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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 情報学研究科 数理情報学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。数学1問・線形代数1問・代数1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・スピン)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・スピン。

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

名大 数理情報学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は数学1問・線形代数1問・代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—クロネッカー積を見る目 / 答案で落としやすい点あり
第2問微分積分・解析微分積分—あり
第3問代数代数学核となる見方 / 答案上の注意あり
第4問数学数学基礎論順序付き集合として見る / 部分対象の注意点あり
第5問—量子力学重ね合わせと混合の違い / 計算の短縮あり
第6問—離散最適化貪欲法の限界 / 上界の意味あり

この年度の解説には検算1件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 14問 → 2024年度 6問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・スピン
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第1問 — 線形代数

クロネッカー積を見る目

この問題の狙いは、成分計算だけでなく「大きな行列を小さな行列のクロネッカー積として 見る」ことである。44 次行列をそのまま固有方程式で解くと計算量が増えるが、22 次 行列二つの積に分解すれば、固有値は積、固有ベクトルはクロネッカー積で得られる。

答案で落としやすい点

(A⊗B)(v⊗w)=Av⊗Bw(A\otimes B)(v\otimes w)=Av\otimes Bw を使うときは、最後に v⊗w≠0v\otimes w\ne 0 も確認しておくと固有ベクトルであることが明確になる。また、全ての 固有ベクトルを求める場面では、4本が一次独立であることを添えれば「これで全て」と 言える。

解答

(1)

v=(v1,v2)t, w=(w1,w2)tv=(v_1,v_2)^t,\ w=(w_1,w_2)^t とする。第1変数については、任意の u=(u1,u2)t, v=(v1,v2)tu=(u_1,u_2)^t,\ v=(v_1,v_2)^t に対して (u+v)⊗w=((u1+v1)w1(u1+v1)w2(u2+v2)w1(u2+v2)w2)=u⊗w+v⊗w. (u+v)\otimes w = \begin{pmatrix} (u_1+v_1)w_1\\ (u_1+v_1)w_2\\ (u_2+v_2)w_1\\ (u_2+v_2)w_2 \end{pmatrix} = u\otimes w+v\otimes w. 第2変数についても同様に v⊗(w+z)=(v1(w1+z1)v1(w2+z2)v2(w1+z1)v2(w2+z2))=v⊗w+v⊗z. v\otimes (w+z) = \begin{pmatrix} v_1(w_1+z_1)\\ v_1(w_2+z_2)\\ v_2(w_1+z_1)\\ v_2(w_2+z_2) \end{pmatrix} = v\otimes w+v\otimes z. また、a∈Ra\in\mathbb{R} に対して (av)⊗w=(av1w1av1w2av2w1av2w2)=a(v⊗w)=v⊗(aw). (av)\otimes w = \begin{pmatrix} av_1w_1\\ av_1w_2\\ av_2w_1\\ av_2w_2 \end{pmatrix} = a(v\otimes w) = v\otimes (aw). したがってクロネッカー積は双線形である。

(2)

Av=αv, Bw=βwAv=\alpha v,\ Bw=\beta w とする。行列のクロネッカー積の基本性質より (A⊗B)(v⊗w)=Av⊗Bw=αv⊗βw=αβ(v⊗w). (A\otimes B)(v\otimes w)=Av\otimes Bw =\alpha v\otimes \beta w =\alpha\beta (v\otimes w). 固有ベクトルは零ベクトルでないから、v⊗wv\otimes w も零ベクトルではない。よって v⊗wv\otimes w は A⊗BA\otimes B の固有値 αβ\alpha\beta に属する固有ベクトルである。

(3)

与えられた 44 次正方行列は M=(2112)⊗(3113) M= \begin{pmatrix}2&1\\1&2\end{pmatrix} \otimes \begin{pmatrix}3&1\\1&3\end{pmatrix} と分解できる。左の行列の固有値・固有ベクトルは 3:(11),1:(1−1), 3:\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\qquad 1:\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}, 右の行列の固有値・固有ベクトルは 4:(11),2:(1−1) 4:\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\qquad 2:\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix} である。したがって (2) から、MM の固有値と対応する固有ベクトルは 固有値固有ベクトルの一例12(1,1,1,1)t6(1,−1,1,−1)t4(1,1,−1,−1)t2(1,−1,−1,1)t \begin{array}{c|c} \text{固有値} & \text{固有ベクトルの一例}\\ \hline 12 & (1,1,1,1)^t\\ 6 & (1,-1,1,-1)^t\\ 4 & (1,1,-1,-1)^t\\ 2 & (1,-1,-1,1)^t \end{array} である。これら4本の固有ベクトルは互いに直交し、一次独立なので、固有ベクトルは それぞれのスカラー倍全体で尽くされる。

