名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2023年度 院試 解答例・解説
名古屋大学 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 科目A: 地球環境学
方針
科目Aは,環境現象を「物質・資源の空間分布」と「人間・生物による利用過程」に分けると書きやすい。モンゴルの設問では,単に「移動する」と書くのではなく,移動が年変動・地域差に対するリスク分散であることを示す。干潟の設問では,酸素消費,硫酸還元,硫化水素,硫化鉄の順に因果関係をつなぐ。
典型的な誤り
コモンズの悲劇の一般論だけで「私有化すればよい」と答えると,この問題の条件に反する。ここでは,牧草資源が固定的な土地境界と相性が悪いことが中心である。また,ブルーカーボンでは「光合成するから吸収源」とだけ書くと不十分で,固定後の有機炭素が分解されずに堆積物へ保存される点まで書く必要がある。
検算・確認
干潟の黒色化は,酸素が豊富なら有機物は好気分解され,硫化水素も蓄積しにくいという対照で確認できる。したがって「低酸素」と「臭気」と「黒色」は互いに独立な現象ではなく,同じ還元的な物質循環の結果として説明するのがよい。
第2問 — 科目B: 地球科学I
方針
地質関係は「何が先に存在したか」を,化石年代,包含関係,急冷周縁相,節理の向きから順に判定する。包含される岩片は取り込まれた側が古く,急冷周縁相をもつ岩体は周囲の岩石へ貫入した側である。主要元素組成では,チャートは高 ,玄武岩は苦鉄質,流紋岩は高 かつアルカリに富むことを使う。
公開PDFの制約と答案化
問題1の問1と問2は,地質図の境界線・等高線・A--B線を読まないと,傾斜方向,傾斜角,断面形状を一意に決められない。公式公開PDFではその地質図部分が掲載されていないため,本解説では数値を作らず,公開PDFから確定できる上位層・岩石名・元素組成・相対年代と,原図がある場合に採点される読図手順を分けて示した。図面が手元にある場合は,同一標高の境界交点から走向線を引き,低標高側への最大傾斜とA--B線上の境界交点を断面図へ反映すればよい。
典型的な誤り
図面なしに傾斜方向や角度を推測で書くと,後続のA--B断面まで連鎖的に崩れる。読図問題では,まず地図から読み取れる量と,本文情報だけで判定できる量を分ける。K--Ar年代とU--Pb年代を単純に「どちらかが誤り」とするのも不十分である。鉱物ごとに閉鎖温度と記録するイベントが異なるため,年代差そのものが冷却史や後の熱イベントを示す情報になる。
第3問 — 科目C: 地球科学II
方針
火成岩は冷却速度,変成岩は鉱物組合せ,地球内部は密度・相転移で整理する。特に接触変成帯では,貫入岩体に近づくほど温度が上がるので,鉱物の出現・消滅を温度軸に並べると解きやすい。
典型的な誤り
AFMダイヤグラムでAを単純に として扱うと,白雲母やカリ長石の投影を説明できない。投影の起点鉱物が変わるため,A成分の補正も変わることを明示する必要がある。
検算
水深計算では,プレートとマントルの密度差は と小さく,補償に効く密度差 は である。したがって100 kmの厚さに対する沈降は数 km程度となり,約3 kmという値は妥当である。
第4問 — 科目D: 地球科学III
方針
放射年代は指数関数,酸素同位体は比の定義,湿式分析は元素量と酸化物量の換算で処理する。単位や基準同位体を明確にすると,式の意味が崩れにくい。
典型的な誤り
値の計算で,分別係数を逆に使うと水蒸気が正の値になってしまう。25 ℃では重い酸素同位体は液相に濃集するので,水蒸気は海水より小さい をもつ。
検算
岩石組成では が約85 wt\%, が約5 wt\%, が約3 wt\%なので,残りの が約7 wt\%になる。全体が100 wt\%に近いことを最後に確認する。
第5問 — 科目E: 物理学
方針
衛星問題はすべてエネルギー保存と円・楕円軌道の基本式で統一できる。点Aと点Bは楕円軌道の近点・遠点なので,接線方向速度を与えた後の運動にvis-vivaの式を使うのが最短である。
典型的な誤り
位置エネルギーの符号を正にしてしまうと,脱出や円軌道のエネルギー関係が崩れる。無限遠を基準にした重力ポテンシャルは必ず負であり,円軌道では ,したがって である。
検算
楕円軌道では近点の速度が遠点の速度より大きい。ここでも と なので となり,軌道運動の直感と一致する。
第6問 — 科目F: 化学
方針
緩衝液は物質量で酸と塩基の比を更新し,最後にHenderson--Hasselbalch式へ入れる。有効核電荷は,どの電子から見た遮蔽かを固定してから同じ軌道群,すぐ内側,さらに内側を分けて足し上げる。
典型的な誤り
NaOH添加後の濃度計算で,体積が1.010 Lになることに気を取られすぎる必要はない。Henderson--Hasselbalch式では酸と共役塩基の濃度比を使うため,同じ体積で割る操作は相殺される。
検算
NaOHを加えると酢酸が減り酢酸イオンが増えるので,pHは添加前より大きくなる。計算結果も から へ上がっており,向きは妥当である。
第7問 — 科目G: 生物学
方針
遺伝は比を先に出し,最後に個体数へ換算する。植物の陸上進出は,乾燥,輸送,支持,栄養塩獲得という課題ごとに適応を対応させると答案が整理される。
典型的な誤り
組換え頻度では,数の多い二型を親型,少ない二型を組換え型として読む。灰色・長翅と黒色・短翅が多いので,灰色・短翅と黒色・長翅を足すのが正しい。
検算
F2の個体数は で全数と一致する。組換え頻度も で50\%より十分小さいため,連鎖しているという問題設定と矛盾しない。
第8問 — 科目H: 数学
方針
線形連立方程式は行列式,積分は置換・部分積分,微分方程式は分離形と未定係数法,フーリエ変換はスケーリングと周波数シフトの性質を使う。指数分布は正規化と期待値を直接積分で示す。
典型的な誤り
フーリエ逆変換の係数 を忘れると, の逆変換の係数を誤る。周波数を2倍にすると時間側は になり,さらにヤコビアンから係数 が付く。
検算
指数分布で1週間以内の確率は,平均間隔2週間より短い時間の確率なので より小さくなる。 はこの直感と一致する。