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名大 情報学研究科 複雑系科学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全20問)

全20問の分野は制御工学1問、熱・統計力学1問、力学1問です。固有値・固有ベクトル、伝達関数、調和振動子などが出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 数1

行列式は零の多い行で展開する

第1問の行列式は定義通りに全置換を追う必要はない。零の多い第1行,次に第4行で余因子展開すると,計算は 3×33\times3 行列式まで落ちる。符号 (−1)i+j(-1)^{i+j} を落としやすいので,展開した行と列を必ず確認する。

Aは対角化できる

AA は異なる3つの固有値 2,−1,−22,-1,-2 をもつため,対応する固有ベクトルを列に並べた VV は可逆である。この場合は通常の対角化で十分であり,高べきは固有値をそれぞれ2023乗するだけで求まる。

BはJordan鎖が必要

BB では固有値 11 の代数的重複度が2だが,固有ベクトルは1本しかない。そのため w2w_2 に加えて (B−I)w3=w2(B-I)w_3=w_2 を満たす一般化固有ベクトルを取る。Jordanブロック (1101) \begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix} の nn 乗で右上に nn が現れることが,B2023B^{2023} の第3行に 2023 由来の項が出る理由である。

解答

[1]

第1行で展開すると det⁡F=−3det⁡(0502110001440010). \det F =-3 \det \begin{pmatrix} 0&5&0&2\\ 1&1&0&0\\ 0&1&4&4\\ 0&0&1&0 \end{pmatrix}. さらにこの 4×44\times4 行列を第4行で展開すると det⁡(0502110001440010)=−det⁡(052110014). \det \begin{pmatrix} 0&5&0&2\\ 1&1&0&0\\ 0&1&4&4\\ 0&0&1&0 \end{pmatrix} = - \det \begin{pmatrix} 0&5&2\\ 1&1&0\\ 0&1&4 \end{pmatrix}. ここで det⁡(052110014)=−18 \det \begin{pmatrix} 0&5&2\\ 1&1&0\\ 0&1&4 \end{pmatrix} =-18 であるから det⁡F=−3⋅18=−54. \det F=-3\cdot18=-54.

[2]

1) AA は右上の 2×12\times1 ブロックが零であるため, det⁡(λI−A)=det⁡(λ1−2λ+3)(λ−2)=(λ+1)(λ+2)(λ−2). \det(\lambda I-A) = \det \begin{pmatrix} \lambda&1\\ -2&\lambda+3 \end{pmatrix} (\lambda-2) = (\lambda+1)(\lambda+2)(\lambda-2). したがって λ1=2,λ2=−1,λ3=−2. \lambda_1=2,\qquad \lambda_2=-1,\qquad \lambda_3=-2.

2) それぞれ (A−λiI)vi=0(A-\lambda_i I)v_i=0 を解き,第3成分が 11 となるように取ると v1=(001),v2=(111),v3=(121). v_1= \begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix},\qquad v_2= \begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\qquad v_3= \begin{pmatrix}1\\2\\1\end{pmatrix}.

3) よって V=(011012111) V= \begin{pmatrix} 0&1&1\\ 0&1&2\\ 1&1&1 \end{pmatrix} であり,列ベクトルが固有ベクトルなので A~=V−1AV=(2000−1000−2). \widetilde A=V^{-1}AV = \begin{pmatrix} 2&0&0\\ 0&-1&0\\ 0&0&-2 \end{pmatrix}.

4) P=22023P=2^{2023} とおく。2023は奇数なので A~2023=(P000−1000−P). \widetilde A^{2023} = \begin{pmatrix} P&0&0\\ 0&-1&0\\ 0&0&-P \end{pmatrix}. したがって A2023=VA~2023V−1=(P−21−P02P−21−2P0−21−PP). A^{2023} = V\widetilde A^{2023}V^{-1} = \begin{pmatrix} P-2&1-P&0\\ 2P-2&1-2P&0\\ -2&1-P&P \end{pmatrix}.

