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名大 情報学研究科 複雑系科学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全20問)

全20問の分野は熱・統計力学1問、力学1問です。固有値・固有ベクトル、調和振動子、伝達関数などが出ています。2024年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、調和振動子、伝達関数です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 数1

正定値性は二次形式だけを見る

定義では xTXxx^TXx だけが問われている。したがって行列が対称かどうかとは別に,二次形式に現れるのは実質的に対称部分である。[3] の反例では歪対称成分を入れて固有値を複素数にしつつ,二次形式は x12+x22x_1^2+x_2^2 のまま保っている。

対称正定値行列の固有値

対称性がある場合,固有ベクトルを実ベクトルとして取れることが重要である。正定値性を固有ベクトル vv に適用すると,λvTv>0\lambda v^Tv>0 が出るため,固有値の正性がただちに従う。

逆行列の差の扱い

A−1−(A+B)−1A^{-1}-(A+B)^{-1} は一見すると正定値性が分かりにくい。そこで A−1−(A+B)−1=A−1(A−1+B−1)−1A−1 A^{-1}-(A+B)^{-1} =A^{-1}(A^{-1}+B^{-1})^{-1}A^{-1} という形に直すと,既に証明した CTACC^TAC 型の結果に落とせる。

解答

[1]

1) x=(x1,x2)Tx=(x_1,x_2)^T とおくと xTMx=(x1x2)(2001)(x1x2)=2x12+x22. x^TMx = \begin{pmatrix}x_1&x_2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}2&0\\0&1\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix} =2x_1^2+x_2^2. x≠0x\ne0 なら x1,x2x_1,x_2 の少なくとも一方は 00 でないので 2x12+x22>0. 2x_1^2+x_2^2>0. したがって MM は正定値行列である。

2) 同様に xTNx=(x1x2)(243−5)(x1x2)=2x12+7x1x2−5x22. x^TNx = \begin{pmatrix}x_1&x_2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}2&4\\3&-5\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix} =2x_1^2+7x_1x_2-5x_2^2. 例えば x=(0,1)Tx=(0,1)^T とすると xTNx=−5<0 x^TNx=-5<0 である。よって NN は正定値行列ではない。

3) XX を対称かつ正定値とする。対称行列の固有値と固有ベクトルは実数・実ベクトルとして取れるので,固有値を λ\lambda,対応する非零固有ベクトルを vv とする。 Xv=λv Xv=\lambda v であるから vTXv=vT(λv)=λvTv. v^TXv=v^T(\lambda v)=\lambda v^Tv. 正定値性より vTXv>0v^TXv>0 であり,また v≠0v\ne0 だから vTv>0v^Tv>0 である。したがって λ=vTXvvTv>0. \lambda=\frac{v^TXv}{v^Tv}>0. よって固有値は常に正の実数である。

[2]

1) A,BA,B は対称なので (A+B)T=AT+BT=A+B (A+B)^T=A^T+B^T=A+B であり,A+BA+B は対称である。任意の非零ベクトル xx に対して xT(A+B)x=xTAx+xTBx. x^T(A+B)x=x^TAx+x^TBx. A,BA,B はともに正定値なので右辺は正の数の和である。したがって A+BA+B は正定値である。

2) まず (CTAC)T=CTATC=CTAC (C^TAC)^T=C^TA^TC=C^TAC であるから対称である。さらに x≠0x\ne0 とする。CC は可逆なので Cx≠0Cx\ne0 であり, xTCTACx=(Cx)TA(Cx)>0. x^TC^TACx=(Cx)^TA(Cx)>0. よって CTACC^TAC は正定値である。

3) 問題文の事実より A−1A^{-1} と (A+B)−1(A+B)^{-1} は対称であるから, A−1−(A+B)−1 A^{-1}-(A+B)^{-1} も対称である。

