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早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻 専門科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は情報1問、電磁気学・回路1問です。オートマトン理論が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 情報基礎

有限オートマトンで見るべき情報

偶奇だけで決まる言語は,過去の入力列全体ではなく偶奇の組だけを状態にすればよい。一方,aa と bb の個数比較は差がいくらでも大きくなり得るため,有限個の状態に押し込められない。

最小と極小の違い

集合被覆の手続きは「これ以上1個も削れない」状態を作るだけである。これは包含に関する極小性であり,集合数が最小であることとは異なる。反例を1つ出せることが答案上の決め手になる。

採点の置き所

正則性の判定では、L1,L2L_1,L_2 は偶奇の組を4状態で記憶できること、L3L_3 は個数差を無限に記憶する必要があることを対比させる。論理式では、反例の構造、存在量化の証人、前件が偽のときの含意をそれぞれ明示する。集合被覆では、被覆性の不変条件、最小でない反例、Θ(n2)\Theta(n^2) の回数評価を分けて書く。

典型ミスと検算

L2L_2 は「または」なので、受理しない状態は aa が偶数かつ bb が奇数の場合だけである。L3L_3 の非正則性は、単にDFAを思いつかないことではなく、ana^n たちが異なる右合同類に分かれることで示す。集合被覆の反例は、残った集合族が極小であるが最小でないことを確認しておく。

解答

  1. アルファベットを {a,b}\{a,b\} とする。

    1. L1={w∣occ⁡(w,a) は奇数, occ⁡(w,b) は偶数}L_1=\{w\mid \operatorname{occ}(w,a)\text{ は奇数},\ \operatorname{occ}(w,b)\text{ は偶数}\} は正則である。 aa の偶奇と bb の偶奇だけを状態に持てばよい。状態を EaEb, OaEb, EaOb, OaOb E_aE_b,\ O_aE_b,\ E_aO_b,\ O_aO_b とし,初期状態を EaEbE_aE_b,受理状態を OaEbO_aE_b とする。 入力 aa で第1成分の偶奇を反転し,入力 bb で第2成分の偶奇を反転するDFAが受理する。

    2. L2={w∣occ⁡(w,a) は奇数または occ⁡(w,b) は偶数}L_2=\{w\mid \operatorname{occ}(w,a)\text{ は奇数または }\operatorname{occ}(w,b)\text{ は偶数}\} も正則である。 同じ4状態DFAを用い,受理状態を OaEb, OaOb, EaEb O_aE_b,\ O_aO_b,\ E_aE_b とすればよい。受理しないのは EaObE_aO_b だけである。

    3. L3={w∣occ⁡(w,a)≤occ⁡(w,b)}L_3=\{w\mid \operatorname{occ}(w,a)\le \operatorname{occ}(w,b)\} は正則でない。 ana^n と ama^m (n<m)(n<m) を考える。後ろに bnb^n を付けると anbn∈L3a^n b^n\in L_3 だが,ambn∉L3a^m b^n\notin L_3 である。したがって a0,a1,a2,…a^0,a^1,a^2,\ldots は互いに異なる右合同類に属し,Myhill--Nerodeの定理より有限オートマトンでは受理できない。

  2. 論理式は,量化子の範囲と含意の向きを丁寧に見る。

    1. 妥当ではない。領域を1点集合 {d}\{d\} とし,P(d)P(d) を真,Q(d)Q(d) と R(d,d)R(d,d) を偽にする。 前件 P(x)∧Q(y)→R(x,y)P(x)\land Q(y)\to R(x,y) は常に真だが,後件 P(x)→R(x,y)P(x)\to R(x,y) を満たす yy は存在しない。

    2. 妥当である。∃x Q(x)\exists x\,Q(x) より Q(y0)Q(y_0) となる y0y_0 がある。任意の xx について P(x)P(x) が真なら, ∀x∀y(P(x)∧Q(y)→R(x,y))\forall x\forall y(P(x)\land Q(y)\to R(x,y)) から R(x,y0)R(x,y_0) が従う。P(x)P(x) が偽なら含意は自動的に真である。

    3. 妥当である。前件 ∀y(P(y)→Q(y))∧∃yP(y)\forall y(P(y)\to Q(y))\land \exists yP(y) が真なら,ある y0y_0 で P(y0)P(y_0) が真であり, したがって Q(y0)Q(y_0) が真である。この y0y_0 を外側の存在量化の証人にできる。前件が偽なら含意は任意の xx で真である。

  3. 与えられたプログラムは,集合族から冗長な集合を1つずつ削除する手続きである。

    1. 必ず被覆を出力する。初期状態では全集合を使っているので TT を覆う。集合 xx を削除するのは, 削除後の和集合がなお TT を含むときだけである。よってループ不変条件として「現在の SS は TT の被覆である」が保たれる。

    2. 必ずしも最小被覆ではない。たとえば T={1,2,3,4,5,6},A={1,2,3},B={4,5,6},C={1,4},D={2,5},E={3,6} \begin{gathered} T=\{1,2,3,4,5,6\},\\ A=\{1,2,3\},\quad B=\{4,5,6\},\\ C=\{1,4\},\quad D=\{2,5\},\quad E=\{3,6\} \end{gathered} を考える。最小被覆は {A,B}\{A,B\} で2個である。一方,走査順によっては AA と BB が削除され, {C,D,E}\{C,D,E\} が残る。これは1個削ると被覆でなくなるが,個数は3で最小ではない。

