東大 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 創造情報学 専門科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)
全3問です。状態図・相変態、ハッシュ法、機械学習の基礎が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — DFAと二進整数の3分割判定
方針
この問題は,DFAを「何を記憶する機械か」として設計すると見通しがよい。必要なのは過去の 入力列そのものではなく,長さの偶奇や で割った余りだけである。余りは3通り,偶奇は2通り なので,その直積を取れば6状態になる。
逆順入力の扱い
を読むと元の下位桁から処理することになるため,桁の偶奇を明示的に持つ方法が自然である。 一方,3で割り切れるかだけなら,二進数を反転しても「0である余り」は保存される。これは を掛けるだけの違いになり, では または を掛けることに相当するからである。
採点上の注意
状態図を描く問題では,開始状態,受理状態,各状態から各入力記号に対する出辺の3点を落とすと 大きく減点される。遷移表で確認してから図に直すと,出辺の欠落や重複を避けやすい。
第2問 — IPv4アドレスと通信性能
方針
前半はアドレス空間の個数とCIDRの最小ブロックを数える問題である。特にサブネット分割では, 必要台数だけでなく,ネットワークIDとブロードキャスト相当の予約IDを除いた有効数で判断する。 必要有効数が2なら,最小ブロックは4アドレスの になる。
割り当て不能を答案にする場面
問題文が「割り当てよ」と書いていても,制約を満たす割り当てが存在しない場合は, 無理な範囲を列挙するよりも不可能性を示す方が正しい。今回は最小消費数が524で, 元の範囲512を上回るため,どのように並べ替えても実現できない。
通信性能の見方
音声ではペイロードがたまるまでの待ち時間が効くので,ペイロードを小さくする必要がある。 一方,大きなファイル転送ではヘッダ比率を下げるためにペイロードを大きくした方が有利である。 同じパケットサイズでも,目的が遅延最小化かスループット最大化かで望ましい設定は変わる。
第3問 — 情報システム用語の説明
方針
用語説明では,定義,仕組み,利点,注意点の順に書くと密度の高い答案になる。単語を知っている だけでなく,どの入力をどのように処理し,どの条件で性能や正しさが変わるかまで述べるとよい。
選択の理由
この4項目は,データ構造,OS,機械学習,ロボティクスに分散しており,それぞれ具体例と 注意点を書きやすい。特にハッシュテーブルでは平均と最悪,スレッドでは共有と同期, ランダムフォレストでは過学習低減,SLAMでは位置推定と地図作成の相互依存を書くと採点されやすい。
典型ミス
ハッシュテーブルを常に と断定する,スレッドをプロセスと同じものとして扱う, ランダムフォレストを単なる大きな一本の木と説明する,SLAMを位置推定だけと説明する,といった 答案は不十分である。各用語の「何を共有し,何をランダム化し,何を同時に推定するか」を 一つずつ明確にする。
解答
ここでは,ハッシュテーブル,プロセスとスレッド,ランダムフォレスト, SLAMの4項目を選ぶ。
ハッシュテーブル
ハッシュテーブルは,キーをハッシュ関数で配列の添字に変換し,値を高速に検索するデータ構造である。 衝突が少なく,負荷率が適切に保たれていれば,検索・挿入・削除の平均時間は になる。 衝突は連鎖法やオープンアドレス法で処理する。最悪時には多数のキーが同じ場所へ集まり 線形時間になるため,ハッシュ関数の選び方と再ハッシュが重要である。
プロセスとスレッド
プロセスは,独立したアドレス空間や資源を持つ実行単位である。スレッドは同一プロセス内で 実行される軽量な制御の流れで,メモリやファイル記述子などを共有する。プロセス分離は安全性を 高める一方,切替や通信のコストが大きい。スレッドは共有データを扱いやすいが,競合状態や デッドロックを避けるために排他制御が必要になる。
ランダムフォレスト
ランダムフォレストは,多数の決定木を作り,分類では多数決,回帰では平均によって予測する アンサンブル学習法である。各木は学習データの再標本化や特徴量のランダム選択を用いて作られる。 これにより個々の木の過学習を平均化し,単一の決定木より安定した性能を得やすい。 特徴量重要度を見積もれる利点もあるが,木の本数が多いと予測の計算量と解釈性が課題になる。
SLAM
SLAMは,移動ロボットや自律移動体が,自分の位置推定と周囲の地図作成を同時に行う問題である。 センサ観測から環境中の特徴点や障害物を推定しつつ,車輪オドメトリや慣性計測の誤差を補正する。 代表的には拡張カルマンフィルタ,粒子フィルタ,グラフ最適化などが使われる。閉ループ検出により, 同じ場所へ戻ったことを認識できると,蓄積した位置ずれを大きく修正できる。
最終答
選択した4項目は,ハッシュテーブルがキーから配列位置を計算する平均 のデータ構造,プロセスとスレッドが資源分離と共有の違いを持つ実行単位,ランダムフォレストが多数の決定木を平均化する学習法,SLAMが自己位置推定と地図作成を同時に行う枠組みである。
年度別の解答例(5年度)
論理回路と二進演算 / 通信遅延と指数バックオフ / 情報システム用語の説明
Webページ遷移と定常分布 / パケット通信とサーバ処理時間 / 情報システム用語の説明
最尤推定と混合正規分布 / ハミング距離検索と専用回路 / 情報システム用語の説明
2023年度(このページ・全3問)
DFAと二進整数の3分割判定 / IPv4アドレスと通信性能 / 情報システム用語の説明
分離資源配分と動的計画法 / ACK制御とウィンドウ転送 / 情報システム用語の説明
2023年度の出題内容
全3問
同じテーマを出した他大学・他年度
3テーマ
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 3問 → 2023年度 3問
東京大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2022〜2026
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 院試hubの最終確認
- 2026-08-13