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静岡大 総合科学技術研究科 情報学専攻 情報科学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は線形代数1問です。固有値・固有ベクトル、最尤推定、動的計画法などが出ています。2024年度と共通するテーマは動的計画法です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 形式言語と固有値

採点観点

DFA 化では、元の NFA の状態名をそのまま使わず、部分集合を状態にすることが重要である。特に到達しない部分集合まで全部書く必要はなく、開始状態から到達する部分集合と空集合を閉じる形で書けば十分である。

典型ミス

チョムスキー標準形では A→BABA\to BAB のような長さ 3 の右辺はそのまま残せない。また、B→00B\to 00 のように終端記号が二つ並ぶ規則も、T0→0T_0\to0 を使って B→T0T0B\to T_0T_0 に直す。

確認

異なる固有値に属する固有ベクトルは一般に線形独立である。ここでは直接、列ベクトルを並べた行列の行列式が 22 であることを示しているため、固有値の一般定理を使わなくても確認できる。

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第2問 — 計算量・再帰・学習

採点観点

B 木の深さでは、根だけの深さを 1 とする定義を使う。最大 5 子なら 1 ノードあたり最大 4 キー、根以外の内部ノードは少なくとも 3 子を持つ、という二つを明示すれば計算過程が追いやすい。

典型ミス

フィボナッチ再帰の呼び出し回数では、返り値がすぐ決まる F(0)F(0) や F(1)F(1) も関数呼び出しとして数える。これを除くと 15 回より少ない値になってしまう。

強化学習の確認

Q 学習では、実際に次に選んだ行動の Q 値ではなく、次状態で取り得る行動の最大 Q 値を使う。表の次状態列で最大は「前進」の 10 であり、これを使う点が SARSA との違いである。

最尤推定の見方

正規分布の仮定を置くと、残差が小さいほど尤度が大きくなる。固定分散では係数 −1/(2σ2)-1/(2\sigma^2) が一定なので、対数尤度最大化と残差平方和最小化は同じ最適解を持つ。

解答

問1

探索の平均計算量と最悪計算量は次の通りである。ハッシュはチェイン法で、ハッシュサイズ BB がデータ数 NN に比べて十分大きいと仮定する。 アルゴリズム平均計算量最悪計算量線形探索O(N)O(N)二分探索O(log⁡N)O(log⁡N)ハッシュ(チェイン法)O(1)O(N) \begin{array}{c|cc} \text{アルゴリズム} & \text{平均計算量} & \text{最悪計算量}\\ \hline \text{線形探索} & O(N) & O(N)\\ \text{二分探索} & O(\log N) & O(\log N)\\ \text{ハッシュ(チェイン法)} & O(1) & O(N) \end{array} 線形探索は平均でも半分程度の要素を調べるため O(N)O(N) である。二分探索は整列済み配列を仮定し、候補範囲を半分ずつ狭めるため O(log⁡N)O(\log N) である。チェイン法のハッシュは負荷率が小さいなら平均 O(1)O(1) だが、すべてが同じバケットに入る最悪ケースでは O(N)O(N) になる。

探索がほとんどで新規登録が少ない場合は、整列済み配列を維持して二分探索を使うのが適している。探索が O(log⁡N)O(\log N) と速く、登録のための整列維持コストが頻繁には発生しないからである。

新規登録の方が多い場合は、線形探索を前提に未整列配列へ末尾追加する方が適している。末尾追加なら登録は O(1)O(1) で済み、二分探索のために毎回整列位置を探して要素をずらす O(N)O(N) の負担を避けられるからである。

二分探索木と B 木の探索計算量は次の通りである。 データ構造平均計算量最悪計算量二分探索木O(log⁡N)O(N)B 木O(log⁡N)O(log⁡N) \begin{array}{c|cc} \text{データ構造} & \text{平均計算量} & \text{最悪計算量}\\ \hline \text{二分探索木} & O(\log N) & O(N)\\ \text{B 木} & O(\log N) & O(\log N) \end{array} 二分探索木は平均的に高さが log⁡N\log N 程度なら速いが、挿入順によって一直線に偏ると高さが NN になる。B 木は各ノードの分岐数と最小占有数が保たれ、すべての葉が同じ深さにある平衡木なので、最悪でも高さが O(log⁡N)O(\log N) に抑えられる。

5 階の B 木を、最大 5 子、最大 4 キーを持つ B 木として考える。ノード数をできるだけ少なくするには、各ノードをできるだけ満たす。このとき深さ dd で格納できるキー数は 4(1+5+52+⋯+5d−1)=5d−1 4(1+5+5^2+\cdots+5^{d-1})=5^d-1 である。10000≤5d−110000\le 5^d-1 より d≥log⁡510001≃4log⁡510=5.72 d\ge \log_5 10001 \simeq 4\log_5 10=5.72 なので、深さは 66 と推定できる。

