eとなる。半径を指定せずに太陽大気での比較ができる理由である。この理想化では太陽の放射による加速は重力の約3万分の1である。 LEL_Eを先に有効数字1桁の103110^{31}へ丸めて割ると、比を4×10−54\times10^{-5}とする丸めの影響が出る。最終結果を別々に丸めるまで内部の計算桁を保つ。比較するのは力または加速度の比であり、放射圧と重力そのものを単位の異なるまま割らない。

設問2(a) 理想気体の比エンタルピー

cP−cV=Rc_P-c_V=Rは、理想気体を定圧で1 K温めた際に、内部エネルギーの増加に加えて膨張仕事RR J/molが必要になることから得られる。したがって流れのエネルギーを扱うエンタルピーにはcVc_VでなくcPc_Pが現れる。ここではモル比熱をモル質量で割り、単位質量あたりの量へそろえた。 RT/μ~RT/\tilde\muの単位はJ kg−1\mathrm{J\,kg^{-1}}であり、流速の二乗と同じ次元である。原題のUUは気体全体の内部エネルギーでなく比内部エネルギーなので、さらに密度で割ってはならない。エネルギーの基準に定数を加えても、次問では両地点で同じ基準を使えば差は不変である。

設問2(b) 外へ逃れる流れのエネルギー条件

流線に沿ったベルヌーイの式は、定常・断熱で粘性散逸がなく、保存力が働くときに使う。圧力仕事を含むため、内部エネルギーでなく比エンタルピーを用いる。表面の値が束縛GM/AGM/Aを上回ると、その差を無限遠での運動エネルギーに変えられる。 無限遠のエンタルピーが非負ならB>0B>0は正の終端速度の必要条件である。B=0B=0は残るエンタルピーと終端速度がともに0の限界で、有限の半径でv>0v>0でも無限遠で0へ近づく流れを含む。このエネルギー条件だけでは、質量流量や音速点を通る解の存在は保証しない。静止大気の温度やpVγpV^\gammaだけを比べ、運動エネルギーを落とさない。

解答

設問1(a) 静水圧平衡

外向きをrrの正方向とする。単位体積あたりの圧力勾配力は−dP/dr-dP/dr、重力は−ρGM/r2-\rho GM/r^2である。流れのない状態では両者の和が0なので

設問1(b) 等温大気の密度と局所スケールハイト

TTと平均モル質量μ~\tilde\muが一定なら、状態方程式からdP/dr=(RT/μ~)dρ/drdP/dr=(RT/\tilde\mu)d\rho/drである。したがって dln⁡ρdr=−GMμ~RT1r2. \frac{d\ln\rho}{dr}=-\frac{GM\tilde\mu}{RT}\frac1{r^2}. r=Ar=Aでρ=ρA\rho=\rho_Aを使い積分する。

設問1(c) 放射を含む有効重力

1粒子の質量はμ~/NA\tilde\mu/N_Aなので、粒子数密度はn=ρNA/μ~n=\rho N_A/\tilde\muである。κ=SNA/μ~\kappa=SN_A/\tilde\muと置くと、単位体積あたりの放射力は nSFc=ρκL4πcr2 n\frac{SF}{c}=\rho\kappa\frac{L}{4\pi c r^2} となる。等温の条件を引き継いで力の釣り合いを書くと RTμ~dρdr=−ρr2(GM−κL4πc). \frac{RT}{\tilde\mu}\frac{d\rho}{dr} =-\frac{\rho}{r^2}\left(GM-\frac{\kappa L}{4\pi c}\right).

設問1(d) 密度勾配が消える光度

前問の等温平衡でdρ/dr=0d\rho/dr=0となるためには、有効重力の係数が0となればよい。したがってGM=κLE/(4πc)GM=\kappa L_E/(4\pi c)より

設問1(e) 太陽での大きさの比較

与えられたκ=0.04 m2 kg−1\kappa=0.04\,\mathrm{m^2\,kg^{-1}}を用いる。 LE=4π×3×108×7×10−11×2×10300.04=1.32…×1031 W. L_E=\frac{4\pi\times3\times10^8\times7\times10^{-11}\times2\times10^{30}}{0.04} =1.32\ldots\times10^{31}\,\mathrm W. 放射力と重力の比は、丸める前のLEL_Eを使ってL⊙/LE=4×1026/(1.32…×1031)=3.0…×10−5L_\odot/L_E=4\times10^{26}/(1.32\ldots\times10^{31})=3.0\ldots\times10^{-5}となる。

