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金沢大学 院試 過去問 解答例

金沢大 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2024年度 院試 解答例・解説

金沢大学 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 固有空間とJordan形

方針

固有値を固有多項式から求め、次に ker(A2I)\ker(A-2I) を連立一次方程式として解く。固有値が1つだけで代数的重複度が 33 のとき、Jordan形は固有空間の次元でほぼ決まる。固有空間の次元が 22 なので、対角化はできず、サイズ 22 のJordanブロックが1つ現れる。

検算

提示した PP について detP=1 \det P=1 であるから確かに正則である。また Ap1=2p1,Ap2=2p2,Ap3=2p3+p1 Ap_1=2p_1,\qquad Ap_2=2p_2,\qquad Ap_3=2p_3+p_1 なので、列ベクトルの関係からすぐに AP=P(201020002) AP = P \begin{pmatrix} 2&0&1\\ 0&2&0\\ 0&0&2 \end{pmatrix} が確認できる。 この確認では、PP の第1列と第3列が長さ 22 のJordan鎖 p3p10 p_3 \longmapsto p_1 \longmapsto 0 を作っていることが本質である。すなわち、p3p_3 自身は固有ベクトルではなく、(A2I)p3=p1(A-2I)p_3=p_1 となる広義固有ベクトルである。ここを逆にして (A2I)p1=p3(A-2I)p_1=p_3 と書くと、Jordan形の 11 の位置まで反転してしまうので注意する。

条件確認

(A2I)2=O(A-2I)^2=O であるため、すべてのベクトルは高々階数 22 の広義固有ベクトルである。一方で A2IO A-2I\ne O なので、最小多項式は (λ2)(\lambda-2) ではなく (λ2)2(\lambda-2)^2 である。したがって最大Jordanブロックの大きさはちょうど 22 であり、代数的重複度 33 と固有空間の次元 22 を合わせると、ブロック分割は 2+12+1 以外にない。

典型ミス

(A2I)2=O(A-2I)^2=O だからといって対角化可能とは限らない。対角化可能性を見るには ker(A2I)\ker(A-2I) の次元が代数的重複度 33 と一致するかを調べる必要がある。本問では次元が 22 なので対角化はできない。 また、ker(A2I)3=R3\ker(A-2I)^3=\mathbb{R}^3 はこの固有値に属する広義固有空間を表しており、通常の固有空間 ker(A2I)\ker(A-2I) とは別物である。両者を同じものとして扱うと、固有ベクトルが3本あるかのような誤った結論になる。

試験で書くべきポイント

固有空間の基底、広義固有空間、Jordanブロックの大きさ、変換行列 PP の列ベクトルが何を表しているかを明示する。特に広義固有ベクトルについては (A2I)p3=p1(A-2I)p_3=p_1 の確認を書くと、Jordan形の根拠がはっきりする。 通常のJordan標準形で (210020002) \begin{pmatrix} 2&1&0\\ 0&2&0\\ 0&0&2 \end{pmatrix} と書きたい場合は、対応する列の順序を (p1,p3,p2)(p_1,p_3,p_2) に並べ替える。答案では、どの順序の基底に関する表示なのかを一言添えると、上三角部分の 11 の位置に関する減点を避けやすい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 線形写像と核・像

方針

部分空間の確認は「指定された形が基底行列の線形結合で書ける」ことを示すのが最短である。線形写像の表現行列は、基底の各元を写して、その係数を列に並べればよい。

核の見方

ker(TgIdV)\ker(T_g-\operatorname{Id}_V)Tg(X)=XT_g(X)=X となる行列全体である。今回の TgT_g は共役変換なので、これは gX=XggX=Xg を満たす行列、つまり gg と可換な行列の空間でもある。この視点で見ると、単位行列が核に入ることはすぐ分かる。 実際に X=(abcd) X= \begin{pmatrix} a&b\\ c&d \end{pmatrix} として gX=XggX=Xg を直接解くと、 c=0,b=ad c=0,\qquad b=a-d となる。よって X=dI+(ad)(1100) X=dI+(a-d) \begin{pmatrix} 1&1\\ 0&0 \end{pmatrix} と書け、先に求めた核の基底と一致する。表現行列から計算した核が正しいかを短く検算するには、この可換性の条件を見るのが有効である。

