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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 工学院 電気電子系 電気電子系 専門科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路2問・数学1問・量子力学1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・ハミルトン形式・フーリエ級数)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東京科学大 電気電子系 専門科目 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路2問・数学1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—デルタ関数積分の検算 / 標本化定理の見方あり
第2問電磁気学・回路電磁気学円板電位の見通し / 平行円板の極限あり
第3問電磁気学・回路電気回路整合条件の本質 / L形整合回路の符号あり
第4問量子力学量子力学/物性基礎二準位系の要点 / 複素共役の扱いあり

この年度の解説には典型ミス1件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に4テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 4問 → 2024年度 4問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2024年度で新しく出たテーマ
ハミルトン形式・フーリエ級数・標本化定理
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第1問 — 数学

方針

前半は、閉曲面全体でのストークスの定理の打ち消しから div⁡rot⁡=0\operatorname{div}\operatorname{rot}=0 を積分形で示す問題である。微分公式を暗記で書くのではなく、境界曲線の向きが S1S_1 と S2S_2 で反対になることを明記するのが得点上重要である。

デルタ関数積分の検算

δ(r2−a2)\delta(r^2-a^2) は r=ar=a の球面だけを選び出す。積分結果 4πa24\pi a^2 は半径 aa の球面積であり、∣∇f∣δ(f−a2)|\nabla f|\delta(f-a^2) が等位面積分を作ることと一致する。

標本化定理の見方

F(ω)F(\omega) を有限区間上のフーリエ級数に展開し、逆変換すると標本値 f(n/(2W))f(n/(2W)) に sinc 関数が掛かった和になる。ここで 2πW2\pi W と 1/(2W)1/(2W) の対応を落とすと、補間核の引数がずれる。

典型ミス

三角波の級数では、定数項の定義に注意する。本問の表し方は a0+∑n≥1a_0+\sum_{n\ge1} なので、標準形 a0/2+∑a_0/2+\sum の a0a_0 とは値が2倍違う。偶関数であることを先に述べれば、bn=0b_n=0 は計算せずに確定できる。

解答

1. ベクトル解析

  1. 勾配の回転は常に消えるので rot⁡grad⁡ϕ=0 \operatorname{rot}\operatorname{grad}\phi=0 である。したがって空欄は rot⁡\operatorname{rot} である。
  2. ガウスの発散定理より ∫Vdiv⁡(rot⁡A) dV=∫S(rot⁡A)⋅n dS. \int_V \operatorname{div}(\operatorname{rot}\mathbf A)\,dV =\int_S (\operatorname{rot}\mathbf A)\cdot \mathbf n\,dS . よって空欄は rot⁡A\operatorname{rot}\mathbf A、用いる定理はガウスの発散定理である。
  3. ストークスの定理より、指定された向きに対して ∫S2(rot⁡A)⋅n dS=∮CA⋅dℓ. \int_{S_2}(\operatorname{rot}\mathbf A)\cdot\mathbf n\,dS =\oint_C \mathbf A\cdot d\boldsymbol\ell . よって空欄は A\mathbf A、用いる定理はストークスの定理である。
  4. 同じ閉曲線 CC について、S1S_1 に外向き法線をとると境界の正向きは S2S_2 の場合と反対である。したがって ∫S1(rot⁡A)⋅n dS=−∮CA⋅dℓ. \int_{S_1}(\operatorname{rot}\mathbf A)\cdot\mathbf n\,dS =-\oint_C \mathbf A\cdot d\boldsymbol\ell . これと前問を足すと、閉球面 S=S1∪S2S=S_1\cup S_2 について ∫S(rot⁡A)⋅n dS=0 \int_S(\operatorname{rot}\mathbf A)\cdot\mathbf n\,dS=0 である。さらに発散定理から ∫Vdiv⁡(rot⁡A) dV=0 \int_V\operatorname{div}(\operatorname{rot}\mathbf A)\,dV=0 が任意の球 VV で成り立つ。被積分関数は連続であり、任意の球で体積積分が常に 00 なので div⁡(rot⁡A)=0 \operatorname{div}(\operatorname{rot}\mathbf A)=0 である。
  5. f=x2+y2+z2=r2f=x^2+y^2+z^2=r^2 とおくと ∣grad⁡f∣=∣(2x,2y,2z)∣=2r. |\operatorname{grad}f|=|(2x,2y,2z)|=2r . 球座標に変換して I=∫0∞∫0π∫02π2r δ(r2−a2) r2sin⁡θ dφ dθ dr=4π∫0∞2r3δ(r2−a2) dr. \begin{aligned} I &=\int_0^\infty\int_0^\pi\int_0^{2\pi} 2r\,\delta(r^2-a^2)\,r^2\sin\theta\,d\varphi\,d\theta\,dr \\ &=4\pi\int_0^\infty 2r^3\delta(r^2-a^2)\,dr . \end{aligned} a>0a>0 なので δ(r2−a2)=12aδ(r−a)(r≥0) \delta(r^2-a^2)=\frac{1}{2a}\delta(r-a)\qquad (r\ge 0) であり、 I=4π⋅2a32a=4πa2. I=4\pi\cdot \frac{2a^3}{2a}=4\pi a^2 .