正定値性を示す。A−1A^{-1} と B−1B^{-1} は対称かつ正定値であるから,1) より A−1+B−1 A^{-1}+B^{-1} も対称かつ正定値である。したがってその逆行列 D=(A−1+B−1)−1 D=(A^{-1}+B^{-1})^{-1} も対称かつ正定値である。ここで A−1+B−1=B−1(A+B)A−1 A^{-1}+B^{-1}=B^{-1}(A+B)A^{-1} より D=A(A+B)−1B. D=A(A+B)^{-1}B. したがって A−1DA−1=(A+B)−1BA−1=A−1−(A+B)−1. A^{-1}DA^{-1} =(A+B)^{-1}BA^{-1} =A^{-1}-(A+B)^{-1}. 最後の等号は A−1−(A+B)−1=(A+B)−1{(A+B)−A}A−1 A^{-1}-(A+B)^{-1} =(A+B)^{-1}\{(A+B)-A\}A^{-1} から従う。2) を DD と C=A−1C=A^{-1} に適用すると A−1DA−1 A^{-1}DA^{-1} は対称かつ正定値である。よって A−1−(A+B)−1 A^{-1}-(A+B)^{-1} は対称かつ正定値である。

[3]

答は No である。反例として X=(1−221) X=\begin{pmatrix}1&-2\\2&1\end{pmatrix} を取る。任意の非零 x=(x1,x2)Tx=(x_1,x_2)^T に対して xTXx=(x1x2)(x1−2x22x1+x2)=x12+x22>0 x^TXx = \begin{pmatrix}x_1&x_2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x_1-2x_2\\2x_1+x_2\end{pmatrix} =x_1^2+x_2^2>0 であるから,この XX は正定値行列である。

一方,固有方程式は det⁡(λI−X)=det⁡(λ−12−2λ−1)=(λ−1)2+4=0 \det(\lambda I-X) = \det\begin{pmatrix}\lambda-1&2\\-2&\lambda-1\end{pmatrix} =(\lambda-1)^2+4=0 である。したがって λ=1±2i \lambda=1\pm2i となり,固有値は実数ではない。よって「常に正の実数」とは言えない。

最終答

[1]xTMx=2x12+x22>0,xTNx=2x12+7x1x2−5x22,[2]A+B, CTAC, A−1−(A+B)−1 はいずれも対称かつ正定値,[3]No. 例えば (1−221) は正定値だが固有値は 1±2i. \begin{gathered} [1]\quad x^TMx=2x_1^2+x_2^2>0,\qquad x^TNx=2x_1^2+7x_1x_2-5x_2^2,\\ [2]\quad A+B,\ C^TAC,\ A^{-1}-(A+B)^{-1}\text{ はいずれも対称かつ正定値},\\ [3]\quad \text{No. 例えば } \begin{pmatrix}1&-2\\2&1\end{pmatrix} \text{ は正定値だが固有値は }1\pm2i. \end{gathered}

第2問 — 数2

リーマン和への直し方

1n+i\frac{1}{n+i} をそのまま眺めるより, 1n+i=1n11+i/n \frac{1}{n+i}=\frac{1}{n}\frac{1}{1+i/n} と変形すると,幅 Δx=1/n\Delta x=1/n,標本点 xi=i/nx_i=i/n のリーマン和になる。この形にできるかが本問の要点である。

方向場の読み方

直線 1+x−y=c1+x-y=c は等傾線である。その直線上では解曲線の接線の傾きがすべて cc になる。特解 y=x+5e−xy=x+5e^{-x} は初め傾き −4-4 で下がり,x=log⁡5x=\log5 で傾き 00 になってから増加し,最終的には直線 y=xy=x に近づく。

投薬モデルの上限と下限

各投与時刻で量は p0p_0 だけ不連続に増え,投与と投与の間では指数関数的に減る。したがって長時間後のグラフは一定値に収束するのではなく,上限 p01−e−kT \frac{p_0}{1-e^{-kT}} と下限 p0e−kT1−e−kT \frac{p_0e^{-kT}}{1-e^{-kT}} の間を繰り返す周期的な鋸歯状の曲線に近づく。

