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東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2017年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問です。固有値・固有ベクトル、分配関数、マクスウェル方程式が出ています。2016年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトルです。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 午前・摩擦つき連結物体と安定性

前半は、動き出しの時刻で座標と時刻を取り直すと式が単純になる。小時間近似では一次の項が打ち消えるため、xBx_B は t03t_0^3 から始まる点に注意する。

後半は、外場ポテンシャルの曲率が x=0x=0 で負、x=±lx=\pm l で正になるため、中央質点だけが不安定化の種になる。左右対称性を使って、反対称モードと対称モードに分けると固有値計算が短くなる。

解答

摩擦つき三物体

物体 CC を速度 v0v_0 で動かすと、物体 BB が静止している間、ばね BCBC の伸びは v0tv_0t である。静止摩擦の限界 kv0t0=μmg kv_0t_0=\mu mg から t0=μmgkv0. t_0=\frac{\mu mg}{kv_0}.

物体 BB が動き始めた時刻を改めて t=0t=0 とする。動摩擦力は 2μmg/32\mu mg/3 で、物体 AA は静止している。物体 BB の変位を xB(t)x_B(t) とすると mx¨B=k(μmgk+v0t−xB)−kxB−2μmg3. m\ddot{x}_B =k\left(\frac{\mu mg}{k}+v_0t-x_B\right)-kx_B-\frac{2\mu mg}{3}. すなわち x¨B+ω2xB=kmv0t+μg3,ω=2km. \ddot{x}_B+\omega^2x_B=\frac{k}{m}v_0t+\frac{\mu g}{3}, \qquad \omega=\sqrt{\frac{2k}{m}}. xB(0)=x˙B(0)=0x_B(0)=\dot{x}_B(0)=0 から xB(t)=v0t2+μmg6k{1−cos⁡(ωt)}−v02ωsin⁡(ωt). x_B(t)= \frac{v_0t}{2} +\frac{\mu mg}{6k}\{1-\cos(\omega t)\} -\frac{v_0}{2\omega}\sin(\omega t). t0k/m≪1t_0\sqrt{k/m}\ll1 では xB(t0)≃kv0t033m. x_B(t_0)\simeq \frac{kv_0t_0^3}{3m}. このとき AA にかかるばね力は kxB(t0)kx_B(t_0) であり、 kxB(t0)μmg≃kt023m≪1 \frac{kx_B(t_0)}{\mu mg} \simeq \frac{kt_0^2}{3m}\ll1 なので、物体 AA はまだ静止している。

ポテンシャル中の三質点

外場ポテンシャル U(x)=k1l2{−12(xl)2+14(xl)4} U(x)=k_1l^2\left\{-\frac12\left(\frac{x}{l}\right)^2 +\frac14\left(\frac{x}{l}\right)^4\right\} の曲率は U′′(±l)=2k1,U′′(0)=−k1. U''(\pm l)=2k_1,\qquad U''(0)=-k_1. つり合い位置からの変位を qA,qB,qCq_A,q_B,q_C とすると、一次の運動方程式は mq¨A=−(k0+2k1)qA+k0qB, m\ddot{q}_A=-(k_0+2k_1)q_A+k_0q_B, mq¨B=k0qA+(k1−2k0)qB+k0qC, m\ddot{q}_B=k_0q_A+(k_1-2k_0)q_B+k_0q_C, mq¨C=k0qB−(k0+2k1)qC. m\ddot{q}_C=k_0q_B-(k_0+2k_1)q_C. 復元行列の固有値を λ=mω2\lambda=m\omega^2 と書くと、一つは反対称モード (qA,qB,qC)∝(1,0,−1),λ0=k0+2k1. (q_A,q_B,q_C)\propto(1,0,-1),\qquad \lambda_0=k_0+2k_1. 残る二つの対称モードは λ±=3k0+k1±9k02−6k0k1+9k122. \lambda_\pm = \frac{3k_0+k_1 \pm\sqrt{9k_0^2-6k_0k_1+9k_1^2}}{2}. したがって固有角振動数は ω0=k0+2k1m,ω±=λ±m. \omega_0=\sqrt{\frac{k_0+2k_1}{m}},\qquad \omega_\pm=\sqrt{\frac{\lambda_\pm}{m}}. 不安定化するのは λ−\lambda_- の対称モードである。境界は λ−=0\lambda_-=0、すなわち kc=32k0. k_c=\frac32k_0. k1=4kc/9=2k0/3k_1=4k_c/9=2k_0/3 では λ−=k0/3\lambda_-=k_0/3 で、対応する変位比は qA:qB:qC=1:2:1. q_A:q_B:q_C=1:2:1.