[3]

1) BB についても右上の 2×12\times1 ブロックが零であるから det⁡(μI−B)=det⁡(μ+1−42μ−5)(μ−1)=(μ−3)(μ−1)2. \det(\mu I-B) = \det \begin{pmatrix} \mu+1&-4\\ 2&\mu-5 \end{pmatrix} (\mu-1) = (\mu-3)(\mu-1)^2. したがって μ1=3,μ2=μ3=1. \mu_1=3,\qquad \mu_2=\mu_3=1.

2) 第3成分が 11 となる固有ベクトルとして w1=(111),w2=(001) w_1= \begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\qquad w_2= \begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix} を取れる。

3) (B−I)w3=w2(B-I)w_3=w_2 を解くと w3=(210) w_3= \begin{pmatrix}2\\1\\0\end{pmatrix} が一つの解である。実際, (B−I)(210)=(001)=w2. (B-I) \begin{pmatrix}2\\1\\0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix} =w_2.

4) W=(102101110) W= \begin{pmatrix} 1&0&2\\ 1&0&1\\ 1&1&0 \end{pmatrix} とすると,Bw1=3w1, Bw2=w2, Bw3=w2+w3Bw_1=3w_1,\ Bw_2=w_2,\ Bw_3=w_2+w_3 である。したがって B~=W−1BW=(300011001). \widetilde B=W^{-1}BW = \begin{pmatrix} 3&0&0\\ 0&1&1\\ 0&0&1 \end{pmatrix}.

5) Q=32023Q=3^{2023} とおく。Jordanブロックについて (1101)2023=(1202301) \begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}^{2023} = \begin{pmatrix}1&2023\\0&1\end{pmatrix} であるから B~2023=(Q00012023001). \widetilde B^{2023} = \begin{pmatrix} Q&0&0\\ 0&1&2023\\ 0&0&1 \end{pmatrix}. よって B2023=WB~2023W−1=(2−Q2Q−201−Q2Q−102024−Q2Q−20251). B^{2023} = W\widetilde B^{2023}W^{-1} = \begin{pmatrix} 2-Q&2Q-2&0\\ 1-Q&2Q-1&0\\ 2024-Q&2Q-2025&1 \end{pmatrix}.

最終答

[1]det⁡F=−54,[2]λ1=2, λ2=−1, λ3=−2,v1=(001), v2=(111), v3=(121),A~=diag⁡(2,−1,−2),A2023=(P−21−P02P−21−2P0−21−PP)(P=22023),[3]μ1=3, μ2=μ3=1,w1=(111), w2=(001), w3=(210),B~=(300011001),B2023=(2−Q2Q−201−Q2Q−102024−Q2Q−20251)(Q=32023). \begin{gathered} [1]\quad \det F=-54,\\ [2]\quad \lambda_1=2,\ \lambda_2=-1,\ \lambda_3=-2,\quad v_1=\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix},\ v_2=\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\ v_3=\begin{pmatrix}1\\2\\1\end{pmatrix},\\ \widetilde A=\operatorname{diag}(2,-1,-2),\quad A^{2023}= \begin{pmatrix} P-2&1-P&0\\ 2P-2&1-2P&0\\ -2&1-P&P \end{pmatrix} \quad(P=2^{2023}),\\ [3]\quad \mu_1=3,\ \mu_2=\mu_3=1,\quad w_1=\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\ w_2=\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix},\ w_3=\begin{pmatrix}2\\1\\0\end{pmatrix},\\ \widetilde B= \begin{pmatrix}3&0&0\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix},\quad B^{2023}= \begin{pmatrix} 2-Q&2Q-2&0\\ 1-Q&2Q-1&0\\ 2024-Q&2Q-2025&1 \end{pmatrix} \quad(Q=3^{2023}). \end{gathered}

