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静岡大 総合科学技術研究科 情報学専攻 情報科学 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は数学1問です。固有値・固有ベクトル、ソートアルゴリズム、動的計画法が出ています。2020年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトルです。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 数学・数理系

採点観点

固有ベクトルは大きさ1に正規化する指定があるため、未正規化ベクトルだけで終えないこと。2次正方行列では、固有値を求めた後に (2,λ−1)T(2,\lambda-1)^T のような簡単な固有ベクトルを選び、最後にノルムで割るとよい。

有限体では、2次多項式の既約性は「根を持たないこと」と同値である。3個の元を代入すれば判定できるため、判別式だけに頼るよりミスが少ない。

典型ミス

GF(3)\mathrm{GF}(3) では −1=2-1=2 であり、通常の整数計算の符号をそのまま持ち込むと因数分解を誤る。たとえば α2=2\alpha^2=2 を使って積を展開し、係数はすべて3で割った余りに戻す。

GF(23)\mathrm{GF}(2^3) の最後の計算は、α\alpha の既約多項式が明示されていないと多項式表示の答えが一意に定まらない。答案では「どの既約多項式の根として計算するか」を書いてから値を出すのが安全である。

確認

x2+x+2x^2+x+2 の根を 1+α1+\alpha とすると、 (1+α)2+(1+α)+2=1+2α+α2+1+α+2=1+2α+2+1+α+2=0 (1+\alpha)^2+(1+\alpha)+2 =1+2\alpha+\alpha^2+1+\alpha+2 =1+2\alpha+2+1+\alpha+2=0 である。ここで 2α+α=3α=02\alpha+\alpha=3\alpha=0、定数項も 1+2+1+2=6=01+2+1+2=6=0 となる。

解答

問1:固有値と正規化固有ベクトル

A=(1234) A=\begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix} について det⁡(A−λI)=(1−λ)(4−λ)−6=λ2−5λ−2. \det(A-\lambda I) =(1-\lambda)(4-\lambda)-6 =\lambda^2-5\lambda-2. したがって λ±=5±332. \lambda_{\pm}=\frac{5\pm\sqrt{33}}{2}. (A−λI)v=0(A-\lambda I)v=0 に対して v=(2,λ−1)Tv=(2,\lambda-1)^T を取ればよい。よって正規化固有ベクトルは u±(A)=14+(λ±−1)2(2λ±−1). u_{\pm}^{(A)} = \frac{1}{\sqrt{4+(\lambda_{\pm}-1)^2}} \begin{pmatrix}2\\ \lambda_{\pm}-1\end{pmatrix}.

次に B=(5667) B=\begin{pmatrix}5&6\\6&7\end{pmatrix} について det⁡(B−λI)=(5−λ)(7−λ)−36=λ2−12λ−1. \det(B-\lambda I) =(5-\lambda)(7-\lambda)-36 =\lambda^2-12\lambda-1. したがって μ±=6±37. \mu_{\pm}=6\pm\sqrt{37}. (B−μI)v=0(B-\mu I)v=0 に対して v=(6,μ−5)Tv=(6,\mu-5)^T を取ればよいので、 u±(B)=136+(μ±−5)2(6μ±−5). u_{\pm}^{(B)} = \frac{1}{\sqrt{36+(\mu_{\pm}-5)^2}} \begin{pmatrix}6\\ \mu_{\pm}-5\end{pmatrix}.

問2:微分と微分方程式

f(x)=x2,g(x)=e2x f(x)=x^2,\qquad g(x)=e^{2x} より dfdx=2x,dgdx=2e2x, \frac{df}{dx}=2x,\qquad \frac{dg}{dx}=2e^{2x}, d2fdx2=2,d2gdx2=4e2x. \frac{d^2f}{dx^2}=2,\qquad \frac{d^2g}{dx^2}=4e^{2x}.

dhdx=x \frac{dh}{dx}=x の一般解は h(x)=x22+C1. h(x)=\frac{x^2}{2}+C_1. また dkdx=2k(x) \frac{dk}{dx}=2k(x) は変数分離により dkk=2 dx \frac{dk}{k}=2\,dx だから k(x)=C2e2x. k(x)=C_2e^{2x}.

