院試hub

静岡大 総合科学技術研究科 情報学専攻 情報科学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は数学1問です。正定値行列、二次形式、計算量理論などが出ています。2023年度と共通するテーマはソートアルゴリズムです。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 数学・数理系

採点観点

一意性の問題では,存在記号だけではなく「2つ取れたら等しい」という条件を書けているかが 採点の中心になる。反例問題では,前件が真で後件が偽になる構造を明示する必要がある。 2次関数では,停留点を求めるだけでなく,ヘッセ行列の正定値性まで確認して極小であることを 保証するのが安全である。

典型ミス

∀y∃xD\forall y\exists xD と ∃x∀yD\exists x\forall yD は量化記号の順序が異なる。 「各 yy に応じて xx を選べる」ことと「同じ xx ですべての yy に対応できる」ことを 混同しやすい。偏微分では xyxy の微分を xx 側と yy 側で取り違えないことも重要である。

検算

平方完成でも確認できる。 f(x,y)=(x−2)2+(x−2)y+y2−1=(x−2y)(11/21/21)(x−2y)−1. f(x,y)=(x-2)^2+(x-2)y+y^2-1 =\begin{pmatrix}x-2&y\end{pmatrix} \begin{pmatrix}1&1/2\\1/2&1\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x-2\\y\end{pmatrix}-1. 中央の行列は正定値なので,最小値は二次形式が0となる (2,0)(2,0) で −1-1 である。

解答

問1 述語論理

論理式 AA の自由変数を xx とし,A[y/x]A[y/x] は AA の自由な xx を yy に置き換えた式とする。

  1. 「高々1つ」は,2つの対象がともに条件を満たすなら同一である,と書けばよい。 ∀x∀y((A∧A[y/x])→x=y). \forall x\forall y\bigl((A\land A[y/x])\to x=y\bigr). 同値な書き方として, ¬∃x∃y(A∧A[y/x]∧x≠y) \neg\exists x\exists y\bigl(A\land A[y/x]\land x\ne y\bigr) でもよい。

  2. 「ちょうど1つ」は,存在性と一意性を同時に要求する。 ∃x(A∧∀y(A[y/x]→y=x)). \exists x\bigl(A\land \forall y(A[y/x]\to y=x)\bigr). これは ∃xA ∧ ∀x∀y((A∧A[y/x])→x=y) \exists x A\ \land\ \forall x\forall y\bigl((A\land A[y/x])\to x=y\bigr) とも同値である。

  3. 恒真でないことは,反例を1つ作れば十分である。領域を {0,1}\{0,1\} とし,述語 D(x,y)D(x,y) を x=yx=y と定める。このとき各 yy に対して x=yx=y と選べるので ∀y∃x D(x,y) \forall y\exists x\,D(x,y) は真である。一方,1つの xx が 00 と 11 の両方に等しいことはないため ∃x∀y D(x,y) \exists x\forall y\,D(x,y) は偽である。したがって含意全体は偽になり,一般には恒真ではない。

問2 2変数2次関数

対象の関数を f(x,y)=x2+xy+y2−4x−2y+3 f(x,y)=x^2+xy+y^2-4x-2y+3 とおく。

1階偏導関数は fx=2x+y−4,fy=x+2y−2 f_x=2x+y-4,\qquad f_y=x+2y-2 である。2階偏導関数は fxx=2,fxy=1,fyx=1,fyy=2 f_{xx}=2,\qquad f_{xy}=1,\qquad f_{yx}=1,\qquad f_{yy}=2 である。

極値候補は fx=fy=0f_x=f_y=0 から求める。 {2x+y−4=0,x+2y−2=0⇒x=2, y=0. \begin{cases} 2x+y-4=0,\\ x+2y-2=0 \end{cases} \quad\Rightarrow\quad x=2,\ y=0. ヘッセ行列は H=(2112) H=\begin{pmatrix}2&1\\1&2\end{pmatrix} であり,主座小行列式は 2>02>0,det⁡H=3>0\det H=3>0 である。よって HH は正定値で, この点で極小値をとる。値は f(2,0)=4−8+3=−1 f(2,0)=4-8+3=-1 である。

最終答

問1: 高々1つは ∀x∀y((A∧A[y/x])→x=y)\forall x\forall y((A\land A[y/x])\to x=y),ちょうど1つは ∃x(A∧∀y(A[y/x]→y=x))\exists x(A\land \forall y(A[y/x]\to y=x))。反例は領域 {0,1}\{0,1\},D(x,y)⇔x=yD(x,y)\Leftrightarrow x=y。問2: fx=2x+y−4, fy=x+2y−2, fxx=2, fxy=fyx=1, fyy=2f_x=2x+y-4,\ f_y=x+2y-2,\ f_{xx}=2,\ f_{xy}=f_{yx}=1,\ f_{yy}=2。 極小値は (x,y)=(2,0)(x,y)=(2,0) で −1-1。

第2問 — ソフトウェア系

採点観点

計算量では,ソート後の走査 O(n)O(n) よりソート O(nlog⁡n)O(n\log n) が支配的であることを 明示する。再帰計算では,値そのものと呼び出し木の大きさを区別する。SVMでは,図中の 境界,マージン,サポートベクトルを言葉でも説明し,数式ではノルムで割る点を落とさない。