第2問 — 数2

ロジスティック方程式の相図

(1−y)y(1-y)y の符号だけで単調性が分かる。0<y<10<y<1 では増加し,y>1y>1 では減少するため,どちらの場合も安定な平衡解 y=1y=1 に近づく。0<y0<1/20<y_0<1/2 では途中で y=1/2y=1/2 を通り,そこで凹凸が変わる。

対数らせんは極座標で解く

与えられた x,yx,y は最初から極座標表示になっている。半径 rr は ae−bθae^{-b\theta} なので,面積は 12r2dθ\frac12r^2d\theta,弧長は (dx/dθ)2+(dy/dθ)2 dθ \sqrt{(dx/d\theta)^2+(dy/d\theta)^2}\,d\theta で処理する。三角関数の交差項が打ち消し合い,速度が ab2+1e−bθa\sqrt{b^2+1}e^{-b\theta} に簡約される点が計算の要である。

捕食者・被食者モデルの軌道

保存量があるため,解は等高線から外れない。不動点の周りの符号を調べると,右下では右上へ,右上では左上へ,左上では左下へ,左下では右下へ動く。これにより反時計回りの閉軌道として概形を描ける。

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第3問 — 物1

中心力場の経路非依存性

中心力場では力の向きが常に半径方向である。したがって仕事に寄与するのは変位の半径方向成分 drdr だけであり,曲線がどのように曲がっているかは積分値に影響しない。

球内電場は距離に比例する

一様に帯電した球の内部では,半径 rr のガウス球が囲む電荷が r3r^3 に比例する。一方,ガウス面の面積は r2r^2 に比例するので,電場は E(r)∝rE(r)\propto r となる。これがトンネル内運動を単振動にする理由である。

周期がトンネル位置に依存しない理由

位置エネルギー U(x)U(x) の hh 依存部分は定数であり,力を決める −dU/dx-dU/dx には現れない。したがってトンネルが中心からずれていても,粒子が球外へ出ない限り角振動数は同じである。

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第4問 — 物2

交換子は微分のように分配する

積の交換子公式は,量子力学の計算で頻繁に使う。特に数演算子と生成消滅演算子の交換関係は,この公式を使うと機械的に導ける。

正規化係数の役割

A^\hat A の係数 1/2Zℏ1/\sqrt{2Z\hbar} は,[A^,A^†]=1[\hat A,\hat A^\dagger]=1 になるように選ばれている。計算途中で 2Zℏ2Z\hbar がちょうど消えることを確認すると,係数の読み間違いを防げる。

保存される量子数

H^3\hat H_3 の結合は AA と BB の間で量子を1個ずつ交換するので,N^A+N^B\hat N_A+\hat N_B が保存する。一方 H^4\hat H_4 では BB 1個が AA 2個に変わる形なので,保存量は N^A+2N^B\hat N_A+2\hat N_B になる。

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第5問 — 物3

最大エントロピーと等重率

規格化以外の制約がないとき,エントロピーを最大にする分布は一様分布である。これは,どの状態も区別する理由がないときに全状態へ同じ確率を割り当てるという等重率の原理そのものである。

ジッパーモデルの重み

ss 個が分離するとエネルギー因子は e−βsεe^{-\beta s\varepsilon} で小さくなる一方,縮退度は gsg^s で増える。両者の比をまとめた x=ge−βεx=g e^{-\beta\varepsilon} が,結合側と分離側のどちらを有利にするかを決める。

急激な変化の理由

x<1x<1 では幾何級数の初めの項が支配的で,分離数は小さい。x>1x>1 では後ろの項が支配的で,分離数は NN に近くなる。NN が大きいほど x=1x=1 の近くで支配項が急に入れ替わるため,相転移のような鋭い変化が現れる。

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第6問 — 化1

スレイター行列式は反対称性を自動的に満たす

電子はフェルミ粒子なので,全波動関数は電子交換で符号が反転しなければならない。単なる積では反対称性が保証されないが,スレイター行列式にすると行交換によって必ず符号が変わる。

