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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 情報学研究科 数理情報学 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全14問)

全14問。情報2問・線形代数2問・代数2問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・グラフ理論・スピン)。2019年8月実施と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・グラフ理論・動的計画法。

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解説14問と大問1問の途中式・最終答(全14問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき14問)
問題本文
非収録

名大 数理情報学 2022年度 院試 過去問の出題内容(全14問)

この14問の分野は情報2問・線形代数2問・代数2問・微分積分・解析2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数第1科目・線形代数列ベクトルを並べる / 核の判定あり
第2問微分積分・解析第1科目・微分積分特異点を見る / 指数減衰は多項式に勝つあり
第3問代数第1科目・代数学素因数分解に落とす / 有限個の例外をまとめるあり
第4問—第1科目・グラフ理論最小色数の示し方 / 偶閉路条件と二部グラフあり
第5問—第1科目・数学基礎論Sierpinski 空間の役割 / 開写像の確認あり
第6問—第1科目・量子力学観測量とエルミート性 / 分散の見通しあり
第7問情報第1科目・アルゴリズム設計法擬多項式時間 / 数えるDPあり
第8問線形代数第2科目・線形代数対角化の順序 / 極限は最大固有値の方向あり
第9問微分積分・解析第2科目・微分積分向きの符号 / 極座標での確認あり
第10問代数第2科目・代数学係数比較の問題 / 添字の整理あり
第11問—第2科目・グラフ理論和が区間に入るかだけを見る / 5閉路が失敗する理由あり
第12問—第2科目・数学基礎論商写像の形 / 第1科目の結果との接続あり
第13問—第2科目・量子力学指数関数の計算 / 状態ごとの直交化と全状態の直交化あり
第14問情報第2科目・アルゴリズム設計法対数の底は固定 / 階乗は対数を取るあり

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に5テーマが出ています。

前年度(2019年8月実施)との違い

大問数
2019年8月実施 8問 → 2022年度 14問
2022年度で新しく出たテーマ
スピン・計算量理論
2019年8月実施のページを見る

第1問 — 第1科目・線形代数

列ベクトルを並べる

線形写像の表現行列は「第 ii 列が L(ei)L(e_i)」である。ここを行と列で取り違えると、後続の核や次元の計算もすべて入れ替わってしまう。

核の判定

L:R5→R5L:\mathbb R^5\to\mathbb R^5 なので、核が自明であることは全単射、すなわち行列式が非零であることと同じである。行列式は因数分解した形 a(2a−b)(b2+c2)a(2a-b)(b^2+c^2) まで出すと、実数条件では b2+c2=0b^2+c^2=0 が (b,c)=(0,0)(b,c)=(0,0) と同値であることがすぐ読める。

解答

標準基底に関する表現行列は、各列に L(ei)L(e_i) を並べればよい。したがって A=(000ac1a00000a0b2b00000bc0) A= \begin{pmatrix} 0&0&0&a&c\\ 1&a&0&0&0\\ 0&0&a&0&b\\ 2&b&0&0&0\\ 0&0&b&c&0 \end{pmatrix} である。

核が {0}\{0\} であることは、正方行列 AA が正則であることと同値である。行列式を計算すると det⁡A=2a2b2+2a2c2−ab3−abc2=a(2a−b)(b2+c2) \det A =2a^2b^2+2a^2c^2-ab^3-abc^2 =a(2a-b)(b^2+c^2) となる。よって a≠0,b≠2a,(b,c)≠(0,0) a\ne 0,\qquad b\ne 2a,\qquad (b,c)\ne (0,0) が必要十分条件である。

最後に a=0, b≠0, c≠0a=0,\ b\ne 0,\ c\ne 0 とする。このとき列ベクトルは L(e1)=(0,1,0,2,0)T,L(e2)=(0,0,0,b,0)T,L(e3)=(0,0,0,0,b)T,L(e4)=(0,0,0,0,c)T,L(e5)=(c,0,b,0,0)T. \begin{aligned} L(e_1)&=(0,1,0,2,0)^T,& L(e_2)&=(0,0,0,b,0)^T,\\ L(e_3)&=(0,0,0,0,b)^T,\\ L(e_4)&=(0,0,0,0,c)^T,\\ L(e_5)&=(c,0,b,0,0)^T . \end{aligned} L(e2)L(e_2) から第4成分方向、L(e1)L(e_1) と L(e2)L(e_2) から第2成分方向、L(e3)L(e_3) から第5成分方向、L(e5)L(e_5) から第1・第3成分のある1方向が得られる。一方 L(e4)L(e_4) は L(e3)L(e_3) の定数倍である。したがって張られる部分空間の次元は 44 である。

