金沢大学 院試 過去問 解答例
金沢大 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2024年度 院試 解答例・解説
金沢大学 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 固有空間とJordan形
方針
固有値を固有多項式から求め、次に を連立一次方程式として解く。固有値が1つだけで代数的重複度が のとき、Jordan形は固有空間の次元でほぼ決まる。固有空間の次元が なので、対角化はできず、サイズ のJordanブロックが1つ現れる。
検算
提示した について であるから確かに正則である。また なので、列ベクトルの関係からすぐに が確認できる。 この確認では、 の第1列と第3列が長さ のJordan鎖 を作っていることが本質である。すなわち、 自身は固有ベクトルではなく、 となる広義固有ベクトルである。ここを逆にして と書くと、Jordan形の の位置まで反転してしまうので注意する。
条件確認
であるため、すべてのベクトルは高々階数 の広義固有ベクトルである。一方で なので、最小多項式は ではなく である。したがって最大Jordanブロックの大きさはちょうど であり、代数的重複度 と固有空間の次元 を合わせると、ブロック分割は 以外にない。
典型ミス
だからといって対角化可能とは限らない。対角化可能性を見るには の次元が代数的重複度 と一致するかを調べる必要がある。本問では次元が なので対角化はできない。 また、 はこの固有値に属する広義固有空間を表しており、通常の固有空間 とは別物である。両者を同じものとして扱うと、固有ベクトルが3本あるかのような誤った結論になる。
試験で書くべきポイント
固有空間の基底、広義固有空間、Jordanブロックの大きさ、変換行列 の列ベクトルが何を表しているかを明示する。特に広義固有ベクトルについては の確認を書くと、Jordan形の根拠がはっきりする。 通常のJordan標準形で と書きたい場合は、対応する列の順序を に並べ替える。答案では、どの順序の基底に関する表示なのかを一言添えると、上三角部分の の位置に関する減点を避けやすい。
第2問 — 線形写像と核・像
方針
部分空間の確認は「指定された形が基底行列の線形結合で書ける」ことを示すのが最短である。線形写像の表現行列は、基底の各元を写して、その係数を列に並べればよい。
核の見方
は となる行列全体である。今回の は共役変換なので、これは を満たす行列、つまり と可換な行列の空間でもある。この視点で見ると、単位行列が核に入ることはすぐ分かる。 実際に として を直接解くと、 となる。よって と書け、先に求めた核の基底と一致する。表現行列から計算した核が正しいかを短く検算するには、この可換性の条件を見るのが有効である。
像の検算
の階数は である。一方、核の次元も であるから、次元公式 により となり、求めた像の基底が2本であることと整合する。 さらに、像の2本 は明らかに一次独立である。第1の行列は 成分を含み、第2の行列は 成分だけを持つため、片方がもう片方のスカラー倍になることはない。
像を列空間として読むときの注意
の各列は、それぞれ の座標である。本問では なので、像はこの2方向で張られる。係数の は基底を張る上では取り除いてよいが、列ベクトルを行列に戻すときの成分順序 を取り違えないことが重要である。
典型ミス
表現行列では、像の係数を「列」に並べる。行に並べてしまうと転置された行列になり、核と像の計算もすべてずれる。また、 を求めるときは の列空間ではなく、 の列空間を見る点に注意する。 部分空間 では、指定された零成分が固定されていることを確認する必要がある。たとえば や は に入らないので、 全体の標準基底をそのまま基底として使うことはできない。答案では、許されている5つの位置だけを基底行列として列挙すれば十分である。
第3問 — 最大値評価
方針
連続性から最大値 が存在することを使う。関係式の右辺には と が現れ、どちらも に入る。そのため、それぞれの絶対値を最大値 で評価できる。
係数4が効く理由