異核二原子分子の軌道は片寄る

クーロン積分が低い原子軌道は,結合性軌道により大きく混ざる。逆に反結合性軌道は高い原子軌道側に偏る。符号は結合性なら同位相,反結合性なら逆位相と考えると整理しやすい。

三原子系の符号は節の数で読む

最低軌道は節を持たず,隣接原子の係数を同符号に取れる。エネルギーが上がると節が増えるため,中間軌道では一部が逆符号になり,最高軌道では中央 B が A, C と逆符号になる。

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第7問 — 化2

定常状態は濃度が一定という近似

ここでの定常状態は熱力学的な平衡ではない。反応は進み続けて E は増えるが,中間的な A と B の濃度変化だけが十分小さくなっている,という速度論上の近似である。

A と B の和が保存される

反応(1)は A を B に変え,反応(2)は B を A に戻す。したがって初期の時間領域で C と D がほぼ一定なら,A と B の合計は初期値 aa とみなせる。この保存関係と速度の釣り合いを同時に使うのが計算の要点である。

負の活性化エントロピー

二分子反応の遷移状態では,別々に動けた2分子が互いに近い配置を取る必要がある。可能な配置数が減るため,活性化エントロピーは負になりやすい。

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第8問 — 化3

共鳴構造では原子の位置を動かさない

共鳴で動かすのは電子だけであり,原子骨格は固定する。電荷を明記し,どの孤立電子対または π\pi 結合が移動したかを矢印で示すことが重要である。

酸性度は共役塩基の安定化で比べる

カルボン酸では,脱プロトン化後のカルボキシラートが安定なほど酸性が強い。電子求引基は負電荷を分散・安定化し,電子供与基は逆に不安定化する。

同一置換基を持つ二不斉中心ではメソ体に注意

(R,S)(R,S) と (S,R)(S,R) が別物に見えても,分子内に対称面がある場合は同一のメソ体である。したがって最大4種類ではなく3種類になる。

絶対配置の実験確認

旋光度は濃度,溶媒,温度,波長に依存するため,既知標品と同条件で比較する必要がある。符号だけでなく大きさも一致すれば,配置と光学純度の確認になる。

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第9問 — 化4

ハロヒドリン生成は anti 付加

水中の臭素化では自由なカルボカチオンではなくブロモニウムイオンを経る。求核剤は反対側から攻撃するため,Br\ce{Br} と OH\ce{OH} は trans 関係になる。

Claisen縮合ではエステルがアシル化剤になる

ケトンエノラートがエステルへ求核アシル置換を行うと,1,3-ジカルボニルが得られる。生成物の中央メチレンは酸性度が高く,脱プロトン化により反応が生成物側へ進む。

カチオン重合は安定なカルボカチオンを保って進む

イソブチレンではプロトン化後に第三級カルボカチオンができるため,低温でも連鎖成長が進む。各段階で新しいモノマーの二重結合がカチオン末端へ攻撃する。

ニトリル加水分解はアミドを経由する

強酸性水溶液ではニトリルが直接カルボン酸へ見えるが,機構的には水付加,イミド酸,アミドを経由する。加熱還流により最終的にカルボン酸まで進む。

トリチル保護は一次アルコールに選択的

糖の 5' 位ヒドロキシ基は一次アルコールで反応しやすく,かさ高いトリチル基の導入に適している。ピリジンは塩基かつ HCl 捕捉剤として働く。

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第10問 — 生1

tRNAの充填と翻訳のエネルギー

tRNA にアミノ酸を結合させる段階を「充填」またはアミノアシル化という。この時点で ATP を使ってアミノ酸が高エネルギー状態になり、そのエネルギーが後のペプチド結合形成に持ち込まれる。したがって、リボソームのペプチジル転移反応そのものを ATP 加水分解反応として書くのは正確でない。