逆にノード数をできるだけ多くするには、根以外のノードを最小占有に近づける。5 階では根以外の内部ノードは少なくとも 3 子、すなわち少なくとも 2 キーを持つ。深さ dd の最小キー数は 1+4(1+3+⋯+3d−2)=2⋅3d−1−1 1+4(1+3+\cdots+3^{d-2})=2\cdot3^{d-1}-1 である。最大深さは 2⋅3d−1−1≤10000 2\cdot3^{d-1}-1\le10000 を満たす最大の dd であり、 d−1≤log⁡3(5000.5)≃log⁡35+3log⁡310≃1.47+6.30=7.77 d-1\le \log_3(5000.5)\simeq \log_3 5+3\log_3 10 \simeq 1.47+6.30=7.77 だから、深さは 88 と推定できる。

問2

フィボナッチ数列は F(0)=0,F(1)=1,F(n)=F(n−2)+F(n−1) F(0)=0,\quad F(1)=1,\quad F(n)=F(n-2)+F(n-1) である。したがって F(2)=1, F(3)=2, F(4)=3, F(5)=5, F(6)=8, F(7)=13 F(2)=1,\ F(3)=2,\ F(4)=3,\ F(5)=5,\ F(6)=8,\ F(7)=13 となる。

再帰関数の呼び出し回数を C(n)C(n) とすると、基底部も一回の呼び出しなので C(0)=C(1)=1,C(n)=1+C(n−2)+C(n−1) C(0)=C(1)=1,\qquad C(n)=1+C(n-2)+C(n-1) である。よって C(2)=3, C(3)=5, C(4)=9, C(5)=15 C(2)=3,\ C(3)=5,\ C(4)=9,\ C(5)=15 となり、F(5)F(5) の計算では 15 回呼び出される。

呼び出し回数を減らす工夫として、メモ化または動的計画法がある。一度求めた F(k)F(k) を表に保存して再利用すれば、同じ部分問題を繰り返し計算しない。F(5)F(5) では F(0),F(1),…,F(5)F(0),F(1),\ldots,F(5) の 6 個の値を一度ずつ計算すればよい。なお、キャッシュヒットで関数入口までは呼ぶ実装では呼び出し数の数え方が変わるが、重複計算をなくすという意味では 6 個の部分問題で済む。

問3

方策とは、状態を観測したときにどの行動を選ぶかを定める規則であり、確率的方策なら π(a∣s)\pi(a\mid s) と表せる。状態価値関数とは、ある方策のもとで状態 ss から開始したときに得られる割引累積報酬の期待値であり、Vπ(s)V^\pi(s) と書く。

TD 誤差を δt\delta_t、学習率を α\alpha とすると、Q 学習の更新式は Q(st,at)←Q(st,at)+αδt Q(s_t,a_t)\leftarrow Q(s_t,a_t)+\alpha\delta_t すなわち Q(st,at)←Q(st,at)+α{rt+1+γmax⁡a∈AQ(st+1,a)−Q(st,at)} Q(s_t,a_t)\leftarrow Q(s_t,a_t)+\alpha\{r_{t+1}+\gamma\max_{a\in A}Q(s_{t+1},a)-Q(s_t,a_t)\} である。

与えられた表では、現在状態で行動「前進」をとったときの値は Q(st,前進)=7Q(s_t,\text{前進})=7 である。次状態での最大値は max⁡(4,10,8,6)=10 \max(4,10,8,6)=10 である。報酬 33、割引率 0.90.9 より δt=(3+0.9⋅10)−7=5 \delta_t=(3+0.9\cdot10)-7=5 である。学習率 α=0.5\alpha=0.5 なら更新量は αδt=0.5⋅5=2.5 \alpha\delta_t=0.5\cdot5=2.5 なので、更新されるのは Q(st,前進)Q(s_t,\text{前進}) だけであり、 7→9.5 7\to 9.5 となる。

問4

訓練データに適合しすぎ、未知データへの汎化性能が落ちる現象は過学習である。

最小二乗直線 y=ax+by=ax+b を求める。データ数を n=4n=4 とすると ∑x=10,∑y=12,∑x2=30,∑xy=33 \sum x=10,\quad \sum y=12,\quad \sum x^2=30,\quad \sum xy=33 である。よって a=n∑xy−(∑x)(∑y)n∑x2−(∑x)2=4⋅33−10⋅124⋅30−102=0.6 a=\frac{n\sum xy-(\sum x)(\sum y)} {n\sum x^2-(\sum x)^2} =\frac{4\cdot33-10\cdot12}{4\cdot30-10^2} =0.6 であり、 b=yˉ−axˉ=3−0.6⋅2.5=1.5 b=\bar y-a\bar x=3-0.6\cdot2.5=1.5 である。したがって、直線は y=0.6x+1.5 y=0.6x+1.5 である。

線形回帰モデルの出力を hθ(xi)h_\theta(x_i) とする。各 yiy_i が平均 hθ(xi)h_\theta(x_i)、分散 σ2\sigma^2 の正規分布から独立に生成されるなら、 p(D∣θ)=∏i=1N12πσexp⁡{−(yi−hθ(xi))22σ2} p(D\mid\theta)=\prod_{i=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma} \exp\left\{-\frac{(y_i-h_\theta(x_i))^2}{2\sigma^2}\right\} である。対数尤度は l(θ)=−N2log⁡(2πσ2)−12σ2∑i=1N(yi−hθ(xi))2 l(\theta) =-\frac{N}{2}\log(2\pi\sigma^2) -\frac{1}{2\sigma^2}\sum_{i=1}^{N}(y_i-h_\theta(x_i))^2 となる。第 1 項は θ\theta に依存せず、σ2\sigma^2 は固定なので、l(θ)l(\theta) を最大化することは残差平方和 ∑i=1N(yi−hθ(xi))2 \sum_{i=1}^{N}(y_i-h_\theta(x_i))^2 を最小化することと等価である。