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第3問 — 物1

重心座標で交差項が消える理由

r1=R−(m2/M)r\boldsymbol{r}_1=\boldsymbol{R}-(m_2/M)\boldsymbol{r}, r2=R+(m1/M)r\boldsymbol{r}_2=\boldsymbol{R}+(m_1/M)\boldsymbol{r} を運動エネルギーに代入すると,R˙⋅r˙\dot{\boldsymbol R}\cdot\dot{\boldsymbol r} の係数は −m1m2/M+m2m1/M=0-m_1m_2/M+m_2m_1/M=0 になる。これが重心運動と相対運動が分離する理由である。

楕円軌道の速さ

相対運動は xx と yy が同じ角振動数の単振動をする。今回の初期条件では xx と yy の位相が π/2\pi/2 ずれるため楕円になる。速さの最大・最小は楕円の長軸・短軸ではなく,x˙2+y˙2\dot x^2+\dot y^2 の式から判定するのが確実である。

2次元振動子のゼロ点エネルギー

1次元調和振動子のゼロ点エネルギーは ℏω/2\hbar\omega/2 である。2次元等方振動子では独立な xx 方向と yy 方向の寄与が足し合わさるので,基底エネルギーは ℏω\hbar\omega になる。

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第4問 — 物2

導体球殻の内側

球殻上に一様な電荷がある場合,球殻内部のガウス面が囲む電荷はゼロである。対称性と合わせると内部電場はゼロになる。ただし電位はゼロではなく,表面電位と同じ一定値である。

仕事と電場エネルギーの一致

電荷を少しずつ運び込む計算で得る WW と,エネルギー密度 ε0E2/2\varepsilon_0E^2/2 を積分して得る UU は同じ値になる。これは静電場のエネルギーが,電荷分布を組み立てるための仕事に等しいことを示している。

電場圧の積分

球殻を切ったときの力は,切断面の面積ではなく球面キャップ上の電場圧の鉛直成分を積分する。半球の場合 h=0h=0 とすれば F=Q2/(32πε0R2)F=Q^2/(32\pi\varepsilon_0R^2) となり,既知の半球間反発力と一致する。

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第5問 — 物3

熱浴の状態数がボルツマン因子を作る

注目系がエネルギー ϵi\epsilon_i を取ると,熱浴のエネルギーがその分だけ減る。熱浴が十分大きいとき,状態数の比 W(E−ϵi)/W(E)W(E-\epsilon_i)/W(E) は指数関数 e−βϵie^{-\beta\epsilon_i} に近づく。この近似がカノニカル分布の核心である。

古典調和振動子の各自由度

1つの古典1次元調和振動子には,運動量の2次形式と位置の2次形式が1つずつある。等分配の見方ではそれぞれ kBT/2k_BT/2 を持つので,1振動子あたり平均エネルギーは kBTk_BT となる。積分計算の結果 NkBTNk_BT と一致する。

位相空間の規格化

古典分配関数では位相空間体積を hNh^N で割る。これにより ZZ が無次元になり,自由エネルギーの対数が意味を持つ。係数 2π2\pi を落としやすいので,ガウス積分を位置と運動量で別々に確認するとよい。

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第6問 — 化1

変分法は係数について微分する

ヒュッケル法では軌道の形を原子軌道の線形結合に制限し,係数を変えてエネルギーを最小化する。規格化条件を未定乗数で入れると,係数に関する連立一次方程式が出る。この連立方程式が非自明解を持つ条件が永年方程式である。

ヘテロ原子のクーロン積分

酸素は炭素より電気陰性度が高く,問題では酸素のクーロン積分を α+2β\alpha+2\beta としている。ここで β<0\beta<0 なので,酸素の軌道エネルギーは炭素より低い。低い π\pi 軌道で酸素係数が大きくなることもこの設定と対応している。