A部位 P部位 E部位の流れ

新しいアミノアシル tRNA は A 部位に入り、伸長中のペプチジル tRNA は P 部位にある。ペプチド結合形成後、空になった tRNA は E 部位へ移って放出され、新しいペプチジル tRNA は P 部位へ移る。この順序で読むと、セ、タ、トの空欄を混同しにくい。

末端複製問題の本質

問題は「DNA ポリメラーゼが端まで進めない」ことではなく、「最後の RNA プライマーを除いた後、その場所を埋めるための上流側 3′3' 末端がない」ことである。テロメラーゼは遺伝子そのものを伸ばすのではなく、失われてもよい反復配列を先に追加しておく仕組みである。

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第11問 — 生2

qRT-PCRで測っているもの

qRT-PCR の測定対象は DNA ではなく、逆転写で cDNA に写し取られた mRNA 量である。したがって、RNA の品質、ゲノム DNA 混入、逆転写効率、内在性対照による補正が結果に直接影響する。Ct 値は小さいほど発現量が多い、という向きも答案で取り違えやすい。

ChIPは抗体依存の実験

ChIP の中心は「細胞内で結合していた DNA 断片を、目的タンパク質への抗体で濃縮する」ことである。抗体が非特異的であれば結果も崩れるため、IgG 対照、入力 DNA、既知陽性領域・陰性領域を置く。原理の説明では、架橋、断片化、免疫沈降、架橋解除、DNA 検出の順を外さない。

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第12問 — 生3

分解酵素は加水分解で選ぶ

リソソームは加水分解酵素を集めた小器官である。語群に「糖鎖」という設問文があっても、グリコシルトランスフェラーゼは糖を付加・転移する酵素であり、糖鎖を分解するグリコシダーゼではない。名称の語尾だけで選ばず、反応の向きを見る必要がある。

酸性化にはエネルギーが必要

リソソーム内腔は細胞質より高いプロトン濃度を保つので、単なるチャネルではなく能動輸送が必要である。ATP を使う V 型プロトンポンプがプロトンを内腔へ送り込み、濃度勾配を作る。GTP や水酸化物イオンを選ぶ理由はない。

糖鎖は内腔側の目印

膜タンパク質の糖鎖修飾は小胞体・ゴルジ体の内腔側で起こり、その向きは小胞輸送後も保存される。リソソームでは小胞内腔側がそのままリソソーム内腔側になるため、糖鎖を持つ D は内腔側である。膜貫通ヘリックスを通るたびに表裏が反転することから、B も内腔側、A、C、E は細胞質側と判断できる。

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第13問 — 地1

分類の軸を明示する

似た用語の違いを説明するときは、何で分類しているかを先に書くと答案が安定する。 地殻は組成・層構造の用語であり、プレートは力学・運動の用語である。示準化石と 示相化石も、前者は時間、後者は環境という使い道の違いを軸にすると明確になる。

例を添えると判別しやすい

条痕色では赤鉄鉱、示相化石ではサンゴのように、典型例を一つ入れるだけで説明の 具体性が増す。P波とS波では「液体を通るかどうか」が特に重要で、外核の液体性と 結び付けると、地球内部構造との関連まで示せる。

短い答案で落としやすい点

外観色と条痕色を単に「見た色」と「こすった色」で終えると、なぜ条痕色が有用かが 不足する。P波とS波も速さだけでなく、縦波・横波、液体中の伝播可否まで書く。 用語の差を関連事項とともに述べる設問なので、定義、例、利用法の順にまとめると 指定字数内で密度の高い答案になる。

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第14問 — 地2

地理情報は基準と表現形式を分けて考える

住所、地図データ、測地系、測位はすべて位置を扱うが、問われている軸は異なる。 住所は位置の名付け方、ベクターとラスターはデータ表現、日本測地系と世界測地系は 座標の基準、自律測位と他律測位は位置を決める仕組みである。最初にこの軸を意識 すると、用語の説明が混ざりにくい。