最終答

線形・二分・ハッシュの計算量は本文表の通り。B 木の深さは最小ノード構成で 66、最大ノード構成で 88。F(7)=13F(7)=13、素朴再帰の F(5)F(5) は 15 回、メモ化なら 6 個の部分問題。TD 誤差は 55、更新後の Q(st,前進)Q(s_t,\text{前進}) は 9.59.5。過学習、最小二乗直線は y=0.6x+1.5y=0.6x+1.5。

第3問 — 数表現・PSW・論理簡約

採点観点

PSW の問題では、N と Z は結果ビットから、V は符号付き演算の矛盾から、C は符号なしの桁あふれまたは桁借りから判断する。V と C は同じ意味ではないので分けて説明する。

典型ミス

算術左シフトを「必ず 2 倍」と考えると、表現範囲を超えた場合の V フラグを見落とす。2 の補数では、左シフト前の上位 2 ビットが異なると符号が変わり、結果が算術的な 2 倍と矛盾する。

確認

論理式 AC+BC‾D+BCD‾AC+B\overline{C}D+BC\overline{D} は、A=1,C=1A=1,C=1 の 4 通りをまとめて含む。残りの 1 は 01010101 と 01100110 であり、それぞれ隣接する 1 と組にして 3 変数項に簡約している。

数表現・PSW・論理簡約の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 主記憶管理とネットワーク

採点観点

ページ置き換えでは、フレームの中身だけでなく、置き換え候補の順序を追う必要がある。FIFO は到着順、LRU は最後に参照された時刻で判断するため、同じ参照列でも結果が変わる。

典型ミス

配列問題では、配列全体のページ数 128128 だけを答えるのではなく、アクセス順を考える。行方向に連続格納されているのに列方向へ走査しているため、局所性が悪く、フレーム 30 では次回再利用まで保持できない。

確認

隠れ端末は「互いを検知できない二つの送信端末が同じ受信端末に送る」問題である。露出端末は「本来同時送信できるのに、近くの通信を検知して不要に待ってしまう」問題である。RTS/CTS は前者の緩和には有効だが、後者を完全には解決しない。

トポロジの見方

メッシュ型はリンクを多く張ることで耐障害性を高める。リンク数が最小という説明は、メッシュ型ではなく木構造やバス型に近い性質である。

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第5問 — 問題解決と表象

採点観点

ヒューマンサイエンス系では、数値の答えだけでなく、なぜ人がその課題を難しく感じるかを心理学的な語で説明することが重要である。「制約」「記憶」「問題表象」「視点転換」といった指定語を、具体的な行動や認知負荷に結びつける。

典型ミス

パズルでは、9 回で解けたことと最小手数であることを混同しやすい。到達可能な 7 手の系列を一つ示せば、9 回が最小ではないことを直接示せる。

確認

鳥の問題は、往復ごとの距離を無限級数として足しても同じ 320 km320\,\mathrm{km} になる。しかし試験では、列車の所要時間を先に求める方法が簡潔で誤りにくい。複雑に見える記述を、保存される量や一定の量に置き換えることが問題解決の鍵である。

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年度別の解答例(8年度)

  • 2026年度(全5問)

    オートマトンと行列式 / 探索・再帰・機械学習 / 数表現と論理回路

  • 2025年度(このページ・全5問)

    形式言語と固有値 / 計算量・再帰・学習 / 数表現・PSW・論理簡約

  • 2024年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2023年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2022年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2021年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2020年度(全7問)

    情報科学基礎:数学CS / 情報科学基礎:アルゴリズムとデータ構造 / 情報科学基礎:論理回路と計算機基礎

  • 2019年度(全7問)

    情報科学基礎:数学CS / 情報科学基礎:アルゴリズムとデータ構造 / 情報科学基礎:論理回路と計算機基礎

2025年度の出題内容

全5問

この5問の分野は線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数形式言語と固有値採点観点 / 確認あり
第2問—計算量・再帰・学習採点観点 / 強化学習の確認あり
第3問—数表現・PSW・論理簡約採点観点 / 確認あり
第4問—主記憶管理とネットワーク採点観点 / 確認あり
第5問—問題解決と表象採点観点 / 確認あり

2025年度の解説には典型ミス5件が付いています。

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6テーマ

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
両年度に出たテーマ
動的計画法
2024年度の解答例

静岡大学の公式過去問

公開年度範囲
2019〜2026(CS情報科学。2021〜2026は各1本、2019・2020は情報科学基礎/情報科学の2本構成)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
英語の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFをプログラム別に公開。
院試hubの最終確認
2026-07-05
静岡大学の公式過去問PDF