質量分析の43ピーク

アセトンの分子イオンは α\alpha 開裂によりメチルラジカルを失いやすく,CHX3COX+\ce{CH3CO+} を与える。アシリウムイオンは C≡OX+\ce{C#O+} 型の寄与が大きいため比較的安定で,強いピークとして観測される。

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第7問 — 化2

定常状態近似では中間体の生成消費を釣り合わせる

NO\ce{NO} と NOX3\ce{NO3} は反応中に少量だけ存在する中間体である。そこで時間変化を 0 とおくと,観測される一次反応速度定数を素反応速度定数の組合せで表せる。特に NO\ce{NO} を消去した後,NOX3\ce{NO3} の消費項に k2k_2 が2回現れる点が落とし穴である。

Lennard-Jonesポテンシャルの2つの項

r−12r^{-12} 項は電子雲の重なりによる強い反発,r−6r^{-6} 項は分散力による引力を表す。極小では反発と引力の傾きが釣り合う。井戸の深さが ϵ\epsilon,ゼロ交差距離が σ\sigma である。

遠心項は束縛井戸を浅くする

回転量子数 JJ が大きくなると遠心項が増え,有効ポテンシャルの谷が消える。C(r)C(r) の最大値が,束縛極値が存在できる限界を与える。

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第8問 — 化3

シクロヘキサン配座は1,3-ジアキシアル反発で決める

置換シクロヘキサンでは,大きい置換基ほどエクアトリアル位を好む。メチル基でもアキシアル位では二つの近いアキシアル水素と反発するため,平衡はエクアトリアル側へ傾く。

重水素化は可逆なエノラート形成の結果

塩基はカルボニルの α\alpha 水素を選択的に引き抜く。エノラートは再プロトン化されるが,溶媒が DX2O\ce{D2O} なので戻る原子は H ではなく D になる。過剰の DX2O\ce{D2O} ではこの過程が統計的に繰り返され,重水素化が進む。

アニリンは孤立電子対が環へ逃げる

アニリンの窒素孤立電子対はベンゼン環と共鳴できるため,脂肪族アミンよりプロトンを受け取りにくい。置換基効果は,電子供与基なら塩基性を上げ,電子求引基なら下げる方向に働く。

アキラル触媒はエナンチオ面を区別しない

出発物がエナンチオマーの 1:1 混合物で,触媒もアキラルなら,生成物全体も鏡像関係を保つ。新しい不斉中心ができるため,各出発物からジアステレオマーの組が生じ,合計4種類になる。

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第9問 — 化4

弱塩基でフェノールだけをメチル化する

KX2COX3\ce{K2CO3} は強塩基ではないが,フェノールを十分にフェノキシドへ変える。ヨウ化メチルは一次ハロゲン化物なので SN2\mathrm{S_N2} が速く,O-メチル化が主反応になる。

Fischerエステル化は平衡反応

酸触媒エステル化では,カルボニル活性化,アルコール付加,水の脱離が順に起こる。エタノールを過剰にしているため平衡がエステル側へ寄る。

ジアゾニウム塩は低温で扱う

芳香族ジアゾニウム塩は温度が高いと分解しやすい。低温で調製し,電子豊富な N,N-ジメチルアニリンへ作用させると,パラ位でアゾカップリングが進む。

ニトロ基による求核芳香族置換

通常の aryl fluoride は置換されにくいが,ニトロ基があると付加中間体の負電荷を安定化できる。したがって FX−\ce{F^-} が脱離基となり,芳香族エーテルが得られる。

1,4-ジカルボニルとアミンはピロールを作る

Paal-Knorr 型反応では,二つのカルボニルと一つのアミンから五員環ができる。高温・過剰の 2,5-ヘキサンジオンを用いることで,アデニンのアミノ基がピロールとして固定される。