    3. nn 個の集合があるとき,削除は高々 nn 回であり,最後に削除できないことを確認する1回がある。 各回の for ループでは高々 nn 個の集合を調べ,和集合・差集合・部分集合判定は問題の仮定により Θ(1)\Theta(1) と数える。 したがって最悪漸近時間は Θ(n2)\Theta(n^2) である。

最終答

L1,L2L_1,L_2 は正則,L3L_3 は非正則。(2)は(a)非妥当,(b)(c)妥当。(3)の手続きは被覆を保つが最小被覆は保証せず,最悪時間は Θ(n2)\Theta(n^2)。

第2問 — 計算機システム

スタックフレームの読み方

`addi sp,sp,-48' は領域確保,`sw fp,44(sp)' は呼出元のフレームポインタ保存,`addi fp,sp,48' は固定基準の設定である。 以後の −36(fp)-36(fp) のような負のオフセットは,そのフレーム内の保存済み引数や局所変数を指す。

最適化の効果

最適化前のコードはデバッグしやすい形で全変数をフレームに置く。最適化後は,外部から観測されない局所変数を消去し,呼出規約で定められた返値レジスタだけを使う。

採点の置き所

記憶階層では、容量、速度、局所性の役割をレジスタ、キャッシュ、主記憶の順に比較する。RISC-Vのレジスタ指定は32本から5ビットを計算する。スタックフレームでは、spsp の減算、旧 fpfp の保存、新 fpfp の設定、各変数の負オフセット、返値レジスタ x10x10 を順に読み取る。

典型ミスと検算

非葉関数になったときに必要なのは、別関数呼び出しで rara が上書きされることへの対策である。fpfp と spsp の役割を混同すると、fp−36fp-36 や fp−40fp-40 の保存位置を逆に読みやすい。最適化後にメモリアクセスが消えるのは、局所変数の値がレジスタだけで保持でき、外部からその格納番地が観測されないためである。

計算機システムの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 回路

電源変換

並列接続された同一の電圧源は,ノートン形に直すと理解しやすい。Aは 5A5\mathrm{A} の電流源と 1Ω1\Omega の並列,2台並列なら 10A10\mathrm{A} と 0.5Ω0.5\Omega,これを戻すと 5V5\mathrm{V} と 0.5Ω0.5\Omega である。

最大電力条件

負荷で消費される電力が最大になるのは,負荷抵抗が負荷端子から見たテブナン抵抗に等しいときである。回路中に電流源がある場合でも,テブナン抵抗を求めるときは独立電流源を開放する。

採点の置き所

電源Aの等価回路は、2つの負荷条件から EE と rr の連立方程式を立てるところが得点の中心である。並列化したBは、開放電圧が同じで内部抵抗が半分になることを説明する。2の補数回路では、入力表から下位桁の規則を読み、Y1Y_1 をXOR、Y2Y_2 を X2⊕(X1∨X0)X_2\oplus(X_1\lor X_0) へ簡単化する過程を残す。

典型ミスと検算

同じ電圧源を並列にしても電圧は2倍にならない。ノートン形に直せば、電流源が足されて内部抵抗が並列合成されるだけで、テブナン電圧は 5V5\mathrm{V} のままである。最大電力の検算では、Vth=3VV_{\mathrm{th}}=3\mathrm{V}、Rth=3ΩR_{\mathrm{th}}=3\Omega なので Pmax⁡=9/12=0.75WP_{\max}=9/12=0.75\mathrm{W} とすぐ確認できる。

回路の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 情報通信ネットワーク

ヘッダ読解

TCPの最初の16ビットが送信元ポート,次の16ビットが宛先ポートである。データオフセットが5ならオプションなしの20バイトヘッダで,制御ビット 0x180x18 はPSHとACKの組合せになる。

最長プレフィックス一致

ルーティング表は「先に載っているもの」ではなく,宛先アドレスに一致するもののうちプレフィックス長が最も長いものを選ぶ。どれにも一致しない場合だけデフォルト経路を使う。

採点の置き所

回線交換とパケット交換は、資源予約、帯域安定性、統計多重、遅延変動を対比する。レイヤ構成では、交換可能性と障害切り分けの2面を書く。TCPヘッダは16ビット、32ビット単位で区切って、ポート、シーケンス番号、データオフセット、フラグ、ウィンドウを順に読む。FIBは各宛先について一致候補を列挙し、最長のものを選ぶ。

典型ミスと検算

0x180x18 はACKとPSHであり、SYNではない。データオフセット5なら20バイトヘッダなので、オプションを仮定しない。最長プレフィックス一致では、より一般的な /22 より、該当すれば /24 や /26 が優先される。どの個別経路にも当たらない宛先だけが 0.0.0.0/00.0.0.0/0 のデフォルト経路へ行く。

情報通信ネットワークの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

2026年度の出題内容

全4問

この4問の分野は情報1問・電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—情報基礎有限オートマトンで見るべき情報 / 最小と極小の違いあり
第2問情報計算機システムスタックフレームの読み方 / 最適化の効果あり
第3問電磁気学・回路回路電源変換 / 最大電力条件あり
第4問—情報通信ネットワークヘッダ読解 / 最長プレフィックス一致あり

2026年度の解説には採点の置き所4件が付いています。

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前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 4問 → 2026年度 4問
2025年度の解答例

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院試hubの最終確認
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