名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2026年度 院試 解答例・解説
名古屋大学 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球惑星科学系 専門科目 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 科目A: 地球環境学
方針
科目Aは,語句を知っているだけでなく,原因から結果までの鎖を短く正確に書く問題である。北極温暖化では「気温上昇 海氷減少 アルベド低下 吸収増加 さらなる温暖化」という順序を崩さない。レジリエンスでは,常に「何に対するレジリエンスか」を明示する。
典型的な間違い
海氷が減ると反射が増える,と逆に書く誤りが多い。白い海氷は反射率が高く,暗い海面は吸収率が高い。また,生態系AとBの比較では,単に「多様性が高いAが常に強い」と書くと病原菌の場合を外しやすい。病原菌の設問では,家畜の餌利用幅と牧草間の機能的代替性を比較する必要がある。
検算
干ばつでは水分利用戦略の多様性が効くのでA,特定牧草だけの病害では機能が似た牧草と広食性家畜があるB,という対応になっている。攪乱の性質と答えの系が一対一に対応していれば論旨は安定する。
第2問 — 科目B: 地球科学I
方針
地史問題は「切るものが新しく,切られるものが古い」という交差切り関係を軸に組み立てる。断層Iは未固結層を切るため若い活動,断層IIは基盤岩中の古い活動である。地質体の問題は地体名と特徴語句の対応が主眼で,地図の位置関係を思い出すと安定する。
典型的な間違い
基底礫岩と断層角礫を混同しない。基底礫岩は不整合面や堆積開始時の礫層であり,断層岩ではない。酸素同位体比では「温暖化すると常に が上がる」と覚えると誤る。新生代長期変化では氷床に軽い水が固定される効果が重要である。
検証
断層Iの2回の活動時期は,地層A,B,Cの年代と「どの地層まで変位しているか」から区間でしか決まらない。年代を一点で断定しないことが,露頭解釈として正しい。
第3問 — 科目C: 地球科学II
方針
科目Cは図を読む問題が多い。相図では,横軸の組成を読んだ後,タイラインの両端が共存相の組成,全体組成からの距離比が相量比になる。島弧問題では,背弧拡大の減圧溶融と,スラブ脱水による加水溶融を混同しない。
典型的な間違い
相律で圧力固定を二重に数えないこと。一般式では だが,すでに圧力一定断面を見ている相図上では自由度が1つ少なくなる。また,パーサイトは単なる双晶ではなく,アルカリ長石の固相分離組織である。
検証
問3の平均密度は,海洋地殻がエクロジャイト化して高密度になる一方,断面の大部分はマントルであるため,答えは より少し大きい値になる。この見積もりと は整合する。
第4問 — 科目D: 地球科学III
方針
地球化学の計算は,単位と分別係数の定義を先に固定すると迷いにくい。同位体比は を標準比に掛けたものなので,分別係数では標準比が約分される。EDTA滴定は1:1反応であることを使い,25 mLの滴定結果から250 mL全量へ拡張する。
典型的な間違い
カルサイト--水の分別で近似式を使わないよう指定されているため, を用いる。硬度計算では,濃度の単純平均ではなく流入割合による加重平均を使う。EDTA消費量は外れ値除去を指示されていないので4回の平均をそのまま使う。
検証
問2(2)で が大きいほど が大きく,式 から温度は低くなる。8.0度のとき ,観測値 で約4.8度という関係は物理的に整合する。
第5問 — 科目E: 物理学
方針
問題1は,反発的な と引力的な を合わせた有効ポテンシャルである。中心力の角運動量項 と同じ形だと気づくと,問1の結果を問2へ直接使える。
典型的な間違い
運動可能条件で を使うとき, は正なので不等号の向きは変わらない。 の根の式は分母が負になるため,大小関係を取り違えやすい。熱力学では,ゴムにされた仕事を とする符号規約を一貫して使うことが重要である。
検証
ゴムは伸ばすと分子鎖の取り得る配置が減るため,等温伸長でエントロピーが減少するという結論は直観とも一致する。断熱伸長で温度上昇するのは,そのエントロピー減少を打ち消すために熱的なエントロピーを増やす必要があるからである。
第6問 — 科目F: 化学
方針
問題1は,赤外吸収の条件,ヘンリーの法則,酸塩基平衡,炭酸カルシウム飽和度を順に問う構成である。炭酸種の優占はHenderson--Hasselbalch型の比で判断するとよい。問題2は比色法とICP-MSの得意不得意を比較する。問題3は不飽和度1と臭素水脱色からアルケンに絞る。
典型的な間違い
分圧を求めるとき,飽和水蒸気圧を引かずに全大気圧へそのまま濃度を掛けると指定条件を使い切れない。フェナントロリン法では, のままではなく に還元してから錯形成させる。塩素化の比は炭素数ではなく,等価水素の個数と水素1個あたりの反応性の積で決まる。
検証
pH 8.2は より十分高いので より が多い。一方, より低いので はまだ少ない。したがって主炭酸種が になることは計算前にも見積もれる。
第7問 — 科目G: 生物学
方針
生物の前半は用語説明が中心だが,問題2は検定交雑の読み取りである。F1を劣性ホモ個体と交雑した結果は,F1が作った配偶子の比を直接反映する。多い組合せが親型,少ない組合せが組換え型である。
典型的な間違い
鳥類を爬虫類から完全に離して描くと,ワニと鳥類が近縁である点を落とす。遺伝問題では,独立な を連鎖した と同じ組換え頻度で扱わないこと。F2計算では,表現型が丸型なら でも でもよい。
検証
問2(1)の集計では,色--高さと形--高さがいずれもほぼ100ずつにそろう。一方,色--形は178,182と21,19に大きく分かれる。この非対称性が連鎖の根拠であり,組換え頻度10\%と整合する。
第8問 — 科目H: 数学
方針
線形代数は固有値が3つ異なるので,固有ベクトルを列に並べれば直ちに対角化できる。偶数乗では になるため, の項だけが成長する。フーリエ変換は,積に指数関数を掛けると周波数がシフトすること,自己相関の変換が になることを使う。
典型的な間違い
問題1の行列は符号を読み違えやすい。第1行第2列は ,第3行は である。フーリエ変換の符号規約では, の変換は になる。逆にすると問1の答えが左右反転する。
検証
の式に を入れると単位行列になり, を入れると直接計算の と一致する。ポアソン分布では なので,平均1回なら2回以上の確率が約26\%という大きさも自然である。