ベクターとラスターの使い分け

道路網の最短経路や行政界の面積計算では、線や面の接続関係を持つベクターが有利 である。標高や気温、衛星画像の輝度のように面上で連続的に変わる量は、セル値で 扱うラスターが自然である。どちらが上位という関係ではなく、対象と解析目的で 使い分ける。

測地系の差は実務上の誤差になる

日本測地系と世界測地系は、同じ緯度経度の数字でも地上の位置が一致しない。古い 地図や資料を GPS 座標と重ねるとずれが出るため、どの測地系の座標かを確認する 必要がある。測地学の用語説明では、楕円体や原点の違いだけでなく、座標変換の 必要性まで触れると実用的な答案になる。

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第15問 — 情1

書式幅とビット演算を分けて処理する

数値そのものの計算と、表示時の空白幅は別の問題である。まず16進・10進・ ビット演算の値を確定し、最後に %4x\texttt{\%4x} の幅指定を反映する。 x1|x2\texttt{x1|x2} は整数として10進表示され、x1>>3\texttt{x1>>3} は16進表示 される点も確認する。

行列積は初期化してから足し込む

cklc_{kl} は ∑iakibil\sum_i a_{ki}b_{il} なので、各成分ごとに0で初期化してから ii について足し込む。初期化を忘れると、未定義の値に積を加えることになり、 正しい結果にならない。

再帰の停止条件は添字が尽きたとき

この関数は nn を現在調べる添字として使っている。n<0n<0 になれば全要素を 調べ終えたので、その時点の max\texttt{max} を返す。大きい値を見つけた場合だけ 第3引数を更新すれば、最大値が最後まで引き継がれる。

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第16問 — 情2

Aは安全、Bは協調が必要

表ではAは相手がAでもBでも1を得る。一方、Bは相手もBなら2を得るが、相手がAなら 0である。つまりAは安全だが最大利得は小さく、Bは高利得だが相手との協調を必要と する。この対応を書けば、鹿狩りゲームのジレンマを説明できる。

セル更新は高利得セルの模倣である

Aセルの合計利得は常に9で一定である。BセルがAより高い利得を持つには、自身を 含めてBが5個以上ある必要がある。したがって、Bが孤立している場所ではAが残り、 Bが密集している場所ではBが周囲に広がる。図示問題では、各セルの次状態を直接 決める前に、このしきい値を押さえると計算が速い。

近傍の定義は成長速度を変える

8近傍では斜め接触も模倣の経路になるため、斜めにつながったBの塊が一体として 成長しやすい。4近傍では上下左右だけなので、角で接しているBの影響が伝わらず、 同じ初期分布でもBの拡大が遅くなる。図2の実線と破線の差はこの空間的な伝播経路の 差として説明できる。

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第17問 — 情3

特定カードの位置は一様である

山のどこに11があるかは、シャッフル後の位置で決まる。8枚のうちどの位置も同じ 確率なので、期待値は位置番号の平均でよい。これは幾何分布ではない。カードは 戻さずにめくるため、独立な試行の繰り返しではないからである。

二分探索木は挿入順で形が変わる

同じ値の集合でも、挿入順が違えば木の形は変わる。11を最初に入れると根が11に 固定され、7は左、13は右に入る。その後の値は、根から大小比較を繰り返して、 最初に空いている左子または右子の位置へ入る。

通りがけ順は二分探索木を昇順に読む

二分探索木では、左部分木の値は節点より小さく、右部分木の値は節点より大きい。 そのため通りがけ順で走査すると、値は必ず昇順に並ぶ。昇順データをそのまま 空の二分探索木へ挿入すると、毎回右へ進むだけになり、探索効率の悪い鎖状の木に なる。

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第18問 — 工1 熱力学

最小仕事

圧縮仕事の最小値は、外部圧を常に内部圧とほぼ等しく保つ可逆圧縮で得られる。したがって ∫P dV\int P\,dV を使えばよい。van der Waals の aa 項は圧力を下げる向きに効くので、今回の数値では 理想気体の仕事よりわずかに小さくなる。

