名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2022年度 院試 解答例・解説
名古屋大学 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 科目A: 地球環境学
方針
カーボンフットプリントは,家庭で直接排出しただけでなく, 資源採取,製造,流通,使用,廃棄までを含めたライフサイクル排出で考える。 したがって「住居」なら電力の発電源,「食」なら農畜産の生産過程まで戻って説明する必要がある。
典型的な誤り
「日本は家が多いから」「肉は重いから」のように,排出を増やす物質・過程を示さない答案は弱い。 住居では石炭・天然ガス・石油のいずれか,肉類ではと, 水田ではを明記すると,カーボンフットプリントの説明として筋が通る。
検算
削減策は,単なる節約ではなく排出量の大きい項目に対応しているかを確認する。 牛肉削減は,断熱と再エネ電力は住居エネルギー,自家用車・航空機の抑制は移動由来排出に対応している。
第2問 — 科目B: 地球科学I
方針
生層序では「化石の実際の生存期間」と「地層中で観察される産出範囲」を分ける。 後者は移動,環境,保存,採集の影響を受けるため,初産出・終産出は必ずしも全地球で同時にならない。
付加体の読み方
玄武岩,チャート,珪質泥岩,泥岩,タービダイトという並びは典型的な海洋プレート層序である。 下位は海洋地殻の形成,上位へ向かうほど海溝への接近と陸源砕屑物の増加を表す。 図の斜線部は上位シートが孤立して残る読みに基づいてユニットCとしたが,境界線の読み取りに依存する。
検算
問5は「距離÷速度」で考えるとよい。 aが海洋地殻形成,bが海溝に近づいた時点を表すなら,移動距離が大きいほど長く,速度が大きいほど短くなる。
第3問 — 科目C: 地球科学II
方針
問題1は鉱物名だけでなく形を読む。 自形で孤立する結晶は早期,隙間を埋める結晶は後期と判断する。 問題2は三角図を「初晶の領域」「共晶線」「最後の液」の順に読み,問題3はアイソスタシーの柱の質量を比べる。
典型的な誤り
単斜輝石と直方輝石の違いを,化学組成だけで答えると偏光顕微鏡の設問に対応しない。 消光角,劈開,干渉色のように観察可能な特徴で述べる。 また,アイソスタシーの計算では海水4 kmを忘れると標高が大きくずれる。
図読み取りの確認
Forsterite--Enstatite--Diopside図の数値は,拡大図の目盛りを読んだ近似値である。 点Xの最後の液を三成分共晶付近,点YをForsterite--Enstatite辺上と読むことが解答の前提である。
第4問 — 科目D: 地球科学III
方針
問1は貯蔵量の時間変化を「流入マイナス流出」で書けばよい。 問2はCaが全量堆積物へ移るという仮定から,火成岩側と堆積物側のCa収支を等置し,同じ風化量・堆積量をSrにも適用する。
単位の注意
Caは質量パーセント,Srはppmで与えられている。 表の加重平均では,粘土90\%,炭酸塩10\%をそのまま重みとして使う。 Sr/Ca比を厳密に数値比較する場合は,ppmを質量分率へそろえる必要がある。
検算
Ca平均はとの間,Sr平均は ppmと ppmの間に入る。 得られたと ppmはいずれもこの範囲内にあり,加重平均として妥当である。
第5問 — 科目E: 物理学
方針
棒の問題では,重心の並進運動と重心まわりの回転運動を分ける。 床は滑らかなので水平力はなく,床からの力は鉛直抗力だけである。 フタの問題では,理想気体の圧力を力に変換してから平衡位置まわりに展開する。
典型的な誤り
棒の重力は重心に作用するため,重心まわりのトルクには入らない。 また,シリンダーの問題では断面積が途中で消える。 を使うととなるため,最終的なにはが現れない。
検算
棒の時間に比例し,無次元量の平方根を含むので次元は時間になる。 フタの復元力はで負,で正となり,平衡位置へ戻す向きに働く。
第6問 — 科目F: 化学
方針
酸塩基の強さは,共役塩基がどれだけ安定化されるかで判断する。 誘起効果,共鳴,混成軌道の性はいずれも負電荷の安定化を比較する道具である。 滴定では,第1中和点が「水酸化物イオンと炭酸イオン1段階分」,第2中和点が「炭酸イオン2段階分までの全量」である。
典型的な誤り
第1中和点までにをまで中和してしまうと,炭酸ナトリウム量が2倍ずれる。 フェノールフタレイン終点でははまでで止まる。
検算
第2中和点と第1中和点の差は10.0 mLであり,これはをさらに中和する量, すなわち初めの量に等しい。 そこから炭酸塩 mol,水酸化物 molと逆算できる。
第7問 — 科目G: 生物
方針
生物の記述問題では,単語だけでなく因果関係を書く。 大量絶滅なら「生息場の減少」「環境変化」「酸素状態」,適応なら「形質差」「捕食率差」「相対適応度差」をつなげる。
典型的な誤り
警告色と隠蔽色を混同しやすい。 警告色は目立つことで捕食者の学習を利用し,隠蔽色は目立たないことで発見確率を下げる。 また,性選択は自然選択と別物ではなく,繁殖成功の差を通じて働く自然選択の一型である。
検証の書き方
観察・実験を問われたら,比較対象,測定量,予測を入れる。 模型餌実験なら「隠蔽色と非隠蔽色を同条件で置く」「攻撃痕や消失率を測る」「隠蔽色で低ければ仮説を支持」と書ける。
第8問 — 科目H: 数学
方針
線形代数は固有多項式を因数分解する。 微分方程式は1階線形なので積分因子,フーリエ級数は偶関数性を先に使う。 確率は,判定された事象と本当に迷惑メールである事象を分けてベイズの定理を使う。
典型的な誤り
フーリエ級数でを忘れると,が2倍ずれる。 また,問5の問2は「迷惑メールが検出される確率」ではなく, 「検出されたものが本当に迷惑メールである確率」なので条件の向きが逆である。
検算
に対し,本当に迷惑メールとして検出された確率はである。 したがってとなり,誤検出が少ないため1に近い値になる。