最終答

A=(000ac1a00000a0b2b00000bc0),ker⁡L={0}⟺a(2a−b)(b2+c2)≠0. A= \begin{pmatrix} 0&0&0&a&c\\ 1&a&0&0&0\\ 0&0&a&0&b\\ 2&b&0&0&0\\ 0&0&b&c&0 \end{pmatrix},\quad \ker L=\{0\}\Longleftrightarrow a(2a-b)(b^2+c^2)\ne 0. a=0, b≠0, c≠0a=0,\ b\ne 0,\ c\ne 0 のときの次元は 44。

第2問 — 第1科目・微分積分

特異点を見る

(1) は上端ではなく 00 での発散が本質である。exe^x は 00 近傍で 11 と同程度なので、x−2x^{-2} の発散に支配される。

指数減衰は多項式に勝つ

(2) では無限大で 1+x4\sqrt{1+x^4} は x2x^2 と同程度である。指数関数 e−xe^{-x} が掛かっているため、x2e−xx^2e^{-x} と比較すれば十分である。広義積分では、有限区間上の連続性と無限遠での挙動を分けて書くと答案が安定する。

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第3問 — 第1科目・代数学

素因数分解に落とす

条件 (i) は完全乗法性ではなく、互いに素な積に対する乗法性である。したがって n=∏piain=\prod p_i^{a_i} と素数冪に分けたときだけ、確実に f(n)=∏f(piai)f(n)=\prod f(p_i^{a_i}) と書ける。

有限個の例外をまとめる

仮定 (ii) は「大きい素数冪」だけを小さくする条件である。小さい素数冪は有限個しかないので、その寄与を一つの定数 CC に吸収するのが要点である。十分大きい nn には必ず大きい素数冪因子が含まれるため、そこから任意の小ささを得られる。

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第4問 — 第1科目・グラフ理論

最小色数の示し方

「3色で塗れる」だけでは最小性は出ない。三角形の存在から 22 色以下が不可能であることを先に示し、そのうえで具体的な 33 彩色を与える。

偶閉路条件と二部グラフ

閉路がすべて偶数であることは、グラフが二部グラフであることと同値である。最短距離の偶奇で塗る証明では、同色辺があると最短路木の2本の道とその辺から奇閉路を作れる、という矛盾を明記するのが重要である。

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第5問 — 第1科目・数学基礎論

Sierpinski 空間の役割

SS は {1}\{1\} だけが非自明な開集合である空間である。したがって SNS^N の開集合は「有限個の座標が 11 である」という正の情報で生成される。00 を指定する条件は一般には開にならない。

開写像の確認

開性では、任意の開集合を直接扱うより、積位相の基本開集合を調べるのが簡単である。NN\mathbb N^N 側では値を等号で指定できるが、SNS^N 側の像では「指定された値がどこかに現れる」という条件が、対応する座標の 11 条件に変換される。

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第6問 — 第1科目・量子力学

観測量とエルミート性

有限次元量子力学では、観測量はエルミート行列で表される。XX はパウリ行列の一つで、固有値は ±1\pm1 である。

分散の見通し

X2=IX^2=I を先に使うと、分散は 1−⟨X⟩21-\langle X\rangle^2 だけで済む。期待値が ±1\pm1 になる時刻では状態が XX の固有状態になっており、測定値に揺らぎがないため分散が 00 になる。

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第7問 — 第1科目・アルゴリズム設計法

擬多項式時間

O(nb)O(nb) は、入力値 bb の大きさに対する多項式時間であり、ビット長 log⁡b\log b に対する多項式時間ではない。この問題文では入力サイズに関する多項式時間でなくてもよいとされているため、部分和DPが自然な最速候補になる。

数えるDP

存在判定の ∨\lor を加算に置き換えると、各部分集合を「最後に使うか使わないか」で一度ずつ数えられる。配列を1次元にするときは、同じ aia_i を二度使わないように s=b,b−1,…,ais=b,b-1,\dots,a_i の降順で更新する。