最終答

MM の固有値は 12,6,4,212,6,4,2。対応する固有ベクトルとして (1,1,1,1)t,(1,−1,1,−1)t,(1,1,−1,−1)t,(1,−1,−1,1)t (1,1,1,1)^t,\quad (1,-1,1,-1)^t,\quad (1,1,-1,-1)^t,\quad (1,-1,-1,1)^t を取れる。

第2問 — 微分積分

方針

被積分関数 arctan⁡(y/x)\arctan(y/x) は、原点から見た偏角だけに依存する。三角形状の領域では y=txy=tx、円を含む領域では極座標を使うと、積分がほぼ一変数に分離される。

検算

S3S_3 の値は π24−π+2log⁡2≒0.71>0 \frac{\pi^2}{4}-\pi+2\log2\fallingdotseq 0.71>0 であり、面積積分として符号が正になる。最後に正値性を確認しておくと、積分範囲や sec⁡2θ\sec^2\theta の係数の符号ミスに気づきやすい。

微分積分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 代数学

核となる見方

この問題は、θ\theta を 00 に潰したときに何が残るかを問うている。多項式表示で考えると、 T=0T=0 と f(T)=0f(T)=0 を同時に課すので、残る条件は f(0)=nf(0)=n だけである。したがって Z[θ]/(θ)\mathbb{Z}[\theta]/(\theta) は Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} になる。

答案上の注意

「表示を変えても aa の剰余が変わらない」ことを直接成分計算で示そうとすると煩雑に なりやすい。商環を一度書けば、well-defined 性と後半の (p,θ)(p,\theta) による商が同じ 計算で処理できる。

代数学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 数学基礎論

順序付き集合として見る

射の条件は「出発側の値が到着側の値以下」という不等式である。そのため、積では二つの 射影へ同時に射になるように min⁡\min を取り、余積では各成分の値をそのまま貼り合わせる。 この min⁡/max⁡\min/\max の使い分けが、後半の束構造にもそのまま現れる。

部分対象の注意点

この圏のモノ射は台集合上の単射であり、値 EA(a)E_A(a) が EZ(m(a))E_Z(m(a)) と等しい必要はない。 等号を仮定してしまうと部分対象を狭く見積もってしまい、Sub⁡(Z)\operatorname{Sub}(Z) の順序を 正しく記述できない。

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第5問 — 量子力学

重ね合わせと混合の違い

二体系の ∣Φ⟩|\Phi\rangle は、二つの基底状態の重ね合わせであり、X⊗XX\otimes X によって 二つの項が入れ替わっても全体として同じ状態に戻る。そのため期待値は 11 になる。 一方、確率混合では各基底状態ごとの期待値を平均するだけで、項どうしの干渉は現れない。 この違いが (5) と (6) の値の差である。

計算の短縮

X2=IX^2=I を先に確認すれば、指数行列は三角関数の形に直ちに整理できる。パウリ行列型の 問題では、この性質を使うと級数を直接展開し続けずに済む。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 離散最適化

貪欲法の限界

密度順貪欲法は分数ナップサックでは最適だが、0-1 ナップサックでは一度選んだ小さな 高密度要素が、大きな高利得要素を締め出すことがある。主張 B の反例はこの現象を極端に したもので、近似比が任意に悪くなり得ることを示している。

上界の意味

主張 C の式は、密度順に詰めて最後の要素だけを分割してよいとした場合の値である。 0-1 問題の実行可能解は分割を許した緩和問題の実行可能解でもあるため、緩和問題の最適値 は元の問題の上界になる。

離散最適化の途中式・最終答をPDFで見る

名大 数理情報学 院試 過去問の収録5年度