院試hub

総合研究大学院大学 先端学術院 先端学術専攻 専門科目(天文科学コース) 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は電磁気学・回路1項目、熱・統計力学1項目、複素解析1項目です。固有値・固有ベクトル、留数定理、フーリエ変換などが出ています。2023年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、フーリエ変換、波動関数です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 解析:フーリエ変換で解く熱方程式

熱方程式を空間についてフーリエ変換すると、波数ごとに時間の微分方程式となる。逆変換後のガウス型は、幅が広がる一方で積分値を保つ。初期時刻に通常の有限な関数へ戻るか、デルタ関数の極限になるかも区別する。

解析:フーリエ変換で解く熱方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 複素解析:積分の評価と留数

複素積分の大きさを評価するときは、複素数の積分路要素と実数の弧長を区別する。半円上での最大値と弧長から無限遠の寄与を抑え、残る実積分を留数へ結び付ける。極の位置だけでなく閉じる半平面での減衰も調べる。

複素解析:積分の評価と留数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 力学:円錐面上のばねと角運動量

設問1(a) 円運動中の2つの力

円錐面の母線は鉛直方向となす角がθ\thetaであり、ばねはその母線に沿って質点を頂点へ引く。垂直抗力は母線に直交し、外向きかつ上向きの成分を持つ。2方向へ投影してから力の大きさを求めると、原題の3次元図を直接見ながら符号を決める必要がなくなる。 ω0=0\omega_0=0ならS=mgcos⁡θS=mg\cos\theta、N=mgsin⁡θN=mg\sin\thetaとなり、斜面上の静的な釣り合いを再現する。N≥0N\geq0が接触の条件であり、計算上N<0N<0になる状態を円錐面が質点を引き寄せる力として許してはならない。

設問1(b) 面から離れる角速度

垂直抗力は接触を維持する押す力であり、0へ達した後に負の値を取って接触を保つことはできない。その限界でばねの鉛直成分だけが重力を支え、水平成分が円運動の向心力となる。Scos⁡θ=mgS\cos\theta=mg、Ssin⁡θ=m(l+rc)sin⁡θ ωc2S\sin\theta=m(l+r_c)\sin\theta\,\omega_c^2を割っても同じ条件を得る。 g/[(l+rc)cos⁡θ]g/[(l+r_c)\cos\theta]はs−2\mathrm{s^{-2}}なので平方根が角速度になる。ここでは角速度を外から調節しているため、調節中まで角運動量が一定と仮定しない。次の設問の自由な運動とは条件が異なる。

設問2(a) 拘束を含めたラグランジアン

面に沿う半径方向の動きは、母線方向の変位drdrで測る。母線の長さに対する変化なので、この成分の速度はr˙\dot rであり、r˙sin⁡θ\dot r\sin\thetaではない。後者は円筒半径の変化だけで、同時に生じる鉛直速度を落としている。 原題ではzz軸が重力方向に向くため、重力ポテンシャルは−mgz-mgzとなる。上向きを正とする通常の+mgz+mgzをそのまま使うと重力項の符号が逆になる。拘束面の抗力は許された微小変位と直交して仕事をしないので、一般化座標r,ϕr,\phiのラグランジアンには抗力を直接入れない。

設問2(b) 一般化座標の運動方程式

角度の式では、d[(l+r)2ϕ˙]/dt=(l+r)2ϕ¨+2(l+r)r˙ϕ˙d[(l+r)^2\dot\phi]/dt=(l+r)^2\ddot\phi+2(l+r)\dot r\dot\phiと、係数の時間変化も微分する。∂L/∂ϕ=0\partial L/\partial\phi=0だからϕ¨=0\ddot\phi=0と直接結論するのは誤りである。 半径を伸ばすr˙>0\dot r>0の運動では、正方向へ回っている質点のϕ¨\ddot\phiは負になり、回転が遅くなる。これは腕を広げる回転運動と同じ傾向である。またϕ˙=0\dot\phi=0ならrrの式はばねと重力の母線成分による一次元運動へ戻る。