2. フーリエ解析

  1. (1) 帯域外ではスペクトルが消えるから (ア)=0. \text{(ア)}=0 . 標本化間隔はナイキスト間隔 (イ)=12W \text{(イ)}=\frac{1}{2W} である。また逆変換の核は (ウ)=ejωt. \text{(ウ)}=e^{j\omega t}. 波線部の積分は 14πW∫−2πW2πWejω(t−n/(2W)) dω=14πWej2πWτ−e−j2πWτjτ=sin⁡(2πWτ)2πWτ,τ=t−n2W. \begin{aligned} \frac{1}{4\pi W}\int_{-2\pi W}^{2\pi W} e^{j\omega(t-n/(2W))}\,d\omega &= \frac{1}{4\pi W} \frac{e^{j2\pi W\tau}-e^{-j2\pi W\tau}}{j\tau} \\ &= \frac{\sin(2\pi W\tau)}{2\pi W\tau}, \qquad \tau=t-\frac{n}{2W}. \end{aligned} したがって (エ)=sin⁡ \text{(エ)}=\sin である。
  2. (2) T=2T=2 なので ω0=π\omega_0=\pi である。1周期で f(t)=1−∣t∣ (−1≤t≤1)f(t)=1-|t|\ (-1\le t\le 1) と見ればよい。 この関数は偶関数であるから bn=0. b_n=0 . また、与えられた級数の定数項は a0=1T∫−11(1−∣t∣) dt=12. a_0=\frac{1}{T}\int_{-1}^{1}(1-|t|)\,dt=\frac{1}{2}. 余弦係数は an=2T∫−11(1−∣t∣)cos⁡(nπt) dt=2∫01(1−t)cos⁡(nπt) dt. \begin{aligned} a_n &=\frac{2}{T}\int_{-1}^{1}(1-|t|)\cos(n\pi t)\,dt \\ &=2\int_0^1(1-t)\cos(n\pi t)\,dt . \end{aligned} 部分積分により ∫01(1−t)cos⁡(nπt) dt=1−cos⁡(nπ)(nπ)2 \int_0^1(1-t)\cos(n\pi t)\,dt =\frac{1-\cos(n\pi)}{(n\pi)^2} だから an=2{1−(−1)n}n2π2={4n2π2,n が奇数,0,n が偶数. a_n=\frac{2\{1-(-1)^n\}}{n^2\pi^2} = \begin{cases} \dfrac{4}{n^2\pi^2}, & n\ \text{が奇数},\\[4pt] 0, & n\ \text{が偶数}. \end{cases}

最終答

rot⁡,rot⁡A,A,div⁡rot⁡A=0,4πa2 \operatorname{rot},\quad \operatorname{rot}\mathbf A,\quad \mathbf A,\quad \operatorname{div}\operatorname{rot}\mathbf A=0,\quad 4\pi a^2 (ア)=0,(イ)=12W,(ウ)=ejωt,(エ)=sin⁡,bn=0,a0=12,an={4/(n2π2)n odd0n even \begin{gathered} \text{(ア)}=0,\quad \text{(イ)}=\frac{1}{2W},\quad \text{(ウ)}=e^{j\omega t},\quad \text{(エ)}=\sin,\\ b_n=0,\quad a_0=\frac12,\quad a_n=\begin{cases} 4/(n^2\pi^2)&n\ \mathrm{odd}\\ 0&n\ \mathrm{even} \end{cases} \end{gathered}

