早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻 専門科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)
全4問の分野は情報1問、電磁気学・回路1問です。群論・環論、グラフ理論が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 情報基礎
ハノイの塔の考え方
通常のハノイの塔では「何回動かすか」だけを見るが、本問では円盤ごとに費用が異なる。最大円盤は必ず1回だけ動き、それ以外の円盤の移動は左右に同じ小問題として2回現れる。この構造を見落とさなければ、漸化式は自然に になる。
多項式を足す理由
非斉次漸化式を斉次化する典型手法である。右辺の非斉次項が なので、同じ次数の多項式 を加えて指数関数だけの形に直す。 の係数比較を書けば、計算の根拠が明確になる。
停止条件の本質
後半のプログラムは、2つの等差数列 の共通項を探している。共通項が存在すれば、両方の値が同じ にそろった回で停止する。共通項が存在しなければ、一方が追いつくたびに他方が先へ進むため、代入が永久に続く。
採点の置き所
ハノイの塔は、最大円盤を1回だけ動かすために同じ小問題が2回現れることを説明してから を書く。閉形式では、 の係数比較を見せると導出点が入る。プログラム停止条件では、2つの等差数列の共通項問題に変換し、中国剰余定理の条件 まで到達することが重要である。
典型ミスと検算
通常のハノイの塔の移動回数 をそのまま使うと、円盤ごとの費用 を無視している。求めた式は を満たすので初期条件で検算できる。停止しない例は、単に値が大きくなる例ではなく、合同式が解を持たない例を出す必要がある。
解答
半径 の円盤を1回動かす費用を とおく。最大円盤を移すためには、まず上の 枚を補助柱へ移し、半径 の円盤を1回移し、最後に 枚を目的柱へ移す必要がある。 したがって である。これより を得る。
上で述べた通り、漸化式は である。
が の指数関数になるようにする。 となればよいので、 を満たす2次多項式を探す。 とおくと である。係数比較から となる。よって とすればよい。
とおくと であり、 である。したがって となり、 を得る。
の主項は であり、多項式項は指数関数に比べて小さい。例えば で が成り立つから、 である。
プログラムのループ本体の各回終了時には、 と はそれぞれ初期値と同じ剰余類に属し、 はその時点での大きい方に一致する。強く書けば である。さらに各代入は 、、 のいずれかを増加させるだけなので、値は単調非減少である。
のときは必ず停止する。停止条件は、ある回の先頭で となり、どの代入も 実行されないことである。この場合、正の公倍数 が を満たすため、単調に増加する探索は遅くともその共通値に到達する。
停止しない具体例として がある。このとき は常に偶数、 は常に奇数であるから、 となることがない。
一般に、このプログラムが停止しないのは合同式 が解を持たない場合である。中国剰余定理の条件より、これは と同値である。逆に なら共通する剰余類が存在し、単調な更新はその最小の 到達可能な共通値で停止する。
最終答
、したがって 。プログラムは のとき停止し、そうでないとき停止しない。
第2問 — 計算機システム
単位を先にそろえる
転送速度の問題は、バイト数、サイクル数、ミリ秒の順に単位をそろえると失点しにくい。1キロバイトを バイトではなく バイトとして計算する点に注意する。
ディスク待ち時間の分解
磁気ディスクの読み出し時間は、シーク時間、回転待ち時間、データ転送時間に分けて考える。ランダム配置の最悪ケースでは、各ブロックでほぼ最悪の待ちが起こると見積もる。一方、SCANは要求をトラック順に並べ替えるので、主にシーク時間を削減するアルゴリズムであり、回転待ちや転送時間そのものを消すわけではない。
LRUとFCFSの差
LRUは直近で使ったブロックを残すため、繰り返し現れる と相性がよい。FCFSでは、古く入った が途中で追い出されるため、同じ参照列でもミスが1回増える。キャッシュ問題では、各時点の中身を2枠の表として追うと機械的に判定できる。
採点の置き所