設問2(a) 理想気体の比エンタルピー

モル比熱に対してcP−cV=Rc_P-c_V=R、γ=cP/cV\gamma=c_P/c_Vなので、cV=R/(γ−1)c_V=R/(\gamma-1)、cP=γR/(γ−1)c_P=\gamma R/(\gamma-1)である。内部エネルギーの基準をT=0T=0で0に取ると、単位質量あたりU=cVT/μ~U=c_VT/\tilde\muとなる。状態方程式からP/ρ=RT/μ~P/\rho=RT/\tilde\muなので

設問2(b) 外へ逃れる流れのエネルギー条件

重力ポテンシャルをΩ=−GM/r\Omega=-GM/r、無限遠で0とする。表面でv(A)≃0v(A)\simeq0なので、ベルヌーイ定数は B=γγ−1RT(A)μ~−GMA. B=\frac{\gamma}{\gamma-1}\frac{RT(A)}{\tilde\mu}-\frac{GM}{A}. 無限遠で冷えた星風が正の終端速度v∞>0v_\infty>0を持つには、B=v∞2/2>0B=v_\infty^2/2>0が必要となる。

最終答

設問1(a) 静水圧平衡

−dPdr−ρGMr2=0,dPdr=−ρGMr2.\displaystyle-\frac{dP}{dr}-\rho\frac{GM}{r^2}=0,\qquad \frac{dP}{dr}=-\rho\frac{GM}{r^2}.

設問1(b) 等温大気の密度と局所スケールハイト

ρ(r)=ρAexp⁡ ⁣[GMμ~RT(1r−1A)],H(r)=RT r2GMμ~.\displaystyle \rho(r)=\rho_A\exp\!\left[\frac{GM\tilde\mu}{RT}\left(\frac1r-\frac1A\right)\right],\qquad H(r)=\frac{RT\,r^2}{GM\tilde\mu}.

設問1(c) 放射を含む有効重力

Hmod(r)=RT r2μ~(GM−κL/(4πc))=H(r)1−κL/(4πcGM).\displaystyle H_{\mathrm{mod}}(r)= \frac{RT\,r^2}{\tilde\mu\left(GM-\kappa L/(4\pi c)\right)} =\frac{H(r)}{1-\kappa L/(4\pi cGM)}.

設問1(d) 密度勾配が消える光度

LE=4πcGMκ=4πcGMμ~SNA.\displaystyle L_E=\frac{4\pi cGM}{\kappa} =\frac{4\pi cGM\tilde\mu}{SN_A}.

設問1(e) 太陽での大きさの比較

LE≃1×1031 W,FradFgrav≃3×10−5\displaystyle L_E\simeq1\times10^{31}\,\mathrm W,\qquad \frac{F_{\mathrm{rad}}}{F_{\mathrm{grav}}}\simeq3\times10^{-5}(有効数字1桁)。

設問2(a) 理想気体の比エンタルピー

I=U+Pρ=cPTμ~=γγ−1RTμ~.\displaystyle I=U+\frac P\rho =\frac{c_PT}{\tilde\mu} =\frac{\gamma}{\gamma-1}\frac{RT}{\tilde\mu}.

設問2(b) 外へ逃れる流れのエネルギー条件

T(A)>γ−1γGMμ~RA\displaystyle T(A)>\frac{\gamma-1}{\gamma}\frac{GM\tilde\mu}{RA} (正の終端速度で脱出するためのエネルギー条件)。限界のv∞=0v_\infty=0まで許せば等号が境界となる。

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    複素数:単位根と原始根 / 確率統計:ガウス分布と誤差伝播 / 力学:銀河内の円軌道と微小振動

  • 2025年度(このページ・解説5項目)

    ベクトル解析:曲面の法線と線積分 / 解析:最小二乗法とフーリエ級数 / 相対論:粒子反応のしきい値とコンプトン散乱

  • 2024年度(解説5項目)

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  • 2023年度(解説5項目)

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  • 2022年度(解説5項目)

    解析:変数分離とベッセル方程式 / 流体:流出速度と回転する自由表面 / ベクトル解析:球面と斜めの交円

  • 2021年度(解説5項目)

    微分方程式:変数分離と線形化 / 解析力学:変分原理と回転するワイヤー / 解析:フーリエ係数と熱統計の積分

2025年度の出題内容

解説5項目
大問主題解説の小見出し最終答
第1問曲面の法線と線積分—あり
第2問最小二乗法とフーリエ級数—あり
第3問粒子反応のしきい値とコンプトン散乱—一部の確定答案なし
第4問光検出と信号の整定時間—あり
第5問静水圧平衡と星風のエネルギー—あり

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前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
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公開年度範囲
2021〜2026年度入学・五年一貫制博士課程 専門科目
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-10-24
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