右辺は2つの値の和なので、絶対値を取ると高々 である。一方、左辺は である。最大点で とすれば となり、最大値が強制的に になる。この係数の差が本問の決定的な部分である。
最大点に代入する理由
は の最大値として取っているので、ある で が成り立つ。 関係式は任意の で成り立つから、この をそのまま代入できる。 この一手により、各点ごとの評価が最大値そのものの不等式に変わる。
典型ミス
最大値ではなく 自身の最大値だけを見ると、 が負の値を大きく取る場合を取り逃がす。必ず の最大値を取る。また、連続性は最大値の存在を保証するために使われているので、答案ではそこを一言書くとよい。
試験で書くべきポイント
であること、閉区間上の連続性により が存在すること、最大点に代入することの3点を書く。これだけで短く完全な答案になる。
第4問 — 広義積分
方針
円板上の関数で、特異性が 、つまり境界 にある。したがって極座標に直し、境界の少し内側 で切ってから極限を取るのが自然である。
収束判定の本質
極座標変換後、問題は の 近くの収束性に帰着する。一般に が収束するのは のときである。ここでは なので、条件は となる。
切り取り方の検算
切り取り領域を としても同じ結論になるが、本解では としたため、置換 後の下端がちょうど になる。 広義積分の収束性は境界 近くの挙動だけで決まり、上端 では は有限である。したがって、途中の切り取り方の違いで収束条件が変わることはない。
発散側の読み方
では対数発散、 ではべき発散である。 答案では をそれぞれ明記すると、境界値 を取り落としていないことが伝わる。 特に の式を形式的に へ代入することはできない。
検算
と形式的に置くと、積分値は単位円板の面積 になる。公式 に を代入しても になり、極座標計算と整合している。 また、 が に下から近づくと値は無限大へ向かうので、境界 の特異性が強くなるという直感とも合っている。
典型ミス
を極座標に直すと が付く。この を落とすと収束条件も値も変わってしまう。また、特異点は原点ではなく境界側なので、切り取り方は または とするのがよい。 さらに、 という問題の条件を最後に戻して、答えを と書くことも忘れやすい。
第5問 — 留数計算
方針
有理関数の単位円上の積分なので、分母の零点を求め、単位円内の極だけの留数を足す。分母が2次式で、極が単純なら を使うのが最も速い。
内側の極の判定
では2つの極は実数で、 である。 は絶対値が明らかに より大きい。 については有理化して とすれば、 未満であることが見やすい。
注意すべき場合分け
では2次式が重根をもつので、単純極として扱ってはいけない。また、仮に と読むと、 は純虚数となり、2つの根はいずれも絶対値 で単位円内に入る。この場合は単位円内に1つだけ極があるという上の議論とは別問題である。 では重根 が積分路 上に乗るため、通常の留数定理をそのまま適用する設定ではない。 本問で の条件を使う箇所は、平方根を正の実数として扱えることと、内側の極が一つに決まることの二つである。
典型ミス
単位円内外の判定をせずに両方の留数を足すと誤る。特に2次分母では2つの単純極の留数の和が になることがあり、内側の極だけを選ぶ作業が不可欠である。
第6問 — ハミング距離
方針
ハミング距離は「異なる位置の個数」である。距離の公理のうち、非負性・同一性・対称性は定義からほぼ直接分かる。最も書くべきところは三角不等式である。
三角不等式の考え方
位置ごとに見るのがポイントである。ある位置で と が違うなら、その途中に置いた は、 と違うか、 と違うかの少なくとも一方である。これが という集合の包含に対応する。 例えばある位置で なら、 は か のどちらであっても、 または の少なくとも一方が起こる。 この座標ごとの事実を全ての位置で集めたものが上の包含である。
検算
具体例で となるのは、異なる位置が3か所あるというだけである。値そのものよりも、 を正しく列挙してから個数を数えることが大切である。
典型ミス
三角不等式で と書いてしまうのは誤りである。右辺には、 と は同じだが だけ違う位置も含まれ得る。必要なのは等号ではなく包含である。