設問2(c) 保存する角運動量

円筒半径はϱ=(l+r)sin⁡θ\varrho=(l+r)\sin\theta、方位角方向の速さはϱϕ˙\varrho\dot\phiなので、zz軸まわりの角運動量はmϱ2ϕ˙m\varrho^2\dot\phiとなる。これが前問の循環座標に対応する一般化運動量と一致する。 外力の重力はzz軸に平行で、ばね力は頂点へ向かい、抗力も方位角方向の成分を持たない。したがってzz軸まわりのトルクが0であることからも保存を説明できる。m(l+r)2ϕ˙m(l+r)^2\dot\phiもθ\theta一定の本問では比例した保存量だが、物理的なLzL_zを示すにはsin⁡2θ\sin^2\thetaを含める。

設問2(d) 定常円運動のばねの伸び

原題のk>mω02sin⁡2θk>m\omega_0^2\sin^2\thetaにより分母は正であり、通常の0<θ<π/20<\theta<\pi/2では伸びも正になる。ω0→0\omega_0\to0ならr0=mgcos⁡θ/kr_0=mg\cos\theta/kとなり、設問1(a)の静的なばね力へ戻る。 kr0=Skr_0=Sへ前問の式を戻すとS=mgcos⁡θ+m(l+r0)ω02sin⁡2θS=mg\cos\theta+m(l+r_0)\omega_0^2\sin^2\thetaで、力の釣り合いから得た結果と一致する。遠心項の中のばね長をllだけに置き換えると、伸び自身が円筒半径を増やす効果を落とし、分母の補正が得られない。

設問2(e) 角運動量を固定した微小振動

展開には∣ρ∣/(l+r0)≪1|\rho|/(l+r_0)\ll1を使う。半径が増すと角速度が下がるため、遠心効果も弱くなり、ばねの復元力に加えて元の半径へ戻す効果が生じる。このためΩs2\Omega_s^2には正の3ω02sin⁡2θ3\omega_0^2\sin^2\thetaが加わる。 別法として、LzL_zを固定した有効ポテンシャル Ueff=kr22−mg(l+r)cos⁡θ+Lz22m(l+r)2sin⁡2θ U_{\mathrm{eff}}=\frac{k r^2}{2}-mg(l+r)\cos\theta+ \frac{L_z^2}{2m(l+r)^2\sin^2\theta} の二階微分をr0r_0で求め、mmで割っても同じΩs2\Omega_s^2を得る。角速度を固定したまま微分するとk/m−ω02sin⁡2θk/m-\omega_0^2\sin^2\thetaとなるが、それは外部から回転を制御し続ける別の運動である。角運動量を保存する自由振動の答えには使えない。

解答

設問1(a) 円運動中の2つの力

s0=l+r0s_0=l+r_0と置き、円筒半径の外向きをeϱ\boldsymbol e_\varrho、鉛直下向きをez\boldsymbol e_zとする。ばね力は−S(sin⁡θ eϱ+cos⁡θ ez)-S(\sin\theta\,\boldsymbol e_\varrho+\cos\theta\,\boldsymbol e_z)、垂直抗力はN(cos⁡θ eϱ−sin⁡θ ez)N(\cos\theta\,\boldsymbol e_\varrho-\sin\theta\,\boldsymbol e_z)である。円運動の加速度は−s0sin⁡θ ω02eϱ-s_0\sin\theta\,\omega_0^2\boldsymbol e_\varrhoなので −Ssin⁡θ+Ncos⁡θ=−ms0sin⁡θ ω02,mg−Scos⁡θ−Nsin⁡θ=0. -S\sin\theta+N\cos\theta=-ms_0\sin\theta\,\omega_0^2,\qquad mg-S\cos\theta-N\sin\theta=0. 連立して

設問1(b) 面から離れる角速度

角速度をゆっくり増やす間は、各瞬間で前問の定常円運動の釣り合いを近似できる。面から離れる限界でN=0N=0となるので g−(l+rc)ωc2cos⁡θ=0. g-(l+r_c)\omega_c^2\cos\theta=0.