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第8問 — 第2科目・線形代数

対角化の順序

PP の列に固有ベクトルを並べた順序と、DD の対角成分の順序を一致させる必要がある。順序が違うと A=PDP−1A=PDP^{-1} にならない。

極限は最大固有値の方向

aa に最大固有値 22 の固有ベクトル成分が含まれているため、AnaA^n a では 2n2^n の項だけが支配的になる。正規化後の極限は、その固有ベクトルを長さ 11 にしたものになる。

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第9問 — 第2科目・微分積分

向きの符号

右から左へ動くため、接ベクトルの xx 成分は負である。この条件を落とすと (1,y′)/1+(y′)2(1,y')/\sqrt{1+(y')^2} としてしまい、後の角度公式の符号が合わなくなる。

極座標での確認

x=rcos⁡θ, y=rsin⁡θx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta を θ\theta で微分すると、 dydx=r′sin⁡θ+rcos⁡θr′cos⁡θ−rsin⁡θ \frac{dy}{dx}=\frac{r'\sin\theta+r\cos\theta}{r'\cos\theta-r\sin\theta} である。これを接線角の公式に代入すると、三角関数の項が消えて r′=r/tan⁡τr'=r/\tan\tau が残る。

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第10問 — 第2科目・代数学

係数比較の問題

指数関数の母関数で ∑km\sum k^m を取り出す標準手法である。左辺の ekxe^{kx} から km/m!k^m/m! が出るため、最後に m!m! を掛ける点を忘れない。

添字の整理

enx−1x\frac{e^{nx}-1}{x} の xqx^q 係数は nq+1/(q+1)!n^{q+1}/(q+1)! である。ここで q=m−jq=m-j と置くと、二項係数 m!j!(m+1−j)!=1m+1(m+1j) \frac{m!}{j!(m+1-j)!}=\frac1{m+1}\binom{m+1}{j} が現れる。

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第11問 — 第2科目・グラフ理論

和が区間に入るかだけを見る

サンドイッチ表現では、頂点の位置ではなく重み和だけが辺の有無を決める。具体例では、辺にしたい対の和と非辺にしたい対の和を表にして区間内外を確認するとよい。

5閉路が失敗する理由

H3H_3 の不可能性は、最小重みの頂点を一つ固定すると不等式が一方向に連鎖するために起こる。非辺は「区間の下に外れる」か「上に外れる」かのどちらかだが、最小性により一部の非辺は下に外れざるを得ず、そこから隣接頂点間の大小関係が矛盾する。

第2科目・グラフ理論の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 第2科目・数学基礎論

商写像の形

(1) は開な全射による商写像の基本性質である。g−1(V)g^{-1}(V) を直接調べるのではなく、h−1(g−1(V))=f−1(V)h^{-1}(g^{-1}(V))=f^{-1}(V) が開であることから、hh の開性で戻す。

第1科目の結果との接続

φ\varphi は NN\mathbb N^N から SNS^N への開な全射である。したがって φ\varphi を通じて分解する連続な BB 値関数は、SNS^N 上の連続関数に降りる。ここで SN→BS^N\to B の連続関数が定数しかないことが効く。

第2科目・数学基礎論の途中式・最終答をPDFで見る

第13問 — 第2科目・量子力学

指数関数の計算

Y2=IY^2=I なので、e−itYe^{-itY} は三角関数で閉じる。これはパウリ行列一般に共通する計算で、偶数次が II、奇数次が YY にまとまる。

状態ごとの直交化と全状態の直交化

一つの状態を指定すれば、それを任意の直交状態へ送るユニタリは作れる。しかし、すべての状態に対して同じ線形ユニタリで直交化することはできない。重ね合わせ状態に対する条件が互いに矛盾するためである。

第2科目・量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第14問 — 第2科目・アルゴリズム設計法

対数の底は固定

オーダー記法では対数の底は固定されていれば定数倍の違いでしかない。ただし (log⁡n)log⁡n(\log n)^{\log n} は nn よりも大きくなるため、O(n)O(n) へは落とせない。

階乗は対数を取る

n!=2h(n)n!=2^{h(n)} と見るなら、示すべきことは h(n)=log⁡2(n!)=Θ(nlog⁡n)h(n)=\log_2(n!)=\Theta(n\log n) である。上界は nnn^n、下界は後半の n/2n/2 個の因子を n/2n/2 で下から抑えるだけで十分である。

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