東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問です。解説の小見出しは21件です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 評価写像と核
方針
評価写像の核は「指定点で消える多項式」の空間である。 根を因数として抜き出すと,次元と共通部分がすぐ見える。
直和判定
「和が直和でない」とは,共通部分が でないという意味である。 和空間そのものをすべて求める必要はなく,共通部分に非零多項式が存在する条件を調べればよい。
検算
または のとき,実際に は を満たす。逆に,この形以外の非零多項式は条件 から残らない。
解答
の元を とおく。
(1) まず である。どちらも に含まれるので,求める和空間は の部分空間である。 一方,両者の共通部分は で一次元だから,和空間の次元は である。ところが も三次元であるから,和空間は そのものである。したがって,例えば が基底の一組である。
(2) 和が直和でないのは,二つの部分空間の共通部分に でない元があるときである。 共通部分の元 は を満たす。 最後の二条件 から と書ける。さらに より であり,非零解があるなら でなければならない。このとき なので, は と同値である。
最終答
基底の一例は
直和とならない実数は
第2問 — 回転した正方形上の積分
方針
被積分関数 は三次同次式なので,領域の拡大率から積分は 倍になる。 残る本質は回転角の最適化であり,これは の一変数問題に落ちる。
一様な誤差評価
は について最大を取るので, の誤差が回転角に依存しないことを書く必要がある。 この一様性があるため,最大値を取っても と扱える。
典型ミス
の値 は最大ではない。 の最大は ではなく である。
第3問 — 級数と広義積分の比較
方針
は和, は積分で定義されているが, が両者を結ぶリーマン和型の評価である。 先に の漸近形を求め,最後に を示すのが自然である。
小さい の主項
の発散は 近傍の から来る。 したがって主項は であり, は主項より一段小さい。
採点上の注意
では導関数を直接評価すると 型の項が出て,小さい に対して と言いにくい。 を使って第二項にも を取り出すのが要点である。
第4問 — テンソル冪で定まる線型写像
方針
テンソル冪はスカラー倍を 乗として見る。 したがって の自由度が出ることは最初に予想できる。
単射性の確認
非零ベクトル に対し,写像 は単射である。実際, に対して となる線型汎関数 を取れば, 後ろの 個に を作用させて を取り戻せる。
典型ミス
だけを見ると,根 が ごとに変わるように見える。 しかし混合テンソル を使うと,同じ が全ての に対して働くことが分かる。
第5問 — ガンマ関数と振動積分
方針
与えられた から,指数を にそろえる変数変換 を選ぶ。 あとはフーリエ型ガンマ積分に帰着する。
収束条件
近傍では なので問題ない。 側では絶対収束ではなく, の振動積分として収束する。 仮定 はこの を保証している。
公式の導出メモ
必要なら を としてから とし,虚部を取ればよい。
第6問 — オイラー型微分方程式
方針
と見ればオイラー型である。 斉次解の指数を先に決め,右辺 に合わせて一次式 を特殊解に取る。
広義積分の判定
と の項は 近傍でも十分可積分である。 発散を生む可能性があるのは の項だけであり, は無限大になる。したがって係数を にする条件が必要十分である。
検算
なら ,かつ なので である。初期条件とも整合している。
第7問 — 単調連続関数空間の位相
方針
一般の連続関数全体では,一様収束位相は点別収束位相より真に強い。 しかしここでは関数が単調増加であるため,有限個の点で値を押さえると区間全体の値も挟み込める。
分割の取り方
単調性だけではなく,基準となる の連続性が重要である。 連続な単調関数はコンパクト区間上一様連続であり,分割を細かくすれば各小区間での増分を任意に小さくできる。
典型ミス
「点別収束と一様収束は一般には違う」という記憶だけで不一致と答えると誤りである。 この問題では という単調関数の制限が効いており,点評価の有限個の条件から一様な制御が得られる。
年度別の解答例(21年度)
円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理
広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp
巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族
交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化
線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分
2021年度(このページ・全7問)
評価写像と核 / 回転した正方形上の積分 / 級数と広義積分の比較
上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近
関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列
平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分
多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性
2016年度(全7問)最終答まで公開
核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列
2015年度(全7問)最終答まで公開
剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間
2014年度(全7問)最終答まで公開
線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分
2013年度(全7問)最終答まで公開
ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換
2012年度(全7問)最終答まで公開
交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分
2011年度(全7問)最終答まで公開
対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性
2010年度(全7問)最終答まで公開
階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性
2007年度(全7問)最終答まで公開
広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍
2006年度(全7問)最終答まで公開
行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解
2005年度(全7問)最終答まで公開
実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離
2004年度(全7問)最終答まで公開
行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性
2021年度の出題内容
全7問
前年度(2020年度)との違い
- 大問数
- 2020年度 7問 → 2021年度 7問
東京大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 直近3年度(おおむね2020〜2022相当)
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 英語の扱い
- TOEIC L&R または TOEFL iBT/ITP のスコア提出。学内英語試験は実施なし。
- 院試hubの最終確認
- 2026-06-03