像の検算

[Tg]SI[T_g]_S-I の階数は 22 である。一方、核の次元も 22 であるから、次元公式 dimV=dimker(TgIdV)+dimIm(TgIdV) \dim V=\dim\ker(T_g-\operatorname{Id}_V)+\dim\operatorname{Im}(T_g-\operatorname{Id}_V) により 4=2+2 4=2+2 となり、求めた像の基底が2本であることと整合する。 さらに、像の2本 (1111),E12 \begin{pmatrix}1&-1\\-1&-1\end{pmatrix}, \qquad E_{12} は明らかに一次独立である。第1の行列は E11,E21,E22E_{11},E_{21},E_{22} 成分を含み、第2の行列は E12E_{12} 成分だけを持つため、片方がもう片方のスカラー倍になることはない。

像を列空間として読むときの注意

[Tg]SI[T_g]_S-I の各列は、それぞれ (TgIdV)(E11),(TgIdV)(E12),(TgIdV)(E21),(TgIdV)(E22) (T_g-\operatorname{Id}_V)(E_{11}),\quad (T_g-\operatorname{Id}_V)(E_{12}),\quad (T_g-\operatorname{Id}_V)(E_{21}),\quad (T_g-\operatorname{Id}_V)(E_{22}) の座標である。本問では (TgIdV)(E11)=E12,(TgIdV)(E21)=12(1111) (T_g-\operatorname{Id}_V)(E_{11})=-E_{12},\qquad (T_g-\operatorname{Id}_V)(E_{21}) =\frac12 \begin{pmatrix}1&-1\\-1&-1\end{pmatrix} なので、像はこの2方向で張られる。係数の 12\frac12 は基底を張る上では取り除いてよいが、列ベクトルを行列に戻すときの成分順序 E11,E12,E21,E22 E_{11},E_{12},E_{21},E_{22} を取り違えないことが重要である。

典型ミス

表現行列では、像の係数を「列」に並べる。行に並べてしまうと転置された行列になり、核と像の計算もすべてずれる。また、Im(TgIdV)\operatorname{Im}(T_g-\operatorname{Id}_V) を求めるときは [Tg]S[T_g]_S の列空間ではなく、[Tg]SI[T_g]_S-I の列空間を見る点に注意する。 部分空間 WW では、指定された零成分が固定されていることを確認する必要がある。たとえば E12E_{12}E32E_{32}WW に入らないので、M3(R)M_3(\mathbb{R}) 全体の標準基底をそのまま基底として使うことはできない。答案では、許されている5つの位置だけを基底行列として列挙すれば十分である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 最大値評価

方針

連続性から最大値 MM が存在することを使う。関係式の右辺には x/2x/2(x+1)/2(x+1)/2 が現れ、どちらも [0,1][0,1] に入る。そのため、それぞれの絶対値を最大値 MM で評価できる。

係数4が効く理由

右辺は2つの値の和なので、絶対値を取ると高々 2M2M である。一方、左辺は 4g(x)4|g(x)| である。最大点で x=x0x=x_0 とすれば 4M2M 4M\le 2M となり、最大値が強制的に 00 になる。この係数の差が本問の決定的な部分である。

最大点に代入する理由

MMg|g| の最大値として取っているので、ある x0x_0g(x0)=M|g(x_0)|=M が成り立つ。 関係式は任意の x[0,1]x\in[0,1] で成り立つから、この x0x_0 をそのまま代入できる。 この一手により、各点ごとの評価が最大値そのものの不等式に変わる。

典型ミス

最大値ではなく gg 自身の最大値だけを見ると、gg が負の値を大きく取る場合を取り逃がす。必ず g|g| の最大値を取る。また、連続性は最大値の存在を保証するために使われているので、答案ではそこを一言書くとよい。

試験で書くべきポイント

x/2,(x+1)/2[0,1]x/2,(x+1)/2\in[0,1] であること、閉区間上の連続性により MM が存在すること、最大点に代入することの3点を書く。これだけで短く完全な答案になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 広義積分

方針

円板上の関数で、特異性が 1r2=01-r^2=0、つまり境界 r=1r=1 にある。したがって極座標に直し、境界の少し内側 r211/nr^2\le 1-1/n で切ってから極限を取るのが自然である。

収束判定の本質

極座標変換後、問題は 1/n1uα/2du \int_{1/n}^{1}u^{-\alpha/2}\,du u=0u=0 近くの収束性に帰着する。一般に 01updu \int_0^1 u^{-p}\,du が収束するのは p<1p<1 のときである。ここでは p=α/2p=\alpha/2 なので、条件は α<2\alpha<2 となる。