第2問 — 電磁気学

円板電位の見通し

軸上電位は、同心円環に分けると一変数積分になる。最後に ∣z∣|z| が出るため、z>0z>0 と z<0z<0 の場合分けでは符号を取り違えやすい。電場は電位の負の勾配なので、正電荷円板の上側で Ez>0E_z>0 になることを検算に使える。

平行円板の極限

有限円板2枚の電位は、大きな共通項 aa が差で消える。極限で σd/ε0\sigma d/\varepsilon_0 が残るのは、無限平板2枚の間の一様電場 E=σ/ε0E=\sigma/\varepsilon_0 と ΔV=Ed\Delta V=Ed に対応する。

ポインティングベクトルの符号

E\mathbf E は電流方向、H\mathbf H は周方向なので E×H\mathbf E\times\mathbf H は半径方向内向きである。問題文の表現だけで「外向きに正」と思い込むと符号を落とす。答案では、外向き流束は負、導体への流入電力は正と書き分けると安全である。

2本線の遠方近似

同方向電流では遠方で 1/r1/r 項が残るが、本問は逆向き電流なので 1/r1/r 項が打ち消え、双極子的な 1/r21/r^2 項が主項になる。条件 ∣x2−y2∣≫d2|x^2-y^2|\gg d^2 は高次項を無視してよいことを保証している。

電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電気回路

整合条件の本質

最大電力伝送では、負荷から見た信号源インピーダンスの複素共役を負荷に持たせる。抵抗だけを合わせても、リアクタンスの和が残ると電流の大きさが下がり、消費電力は最大にならない。

L形整合回路の符号

本問の回路は「入力側に並列 C1C_1、負荷側へ直列 L2L_2」の順である。伝送行列の掛ける順番を逆にすると A,DA,D が入れ替わり、最後の ωC1,ωL2\omega C_1,\omega L_2 が合わなくなる。RS>RLR_S>R_L なので、低い抵抗の負荷を高い入力抵抗に変換する形になる。

三相回路の考え方

対称負荷なので、一相分だけ計算して三倍すればよい。線間電圧 VV と相電圧の実効値 V/3V/\sqrt3 の区別が最も重要である。図の電源記号に書かれた VV は線間電圧なので、そのまま一相負荷に掛けてはいけない。

力率補償の検算

コンデンサのサセプタンス +ωC+\omega C が、インダクタを含む枝の負のサセプタンスを打ち消す。得られた C=3L/(R2+ω2L2)C=3L/(R^2+\omega^2L^2) は正であり、誘導性負荷を容量で補償するという物理的直感とも一致する。

電気回路の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 量子力学/物性基礎

二準位系の要点

非対角相互作用は、もとの準位を混合してエネルギーを反発させる。固有値の平方根内に ∣V∣2|V|^2 が入るため、相互作用が強いほど準位間隔は広がる。V=0V=0 とすれば固有値は E1,E2E_1,E_2 に戻るので、式の符号確認に使える。

複素共役の扱い

ハミルトニアンはエルミートなので、片方の非対角成分を VV としたら反対側は V∗V^* である。ここを両方 VV と書くと、VV が複素数の場合に固有値が実数であることを保証できない。

状態密度の数え方

状態密度は「kk 空間で数える」「単位長さ・単位面積・単位体積で割る」「エネルギーで微分する」の順に進める。スピン2重 degeneracy を最初に掛け忘れると、すべての答えが半分になる。

次元ごとの特徴

3次元では ρ3(E)∝E\rho_3(E)\propto\sqrt{E}、2次元では段差状に一定、1次元ではサブバンド端で 1/E−E01/\sqrt{E-E_0} 型に発散する。量子井戸、量子細線、バルク半導体の違いを説明するときにも同じ結果を使う。

量子力学/物性基礎の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 電気電子系 専門科目 院試 過去問の収録5年度