設問2(a) 拘束を含めたラグランジアン

s=l+rs=l+rと置くと、位置は(x,y,z)=(ssin⁡θcos⁡ϕ,ssin⁡θsin⁡ϕ,scos⁡θ)(x,y,z)=(s\sin\theta\cos\phi,s\sin\theta\sin\phi,s\cos\theta)である。微分して速度の二乗はr˙2+s2sin⁡2θ ϕ˙2\dot r^2+s^2\sin^2\theta\,\dot\phi^2となる。ばねと重力の位置エネルギーはkr2/2−mgscos⁡θkr^2/2-mgs\cos\thetaなので

設問2(b) 一般化座標の運動方程式

rrについては∂L/∂r˙=mr˙\partial L/\partial\dot r=m\dot r、∂L/∂r=m(l+r)sin⁡2θ ϕ˙2−kr+mgcos⁡θ\partial L/\partial r=m(l+r)\sin^2\theta\,\dot\phi^2-kr+mg\cos\thetaである。ϕ\phiについては∂L/∂ϕ=0\partial L/\partial\phi=0、∂L/∂ϕ˙=m(l+r)2sin⁡2θ ϕ˙\partial L/\partial\dot\phi=m(l+r)^2\sin^2\theta\,\dot\phiとなる。オイラー・ラグランジュ方程式から

設問2(c) 保存する角運動量

前問の角度の式に(l+r)2(l+r)^2を掛けると、d[(l+r)2ϕ˙]/dt=0d[(l+r)^2\dot\phi]/dt=0である。定数msin⁡2θm\sin^2\thetaを掛けて

設問2(d) 定常円運動のばねの伸び

r¨=0\ddot r=0、ϕ˙=ω0\dot\phi=\omega_0を設問2(b)の式へ代入し、 0=(l+r0)ω02sin⁡2θ−kmr0+gcos⁡θ. 0=(l+r_0)\omega_0^2\sin^2\theta-\frac{k}{m}r_0+g\cos\theta. r0r_0を含む項をまとめる。

設問2(e) 角運動量を固定した微小振動

s0=l+r0s_0=l+r_0とする。母線方向に僅かに伸ばす操作はzz軸まわりのトルクを与えないので、解放後も定常円運動時のLzL_zを保つ。したがって ϕ˙=ω0s02(s0+ρ)2≃ω0(1−2ρs0). \dot\phi=\omega_0\frac{s_0^2}{(s_0+\rho)^2} \simeq\omega_0\left(1-\frac{2\rho}{s_0}\right). 一次までで(l+r)ϕ˙2≃s0ω02−3ω02ρ(l+r)\dot\phi^2\simeq s_0\omega_0^2-3\omega_0^2\rhoとなる。rrの式へ代入し、平衡を表す定数項を消すと ρ¨=−(km+3ω02sin⁡2θ)ρ. \ddot\rho=-\left(\frac{k}{m}+3\omega_0^2\sin^2\theta\right)\rho.

最終答

設問1(a) 円運動中の2つの力

S=mgcos⁡θ+m(l+r0)ω02sin⁡2θ,N=msin⁡θ{g−(l+r0)ω02cos⁡θ}.\displaystyle S=mg\cos\theta+m(l+r_0)\omega_0^2\sin^2\theta,\qquad N=m\sin\theta\{g-(l+r_0)\omega_0^2\cos\theta\}.

設問1(b) 面から離れる角速度

ωc=g(l+rc)cos⁡θ.\displaystyle\omega_c=\sqrt{\frac{g}{(l+r_c)\cos\theta}}.

設問2(a) 拘束を含めたラグランジアン

L=m2{r˙2+(l+r)2sin⁡2θ ϕ˙2}−k2r2+mg(l+r)cos⁡θ.\displaystyle L=\frac m2\{\dot r^2+(l+r)^2\sin^2\theta\,\dot\phi^2\} -\frac k2r^2+mg(l+r)\cos\theta.