切り取り方の検算

切り取り領域を r1εr\le 1-\varepsilon としても同じ結論になるが、本解では r211/nr^2\le 1-1/n としたため、置換 u=1r2u=1-r^2 後の下端がちょうど 1/n1/n になる。 広義積分の収束性は境界 u=0u=0 近くの挙動だけで決まり、上端 u=1u=1 では uα/2u^{-\alpha/2} は有限である。したがって、途中の切り取り方の違いで収束条件が変わることはない。

発散側の読み方

α=2\alpha=2 では対数発散、α>2\alpha>2 ではべき発散である。 答案では πlogn,nα/21 \pi\log n\to\infty, \qquad n^{\alpha/2-1}\to\infty をそれぞれ明記すると、境界値 α=2\alpha=2 を取り落としていないことが伝わる。 特に α<2\alpha<2 の式を形式的に α=2\alpha=2 へ代入することはできない。

検算

α=0\alpha=0 と形式的に置くと、積分値は単位円板の面積 π\pi になる。公式 2π2α \frac{2\pi}{2-\alpha} α=0\alpha=0 を代入しても π\pi になり、極座標計算と整合している。 また、α\alpha22 に下から近づくと値は無限大へ向かうので、境界 r=1r=1 の特異性が強くなるという直感とも合っている。

典型ミス

dxdydx\,dy を極座標に直すと rdrdθr\,dr\,d\theta が付く。この rr を落とすと収束条件も値も変わってしまう。また、特異点は原点ではなく境界側なので、切り取り方は r1εr\le 1-\varepsilon または r21εr^2\le 1-\varepsilon とするのがよい。 さらに、α>0\alpha>0 という問題の条件を最後に戻して、答えを 0<α<20<\alpha<2 と書くことも忘れやすい。

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5 — 留数計算

方針

有理関数の単位円上の積分なので、分母の零点を求め、単位円内の極だけの留数を足す。分母が2次式で、極が単純なら Resz=ζ1P(z)=1P(ζ) \operatorname*{Res}_{z=\zeta}\frac{1}{P(z)} = \frac{1}{P'(\zeta)} を使うのが最も速い。

内側の極の判定

a>1a>1 では2つの極は実数で、 z+=a+a2a,z=aa2a z_+=-a+\sqrt{a^2-a},\qquad z_-=-a-\sqrt{a^2-a} である。zz_- は絶対値が明らかに 11 より大きい。z+z_+ については有理化して aa2a=aa+a2a a-\sqrt{a^2-a} = \frac{a}{a+\sqrt{a^2-a}} とすれば、11 未満であることが見やすい。

注意すべき場合分け

a=0,1a=0,1 では2次式が重根をもつので、単純極として扱ってはいけない。また、仮に 0<a<10<a<1 と読むと、a2a\sqrt{a^2-a} は純虚数となり、2つの根はいずれも絶対値 a\sqrt a で単位円内に入る。この場合は単位円内に1つだけ極があるという上の議論とは別問題である。 a=1a=1 では重根 z=1z=-1 が積分路 z=1|z|=1 上に乗るため、通常の留数定理をそのまま適用する設定ではない。 本問で a>1a>1 の条件を使う箇所は、平方根を正の実数として扱えることと、内側の極が一つに決まることの二つである。

典型ミス

単位円内外の判定をせずに両方の留数を足すと誤る。特に2次分母では2つの単純極の留数の和が 00 になることがあり、内側の極だけを選ぶ作業が不可欠である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — ハミング距離

方針

ハミング距離は「異なる位置の個数」である。距離の公理のうち、非負性・同一性・対称性は定義からほぼ直接分かる。最も書くべきところは三角不等式である。

三角不等式の考え方

位置ごとに見るのがポイントである。ある位置で xxzz が違うなら、その途中に置いた yy は、xx と違うか、zz と違うかの少なくとも一方である。これが W(x,z)W(x,y)W(y,z) W(x,z)\subset W(x,y)\cup W(y,z) という集合の包含に対応する。 例えばある位置で xi=0,zi=1x_i=0,z_i=1 なら、yiy_i0011 のどちらであっても、xiyix_i\ne y_i または yiziy_i\ne z_i の少なくとも一方が起こる。 この座標ごとの事実を全ての位置で集めたものが上の包含である。

検算

具体例で dH(x,y)=3d_H(x,y)=3 となるのは、異なる位置が3か所あるというだけである。値そのものよりも、W(x,y)W(x,y) を正しく列挙してから個数を数えることが大切である。

典型ミス

三角不等式で W(x,z)=W(x,y)W(y,z) W(x,z)=W(x,y)\cup W(y,z) と書いてしまうのは誤りである。右辺には、xxzz は同じだが yy だけ違う位置も含まれ得る。必要なのは等号ではなく包含である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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