問3:ガロア体

(1) GF(3)\mathrm{GF}(3) 上のモニック2次多項式を x2+ax+b(a,b∈{0,1,2}) x^2+ax+b\qquad (a,b\in\{0,1,2\}) とおく。2次式は GF(3)\mathrm{GF}(3) 内に根を持たなければ既約である。x=0,1,2x=0,1,2 を代入して根を持たないものを調べると x2+1,x2+x+2,x2+2x+2 x^2+1,\qquad x^2+x+2,\qquad x^2+2x+2 である。

(2) α2+1=0\alpha^2+1=0 とするので、α2=2\alpha^2=2 である。拡大体の元は GF(32)={a+bα∣a,b∈GF(3)} \mathrm{GF}(3^2) = \{a+b\alpha\mid a,b\in\mathrm{GF}(3)\} であり、具体的には 0, 1, 2, α, 2α, 1+α, 1+2α,2+α, 2+2α \begin{gathered} 0,\ 1,\ 2,\ \alpha,\ 2\alpha,\ 1+\alpha,\ 1+2\alpha,\\ 2+\alpha,\ 2+2\alpha \end{gathered} である。

各既約多項式は GF(32)\mathrm{GF}(3^2) 上では次のように分解する。 x2+1=(x−α)(x−2α), x^2+1=(x-\alpha)(x-2\alpha), x2+x+2=(x−(1+α))(x−(1+2α)), x^2+x+2=(x-(1+\alpha))(x-(1+2\alpha)), x2+2x+2=(x−(2+α))(x−(2+2α)). x^2+2x+2=(x-(2+\alpha))(x-(2+2\alpha)).

(3) GF(23)\mathrm{GF}(2^3) の非零元の乗法群の位数は 77 である。したがって、α≠1\alpha\ne1 なら α7=1\alpha^7=1 である。ただし、和を含む式を具体的な多項式表示へ直すには、α\alpha の最小多項式が必要である。

標準的な仮定として α3+α+1=0\alpha^3+\alpha+1=0、すなわち α3=α+1\alpha^3=\alpha+1 とする。このとき α4=α2+α,α5=α2+α+1,α6=α2+1. \alpha^4=\alpha^2+\alpha,\quad \alpha^5=\alpha^2+\alpha+1,\quad \alpha^6=\alpha^2+1. したがって α+α6=α+α2+1=α5. \alpha+\alpha^6 =\alpha+\alpha^2+1 =\alpha^5. 逆元は (α5)−1=α2(\alpha^5)^{-1}=\alpha^2 であるから α4(α+α6)−1=α4α2=α6=α2+1. \alpha^4(\alpha+\alpha^6)^{-1} =\alpha^4\alpha^2 =\alpha^6 =\alpha^2+1.

最終答

AA の固有値は (5±33)/2(5\pm\sqrt{33})/2、BB の固有値は 6±376\pm\sqrt{37}。 微分と一般解、GF(3)\mathrm{GF}(3) 上の既約多項式、GF(32)\mathrm{GF}(3^2) での分解は本文の通り。 GF(23)\mathrm{GF}(2^3) の最後の値は、α3+α+1=0\alpha^3+\alpha+1=0 の仮定で α2+1\alpha^2+1。

第2問 — ソフトウェア系

採点観点

二分探索は、見つかったかどうかだけでなく、各ターンの low,high,middlelow,high,middle を更新前後で示すと満点に近い。プログラムでは、中央添字を整数除算で求め、失敗条件が low>highlow>high であることを明示する。

挿入ソートの計算量は、単に O(N2)O(N^2) と書くだけでは不足する。整列済みや最後だけ最小のような入力では、内側ループがどこで止まるかを説明する必要がある。

典型ミス

ハッシュ法の計算量で最悪時と平均時を混同しやすい。表の O(1)O(1) は、ハッシュ値が十分に分散し、表サイズに余裕があるという仮定の平均計算量である。

ロボットの確率では、移動先の報酬値を分子にし、現在位置の近傍の報酬和を分母にする。目的地側の近傍和で割ると、遷移確率の正規化が崩れる。

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第3問 — ハードウェア系

採点観点

2の補数変換では、負数を「ビット反転して1を足す」方法と「符号なし値から 2162^{16} を引く」方法のどちらでもよい。計算過程を残すことが重要である。

アドレシング方式の説明では、レジスタ間接であることと、アクセス後にレジスタが増えることの両方を書く。増えるタイミングをアクセス前と誤ると、プリインクリメント方式の説明になってしまう。