典型ミス

ハッシュ法は平均 O(n)O(n) であって,衝突対策を考えない最悪時間まで常に O(n)O(n) と断言する のは危険である。SVMでは最近点の代入値を1に正規化した後,距離が 1/∥w∥1/\|\mathbf{w}\| になる。ここを ∥w∥\|\mathbf{w}\| と逆に書く誤りが多い。

検算

f2(n)f_2(n) の呼び出し回数はフィボナッチ型に増える。差分を見ると 1, 1, 3, 5, 9, 15, 25 1,\ 1,\ 3,\ 5,\ 9,\ 15,\ 25 であり,直前2個の和に親呼び出し1回を足す形になっている。動的計画法では同じ添字の値を 再計算しないため,指数的な増加が消える。

ソフトウェア系の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — ハードウェア系

採点観点

マルチプレクサは,選択信号ごとに1つのデータだけを通す回路である。したがって選択項を 作り,それぞれをデータ入力とANDし,最後にORするという分解を示すと設計根拠が明確になる。 アセンブリでは,分岐即値が「次命令からの相対距離」である点と,int配列の添字を4倍する点が 主要な採点対象である。

典型ミス

bne\texttt{bne} を使うと,等しいときに終了する制御にならない。配列アクセスでは a[i]a[i] のアドレスを「先頭アドレス +i+i」としてしまうと,32ビット整数のサイズを 無視することになる。また,lw\texttt{lw} と sw\texttt{sw} の第1オペランドは 有効アドレスを表すので,ロード先・ストア元のレジスタと混同しない。

検算

2つ目のループでは,条件分岐行を相対位置0とすると,終了先は8命令後ではなく, 読込後の次位置から7命令後である。戻り分岐も同様に,br\texttt{br} の次位置から 条件分岐行まで8命令戻るので −8-8 となる。

ハードウェア系の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — OSとネットワーク

採点観点

TCPとUDPの比較では,単に「TCPは信頼できる,UDPは速い」と書くだけでは弱い。 シーケンス番号,送達確認,再送処理,フロー制御がどのように信頼性と遅延に関係するかを 説明する。公開鍵暗号では,公開鍵と秘密鍵の役割,および共通鍵暗号で必要になる鍵の共有問題を 明確に対比する。

典型ミス

優先度順スケジューリングでは,Cが到着した時刻25にAを中断してはいけない。Aの優先度が 最も高いため,Aは終了まで走り続ける。またBは時刻15までに10秒だけ実行済みなので, 最後に残り5秒を実行する。

検算

実行時間の合計は 15+20+10=4515+20+10=45 秒である。最初の到着が時刻5なので,CPUが動いている 区間の終端は 5+45=505+45=50 秒となる。最後にBが時刻50で終わることと一致している。

OSとネットワークの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ヒューマンサイエンス系

採点観点

問1では,選択肢名だけでなく,なぜその概念に該当するかを症例仮説の確認行動に結びつける。 論述では,批判的思考,集合知,信頼,バイアスの4語を単に並べるのではなく,診断の質が 向上する条件と低下する条件を分けて述べる。

典型ミス

問2で Pr⁡(P∣A)\Pr(P\mid A) と Pr⁡(A∣P)\Pr(A\mid P) を取り違えやすい。前者はAグループの学生が 及第点を取る確率,後者は及第点を取った学生がAグループである確率であり,ベイズの定理で 事前確率を掛けてから正規化しなければならない。

検算

Aグループから及第点を取る学生の割合は全体の4.75\%,Cグループから及第点を取る学生の割合は 全体の5.0\%である。Cは個人ごとの及第率は低いが人数が多いため,事後確率ではAをわずかに 上回る。これが直観とずれる理由である。

ヒューマンサイエンス系の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(8年度)

  • 2026年度(全5問)

    オートマトンと行列式 / 探索・再帰・機械学習 / 数表現と論理回路

  • 2025年度(全5問)

    形式言語と固有値 / 計算量・再帰・学習 / 数表現・PSW・論理簡約

  • 2024年度(このページ・全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2023年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2022年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2021年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2020年度(全7問)

    情報科学基礎:数学CS / 情報科学基礎:アルゴリズムとデータ構造 / 情報科学基礎:論理回路と計算機基礎

  • 2019年度(全7問)

    情報科学基礎:数学CS / 情報科学基礎:アルゴリズムとデータ構造 / 情報科学基礎:論理回路と計算機基礎

2024年度の出題内容

全5問

この5問の分野は数学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学数学・数理系採点観点あり
第2問—ソフトウェア系採点観点あり
第3問—ハードウェア系採点観点あり
第4問—OSとネットワーク採点観点あり
第5問—ヒューマンサイエンス系採点観点あり

2024年度の解説には検算5件・典型ミス5件が付いています。

同じテーマを出した他大学・他年度

5テーマ

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 5問
両年度に出たテーマ
ソートアルゴリズム
2024年度で新しく出たテーマ
正定値行列・二次形式・計算量理論・動的計画法
2023年度の解答例

静岡大学の公式過去問

公開年度範囲
2019〜2026(CS情報科学。2021〜2026は各1本、2019・2020は情報科学基礎/情報科学の2本構成)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
英語の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFをプログラム別に公開。
院試hubの最終確認
2026-07-05
静岡大学の公式過去問PDF