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第10問 — 生1

細胞周期図の読み方

黒い三角が娘細胞の生じる時点であるから、その直後が G1 期である。S 期は DNA 量が増える時期、G2 期は分裂準備が進む時期、M 期は核分裂と細胞質分裂が起こる時期である。間期は G1、S、G2 をまとめた区分なので、図の内側の大きな区画に対応する。

複製方向の落とし穴

ラギング鎖が不連続になる理由は、DNA ポリメラーゼが常に新生鎖の 3′3' 端へヌクレオチドを加えるからである。フォークの向きと新生鎖合成の向きが一致する側は連続合成、逆向きになる側はプライマーを何度も置いて岡崎フラグメントを作る、と対応させると説明しやすい。

他の選択肢を選ぶ場合

(b) は ATP 依存的なクロマチン再構成複合体がヌクレオソームの位置や密度を変え、転写因子が DNA に接近しやすく、または接近しにくくする仕組みを書く。(d) は複製直後の DNA が親鎖だけメチル化された半メチル化状態になり、維持メチル化酵素が新生鎖側に同じメチル化を入れることでエピジェネティック情報が継承される、と説明する。

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第11問 — 生2

RNA-seqは発現量だけで終わらない

RNA-seq は「RNA の量を測る」だけでなく、リードの位置とつながりを使ってスプライシング、融合転写産物、新規転写領域も解析できる。答案では、cDNA ライブラリ、シークエンシング、マッピング、カウント、正規化という流れを入れると、原理と手順の区別が明確になる。

RNAiはノックアウトではなくノックダウン

RNAi では標的 mRNA の量や翻訳が低下するが、ゲノム配列を直接変えるわけではない。残存発現、オフターゲット効果、導入効率の違いが結果に影響するため、対照 siRNA、複数配列、mRNA とタンパク質の両方の確認を書くと実験として説得力が増す。

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第12問 — 生3

細菌と真核生物の転写開始の対比

細菌では RNA ポリメラーゼのコア酵素に σ\sigma 因子が加わることでプロモーター認識が可能になる。真核生物では RNA ポリメラーゼ II が単独でプロモーターを選べず、TATA 結合タンパク質を含む基本転写因子群が先に集合し、開始前複合体を作る。空欄はこの対比から決まる。

アセチル化は開いたクロマチンに結びつく

ヒストンのリシンにアセチル基が付くと、正電荷が弱まり、負に帯電した DNA との結合が緩みやすい。そのためクロマチンが開き、転写因子や転写装置が DNA に近づきやすくなる。メチル化は位置により活性化にも抑制にも働くので、この設問では「アセチル基」を選ぶのが自然である。

iPS細胞の答案で必要な視点

長所だけを述べる設問では「胚を使わない」ことを中心にする。短所では「成功率」と「安全性」を分け、低効率、細胞株間差、ゲノム変異、腫瘍化、未分化細胞の残存を挙げる。医療応用では移植だけでなく、疾患モデルと創薬評価を書くと範囲が広くなる。

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第13問 — 地1

情報源ごとに何が読めるかを分ける

環境変化の資料は、年代を決める資料、環境を示す資料、連続変化を示す資料、 人間社会側の記録に分けて考えると整理しやすい。化石は「いつ」と「どんな環境」 の両方に関わる。火山灰は広域に同時に堆積するため、複数地点の地層を同じ時間面 で結ぶ鍵層になる。氷床コアは大気を直接閉じ込める点が強い。

強みと限界を併記する

この種の説明問題では、特徴だけでなく限界を書くと答案が安定する。化石には 保存バイアス、火山灰には再堆積、氷床コアには地域の偏り、古文書には記録者の 目的や表現の偏りがある。それぞれの限界を理解していることを示すと、単なる用語 説明よりも地球科学的な答案になる。

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第14問 — 地2

衛星測位の未知数は4つ

「3次元だから3基でよい」と考えると、受信機の時計誤差を見落とす。衛星測位の 観測量は真の距離ではなく疑似距離であり、受信機時計が少しずれるだけで光速を 掛けた距離誤差は大きくなる。位置3成分と時計誤差を同時に推定する、という一文 がこの設問の中心である。