典型ミス

1の補数の欠点を「変換が面倒」と書くのは逆である。人が読む変換は比較的容易だが、演算器では零が2種類あることとエンドアラウンドキャリーが負担になる。

カルノー図では、行列の並びを通常の2進順 00,01,10,1100,01,10,11 にすると隣接関係を誤る。グレイコード順に並べ、端同士も隣接するものとしてまとめる。

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第4問 — OSとネットワーク

採点観点

ネットワークの答案では、キーワードを列挙するだけではなく、アプリケーション層からデータリンク層へ降り、戻りのレスポンスで逆向きに上がる流れを説明する。特に、IPアドレスの宛先とMACアドレスの宛先が異なる点、NATがポート番号も含めて対応表を持つ点を書くとよい。

OS側の答案では、Webサーバを単なるアプリケーションとしてではなく、OS資源を使うプロセスとして説明する。ソケットもファイルディスクリプタとして扱われ、ファイル読み込みもネットワーク送信もシステムコールでカーネルに依頼する、という統一的な見方が重要である。

典型ミス

HTTPSの説明で「公開鍵で全データを暗号化する」と書くのは不正確である。公開鍵暗号は主に認証や鍵共有に使われ、通信本文は共通鍵で暗号化される。

大量アクセス時の現象を「サーバが落ちる」とだけ書くと弱い。ファイルディスクリプタ、メモリ、スワップ、ディスク、ネットワーク帯域のどこが詰まるかを分けて説明する。

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第5問 — ヒューマンサイエンス系

採点観点

オンライン授業の答案では、指定された認知科学・情報学の語を並べるだけでなく、課題、対策、情報学の貢献を対応させる。たとえば「知覚情報が減る」なら「マルチモーダルインタフェースで補う」という形にする。

検査の計算では、感度 60%60\% と偽陽性率 5%5\% を混同しない。陽性者全体の中で真陽性が占める割合を求めるので、分母には真陽性と偽陽性の両方を入れる。

典型ミス

60%60\% という検査感度をそのまま陽性的中率と答えるのは誤りである。事前確率が 10%10\% なので、陽性者の中には非罹患者から出た偽陽性も含まれる。

問1の論述では、オンライン授業を単に良い・悪いで評価するのではなく、感覚、知覚、記憶、意思決定、コミュニケーション、ヒューマンインタフェースなどの概念を使って、どの認知過程がどう変わるかを説明する。

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年度別の解答例(8年度)

  • 2026年度(全5問)

    オートマトンと行列式 / 探索・再帰・機械学習 / 数表現と論理回路

  • 2025年度(全5問)

    形式言語と固有値 / 計算量・再帰・学習 / 数表現・PSW・論理簡約

  • 2024年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2023年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2022年度(全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2021年度(このページ・全5問)

    数学・数理系 / ソフトウェア系 / ハードウェア系

  • 2020年度(全7問)

    情報科学基礎:数学CS / 情報科学基礎:アルゴリズムとデータ構造 / 情報科学基礎:論理回路と計算機基礎

  • 2019年度(全7問)

    情報科学基礎:数学CS / 情報科学基礎:アルゴリズムとデータ構造 / 情報科学基礎:論理回路と計算機基礎

2021年度の出題内容

全5問

この5問の分野は数学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学数学・数理系採点観点 / 確認あり
第2問—ソフトウェア系採点観点あり
第3問—ハードウェア系採点観点あり
第4問—OSとネットワーク採点観点あり
第5問—ヒューマンサイエンス系採点観点あり

2021年度の解説には典型ミス5件が付いています。

同じテーマを出した他大学・他年度

3テーマ

前年度(2020年度)との違い

大問数
2020年度 7問 → 2021年度 5問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2021年度で新しく出たテーマ
ソートアルゴリズム・動的計画法
2020年度の解答例

静岡大学の公式過去問

公開年度範囲
2019〜2026(CS情報科学。2021〜2026は各1本、2019・2020は情報科学基礎/情報科学の2本構成)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
英語の扱いは募集要項で年度別に確認。公式過去問ページは専門科目PDFをプログラム別に公開。
院試hubの最終確認
2026-07-05
静岡大学の公式過去問PDF