転送時間では、1KBを1024B、32ビットを4B、64ビットを8Bに直してからサイクル数を出す。ディスク読み出しでは、シーク、回転待ち、転送を別々に足すこと、SCANでは主にシーク回数が減ることを明示する。キャッシュ置換では、参照列を と記号化し、各時点の2枠の内容を書くと部分点が取りやすい。
典型ミスと検算
ランダム配置の10ブロックを1回のシークで読めると見なすと、最悪条件を使えていない。SCAN後の は、シークがまとめられる一方で10ブロック分の回転待ちと転送が残る値である。LRUの5回に対してFIFO扱いのFCFSが6回になるのは、頻出する がFIFOでは途中で追い出されるためであり、ここを同じ回数にすると置換方針を区別できていない。
第3問 — 回路
電圧計は回路を変える
内部抵抗が有限の電圧計を接続すると、端子は開放ではなく負荷接続になる。そのため、測定値は開放端電圧 そのものではなく、 と電圧計内部抵抗の分圧になる。誤差率は の大きさに依存せず、抵抗比だけで決まる。
パリティ回路
XORは「1の個数の偶奇」を計算する演算である。 は3ビット中の1の個数が奇数なら1、偶数なら0になる。奇数パリティを付けるには、全体が奇数になるようにその反転を付ければよい。
ドントケアを使う最小化
正しいパリティを満たさない入力は実際には現れないため、出力を0にも1にも選べる。これを使うと、素数判定の式は を含まない まで簡単になる。ドントケアを単なる空欄として扱わず、隣接グループを大きくするために使うのが要点である。
採点の置き所
電圧計の問題では、まず端子から見た と を求め、次に電圧計内部抵抗との分圧を計算する。相対誤差は測定値と開放電圧の差を開放電圧で割る。パリティでは、送信用の と受信側の誤り検出 を分けて式にし、素数判定では対象となる入力値とドントケアの扱いを示す。
典型ミスと検算
理想電圧計とみなして と答えると、内部抵抗の指定を使っていない。測定値 は開放端電圧より小さく、誤差率も と抵抗比だけで決まるので検算しやすい。奇数パリティでは全体の1の個数を奇数にするため、 ではなくその反転が必要である。
第4問 — 情報通信ネットワーク
階層ごとに考える
ネットワークの記述問題は、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層、アプリケーション層に分けると抜け漏れが減る。MACアドレスは同一リンク内、IPアドレスはネットワーク間、ポート番号はホスト内のプロセス識別に対応する。
距離ベクトルの更新
距離ベクトル型では、Aがネットワーク全体の形を直接知っているわけではない。隣接ルータから受け取った距離情報に、自分からその隣接ルータへのリンクコストを加えて比較する。このため、1回目、2回目、3回目と、到達可能な経路情報がホップ数の広がりに応じて伝わっていく。
Web接続手順の採点ポイント
単に「Webページを開く」と書くのではなく、DHCP、認証、DNS、ARP、TCP、TLS、HTTP/HTTPSの役割を順に述べる。特に、URLが既知でもIPアドレスが既知とは限らないためDNSが必要であり、IPアドレスがわかっても次ホップのMACアドレス解決にはARPが必要である。
採点の置き所
選択問題は、正誤だけでなく各選択肢がMAC、IP、ルータ、ポート番号のどの性質に対応するかを説明すると得点が安定する。サブネットではホスト部6ビット、全64個、利用可能62個の順に書く。距離ベクトルでは、1回目と2回目でAがどの隣接ルータからどの距離を受け取るかを表にして、最終経路木まで更新過程を残す。
典型ミスと検算
距離ベクトルを最初から全体最短路問題として解くだけだと、更新回数ごとの設問に答えていない。 のブロードキャストが .63 になることを確認すれば、ホスト数62も検算できる。Web接続手順では、MACアドレスがルータを越えて維持されると書くのは誤りで、リンクごとに張り替わる。
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2023年度の出題内容
全4問
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 4問 → 2023年度 4問
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