誤差は共通成分と局所成分に分ける

衛星時計、衛星軌道、広域的な電離圏・対流圏遅延は、近い2点で似た誤差として 現れやすいので DGPS で減らしやすい。一方、マルチパスは受信点周辺の建物や 地面の反射で決まる局所的な誤差であり、基準局の補正だけでは完全には消えない。 この区別を書けると、誤差低減法の理解が明確になる。

電子基準点は測量だけでなく地球科学にも効く

電子基準点は単なる固定 GPS 受信機ではなく、全国的な基準座標系を維持しつつ、 地殻変動を連続的に測る観測網である。地震時の急激な変位、余効変動、プレート 沈み込みに伴う長期変形を追跡できるため、測地学と防災の両方に関係する。

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第15問 — 情1

8進定数に注意する

C言語の整数定数で先頭が0のものは8進数である。したがって 04560456 は10進の456 ではなく、4⋅82+5⋅8+6=3024\cdot 8^2+5\cdot 8+6=302 である。16進出力では小文字の a\texttt{a} から f\texttt{f} が使われ、接頭辞 0x\texttt{0x} は付かない。

積の初期値は1にする

偶数の積を作るとき、初期値を0にするとどの要素を掛けても0になってしまう。 積の単位元である1から始めるのが正しい。条件式では値そのもの a[i]a[i] を調べ、 同じ値を積に掛ける。

再帰では引数の役割を固定する

mm を1ずつ減らしていけば、最後は m=0m=0 で停止する。個数の途中結果を nn に持たせる設計なので、正の要素を見つけたときだけ n+1n+1 を渡す。 配列自体は同じものを参照し続ければよい。

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第16問 — 情2

矢印図は利得行列に直す

複雑に見える図でも、行を自分、列を相手とする行列に直すと通常のゲームとして 扱える。特に戦略2と3だけの部分は 232T0305 \begin{array}{c|cc} &2&3\\\hline 2&T&0\\ 3&0&5 \end{array} であり、対角成分だけが正であることから調整ゲームだと判断できる。

しきい値は平均利得の等式から出る

2戦略だけの複製型の更新では、内点で止まるのは両戦略の平均利得が等しいときで ある。戦略2は同じ戦略2に出会う確率 pp の分だけ TT を得るので TpTp、 戦略3は同じ戦略3に出会う確率 1−p1-p の分だけ5を得るので 5(1−p)5(1-p) となる。

図の違いは戦略1が残るかどうか

T=4T=4 では戦略2が弱く、戦略1が一時的に増えても、最後は自己利得の高い戦略3が 残る。T=5T=5 では戦略2と3が対称に振る舞い、互いに食い合っている間に戦略1が 優勢になる。どの線がどの戦略かは、初期の増減だけでなく、最後にどの戦略が1に 近づくかまで見て判断する。

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第17問 — 情3

代表元は集合の最小値で決まる

この設問ではランクや木の高さではなく、集合の最小要素を代表元とする。したがって Union 後の代表は、結合された集合全体の最小値である。Find の答だけを出す場合でも、 途中の集合を追うと誤りにくい。

閉路検出では処理済み辺の扱いを書く

無向グラフの隣接リストは、通常、同じ辺が両端のリストに現れる。逆向きをそのまま 再処理すると、直前に追加した辺を閉路と誤判定してしまう。答案では「未処理の 無向辺だけを見る」と明記すると、Union/Find による閉路検出の意図が明確になる。

クラスカル法は採用しない理由も重要

重み順に辺を見るだけでなく、その時点の集合で両端が同じかどうかを確認する。 同じ集合なら、その辺を加えると閉路ができるため採用しない。採用辺が 頂点数より1本少ない6本になったところで全域木が完成する。