最終答

% t0=μmgkv0,xB(t)=v0t2+μmg6k{1−cos⁡ωt}−v02ωsin⁡ωt,ω=2km. t_0=\frac{\mu mg}{kv_0},\qquad x_B(t)=\frac{v_0t}{2}+\frac{\mu mg}{6k}\{1-\cos\omega t\} -\frac{v_0}{2\omega}\sin\omega t,\quad \omega=\sqrt{\frac{2k}{m}}. xB(t0)≃kv0t033m,Aは静止したまま。 x_B(t_0)\simeq \frac{kv_0t_0^3}{3m},\qquad Aは静止したまま。 ω02=k0+2k1m,ω±2=3k0+k1±9k02−6k0k1+9k122m. \omega_0^2=\frac{k_0+2k_1}{m},\qquad \omega_\pm^2=\frac{3k_0+k_1\pm\sqrt{9k_0^2-6k_0k_1+9k_1^2}}{2m}. 不安定化は ω−\omega_- に対応し、kc=3k0/2k_c=3k_0/2。k1=4kc/9k_1=4k_c/9 での変位比は 1:2:11:2:1。

第2問 — 午前・電気双極子と鏡像法

双極子同士の向きは、電場を毎回作図するよりも相互作用エネルギー p1⋅p2−3(p1⋅r^)(p2⋅r^)\mathbf{p}_1\cdot\mathbf{p}_2-3(\mathbf{p}_1\cdot\hat{\mathbf{r}})(\mathbf{p}_2\cdot\hat{\mathbf{r}}) で扱うのが確実である。導体面では鏡像との相互作用をそのまま使わず、エネルギーを半分にする点が採点上の注意点である。

午前・電気双極子と鏡像法の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 午後・井戸中の二フェルミ粒子

この問題は、軌道部分の交換対称性とスピン部分の交換対称性を分けて整理すると崩れない。摂動 x1x2x_1x_2 は g,eg,e の対角期待値を持たず、交差積分 CC だけが対称・反対称状態の分裂を作る。

午後・井戸中の二フェルミ粒子の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 午後・一次元ひも状分子

棒の向きは独立な二値変数なので、二項分布と二準位系の分配関数に帰着する。外力がない場合の復元力はエネルギーではなく、配置数が最大になる X=0X=0 へ戻ろうとするエントロピー起源の力である。

午後・一次元ひも状分子の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 午後・ファラデー効果

磁場で左右円偏光の屈折率が分裂することがファラデー効果の本質である。直線偏光は左右円偏光の重ね合わせなので、二つの波数差が相対位相を生み、偏光面が回転する。反射して戻っても回転が打ち消されない非相反性が、通常の自然旋光との重要な違いである。

午後・ファラデー効果の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 午後・電子線回折と二次元結晶

電子線回折は「格子和」と「基底の構造因子」を分けると整理しやすい。有限サイズはピーク幅を決め、ブラベー格子はピーク位置を決め、単位胞内の原子配置は強度を決める。積層の設問では、二次元逆格子ロッドが三次元逆格子点へ変わることを説明できればよい。

午後・電子線回折と二次元結晶の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(15年度)

  • 2026年度(全4問)

    剛体回転と磁気トルク / 調和振動子と突然近似 / ゴム弾性の統計力学

  • 2025年度(全4問)

    減衰振動と揺動応答 / 一次元障壁散乱 / 平均場イジング模型

  • 2024年度(全4問)

    剛体振り子と磁気モーメント測定 / 1次元光共振器 / 固体の比熱

  • 2023年度(全4問)

    量子井戸と対称性 / 支点加振振り子 / 古典気体の回転平衡

  • 2022年度(全4問)

    回転磁場によるスピン遷移と Ramsey 干渉 / 一次元格子振動 / 二元合金の相分離

  • 2021年度(全4問)

    量子ビットの時間発展とゲート生成 / 等方弾性体の応力と弾性波反射 / 理想ボース気体とボース凝縮

  • 2020年度(全4問)

    固定端ばね鎖の固有振動 / 一軸性結晶中の電磁波 / 理想気体と吸着等温式

  • 2019年度(全6問)

    午前・軌道力学と重力勾配 / 午前・誘導加熱と円環電流 / 午後・デルタ障壁と二粒子干渉

  • 2018年度(全6問)

    午前・半円筒上の滑りと転がり / 午前・球形コンデンサと漏れ電流 / 午後・デルタ井戸と二粒子交換

  • 2017年度(このページ・全6問)

    午前・摩擦つき連結物体と安定性 / 午前・電気双極子と鏡像法 / 午後・井戸中の二フェルミ粒子

  • 2016年度(全6問)最終答まで公開

    午前・振り子と二重振り子 / 午前・導体リングと電磁誘導 / 午後・調和振動子のコヒーレント状態

  • 2015年度(全6問)最終答まで公開

    午前・跳ね返る剛体球 / 午前・線電荷と円筒導体の鏡像法 / 午後・二重井戸と二粒子トンネル

  • 2014年度(全6問)最終答まで公開

    午前・中心力とラプラス--ルンゲ--レンツベクトル / 午前・電磁場とLC振動 / 午後・スピン軌道相互作用

  • 2013年度(全6問)最終答まで公開

    粗い円柱のつり合いと滑りから転がりへの移行 / 平行平板間の空間電荷制限電流 / 調和振動子の遷移と非調和摂動

  • 2012年度(全6問)最終答まで公開

    円板に巻き付く糸につながれた質点 / 円柱導体のジュール熱とポインティングベクトル / スピン1の磁気共鳴と四極子摂動

2017年度の出題内容

全6問
大問主題解説の小見出し最終答
第1問午前・摩擦つき連結物体と安定性—あり
第2問午前・電気双極子と鏡像法—あり
第3問午後・井戸中の二フェルミ粒子—あり
第4問午後・一次元ひも状分子—あり
第5問午後・ファラデー効果—あり
第6問午後・電子線回折と二次元結晶—あり

同じテーマを出した他大学・他年度

3テーマ

前年度(2016年度)との違い

大問数
2016年度 6問 → 2017年度 6問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2017年度で新しく出たテーマ
分配関数・マクスウェル方程式
2016年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-08-13
東京大学の公式過去問PDF