設問2(b) 一般化座標の運動方程式

r¨=(l+r)sin⁡2θ ϕ˙2−kmr+gcos⁡θ,ϕ¨=−2r˙ϕ˙l+r.\displaystyle \ddot r=(l+r)\sin^2\theta\,\dot\phi^2-\frac{k}{m}r+g\cos\theta,\qquad \ddot\phi=-\frac{2\dot r\dot\phi}{l+r}.

設問2(c) 保存する角運動量

Lz=m(l+r)2sin⁡2θ ϕ˙=一定.\displaystyle L_z=m(l+r)^2\sin^2\theta\,\dot\phi=\text{一定}.

設問2(d) 定常円運動のばねの伸び

r0=mlω02sin⁡2θ+mgcos⁡θk−mω02sin⁡2θ.\displaystyle r_0=\frac{m l\omega_0^2\sin^2\theta+mg\cos\theta} {k-m\omega_0^2\sin^2\theta}.

設問2(e) 角運動量を固定した微小振動

ϕ˙(t)≃ω0(1−2ρ(t)l+r0),Ωs=km+3ω02sin⁡2θ.\displaystyle\dot\phi(t)\simeq\omega_0\left(1-\frac{2\rho(t)}{l+r_0}\right),\qquad \Omega_s=\sqrt{\frac{k}{m}+3\omega_0^2\sin^2\theta}.

第4問 — 電磁気・回路:無損失伝送線路と反射

線路の容量とインダクタンスは単位長さあたりの量であり、微小区間の保存則から波動方程式を作る。反射では電圧と電流の符号関係を区別する。矩形波は先端と後端がそれぞれ往復して戻るため、全ての段差を時間順に重ねる。

電磁気・回路:無損失伝送線路と反射の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 統計力学:量子濃度と重力中の化学平衡

箱の量子状態を連続なモードへ近似し、1粒子の分配関数を求める。同種粒子の数え過ぎを除いて自由エネルギーを作ると、化学ポテンシャルが得られる。重力中の平衡は外場のエネルギーも含めた値が等しい条件で調べる。

統計力学:量子濃度と重力中の化学平衡の途中式・最終答をPDFで見る

専門科目(天文科学コース)の解答・解説PDF

2021〜2026年度(6年度) · ¥3,200

解答PDFの商品ページへ

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説5項目)

    複素数:単位根と原始根 / 確率統計:ガウス分布と誤差伝播 / 力学:銀河内の円軌道と微小振動

  • 2025年度(解説5項目)

    ベクトル解析:曲面の法線と線積分 / 解析:最小二乗法とフーリエ級数 / 相対論:粒子反応のしきい値とコンプトン散乱

  • 2024年度(このページ・解説5項目)

    解析:フーリエ変換で解く熱方程式 / 複素解析:積分の評価と留数 / 力学:円錐面上のばねと角運動量

  • 2023年度(解説5項目)

    線形代数:エルミート行列の固有値と直交性 / 解析:周期延長の違いとラプラス変換 / 天体力学:二体問題と視線速度による質量測定

  • 2022年度(解説5項目)

    解析:変数分離とベッセル方程式 / 流体:流出速度と回転する自由表面 / ベクトル解析:球面と斜めの交円

  • 2021年度(解説5項目)

    微分方程式:変数分離と線形化 / 解析力学:変分原理と回転するワイヤー / 解析:フーリエ係数と熱統計の積分

2024年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・複素解析1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問フーリエ変換で解く熱方程式—あり
第2問複素解析積分の評価と留数—あり
第3問力学円錐面上のばねと角運動量—あり
第4問電磁気学・回路無損失伝送線路と反射—あり
第5問熱・統計力学量子濃度と重力中の化学平衡—あり

同じテーマを出した他大学・他年度

6テーマ

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 5問
2024年度で新しく出たテーマ
留数定理・分配関数・ラグランジアン
2023年度の解答例

総合研究大学院大学の公式過去問

公開年度範囲
2021〜2026年度入学・五年一貫制博士課程 専門科目
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-10-24
総合研究大学院大学の公式過去問PDF