サイクル効率

この熱機関では、熱が出入りするのは一定体積過程と一定圧力過程だけである。断熱膨張は仕事を生むが 熱収支には直接入らない。効率式は Qout/QinQ_{\mathrm{out}}/Q_{\mathrm{in}} を丁寧に作るだけで導ける。

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第19問 — 工2 流体力学

回転水面

回転座標系で静止している流体では、遠心力と重力を合わせた有効ポテンシャルの等値面が自由表面になる。 そのため水面は放物線になる。r1=R/2r_1=R/\sqrt{2} は平均高さと放物線の交点であり、水量保存から決まる。

直交性の示し方

等値線が直交することは、接線ではなく法線ベクトルの内積で示すのが簡潔である。ポテンシャル流と 流れ関数の関係式を代入すると −uv+vu=0-uv+vu=0 となり、非圧縮かつ渦なしの仮定がどこで使われるかも明確になる。

工2 流体力学の途中式・最終答をPDFで見る

第20問 — 工3 制御工学

モータの伝達関数

逆起電力は速度に比例し、発生トルクは電流に比例する。電気系と機械系を別々に式にしてから電流を 消去すると、角度出力なので分母に積分要素 ss が一つ残る。

偏差伝達関数

外乱は制御対象の入力側に加わっているため、入力 UU と外乱 DD から偏差 EE への符号と分子が異なる。 まず E=U−Y, Y=P(CE+D)E=U-Y,\ Y=P(CE+D) と書くと、符号を誤りにくい。

定常偏差

t2t^2 入力は低周波極限で決まり、正弦外乱は s=js=j の周波数応答で振幅が決まる。最大値を聞かれたら、 定数偏差に正弦成分の振幅を加える。

工3 制御工学の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

2024年度の出題内容

全20問

この20問の分野は制御工学1問・熱・統計力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—数1行列式は零の多い行で展開する / Aは対角化できるあり
第2問—数2ロジスティック方程式の相図 / 対数らせんは極座標で解くあり
第3問—物1中心力場の経路非依存性 / 球内電場は距離に比例するあり
第4問—物2交換子は微分のように分配する / 正規化係数の役割あり
第5問—物3最大エントロピーと等重率 / ジッパーモデルの重みあり
第6問—化1スレイター行列式は反対称性を自動的に満たす / 異核二原子分子の軌道は片寄るあり
第7問—化2定常状態は濃度が一定という近似 / A と B の和が保存されるあり
第8問—化3共鳴構造では原子の位置を動かさない / 酸性度は共役塩基の安定化で比べるあり
第9問—化4ハロヒドリン生成は anti 付加 / Claisen縮合ではエステルがアシル化剤になるあり
第10問—生1tRNAの充填と翻訳のエネルギー / A部位 P部位 E部位の流れあり
第11問—生2qRT-PCRで測っているもの / ChIPは抗体依存の実験あり
第12問—生3分解酵素は加水分解で選ぶ / 酸性化にはエネルギーが必要あり
第13問—地1分類の軸を明示する / 例を添えると判別しやすいあり
第14問—地2地理情報は基準と表現形式を分けて考える / ベクターとラスターの使い分けあり
第15問—情1書式幅とビット演算を分けて処理する / 行列積は初期化してから足し込むあり
第16問—情2Aは安全、Bは協調が必要 / セル更新は高利得セルの模倣であるあり
第17問—情3特定カードの位置は一様である / 二分探索木は挿入順で形が変わるあり
第18問熱・統計力学工1 熱力学最小仕事 / サイクル効率あり
第19問力学工2 流体力学回転水面 / 直交性の示し方あり
第20問制御工学工3 制御工学モータの伝達関数 / 偏差伝達関数あり

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7テーマ

名古屋大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2026(博士前期課程)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-09-26
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