名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2024年度 院試 解答例・解説
名古屋大学 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 科目A: 地球環境学
方針
科目Aは字数指定の説明問題が中心である。答案では「過程」と「理由」を入れることが重要で,単に語句を並べるだけでは不足する。温室効果では赤外放射の吸収と下向き放射,農業由来 では土壌中の窒素循環,森林では面積ではなく成長速度と蓄積量を区別する。
典型的な誤り
水蒸気を「温室効果がない」と書くのは誤りである。水蒸気自体は強い温室効果を持つが,燃焼により直接排出された水蒸気は大気中で長期蓄積しにくいため,現在の気候対策では主たる放射強制力として扱われにくい,という整理にする。
検算
森林吸収量の議論では,森林面積がほぼ一定でも蓄積量が増えた事実と矛盾しないように書く。蓄積量は過去の成長の結果であり,年間吸収量は現在の純成長量で決まるため,高齢化すれば蓄積が大きくても年間吸収量は下がりうる。
第2問 — 科目B: 地球科学I
方針
科目Bは記述量が多いが,根拠は比較的典型的である。風化では「物理的破壊」と「化学反応・溶脱」を分け,砂岩では石英の多さを成熟度に,長石と岩石片の比を後背地に結びつける。柱状図問題では,岩相,化石,放射年代,整合・不整合を順に読む。
典型的な誤り
海洋プレート層序の移動距離で,速度の単位換算を誤りやすい。 なので, が 続くと になる。また,二次化石は「摩耗している」だけでは決定的でなく,母岩より古い年代を示すことが強い根拠になる。
検証
珪酸塩風化の反応は,左右で ,,,, と電荷が保存される。砂岩分類では と石英が 90\% を超えるので,石英アレナイトという判断になる。
第3問 — 科目C: 地球科学II
方針
科目Cは図読みによる判断が多い。QAP分類では の範囲と 比を別々に読む。アイソスタシーでは同じ補償深度までの質量を比較し,地溝の の落ち込みを式に入れる。重力異常では「符号,密度差,深度,水平移動,重ね合わせ」の5点で考える。
典型的な誤り
斜長石の An 値は であり,図4の横軸をそのまま An 値と読み違えないようにする。図4は左が灰長石端成分,右が曹長石端成分なので, は右寄り, は左寄りで読む。
検証
アイソスタシーの計算では,左辺と右辺の単位は で共通である。 を代入すると右辺は となり,周辺部の値と一致する。
第4問 — 科目D: 地球科学III
方針
科目Dは地球化学の用語説明と同位体計算が中心である。同位体問題では, 値を比に戻す式 を最初に書くと,分別係数の計算で迷いにくい。
典型的な誤り
栄養塩型を「深層で低い」と書く誤りが多い。表層で生物に使われ,深層で再生されるので深層で高い。深層で低くなりやすいのは,粒子に吸着・除去されるスキャベンジ型である。
検算
問3問6では植物が軽い炭素を取り込むので,植物の は大気 より小さく, になる。計算結果 はこの物理的意味と整合する。
第5問 — 科目E: 物理学
方針
問題1は物理振り子であり,すべては支点まわりの慣性モーメントと重力による復元モーメントに帰着する。問題2は,マクスウェル関係で を に置き換えるのが中心である。
典型的な誤り
問題1で棒の中心を質量中心とみなすと誤る。質量中心は のため 側に寄る。また,問題2の液滴体積 は一定なので,微分では と扱う。
検証
とすると,振り子はほぼ の質点だけになる。このとき , となり,支点から質点までの距離が有効長になる。得られた式の極限として自然である。
第6問 — 科目F: 化学
方針
炭酸平衡は,すべての化学種を と で表し,最後に全濃度 で規格化すると簡単である。一次反応は半減期 を使うと計算が短い。
典型的な誤り
アレニウス式では温度を必ず絶対温度にする。摂氏のまま代入すると活性化エネルギーが大きくずれる。また,グリシンは中性 pH で電荷を持たない分子ではなく,双性イオンが主成分である。
検証
炭酸の は約 6.35, は約 10.33 である。pH 8.1 はこの間にあるため,中間種の が最大になる。計算結果の約 はこの見通しと整合する。
第7問 — 科目G: 生物学
方針
生物学では,用語の定義を具体例と結びつける。ハーディ・ワインベルグ問題は,劣性表現型の頻度が であること,集団合体では個体数が等しいため遺伝子頻度を平均できることを使う。
典型的な誤り
白色個体の割合をそのまま としてはいけない。白色は なので である。また,白色全滅後の頻度計算では,死亡後の総個体頻度 で割り直す必要がある。
検証
N島形成後の , から遺伝子型頻度は となる。白色死亡後の 頻度 は,白色を取り除いて が減るため,死亡前の より大きくなる。
第8問 — 科目H: 数学
方針
数学は計算過程を残すことが得点に直結する。行列はまず行列式で正則性を判定し,微分方程式は特性方程式の判別で場合分けする。フーリエ変換では, を別扱いするか,極限で と確認する。
典型的な誤り
を と同一視すると係数が2倍ずれる。正しくは である。また,矩形関数の 極限は通常の関数に収束するのではなく,デルタ関数に収束する。
検証
第二の行列はブロック上三角なので,行列式は対角ブロックの行列式の積になる。逆行列も となり,掛け戻すと単位行列になる。