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第18問 — 工1 熱力学

臨界点の条件

van der Waals 等温線の臨界点では、液相と気相を分ける水平な変曲点が現れる。したがって 一階微分と二階微分を同時に 00 とするのが最短である。vc=3bv_c=3b を先に出すと残りは代入だけで済む。

Carnot サイクルの図示

答案では、等温膨張が高温側、等温圧縮が低温側にあること、二つの断熱線でそれらをつなぐこと、 熱機関として右回りに回ることを明記すれば十分である。

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第19問 — 工2 流体力学

圧力差の符号

細管で水を吸い上げるには断面 11 の圧力が大気圧より低い必要がある。Bernoulli 式で一度 p1−p2p_1-p_2 を出してから、吸い上げ高さに合わせて p2−p1p_2-p_1 を正として扱うと符号ミスを防げる。

渦糸対の運動

同符号点渦は互いを回す向きに誘起速度を作るので回転し、反符号点渦は二つが同じ向きに進む速度を 持つので並進する。速度の大きさはどちらも点渦の誘起速度 ∣Γ∣/(2πR)|\Gamma|/(2\pi R) から出る。

工2 流体力学の途中式・最終答をPDFで見る

第20問 — 工3 機械振動・制御

機械系の符号

中央台車に働く力は、相対変位と相対速度で書く。左側の入力 x1x_1 はばねとダッシュポットの両方を通じて 効くが、右側の入力 x2x_2 はばねだけを通じて効くため、G1G_1 と G2G_2 の分子が異なる。

補償器選択

速度偏差をゼロにする条件は低周波の型に関する条件である。一方、位相余裕は交叉周波数での位相条件で 決まる。この問題では PI 補償器の積分で型を上げ、零点で必要な位相を調整する。

工3 機械振動・制御の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

2025年度の出題内容

全20問

この20問の分野は熱・統計力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—数1正定値性は二次形式だけを見る / 対称正定値行列の固有値あり
第2問—数2リーマン和への直し方 / 方向場の読み方あり
第3問—物1重心座標で交差項が消える理由 / 楕円軌道の速さあり
第4問—物2導体球殻の内側 / 仕事と電場エネルギーの一致あり
第5問—物3熱浴の状態数がボルツマン因子を作る / 古典調和振動子の各自由度あり
第6問—化1変分法は係数について微分する / ヘテロ原子のクーロン積分あり
第7問—化2定常状態近似では中間体の生成消費を釣り合わせる / Lennard-Jonesポテンシャルの2つの項あり
第8問—化3シクロヘキサン配座は1,3-ジアキシアル反発で決める / 重水素化は可逆なエノラート形成の結果あり
第9問—化4弱塩基でフェノールだけをメチル化する / Fischerエステル化は平衡反応あり
第10問—生1細胞周期図の読み方 / 複製方向の落とし穴あり
第11問—生2RNA-seqは発現量だけで終わらない / RNAiはノックアウトではなくノックダウンあり
第12問—生3細菌と真核生物の転写開始の対比 / アセチル化は開いたクロマチンに結びつくあり
第13問—地1情報源ごとに何が読めるかを分ける / 強みと限界を併記するあり
第14問—地2衛星測位の未知数は4つ / 誤差は共通成分と局所成分に分けるあり
第15問—情18進定数に注意する / 積の初期値は1にするあり
第16問—情2矢印図は利得行列に直す / しきい値は平均利得の等式から出るあり
第17問—情3代表元は集合の最小値で決まる / 閉路検出では処理済み辺の扱いを書くあり
第18問熱・統計力学工1 熱力学臨界点の条件 / Carnot サイクルの図示あり
第19問力学工2 流体力学圧力差の符号 / 渦糸対の運動あり
第20問—工3 機械振動・制御機械系の符号 / 補償器選択あり

同じテーマを出した他大学・他年度

9テーマ

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 20問 → 2025年度 20問
2024年度の解答例

名古屋大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(博士前期課程)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-09-26
名古屋大学の公式過去問PDF